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注目!障害年金の裁判 ーなぜ国は敗れたのか?ー

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、どんなニュース?簡単に言うと

2021年9月。障害年金に関する訴訟について、国の賠償責任を認める報道がありました。

https://www.asahi.com/articles/ASP9H66QXP9HPISC00P.html
https://www.asahi.com/articles/ASP9H66QXP9HPISC00P.html

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(出典:診断書がなく障害年金申請できず 国の対応「違法」 高裁金沢支部(2021年9月15 朝日新聞))

通常、障害年金の申請では、「診断書」が必須です。記事の見出しだけでは”診断書がなくても障害年金が認めらるケースがあるのか?””国のどのような対応が「違法」なのか?”と疑問が生じます

そこで、何が問題になっているのか、詳しくみていくことにしました。

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ここだけの話、どんなニュース?もう少し詳しく!

原告は、生まれてすぐに右手指を失った身体障害の方でした。

先に取得していた身体障害者手帳を持って1988年11月頃障害年金を申請しようとしたところ、窓口担当者から「手帳は関係ありません」などと言われ、申請書類を渡してもらえなかったとのこと

当時の年金申請のルールによれば、「(申請時は)初診日を明らかにできる書類を添付すべき」と定められており、窓口担当者は初診日を明らかにできる書類がないと判断し、申請書類を渡さなかったとのことです。

メモ

「初診日」とは障害の原因となる傷病で初めて医師にかかった日のことを言います。

つまり、身体障害者手帳は初診日を証明できる書類」に該当しないと判断され、申請させてもらえなかったのです。

私はてっきり、今の障害状態を証明する診断書がなかったから受付されなかったと思ったのですが、それは誤解でした。

メモ

障害年金の申請には、ざっくり言うと、”初診日を証明するもの”と、”現在の障害状態を証明するもの”の2つが必要です。現在の障害状態を証明するものは医師が書いた「診断書」がこれに当たります。新聞記事の見出しで「診断書」の記載のみだったので、誤解した次第です。

そのため、原告は障害年金の申請ができず、国家賠償請求の訴訟を提起しました。

国は、窓口担当者の対応は適切だったと主張しましたが、一方で裁判所は手帳を確認すれば、遅くとも11歳までに障害があったことが分かったはずと指摘。

2015年(平成27年)の厚生労働省通知が出るまでは、診断書がなければ申請は受付できなかったとするのが国の主張の根拠でした。

結局、裁判所は、初診日を証明する書類として診断書がなくても、申請書類や手帳などがあれば手続きはできたとし「誤った法令の解釈に基づいて申請を妨げ、国家賠償法上違法」と判断。

約27年間分の年金相当額を賠償するよう国に命じました。

ここだけの話、このニュースからこう考える

二十歳前傷病による障害基礎年金と身体障害者手帳

原告は生まれてすぐに障害を負った方です。

この場合、20歳からの年金制度には加入できないので、通常の障害年金を受給することはできません。

そこで、

20歳になる前に初診日がある病気やケガで障害状態となった時には二十歳前傷病による障害基礎年金」という仕組みがあり、幼少期の障害であっても年金の保障を受けられます。

今回の場合、身体障害者手帳を確認していれば、20歳前に初診日があること、障害状態にあったことが確認できました。

身体障害者手帳は、二十歳前傷病による障害基礎年金を証明するのに信用性のあるものと言えます。

国の主張には無理があったか

この点、

過去の裁判例や不服申立てに対する裁決例を調べると、指定の初診証明書や診断書がなくとも、障害年金が認められている事例があります。

傷病名や症状を証明する時期など、細かい点は違いますが2015より以前に認められている事例もありました。

今回の訴訟では身体障害者手帳から、遅くとも11歳までに障害があったこと明らかになっています。

裁判での国の主張には、少し無理があったと思います。

メモ

ただし、過去の事例では、年金を申請する段階で指定の初診証明書や診断書がなくとも受付されたわけではなく、不服申立て、訴訟を経て初めて認められているものばかりでした。内容を見ると、専門的な知識が必要な内科的疾患や発症日の証明が難しい傷病が事例としてありました。障害年金に詳しくない方が指定の初診証明書や診断書を取得できない場合、申請手続きが進められたとは思えません。

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法令はどうなっている?

ここで、

”障害状態”と”初診日を証明するもの”には、違いがあります。

障害状態を証明するものは、医師や歯科医師の専門的判断を必要とするのは想像できると思います。

それに対し、初診日を証明するものは、そこまで限定されていません。しかも、かっこ書きで(当該書類を添えることができないときは、当該初診日を証するのに参考となる書類との追記まであります。

障害状態を証明する資料は、医師や歯科医師の専門的な判断が必要になりますので方法も限られてきます。

しかし、初診日を証明する資料は、初めて受診したのはいつかという「日付」を証明できればいいので、資料も様々なものが当てはまります。

では、これらの違いを意識して法令を確認してみましょう。

障害年金の手続きで必要な書類は、国民年金法施行規則31条第2項厚生年金保険法施行規則44条第2項に規定があります。

具体的には、初診日を証明するものとして

障害の原因となった疾病又は負傷に係る初診日を明らかにすることができる書類

とあります。

初診日がわかる書類であれば良いとありますが、もちろん、障害年金は、書類審査になってきますので資料に高い信用性が問われることは言うまでもありません。

今回の身体障害者手帳での証明ですが、都道府県が発行していますので、信用性の高い資料となります。

裁判ではこの身体障害者手帳では初診の証明にならないと誤った解釈で窓口担当者が突っぱねたことが違法となったわけです。

一方、

障害状態を証明するものとして

障害の状態に関する医師又は歯科医師の診断書

と定められています。

また、より詳しく実務のルールを定めた日本年金機構の「害認定基準」には、

障害の程度の認定は、診断書及びX 線フィルム添付資料により行う。

(注:文字の装飾は筆者)

とあります。

ここで気になるのが「等」です。

診断書やX 線フィルム以外でもいいということでしょうか?

前述の施行規則では、「医師又は歯科医師の診断書」となっています。

障害状態が要件と合致しているか判断する資料として診断書を提出するよう求めています。

診断書は、医師や歯科医師の専門的判断による信用性のあるものです。

ですので、認定基準の「等」も診断書と同等の信用性のある資料でなければいけないと私は理解しています。

さて、

このようにして、”障害状態”と”初診日を証明するもの”には、違いがあることがおわかりいただけたと思います。

障害年金相談の現場ではどうなっている?

障害年金相談では、「初診日の証明ができない」との内容も多いです。

例えば、初診時の医療機関が廃院になっているとか、カルテが既に破棄されているとか、昔に遡れば遡るほど証明が困難なケースが出てきます。

そこで、

今回のニュースのように障害者手帳を資料としたり、その他の資料で初診日を証明したりすることがあります。

どのようなものなら信用性のある資料となるかは、個人個人のケースや状況で見定めていかなくてはいけません。

初診日要件、保険料納付要件、これまでの通院歴の関係性からどのように証明していくか・・・

初診日の証明の方法は、障害年金専門家の技量でカバーできるものと思っています。

ここだけの話、今回のニュースのまとめです

今回は、障害年金に関する訴訟から考えたことを書いてみました

ポイントは以下のとおり。

  • 身体障害者手帳では「初診日を証明できる書類」には該当しないとして国が障害年金の申請を妨げたことが”誤った法令の解釈として”違法となった裁判事例
  • 初診日を証明するものは、医学的な専門的判断を必要とする「診断書」に限定されない
  • 初診日の証明が難しい場合でも専門家の技量でカバーできる

精神疾患や国が指定している難病の場合ですと、初診日の証明が困難なケースが多いです

障害年金に詳しくなければ、行政の窓口で言われるまま諦めてしまう方もいると思います。

必要な書類がなくとも、障害年金が認められることはあるので、この点で障害年金手続きを自力でやるにはハードルが高いとも言えます。

通院歴が長く最初の病院がわからない、病院が廃院となって証明書が取れない、いくつもの病院を受診したが病名がバラバラ・・・。

初診日の証明方法は、一つではありません。

そのために、障害年金の専門家が存在しているのです。

私自身、これまでの手続き代行の経験のなかで、多くの方法で証明してきました。

障害年金の申請をあきらめようとしていた方が、あきらめずに済むようこれからも精進していこうと思います

出典・参考にした情報源

https://www.asahi.com/articles/ASP9H66QXP9HPISC00P.html
https://www.asahi.com/articles/ASP9H66QXP9HPISC00P.html

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(出典:診断書がなく障害年金申請できず 国の対応「違法」 高裁金沢支部(2021年9月15 朝日新聞))



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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表 

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。

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