過去の出題傾向からシモムーの感想
最後の技能応用問題は退職金にかかる税金と年金にかかる税金の話。
退職金ですから年金の話ではありません。
なのでちょっと苦手意識が働きますが恐れることはありません。
過去10回の出題はこんな感じです。
- 2024春 退職所得金額の計算 年金からの源泉徴収の計算
- 2023秋 退職所得金額の計算 年金からの源泉徴収の計算
- 2023春 退職所得金額の計算 年金からの源泉徴収の計算
- 2022秋 退職所得金額の計算 年金からの源泉徴収の計算
- 2022春 公的年金にかかる雑所得の計算・年金からの源泉徴収 退職所得金額の計算
- 2021秋 退職所得金額の計算 公的年金にかかる雑所得の計算
- 2021春 退職所得金額の計算 公的年金にかかる雑所得の計算
- 2020秋 退職所得金額の計算(勤続20年以下) 公的年金にかかる雑所得の計算 年金からの源泉徴収
- 2020春(模擬)退職所得金額の計算 公的年金にかかる雑所得の計算
- 2019秋 公的年金にかかる雑所得の計算 退職所得金額の計算
これまで以下の2問しか出ていませんでした。
- 退職所得金額の計算問題
- 雑所得の計算と源泉徴収の知識判定問題
1はさすが、銀行の窓口担当を対象とした試験であって毎回の出題が徹底されています。
退職金を預けてもらうセールスの中で税金がどれくらいかかるかという知識が必要なんでしょう。
2020秋は初出題!勤続20年以下のケースで出題がありました。
2は公的年金の話。
年金は数ある所得のなかで”雑所得”に分類されますが、”公的年金特有の雑所得”という扱いになっています。
これを計算せよという問題です。
2022秋からは、年金からの源泉徴収による所得税額の計算問題が出ました。
この計算問題は2級で出るものです。
以降、毎回同じ計算問題が出ています。
これからも継続しそうなので計算式の構造をしっかり押さえます。
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ここ注目!ここがポイントだ!
共通:所得額を出すための作業をするだけ
まず、
この問題に取り掛かる上で、わかっていなければいけないこと。
それは、
所得税を計算するための所得額を計算する
ということ。
ご存知の方は良いのですが、私が年金アドバイザーに最初に挑戦したころは、この問題で何をしているのか、よくわかりませんでした。
何をするのかわかれば、理解すべきこともわかります。
年金や退職金は、受け取った金額そのままに課税されるわけでなく、税制で認められれた控除額を引いて残った所得額に課税されます。
ですので、
所得額がわからないことには課税できない。
このテーマでは、課税されるための所得額を出す作業をしていくという認識を持ちましょう。
前半:退職所得金額の計算は最後に2分の1を忘れるな!
最初は退職金にかかる税金の計算問題。
課税対象となる退職金の金額(課税退職所得金額)は、退職手当等の収入金額から勤続年数に応じて計算した「退職所得控除額」を控除した残額の2分の1相当となります。
つまり、ここでは勤続年数がポイントになってきます。
2020秋より前は勤続年数20年超のケースでしか出題がなかったんです。
大卒からずっと勤めた会社を定年退職する → さぁ、退職金をどうする?
ということで、銀行に相談するわけですから、20年超のケースで出題するのは当然でしょう。
ところが・・
2020秋には勤続年数20年以下のケースが出て驚愕したものです(もちろん知識がなかったので私は撃沈しました)。
これからは20年以下の場合にも対応できるように準備しないといけません(しかし、過去10回で20年以下のケースはこの時だけです)。
考え方は以下のもの。
退職所得金額=①退職金から②退職所得控除額を引いた③その半分
この結果、出てきた退職所得金額に税率を掛けて退職金にかかる所得税が算出されるというわけです。
①退職金
これは問題文中に「退職一時金」として載っているものをそのまま使うだけです。
②退職所得控除額
勤続20年超の場合
800万円 + 70万円 ×(勤続年数※ ー 20年)
勤続20年以下の場合
40万円 × 勤続年数※
(※勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げ)
これらは問題文中に載っていないので頭に叩き込んで試験に臨むしかありません。
③その半分
①から②を引いて、最後に③半分にすると課税対象となる退職所得金額が出ます。
私の経験上、この③は要注意。
なぜか忘れてしまうことが多いからです。①から②を引いただけで満足してしまう。
①②③をこう覚える
そこで、私はこれまでの反省からこんな計算式に機械的に当てはめています(20年超の場合です)。
{退職一時金 ー 800万円 + 70万円 × (勤続年数 ー 20年)}
2
最初から分数の形にしておくということ。
これで2分の1忘れがなくなりました。
後半1:年金にかかる雑所得計算なら楽勝
雑所得を計算する問題は2022春を最後に出題はありませんが、いつ復活するかわかりませんので準備をしておきます。
雑所得問題も単なる所得額を出す作業
退職所得金額は他の収入とは別に税金計算をし、しかも上で検証した通りかなり優遇されています。
数千万円の退職金をもらっても、所得額は数十万円。そこに税率を掛けるわけですから。
一方、年金も優遇された税制になっていて、年金制度だけでみた雑所得計算をすることになっています。
最初に説明したとおり、この問題も所得額を出す作業。
それが退職金か年金かが違うだけです。
「公的年金等」は企業年金も含む
所得額の計算は、まずは収入額を把握するところから。
事例では必ず、公的年金と私的年金である企業年金も受け取る設定になっています。
ここでの計算はこの企業年金も合算することを忘れてはいけません。
この問題が出る時は「企業年金基金」ばかりなんですが、現実では確定拠出年金や国民年金基金なんかも合算します。
控除額は表に当てはめるだけ
年金額の合算を事例の中にある表に当てはめるだけ。
ひっかけとして、「基礎控除」や「配偶者控除」が載っていることがありますが無視します。
これらは年金の雑所得を計算するうえでは関係が無いからです。
最低額を忘れるな!
65歳以上になると、公的年金等控除額に最低額(110万円)が設定されているので忘れないようにします。
例えば、計算した結果、控除額が100万円であっても110万円に引き上げて年金総額から引き算します。
私も最低額を忘れて、上の例ですと100万円を引いてそれを答えとし、間違えてしまったことがあります。
2022春はまさにこの引掛けでした。
後半2:源泉徴収の計算問題は2級レベルの高難度
2022秋からは2級で出題される年金から天引きされる2ヶ月分の所得税を計算せよという問題が続いています。
年金額から①控除額を差し引いて、②残った部分に税率を掛けて算出します。
以下の架空の事例をもとにして、手順を確認していきましょう。
- 老齢厚生年金:135万円(加給年金額含む)
- 老齢基礎年金:78万円
- 企業年金基金:60万円
- 公的年金等控除・基礎控除相当:年金月額×25%+65,000円(135,000円未満なら135,000円とする)
- 配偶者控除:32,500円
手順1 控除額を計算する
年金額から控除されるものは2つ、”公的年金等控除・基礎控除相当”と”配偶者控除”。
この2つを計算するところから始めます。
メモ
実際には社会保険料(介護保険など)の控除や、配偶者以外の扶養親族の控除もありますが、年アド試験ではこれらは考える必要はありません。
問題文中に公的年金等控除・基礎控除相当を算出するための表があります。
この表に当てはめるだけです。
注意点は2つ。
- 表は1ヶ月あたりの金額なので事前に年金額を12で割っておく
- 控除額の下限と比較することを忘れない
上の事例で考えると、老齢厚生年金と老齢基礎年金を合算して、年金月額は177,500円。
出題は「日本年金機構から支給される」とあるので、企業年金基金は完全に無視します。
177,500円×25%+65,000円 = 109,375円
最低でも135,000円を控除額として認めてもらえるので、ここで109,375円としたら誤りです。
結果的に配偶者控除と合算して、167,500円(135,000円+32,500円)を年金月額から引いてもらえるわけです。
手順2 年金額から控除額を引く
つぎに、
年金月額から先程の月額控除額を引きます。
177,500円 ー 167,500円 = 10,000円
2ヶ月分の年金額で考えないといけないので、この金額を2倍して、20,000円。
この金額が課税対象の所得額となります。
手順3 税率を乗じる
最後に、
20,000円に5.105%を掛けて完成。1,021円が求める答えとなります。(円未満の端数は切り捨てる)
”5.105%”は問題文中どこにも記載が無いので暗記して臨まないといけません。
まとめます
前半の退職所得控除額は鉄板の問題。
分数の形にして2分の1を忘れないように。
後半は現在の傾向からすると、源泉徴収税額の計算問題が続くのではないかと思います。
一見、難しく思えるのですが、手順が決まっているので、一連の流れを押さえておけば対応可能。
手順通りに考えれば難しくはないので逆に得点源にしたいテーマです。
シモムー
みんなのねんきん主任講師