目次
過去の出題傾向からシモムーの感想
前半:受取金融機関の変更手続き 後半:65歳時の年金請求書ハガキの問題
昔からの定番問題。
この問題は受給権者の住所と年金受取の金融機関の変更届出のルールを問うもの。
住所変更は個人番号(マイナンバー)が収録済みなら住民票上の住所と年金記録原簿の住所が連動するように近年変わりました。
ですのでこの問題は受け取り金融機関変更の手続きに関するものでしかありません。
もう一方の65歳時のハガキは65歳からの老齢年金を普通に受け取るのか、繰り下げるのかの意思を表明するためのハガキ。
国民年金・厚生年金の両年金を繰り下げる場合を除いて、提出が必要です。
提出するということは少なくとも片方の年金は普通に受け取りたいという意味(だって、「年金請求書」なんですから)。
65歳からの年金は特別支給の老齢厚生年金とは制度が別なので年金請求を改めてするわけです。
ただし、既に60歳台前半で年金受け取りの審査は済んでいますので簡易なハガキ形式となる。
そんなハガキに関する出題がこの問題のテーマです。
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ここ注目!ここがポイントだ!
前半:受取機関変更
問うことが少ないので同じものが正解に
過去10回の受取機関変更に関する正解の知識を確認しましょう。
- 2022春 1枚の届出用紙で夫婦の年金受取口座の変更はできない
- 2021秋 ねんきんネットで手続き変更はできない
- 2021春 ねんきんネットで手続き変更はできない
- 2020秋 1枚の届出用紙で夫婦の年金受取口座の変更はできない
- 2020春(模擬)金融機関の証明印があれば通帳のコピーは不要
- 2019秋 ねんきんネットで手続き変更はできない
- 2019春 ねんきんネットで手続き変更はできない
- 2018秋 本人が署名するなら押印は不要
- 2018春 年金受取口座に貯蓄預金口座は指定できない
- 2017秋 ねんきんネットで手続き変更はできない
この問題は問うことがあまりないため、正解のバリエーションもありません。
”変更届を出したからといってすぐに口座解約するな”
”ねんきんネットでは変更手続不可”
の2大知識が正解になっていましたが、前者はここ10回からは正解の肢にはなっていません。(相変わらず肢には並んでいますが)
従前の口座は届出したら”すぐに解約してもよい”というのは常識で考えても変です。
なぜ解約してはいけないか。
それは、届出したタイミングにより、次回の年金の振込に向けて変更処理が間に合わないこともあるからです。
その時に旧口座も解約してしまうと、振込不能となってしまいます。
もちろん、不能になったからといって、その分は一切受け取れないなんてことはないのですが、受け取りには手間がかります。
厄介なことになるので旧口座はそのままにと案内するわけです。
と、まぁ説明するまでもなく、知識が無くても”すぐに解約してもOKってちょっとおかしいな”と判断できると思います。
逆に、
後者の”ねんきんネットで受取金融機関の変更不可”はここ10回のうち5回正解になっています。
変更後の金融機関に確かに口座があるという証明が必要なため、ネット上ではできないということです。
年金機構のウェブサイトで注意事項を確認せよ
この問題のイヤなところは、実務のルールが頻繁に変わるところ。
近年はマイナンバーの活用でハガキ様式も毎年のように変化しています。
そこで、受験の前に日本年金機構のウェブサイトで注意事項を確認しておくのが必須です。
実際の受取機関変更届を見ておくとイメージが湧きますよ。
-
-
住所や年金の受取口座を変えるとき|日本年金機構
続きを見る
このサイトの「年金受給権者 受取機関変更届(記入例)」にほとんどの答えが載っています。
個人番号か基礎年金番号を記入
近年、日本年金機構で個人番号(マイナンバー)を扱えるようになりました。
その関係で様々な届出書類にマイナンバーを記入します。
2022年7月現在、記入の見本を見てみると、マイナンバーを記入する場合の注意が載っています。
具体的には番号確認に必要な書類・身元確認ができる書類が必要です。
- 番号確認に必要な書類:個人番号が記載されているもの(個人番号カード等)
- 身元確認ができる書類:運転免許証等
郵送の場合はこれらの写しが必要とのこと。
この点、出題されたことは無く、その気配も無いので神経質になる必要は無いかもしれませんが、個人番号の知識については頭の片隅にいれておきます。
また、個人番号に代えて、従来の基礎年金番号を記入するのでも大丈夫です。
押印不要
自ら署名した場合は押印不要です。
そういう場合でも「押印が必要である」と出題されます。案の定、2018秋はこれが正解となりました。
押印廃止の行政改革の動きでこの肢はもはや出ないでしょう。
年金コード記入はチェックを入れる
以前は、変更を希望する年金コードを必ず記載する必要がありました(4コードまで記入できる欄があります)。
年金コードは年金の種類ごとに決められた4桁の識別コード。
これを指定しなければ複数年金を持っている人がどの年金の金融機関を変更するのかわかりません。
(例えば、老齢年金と遺族年金の受取り口座を別々の金融機関に指定することができます)
ところが、全ての年金の口座を変更するということであれば、チェックを入れさえすればわざわざコードの記入は必要ないとなりました。
例えば1つしか年金が無いならチェックするだけでOKとなりますね。
「年金コードは必ず記入する」として誤りとして出題されたことがあります。
”必ず”ではないからです。
ただ、コードを記入したからといって、不備で受付がされないわけではなく、絶対に誤りだとも言えません。
金融機関の証明は通帳持参かそのコピーがあれば省略可能
口座変更にあたり、変更先の金融機関に口座があることの証明が必要です。
届出用紙の右側に証明欄がありますが、通帳を持参するかそのコピーがあれば省略できます。
ここでは、
必ず証明が必要
という形で誤りを作ります。
2020春(模擬)は上とは逆で、証明印を受けても、通帳コピーを
必ず添付する
という形で誤りを作ってきました。どちらの出題でも対応できるようにします。
貯蓄預金口座では受け取りできない
2018春に初登場。
私は普通預金だけしか指定できないと理解していたので正解できました。
ですが、届出用紙の見本をよく見てみると、”2当座”預金を選ぶ欄もあるので、普通預金だけとは限らないようです。
と、このコラムに書いておいたら、2021春には
普通預(貯)金および当座預金である
として初の出題。これも常識にしておきます。
郵送でも可能
年金事務所に郵送するのでも提出可能です。
ねんきんネットで変更は不可能
現状はねんきんネット上で受取金融機関の変更はできません。
変更後の口座名義はカタカナで記入
2019秋に初出題。
え?そうなの?
と試験会場で思って△にしたのですが、他の肢が明らかに誤りだったので正解にはたどり着きました。
改めて、見本を見ると、確かに”ネンキン タロウ”の文字が!
また一つ確実な知識が増えました!
2020春(模擬)、2021秋もこの肢が並んでいました。
年金生活者支援給付金の関係
2019年10月から始まった年金生活者支援給付金。
実は、受取機関変更届はこの給付金の受取機関変更届も兼ねています。
2020春(模擬)から支援給付金の出題が続いていますので、この関連で今後出題があるかもしれません。
変更届ハガキの上部のタイトルには右隣に
(兼 年金生活者支援給付金 受取機関変更届)
となっています。
また、
基礎年金の受取機関を変更すると、この支援給付金の受取機関の変更も同じ金融機関に変更されることは知っておいてください。
1枚のハガキで1人の受給権者の変更にのみ対応
ここまでの説明でわかるとおり、受給権者1人についての受取機関を変更する届が今回の届出用紙です。
配偶者の受取機関の変更は、配偶者自身が別のハガキで届出しなければなりません。
ハガキの見本を見ても、配偶者の欄なんてどこにもありませんし・・。
2020秋はこの点を突いた初めての出題がありました。
夫婦であってもそれぞれが、受取機関変更届の提出が必要です。
2022春もこの点が正解となりました。
後半:65歳時のハガキは生年月日を見るところから
1日生まれなら正解は一気に狭まる
この問題で私は真っ先に何を確認するか。
事例の年金受給者の生年月日が1日かどうか。
1日生まれだったら、3秒で終わり。
”誕生月の月末が提出期限”と肢を作ってくるからです。
実際に2018春、2019春、2021春はそのとおりとなりました(2018秋、2019秋、2020秋、2021秋は正解にはならなかったものの、1日生まれで出題がありました)。
65歳到達は前月ですから、提出期限は誕生月の前月末日までが正解。
ちなみに過去10回の出題事例の年金受給者の生年月日はこのとおり。
1日率は7割にのぼります。
- 2022春 1日生まれ以外
- 2021秋 1日生まれ
- 2021春 1日生まれ
- 2020秋 1日生まれ
- 2020春(模擬)1日生まれ以外
- 2019秋 1日生まれ
- 2019春 1日生まれ
- 2018秋 1日生まれ
- 2018春 1日生まれ
- 2017秋 1日生まれ以外
1日生まれだったら、提出期限に注意する。
それだけで得点の可能性が高まります。
よくある正解は3つ
何が正解になっているか直近10回の傾向を見てみましょう。
- 2022春 ハガキは提出期限月の初めころに送られる
- 2021秋 紛失しても再発行はできない
- 2021春 提出期限は65歳到達月の月末までに
- 2020秋 紛失しても再発行はできない
- 2020春(模擬)配偶者が年上の場合は加給年金対象者のハガキは届かない
- 2019秋 提出先は年金機構の本部で年金事務所ではない
- 2019春 提出期限は65歳到達月の月末までに
- 2018秋 提出先は年金機構の本部で年金事務所ではない
- 2018春 提出期限は65歳到達月の月末までに
- 2017秋 両方繰下げ希望なら提出しない
よく正解になるものは以下の3つというところでしょうか。
- 提出期限は65歳到達月の月末までに
- 提出先は年金機構の本部で年金事務所ではない
- 紛失しても再発行はできない
1は1日生まれになると、ここで正解になる可能性が高くなります。
2は年金機構の本部宛に郵送することになっています。
3についてはこのあと説明します。
65歳時のハガキも内容を見ておいた方がよい
このハガキも実際の内容を見ておいたほうがよいです。(加給年金対象者”あり”のものでいいです)
-
-
特別支給の老齢厚生年金の受給者が65歳になったとき|日本年金機構
続きを見る
上のページで見ることができる用紙は最初に届いたハガキを紛失した際のもの。
この点、
2020秋は紛失しても再発行はできないという肢が登場。2021秋には正解になりました。
最初に届くハガキはご自身の名前やら生年月日やらの個人情報が既に印字されています。
個人情報が印字済みの年金請求書(ハガキ)の再発行はできない という意味で、紛失したらどうにもならないってわけではありません。
紛失したら個人情報が何も書かれていない用紙がありますから、そこに自分で記入して請求すれば良いだけです。
この論点は、事前に届く特老厚の年金請求書も同じなのでセットにして覚えておきます。
年金請求書をなくした場合の入手方法
2021春は、個人情報が書かれていない用紙をダウンロードできるか否かという肢が登場。
上で紹介したウェブサイトで用紙を表示させてダウンロード。印刷して記入して提出すればOKです。
2022春は、ねんきんネットでこの年金請求書を作成できるか否かという肢が登場。
実際、私がログインして調べてみると、たしかに作成できるボタンがありました!(しかし、59歳9ヶ月未満は作成できないとのことで、作成自体は無理でした)
おそらくですが、ねんきんネットで作成した場合は、名前などが自動で入力されているはず。
それを印字して提出するということです。多少手間が省けて便利というくらいです。
これも知識として押さえておきましょう。
繰下げの手続きをしっかり理解
よく正解になるのは、繰下げの知識。
この用紙の下の方に繰下げ希望の意思表示をする欄があります。
そもそもこの届書は”年金請求書”ですから、提出するということは老齢厚生・老齢基礎のいずれかは”受け取りたい”という意味。
ですので、いずれも受け取らない(=繰下げしたい)ということなら提出しません。
65歳で特別支給の老齢厚生年金が失権しますから、ハガキを提出しなければ年金の振込は途絶えることになるんです。
請求しさえすれば、まとめて振込がされますが、それまでは「保留」状態が続きます。
そうならないように、期限を設けているわけです。
反対に、
本当に繰下げするつもりで提出しないのであれば、その後は66歳以降の自分の都合がよい時に繰下げの申出手続きをするだけ。
65歳時にこのハガキで単に”繰下げ受給を表明”しただけでは永久に年金の振込はないことに注意です。
加給年金対象者の生年月日に注意
毎回の事例では妻がいる20年以上厚年加入の夫にハガキがやってくるというパターン。
ですので、加給年金の対象者として素直に妻の名前を記入すれば良いのですが、2016秋はイヤラシイ出題がありました。
それは、妻が年上だったという事例。
であれば、加給年金は出ないので妻の名前は書かない。
夫が65歳になって加算が開始するだろうタイミングで妻は65歳になってしまっているわけですから。
なんと久しぶりに2020春(模擬)で妻年上が出ました。
実は過去12回でこの出題は2回だけ。
- 2022春 妻は年下
- 2021秋 妻は年下
- 2021春 妻は年下
- 2020秋 妻は年下
- 2020春(模擬)妻は年上
- 2019秋 妻は年下
- 2019春 妻は年下
- 2018秋 妻は年下
- 2018春 妻は年下
- 2017秋 妻は年下
- 2017春 妻は年下
- 2016秋 妻は年上
2016秋は全て「適切」となってしまい、途方に暮れたものです。
しかし、妻年上で出てくれれば、もう怖いものはありません。
というわけで、妻の生年月日に注意しましょう!
メモ
妻が年上の場合、加給年金対象者がいないので、実務では妻の欄が無いハガキ(加給年金対象者なしハガキ)が行くはずなんです。ですので、妻の名前を書かないのは当然(というか書けない)。試験問題としてはおかしいという判断になったのか、2016秋以後出題はされていませんでした。
メモ
2020年9月 問題を作った人が上のメモを見たのかどうだかわかりませんが、2020春(模擬)は「加給年金対象者有の」ハガキが届くとわざわざ記載がありました。2016秋はこの記載がなく、そのため私はおかしいと思った次第です。
まとめます
受取金融機関の変更と65歳時のハガキ。
金融機関の窓口での定番テーマなんでしょう。
必ず出題があります。
受取金融機関変更届については・・
- マイナンバーを記入するが、基礎年金番号でもよい
- 全ての年金の受取り口座を変更するならチェックマークを入れるだけ
- 通帳かそのコピーがあれば金融機関の証明印は不要
- 貯蓄預金口座の指定は不可 普通口座、当座預金OK
- 郵送でも可
- ネット上では変更不可
- 変更後の口座名義はカタカナで(ネンキンタロウ)
- 1枚のハガキで1人の受給権者の変更にのみ対応
65歳ハガキについては・・
- 1日生まれなら提出期限を見る
- 両方繰下げ希望ならハガキを出さない
- 提出先は機構本部へ
- 年金機構のサイトもしくはねんきんネットから用紙のダウンロード可能
見本を眺めておくことも忘れないようにしてください。
シモムー
みんなのねんきん主任講師