実録!岡田社労士の障害年金ここだけの話 相談事例

保険料納めてないのにもらえる?!特殊な障害年金を「発達障害」の事例で考える

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

読者のみなさんは「発達障害」をご存知でしょうか。

ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥多動症)などを含めて発達障害と呼ばれています。

今回は実際に弊社で受けた発達障害に関する相談事例をもとにして、20歳前の障害による障害年金制度の注意点と、障害年金以外の支援制度をご紹介します。

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ここだけの話、こんな事例・こんな症状です

お母様からのご相談でした

ある日のことです。

発達障害をお持ちのご子息のことで、お母さまからご相談を受けました。

高校を卒業するまでは、学校生活や日常生活も問題なく過ごせていたのですが・・・学校から離れてみると苦労が目立つようになったとのこと。

高校卒業後は専門学校に進学したのですが、対人関係が上手く行かない状況だったため、医療機関を受診しました。

まだ20歳前の年金加入前の話です。

するとASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥多動症)などの「発達障害」と診断されたとのことでした。

今後、就労ができるのか、どのように生活していくのか・・・ご両親の不安は大きいです。

「何かできることがないか?」「どうすればいい?」

そのような不安に対して、弊社でどのように対応したか。

今回は「発達障害」と関連した障害年金・障害者支援制度の事例を取り上げます。

見過ごされてしまう発達障害

そもそも「発達障害」はどのような病気なのでしょうか。

厚労省のウェブサイトによるとこのような説明がされています。

生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。

(出典:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス)

発達障害」は、その人の考えが読めな注意の対象・コントロールが苦手、ちょうど良いという加減がわからない、などの特性があります。

以前は、知的障害を伴い、幼少期に診断されるものと考えられていましたが、現在は知的障害を伴わない場合もあり発達障害と診断されずに見過ごされることもあります。

例え発達障害であっても、勉強ができていることや周囲の環境・人間関係によって、問題なく過ごせてしまうことで、その症状が目立たなかった可能性があります。

学校では時間割に沿って過ごします。与えられた課題をこなしていれば、対人コミュニケーションが苦手でも問題になりにくいです発達障害であっても勉強が不得手でない場合もあり、教師がフォローをしてくれることもあります。

しかし、高校を出て、新しい環境になれば、人間関係が複雑になったり、周囲の人にあわせた行動が求められます。

自分で計画して主体的に行動することも求められますし、苦手なことを周囲のフォローなく行う必要もあります。

こういった新しい環境の変化のため、症状が目立つようになってきます。

仕事の遂行や他人とのコミニュケーションが困難な状況が多くなり、医療機関に行ってみたら「発達障害」と診断されるというケースがあるわけです。

今回のお母様から寄せられた相談はまさにこのようなケースでした。

ここだけの話、発達障害で障害年金を受け取れる?

年金制度に入る前の病気で障害年金はもらえるのか?

そもそも「発達障害」は、障害年金の対象となる病名です。

したがって、制度に定める要件を満たせば、障害年金を受け取ることが可能です。

その要件とは具体的に以下の3つです。

初診日要件、保険料納付要件、障害認定日要件。

障害年金の「三要件」と呼びます。

(三要件については、私の過去のコラムに詳しくありますので参考にしてください)

私たちが障害年金受給の”成功率”を考えないたった1つのワケ

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今回の相談事例のように、20歳前に、つまり年金制度加入前に受診している場合、障害年金はもらえるのでしょうか?

年金も民間の保険のように一種の保険ですから、加入して保険料を納めていなければ、もらえないとも考えられます。

しかし、そのように考えれば年少時の障害に対して社会保障ができません

そこで、一般の障害年金と異なり、三要件それぞれに通常とは異なる取り扱いがされています

初診日要件について

初診日要件は、初めて医師の診断を受けたときに国民年金・厚生年金の制度に入っていることが必要という条件。

20歳前の年金に加入する前に受診している場合、どのような扱いになるのでしょうか?

20歳前で就職して厚生年金に入る場合

例えば20歳前であっても、高校卒業後に会社員として就職していれば厚生年金に加入しているでしょう。

この場合なら問題ありません。

受診後に退職したとしても厚生年金保険の「障害厚生年金」を請求できます。

ちなみに厚生年金は”70歳未満で加入できる”という条件なので、18歳でも19歳でも加入できます。

20歳前で年金制度に入っていない場合

今回の事例のように厚生年金に入らない場合、20歳前では国民年金に加入できません。

とすれば、原則から考えれば、初診日要件を満たせず年金はもらえないはず。

このような場合、年金の保障を受けられない不都合が生じます。

そこで、20歳前に年金制度に加入していなくても、福祉的に国民年金の「障害基礎年金」を請求できることになっています。

保険料納付要件について

保険料納付要件は、年金制度の加入(被保険者期間)中に、将来に備え保険料を納めていたかが確認されます。

具体的には厚生年金保険、国民年金どちらの場合でも「初診日の前々月までに被保険者期間がある場合」に要件を満たしているかを確認されます。

ここで、前々月までに被保険者期間がないという事例を考えてみます。

20歳前で就職して厚生年金に入る場合

20歳前に就職後、仮に入社した月に受診すると、「初診日の前々月までに被保険者期間」が全くありません。

これでは原則で考えれば保険料納付要件を満たせません。

20歳前で年金制度に入っていない場合

進学した場合も、20歳までは国民年金に加入できないため、その間に受診すると「初診日の前々月までに被保険者期間」が全くありません。

今回の相談事例はこのケースに当てはまります。

この場合も原則で考えれば保険料納付要件を満たせません。

そこで、

初めて受診したのが厚生年金加入の直後だった

初めて受診したのが20歳前で国民年金に入れなかった

このような場合は、そもそも保険料納付要件は確認されない(つまり、考えなくてよい)ことになっています。

特に、後者の年金に加入してないケースは一切保険料を納めずに受給できる特殊な年金といえます。

障害認定日要件の例外

障害認定日要件は、障害認定日とされる日に制度で定める障害状態かどうかが確認されます。

障害認定日は、原則として初診日から1年6カ月を経過した日になります。

この要件も場合分けして考えてみましょう。

20歳前で就職して厚生年金に入る場合

この場合は、原則どおりに考えるだけです。

なぜなら、普通に年金制度に加入しているからです。

初診日から1年6ヶ月を経過した日に障害状態に該当していれば、その日に障害年金の権利が生じます。

20歳前で年金制度に入っていない場合

この場合は、障害認定日の考え方が変わります。

具体的には20歳到達日、または、初診日から1年6カ月した日の遅い方が障害認定日となります。

つまり、早くても20歳にならないと障害基礎年金を請求できないことになります。

保険料を納めていないのに受け取れる障害年金のため、せめて20歳までは待つようにということでしょうか。

【みんなのねんきん】20歳傷病の障害基礎年金の支給開始時期

(タップで拡大)

ご両親が気になるのは、障害年金は、「いつから申請ができるのか」です。

このように20歳前に医療機関を受診したケースで年金相談に応じる場合は、就職し厚生年金保険加入だったのか、そうでないのかをしっかり確認しておく必要があります。

弊社でもこの点は十分注意して、お母様のご相談に応じました。

今後の見通しが立ったことで、わずかですが、安心していただけたようでした。

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ここだけの話、障害年金以外の制度は?

このように、障害年金をすぐには申請できない場合、ご両親がそれまでの期間、「何か他にはできないか?」と心配されるのが普通です。

その気持ちはよくわかります。

そこで、弊社では、今すぐ障害年金手続き代行のお手伝いができない場合でも、その他に利用できる障害者への支援制度をご紹介しています。

障害者手帳

まずは、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)。

初診日から6カ月経過していることが条件となりますが、取得できると、公共料金等の割引(NHK受信料の減免)、税金の控除・減免(所得税、住民税の控除、相続税の控除)、鉄道、バス、タクシー等の運賃割引(JRや航空各社は除く)などのサービスが受けられます。

また、障害者手帳があると就労支援制度を利用しての就労がしやすくなります。

現在、企業は、障害者雇用促進法によって、規模に応じて障害者を雇用すること義務付けられています。

障害者手帳があると「障害者雇用率(法定雇用率)」の算定対象となるため、企業側が積極的に雇用してくれる可能性が出てきます。

特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、精神又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給されます。

支給月額は、1級で約5.2万円2級で約3.5万円です。

障害年金と違い、保険料の要件はなく、障害状態で判断されます。

申請窓口は、市区町村の子供育成の担当課になります。

20歳まで、「特別児童扶養手当」を利用し、20歳以後は、障害基礎年金を利用されるケースも多くあります。

その他に「障害児福祉手当」があります。

特別児童扶養手当と同じように市区町村の子供育成の担当課に申請します。

認められれば、月額約1.5万円の手当が支給されますが、対象が重度の障害状態となっています。

障害者扶養共済制度(しょうがい共済)

障害者扶養共済制度(しょうがい共済)は、障害のある方を扶養している保護者が、毎月一定の掛金を納めることにより、保護者に万一(死亡・重度障害)のことがあったとき、障害のある方に終身一定額の年金(月額2万円二口加入の場合4万円)を支給する制度です。

障害のある方の将来に対し、保護者が持つ不安の軽減を図る目的があります。

加入するには、保護者に次の要件があります。

  • 加入年度の4月1日時点の年齢が満65歳未満であること
  • 特別の疾病または障害がなく、生命保険契約の対象となる健康状態であること

保護者が支払う掛金は、付加保険料(保険に係る経費分)がないため、低廉とされており、さらに、所得控除の対象になります。

また、継続して20年以上加入したときは、その後の掛金は免除となります。

扶養者が掛金を納めやすく、障害のある方には、終身にわたり年金が支給されていきます。

あまり知られていませんが、障害のあるお子様を扶養している方には、知っていてほしい制度です。

高校を卒業したばかりなのに、障害があることがわかった・・・ご両親としては、非常に悲嘆してしまうことと思います。

障害年金の専門家として、今できることを提案し、少しでも、安心してもらえることが必要だと感じています。

ここだけの話、今回のまとめです

今回は、発達障害と関連して、20歳前でも利用できる障害者支援制度について執筆しました。

ご両親から「何ができる」という不安に、私がどのような話をしているか、経験を踏まえたものになっています。

ポイントは以下のとおり。

  • 「発達障害」は幼少期に問題がなくても環境の変化により症状が目立つようになり、大人になってから診断されるケースがある
  • 20歳前の受診であっても就職して厚生年金に入っていれば一般の障害厚生年金の対象となる

  • 20歳前の受診時に年金制度に未加入の場合は、三要件が緩和された特殊な障害基礎年金の対象となる
  • 障害者手帳の取得、特別児童扶養手当障害者扶養共済制度は障害年金請求前にも活用できる

  • 今すぐ障害年金の申請ができなくても、弊社では相談者に寄り添った情報提供を心がけている

今すぐに障害年金の申請ができないことがわかった場合、将来的に利用できる障害年金の説明だけでいいのでしょうか?

肝心なことは、機械的に制度の説明をすることではなく、相談者に寄り添うことです。

今は障害年金の請求ができなくても、少しでも相談者の不安を軽くできるような説明を心がけるのが弊社のスタンスです。

なお、紹介した障害者扶養共済制度以外の制度を利用するためには、医師の協力が必要になります。

申請を行うたび、医師との信頼関係も深くなっていきます。

今後の治療や障害年金の手続きにおいても、良い影響が期待できます。

利用できる制度があるのでしたら利用すべきです。

出典・参考にした情報源

厚生労働省ウェブサイト みんなのメンタルヘルス 発達障害

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html

障害者扶養共済制度(しょうがい共済)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000195619.html



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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表 

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。

© 2021 年金力養成講座みんなのねんきん