相談事例

もしかして不正受給?年金の家族手当と共働きの注意点とは

投稿日:2016年2月9日 更新日:

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文:みんなのねんきん上級認定講師治田茂浩

どんな事例?簡単に言うと・・

老後の厚生年金に加算される家族手当(加給年金)。対象となる配偶者自身も加算の条件を満たすと加算は止まります。共働きの世帯と家族手当の関係を事例で解説してみます。

こんな事例を考えてみましょう

Tさんは(株)O商事で40年サラリーマンを続けたあと65歳で定年退職しました。

65歳からは加給年金額が加算された老齢厚生年金を受け取っています。

年下の妻のRさんも60歳から老齢厚生年金を受け取りながら(株)O商事に勤めており、あと数年で定年退職となります。

Rさんはある日お友達のAさんからこう言われます。

A「ねぇ、Rさん。旦那のTさんには加給年金って加算されてる?」

チャーミー
20年以上厚生年金に入ると加算があるらしいからもらっているはずね

A「Rさん、あなた知ってる?あなた自身も20年以上厚生年金に入ると加給年金って止められちゃうのよ」

チャーミー
えぇ!!私来月で勤続20年の表彰されるのよ。

A「ダメよ~。急いで辞めなさい。辞表書いてあげるわね」

そうは言ってもRさんはすぐに辞めるわけにもいきません。

そうこうしているうちに勤続20年の表彰も終わり数カ月が経ちました。

しかし、Tさんの加給年金は加算がされたまま。

この間、息を殺して生活してきたRさん。

数えてみると厚生年金には今月で250カ月目の加入になります。

”不正受給”が頭によぎったまま、もう不安でなりません。

Rさんは思い切ってみんなのねんきん上級認定講師の治田社会保険労務士事務所に相談することにしました。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

厚生年金に20年以上加入すると、老後に受け取る厚生年金に家族手当として加給年金額が加算されます。

この加算額は配偶者自身も20年以上の厚生年金を受け取っていると停止される仕組み。

ところが事例の場合、2人とも20年以上加入した年金を受け取っているはずなのに加算が止まっていません。

こんなことってあるんでしょうか。また、不正受給となってしまうのでしょうか。

解説してみましょう

今回の解説者:治田茂浩講師

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まずは、このケースは不正受給ではありません。

安心してください。

年金を受け取りながら厚生年金に加入する場合の年金額を解説してみます。

加給年金額の加算は240カ月以上必要

老後に受け取る厚生年金には家族手当として加給年金額が加算されます。

その条件として、240カ月(20年)以上加入した実績が必要です。

ところが、対象となる配偶者が同じく240カ月以上厚生年金に加入した年金を受け取っていると、加算部分だけが止められてしまいます。

なぜなら、対象となる配偶者自身が20年以上加入の年金を受け取れるなら、それなりの保障になるからです。

”配偶者自身がそれなりの保障を受けられるならその間は加算を止めますね”

それが制度の考え方です。

(下に続きます)

現在在職中なら退職後にまとめて再計算される

「今月で250カ月」の加入期間となる。

にもかかわらず、配偶者の年金に加給年金額が加算されている。

こんな事態が起こりうるのか?

起こりえます。

年金を受け取りながら厚生年金に入る。

毎月毎月保険料を納めているわけだから、毎月毎月年金額が増額していく。

そういうわけではありません。

毎月毎月再計算していたら行政側の事務処理が大変。

そこで、

年金を受け取りながら厚生年金に加入する場合、そのベースとなる年金額は在職中は変えません(もちろん、在職老齢年金という制度で一部止まることがありますが)。

そして、

厚生年金の資格を喪失したタイミング(退職した時)か、65歳で制度が切り替わるタイミングで、権利が生じた後の期間をまとめて再計算することになっています。

Rさんの場合、自身の年金の権利が生じた時には240カ月に達していなかったはず。

「はず」ではなく、達していません。

そうでなければ、初めからTさんの年金に加給年金額が加算されることはないからです。

そして、

Rさんがその後に加入期間が240カ月に達したとしても在職中は年金額の再計算はない。

したがって、

Tさんの加給年金額はそのまま加算され続けることになります。

不正受給ではなく、後から返せということにもなりません。

20160209 加給年金と退職改定

(クリックで拡大)

Rさんが退職すると家族手当は停止となる

仮にRさんが「今月」退職したとします。

既に「250カ月」加入していることになりますから、年金額の再計算の結果、Tさんに加算されている加給年金額は停止となります。

事例の状態であれば、Rさんは少なくとも65歳まで在職していた方が有利です。

今回の事例まとめ

老後の厚生年金に加算される加給年金額について、ありがちな事例をまとめてみました。

  • 240カ月(20年)以上厚生年金に加入すると家族手当が加算される
  • 対象となる配偶者自身も240カ月以上の加入で家族手当は停止となる

これを前提として、

  • Rさんの年金の受け取り開始時点で240月未満であれば、 その後に加入期間が240月以上になっても、直ちにTさんの加給年金額は加算停止とならない
  • Rさんが退職して厚生年金が再計算されると、 Tさんの加給年金は停止となる。

という話でした。

年金を受け取りながら厚生年金に加入しても毎月毎月計算し直してくれるわけではない

そこがポイントです。

誤解があるところなので、是非知っておいてください。


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。

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治田先生

治田上級認定講師

社会保険労務士。日本年金機構の電話相談業務・窓口相談業務で培った知識を使い、制度の内容から手続まで広く年金に精通している。

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