うつ病で障害年金 難しいのは「アノ日」なんです

2020年6月12日

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人最高執行責任者


今回のコラムは年金実務者向けの内容です。

ここだけの話、今回はこんな話です

うつ病は、現在では「ありふれた病気」と言われるほどになっています。環境によるストレスがうつ病の要因とも言われていますので、コロナ禍の状況でも「コロナうつ」という言葉ができてしまいました。

厚生労働省の調査では、うつ病を含めた気分障害の患者数は平成20年に100万人を超え、平成29年に127万人まで増加しています。また、15人に1人が生涯に1度はうつ病にかかる可能性があるとの調査報告も…。

障害年金の相談でも多くがうつ病に関係するものとなっています。しかし、発病のきっかけや病気の経過、症状の内容・重さなどは、その人ごとに違っています。

障害年金の手続きにおいて「うつ病だから、こう!」というようなパターンに当てはめればいいとの考えでは対応できません。うつ病に限りませんが、相談者ひとりひとりの相談に応じることができる力量が求められます。

今回は、うつ病の方に多い、初診日に関するトラブルを見てみます。

うつ病とは

精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態[厚生労働省みんなのメンタルヘルスより]

初診日とは

障害の原因となった傷病について初めて医者に掛かった日のこと。障害年金を受け取るためにはこの日に年金制度に加入していたことが必要である

ここだけの話、こんな症状・こんな事例です

初診日がわからないことがよくある

上記にあるようにうつ病は、脳に機能障害が起きている状態ですので、外見ではわかりません。ケガなどと違い、周囲の人の理解が得られず大変な思いをされている方が多くいます

うつ病の症状として現れるものの中に

  • 自責の念(悪いことをしたと感じ自分を責める、自分には価値がないと感じる)
  • 思考力の低下(考えることができない決断することができない)

があります。

これらの症状のため病気は「自分のせい」と自分のせいにし、周囲の理解も得られにくいことから打ち明けられずにいたり、自分自身では病気の程度を「軽い」と決めつけてしまったりしてしまうことを聞きます

ずっと一人で抱え込んでしまい、誰とも相談できず気付いたら長い期間が経ってしまっていた…と

障害年金相談の時点で、発病から5年や10年、あるいは20年、30年経過している場合よくあります。

長い期間経過していると、初めての診察=初診日が「いつ」「どこで」行われたかわからない、初診日の確認困難なケースに行き当たることがあります。

ここだけの話、何が問題なのか

初診日がわからない初診日要件(初診日に年金制度に加入していることが必要)や保険料納付要件(保険料を一定期間以上納めていることが必要)の確認ができません。

そうなると、年金事務所や社労士事務所に相談しても「初診日を調べてきて」と言われ、手続きができ障害年金をあきらめてしまうもいらっしゃるそうです

初診日がわからないことは、障害年金に該当していないということではありません。

初診日は、ひとつの確認事項であり、それがわからないから障害年金の手続きができないということではありませんし、絶対に障害年金がもらえないということでもありません。

(下に続きます)

ここだけの話、こう解決する

相談を受ける側が「大変そう…」「難しいかも…」「無理そう…」と最初から決めつけしまうことはダメです。

大切なのは、「追求する姿勢」です。障害年金には、相談者の人生がかかっている場合があります。一方的に決めつけてしまい、可能性を閉じてしまうことは、専門家として最もしてはいけない行為です。

自分の病気のことを他人に話すことは、ただでさえ抵抗があることです。相談時の姿勢で不信感を与えてしまうと、何も聞き出せずに終わってしまった…なんてことになります。

追求する姿勢を持って接していると相談者から信頼され、少しずつですが、色んなお話をしてくれる場合があります。そこから手掛かりになりそうな情報を逃さず追求していきます。

決めつけてしまう姿勢では、情報を誤って認識してしまい、失敗してしまうこともあります。相談者が「初診日」と思っていた日が直近の通院先の「初診日」であった…よくあることです。

「関係ないかもしれないけど、子供のころに精神科に一回だけ行ったと親が言っていた。」会話やメールのやり取りなどの中で重要な手掛かりを聞き出せるかもしれません。

相談者は、障害年金に詳しくありませんし、どの情報が重要なのかもわかりません。なんとかしたい…そういう姿勢が伝わると相談者も何か手掛かりになるようなものを探してくれたり、身近な人に聞いて思い出そうとしてくれたりしてくれます。

手掛かりを手続きにつなげていくには、「知識」も重要です。相談者と信頼関係を築き、聞き出せた手掛かりも知識がなければ、障害年金に繋がりません。

「海外にいた期間がある」との情報も状況によって違ってきます。「海外に住んでいた」のであれば、被保険者期間が変わり、納付要件はどうなるのか…会社員時代の「海外研修中の期間に発病した」のであれば、何をもって初診を証明できるか…。

手掛かりから一つ一つ丁寧に洗い出していく…まるで、刑事や探偵のようにも思えますが、すべての可能性を確認していくことが障害年金の専門家であると思います。

ここだけの話、今回のまとめです

【みんなのねんきん】岡田社労士
今回は、うつ病の方に多い、初診日に関するトラブルをまとめてみました。

ポイントは以下のとおり。

  • うつ病は発病してから相談時点で数十年経過していることもある
  • そのため、初診日の確認が困難なケースがある
  • 大事なことは相談者の手掛かりになりそうな情報を逃さず「追求」すること
  • そして手続きにつなげるために「知識」も重要

うつ病での障害年金相談では、長い期間病気であるため、初診日が確認できないケースが見られます。その時でも、安易に障害年金に該当しないと判断してはいけません。

追求する姿勢を見せ信頼関係を築き、手掛かりになる情報を一つでも多く集めること、手掛かりをしっかり年金請求に繋げられる知識を持つことで、相談者があきらめていた障害年金の受給が認められることになります。

  • この記事を書いた人
真樹岡田

岡田真樹(社会保険労務士 みんなのねんきん社労士法人最高執行責任者)

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。都内の社会保険労務士事務所勤務を経て2020年より現職。

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