実録!岡田社労士の障害年金ここだけの話 相談事例

「てんかん」がうつ病などの障害年金とは異なる、ある理由

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

読者のみなさんは障害年金の対象となる病気に、「てんかん」が含まれていることはご存知でしょうか。

障害年金の相談を受けるなかで「てんかん」が障害年金の対象となっていることを知らない方も多いです。

そもそも、障害年金の認定基準には「てんかん」が”精神の障害”の中に含まれています。

つまり精神疾患の一つとして障害年金の対象になるわけです。

今回は、障害年金の対象になることをご存知ない方にも理解できるように「てんかん」での障害年金請求について書いてみたいと思います。

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ここだけの話、こんな症状・こんな事例です

まず、障害というと、車いすや盲目など肢体の障害のイメージが強いと思いますが、精神疾患も障害に含まれます。

精神疾患というと、「うつ病」や「統合失調症」、「発達障害」、「知的障害」が代表的な病名になります。

ここで、「てんかん」は、突然意識を失って反応がなくなるなどの発作が繰り返し出現する病気です。

ですので、他の精神の障害の病気とは少し特徴が違うように思えます。

そこで、詳しく「てんかん」はどんな病気なのか、その症状から解説してみましょう。

「てんかん」はどんな病気?

「てんかん」とはどんな病気でしょうか。

厚労省のサイトでは「てんかん」はこう説明されています。

脳の神経細胞(ニューロン)は、基本的に電気的活動を行っているため、強い電気刺激により異常で過剰な電気活動(電気発射)を起こす性質があります。「てんかん発作」は、このニューロンの電気発射が外部からの刺激なしに自発的に起こる現象を指し、また「てんかん」は、この「てんかん発作」をくりかえし起こすことを特徴とする病気です。

(出典:厚生労働省ウェブサイト みんなのメンタルヘルス)

ここで説明されている「てんかん発作」は、体の一部が固まってしまう、手足がしびれてしまう、耳鳴りがおきる、動悸や吐き気が出てくる、意識を失う、言葉が出てこなくなる、などたくさんの症状があります。

脳内で「異常で過剰な電気活動」が起こるということで、脳の機能に障害が生じています。

ここで、「うつ病」も脳がきちんと動いてない状態と言われています。

したがって、脳の機能の障害として、障害年金制度では、うつ病と同じ”精神の障害”という分類になっているようです。

障害年金が対象とする「てんかん」の障害状態は?

それでは、障害年金制度が想定している「てんかん」の障害状態はどのような状態でしょうか?

その認定基準を確認してみます。

まず、確認しなくていけないのは、認定基準にある以下の記載です。

てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

(出典:日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準)

つまり、治療によって、てんかん発作の出現がない場合は、障害年金の対象にならないということです。

服薬などの治療があっても、てんかん発作が出現していないと障害年金の申請が難しくなります。

次に、確認すべきは、どのような「てんかん発作」が障害年金の対象となるかです。

認定基準では、てんかん発作のタイプを以下のように区別しています。

  • A 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
  • B 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
  •  意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作

  • D 意識障害はないが、随意運動が失われる発作

注:「随意運動」とは自分の思い通りに行動ができることをいう

ここで、障害年金は重い状態から順に1級から3級までありますが、これらのタイプの発作がどのくらいの頻度で出現しているかで障害状態の程度が例示されています。

  • 1級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの
  • 2級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
  • 3級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

このように認定基準を見てみると、どのタイプの発作がどのくらいの頻度で出現しているかが重要になっていることがわかります

つまり、相談時に、発作のタイプと頻度を確認しておかなくては、障害年金に該当しているか判断できないことになります。

認定基準にはその他に、「てんかん発作のために、日常生活動作がどの程度損なわれ、どのような社会的不利益を被っているのか」という、社会的活動能力の損減も重視するとあります。

これはつまり、てんかんの発作のために日常生活に不便が生じたり、周囲から(つまり社会的に)何らかの制限を受けていることが、障害年金の認定審査で重視されていることを意味します。

ここだけの話、何が問題なのか

「てんかん」を理由とした障害年金の請求をする場合、どのような問題が生じるでしょうか。

ここで、

最初に記したとおり、「てんかん」は、障害年金では、「精神の障害」に含まれています。

そのため、医師に依頼する年金診断書も「精神の障害用」になります。

私が「てんかん」の障害年金請求を行ってきた方々の通院されていた診療科を見ると「小児科」、「脳神経内科」など「精神科」ではないケースが非常に多い。

診断書を作成する医師が「小児科」や「脳神経内科」の場合、「精神の障害用」の診断書に慣れていないことがあります。

時には、「精神科ではないから、作成できない。」と作成を断られてしまうケースもあります。

つまり、この時点で請求手続きが中断してしまう問題が起きるのです。

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ここだけの話、みんなのねんきんではこう対応する

それでは、”みんなのねんきん”ではどのように対応しているのかをご紹介します。

まず、

障害年金の請求手続きを始める前に、現在の通院先の診療科確認します。

精神科でなかった場合

  1. 「てんかん」の障害年金請求で使用する診断書が「精神の障害用」であること
  2. 精神科の医師ではなくとも作成して大丈夫なこと

の二点を医師に伝えなくてはいけません。

医師や相談者にわかりやすく説明することが必要です。

つぎに、診断書を依頼するときに注意が必要です。

「精神の診断用」の診断書に慣れていないことが予想されます。

記入漏れなどがあった場合には訂正の依頼があることを前もって伝えておきます。

そうすると、事後の訂正依頼がスムーズにできるようになります。

大きい病院であるケースも多く、その場合は、文書担当の方に伝えることになります。

どのようなケースであっても、相手に合わせてわかりやすい説明ができることが必要です。

さらに注意すべき点があります。

それは、医師が作成した診断書です。

実は他の「精神の障害」と比較して確認すべきポイントが異なるのです。

例えば、うつ病の場合、診断書の日常生活能力の判定や日常生活能力の程度のチェックの箇所を重要視していますが、「てんかん」の場合違います。

なぜなら「てんかん」は、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象傷病から外されているからです

このガイドラインは、精神疾患による障害年金の等級を決定する際の目安になるものです。以前コラムを執筆したことがありますので参考にしてください。

「ギリギリ」と言われた障害年金 運命を分けた「考慮すべき要素」とは

岡田真樹みんなのねんきん社労士法人代表 目次 ここだけの話、今回はこんな話ですここだけの話、こんな症状・こんな事例です障害状態を認定する客観的な基準とは「ガイドライン」のマトリクス表「ギリギリ」とはど ...

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このガイドラインで、例えばうつ病による障害年金を決定する場合、日常生活の状況等を数値化したものをマトリクス表に当てはめて等級目安とします。

したがって、診断書の日常生活能力の判定や日常生活能力の程度のチェックの箇所が重視されるわけです。

ところが、「てんかん」の場合は、マトリクス表は使いません。

さきほど上で説明したAからDの「てんかん発作のタイプ」と頻度」の組み合わせで等級を判定する要素とされているためです。

これら2つの要素が、実際に出現している通り、診断書に記入されているかが重要になってきます。

ここで、

「てんかん」の診断書を精神科の医師に作成してもらえる場合あります。

「てんかん」は、「発達障害」や「知的障害」と併発しているケースも多いためです。

その時は、精神科の医師に作成依頼できます。

併発している場合は、「発達障害」や「知的障害」の内容もあるため、記入内容が多くなります。

そのため、「てんかん発作のタイプ」と「頻度」の記載が漏れていることもありますので注意が必要です。

また、

先ほど上で説明した”社会的活動能力の損減”については、診断書の就労状況日常生活能力や労働能力」の欄に記載してもらう必要があります。

そのため、この点は当社からしっかり医師に情報提供を行います。

さらには、当社で作成を代行する「病歴・就労状況等申立書」にも発作のためにできないことや日常生活で制限を受けていることがあれば、漏れないよう記していきます。

メモ

「病歴・就労状況等申立書」は障害年金請求のために必要な書類の一つで、発病から現在までの状況を時系列でまとめたものです。

例えば、発作のために車の運転ができなかったり、就労が継続しなかったり、日常生活に支障が生じている事情について聴き取りを詳しく行い、状況を把握します。

診断書について日常生活能力の判定や日常生活能力の程度のチェックの箇所を過剰に重視してしまい、無理に医師に修正を求めることはしません。

それよりも「てんかん発作のタイプ」と「頻度」の記載が漏れていないか、社会的活動能力の損減についての記載が抜けていないかを重視します

このようにして、当社では「てんかん」に対する障害年金の支援についても実績を増やしています。

ここだけの話、今回のまとめです

今回は、「てんかん」の障害年金請求について書いてみました。

ポイントは以下のとおり。

  • 服薬などの治療でてんかん発作が抑制されていると障害年金の対象にならない
  • 障害年金手続きを進める際には、てんかん発作のタイプ頻度社会的活動能力の損減について把握する
  • てんかんは、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象傷病になっていない
  • 他の精神の障害と診断書のチェックすべきポイントが違う

「てんかん」を発症する方は、1,000人に5~8人と言われ、発症する年齢も乳幼児から高齢者まで様々です。

当社への障害年金の相談も毎月のように「てんかん」の方から相談があり、決して珍しい病気ではありません。

「てんかん」による障害年金請求は、うつ病などと同じ「精神の障害」と同じように考えると、上手くいきません。

診療科の違い、認定基準、ガイドラインは対象外、など違いをしっかり把握し、相談者の状況に合わせた請求手続きを行わなければなりません。

そのためにも、当社では傷病の特徴や認定基準など知識、医師などへ説明の工夫などのスキルを高めるよう努力を重ねています。



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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表 

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。

© 2021 年金力養成講座みんなのねんきん