何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
寡婦年金と死亡一時金について支給要件や金額、併給の知識が問われます。
制度的には理解しやすい寡婦年金と死亡一時金。
舐めてかかると得点できません。
何が難しいんでしょう。
過去の正解となった知識から傾向を探ってみます。
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過去10回の正解となった知識
- 2024秋 寡婦年金の支給要件10年以上には合算対象期間は含まれない
- 2024春 遺族厚生年金と死亡一時金は併給される
- 2023秋 寡婦年金は10年以上婚姻関係がある妻でなければ支給されない
- 2023春 寡婦年金と死亡一時金は併給されない
- 2022秋 遺族基礎年金を受給したことがあっても寡婦年金は受給できる
- 2022春 老齢基礎年金を受給している者が死亡した場合は死亡一時金は支給されない
- 2021秋 寡婦年金は夫の第1号期間における保険料納付済、免除期間が10年以上で支給される
- 2021春 死亡一時金を受け取るための保険料免除期間には全額免除期間は含まれない
- 2020秋 死亡一時金は故人の納付状況により金額が変化する
- 2020春(模擬)遺族厚生年金と死亡一時金は併給される
よく正解となるものを分類すると
- 死亡一時金の支給要件
- 寡婦年金の支給要件
- 死亡による給付の相互の併給関係
の3つが重要。これらから対策を立ててみましょう。
出題傾向から年金制度を考える
1 死亡一時金は掛け捨てを救済する制度
死亡一時金の支給要件
死亡一時金は掛け捨て救済の制度。
自身で保険料を負担してきたのに、年金に結びつかずに亡くなってしまった。
そこで、
ご遺族にいくらか返しましょうというもの。
国民年金制度の中で自身の財布から保険料を負担しているのは第1号被保険者だけ。
第2号は厚生年金制度が基礎年金の拠出金を捻出している構造。
第3号はそれこそ自身では保険料を負担していません。
したがって、死亡一時金を受け取るための保険料納付は、
掛け捨て感が他とは違う第1号被保険者期間中の納付だけに限定しています。
2号や3号の期間は対象になりませんのでそこが問われます。
国民年金の第3号被保険者期間も含まれる
という形で正解を作ります。
また、一部免除の期間も支給要件にカウントされます。
例えば、半額免除期間は理屈上半額分を納めているからです。
その理屈からいえば、全額免除期間は支給要件にカウントされないのは当然です。
2021春はその点で正解になりました。
掛け捨てを救済するという趣旨ですので、既に老齢基礎年金を受給していて、掛け捨てにならない場合は、死亡一時金は受給できません。
これは障害基礎年金であっても同様です。
この点が2022春で正解となりました。
死亡一時金が増額する場合
2023秋には初登場の肢がありました。
付加保険料を3年以上納めていると8,500円が加算されるというもの。
私の記憶の限り、3級では初めての出題なんじゃないかと思います。
数字の関係なので引き続き出題があるかもしれません。きちんと押さえておきます。
2024秋にも並んでいました。
2 寡婦年金は受給資格期間10年でもらえる
寡婦年金は掛け捨て救済の趣旨
寡婦年金の死亡した夫の支給要件は、
第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上ある
ことが必要。
遺族基礎年金・遺族厚生年金の長期要件が25年を要求していますが、こちらは10年なので注意です。
2021秋は「第1号被保険者としての被保険者期間に係る」という文言が抜けていて、誤りに。
数字にしか気が回らなかったので、2021秋は試験会場でかなり悩んだものです。
(念のため、他の試験回の表現を見てみたら、確かに「第1号被保険者としての」と書かれており、納得せざるを得ませんでした)
2024秋は10年に合算対象期間が含まれるか否かという出題がありました。
合算対象期間は保険料を納付していないので掛け捨てが問題になりません。
したがって含まれないという結論は、趣旨から考えればわかるはずです。
死亡一時金も寡婦年金も掛け捨て救済という趣旨を改めて頭に叩き込みます。
婚姻期間について
2023秋には寡婦年金でも初登場の肢がありました。
支給要件として夫婦の婚姻期間が10年以上必要ですが、「婚姻期間にかかわらず」という形で誤り(正解となりました)。
こちらも数字なので引き続き出題があった時に備えます。
3 寡婦年金・死亡一時金・遺族基礎年金・遺族厚生年金の関係を整理
国民年金制度の死亡に関する給付はその併給関係がわかりづらい。
これら併給関係の知識が3肢程度並んでいるので非常に重要。
そこで、出題に絡んだこれらの関係をまとめてみます。
1 寡婦年金と死亡一時金の関係
これは、どちらかを選ぶと、もう片方の権利は生じません。
両方の権利が生じていて、そのどちらかを選ぶという関係にはありません。
例えば、
50歳で夫が亡くなった。
60歳になるまで寡婦年金は待てないから今すぐ死亡一時金が欲しい。
ここで、
死亡一時金の手続きをとれば、寡婦年金の権利が生じません。
逆に寡婦年金の手続きをとれば、死亡一時金の権利が生じません。
寡婦年金を選んだのなら、60歳時に停止が解除されるまで寡婦年金を待たないといけません。
寡婦年金の権利自体は生じているので全額停止となった年金証書が届きます。
いずれかを選択するという点で、2022春、2022秋、2023秋、2024秋は選択肢に並んでいました。
2023春で正解となっています。
2 寡婦年金と遺族基礎年金の関係
2−1 寡婦年金と遺族基礎年金は選択関係
例えば、
夫が亡くなって62歳で寡婦年金と遺族基礎年金が生じた。
寡婦年金と遺族基礎年金はどちらの権利も生じます。
どちらも権利があるという点で”1”とは異なります。
が、併給はされません。
どちらかを選んだうえで、どちらかが全額停止になります。
まぁ普通は
夫の老齢基礎年金×4分の3 vs 最低でも1人の子の加算ありの遺族基礎年金
となりますから、寡婦年金を選ぶ奥様はいないと思いますが・・。
2−2 遺族基礎年金を受給したことがあっても寡婦年金をもらえるか?
よくある出題として
遺族基礎年金を受給したことのある妻
があります。
2019年秋、2022秋はこれが正解に。
つまり、
過去に遺族基礎年金をもらったことがある場合は寡婦年金もらえるのか?ということです。
これは可能です。
例えば、
40歳で夫が亡くなり、遺族基礎年金をもらっていた。
子供が全員、高校を卒業して遺族基礎年金は58歳で失権した。
その後、59歳まで停止されていた寡婦年金を60歳からもらう。
繰り返しますが、寡婦年金と遺族基礎年金は両方共に権利自体は生じます。
60歳台前半で支給時期が重なるとどちらかが停止となりますが(2−1の場合)、遺族基礎年金が既に失権しているので寡婦年金の受け取りが可能となるわけです。
3 寡婦年金と老齢基礎年金の関係
これは、寡婦年金が失権して、老齢基礎年金だけを受け取ります。
寡婦年金と老齢基礎年金がかぶるということは老齢基礎年金を繰り上げるしかありません。
すると、寡婦年金の権利が消えてなくなります。
これは特殊ですね。
併給調整の一般原則からいけば、「一人一年金の原則」で片方を停止させれば良いだけだと思うんですがそうではありません。
敢えて、「寡婦は失権だ!」となっています。
老後の年金が出るまでのつなぎとして意味のある寡婦年金。
敢えて老後の年金を先取りするなら寡婦年金の意味ないでしょということで失権させるわけです。
繰り上げても老齢基礎の方が金額が高いなら意味がなくはありませんけど。
例えそうだとしても、65歳までは寡婦年金で我慢して65歳からは老齢基礎年金を受け取るのが一般的だと思います。
4 死亡一時金と遺族厚生年金の関係
両方もらえます。
これは知識が浅ければ”あれ?どうだっけ?”となるところなのでしっかり頭に入れます。
考えてみると、死亡一時金と遺族厚生年金は国民年金と厚生年金の別々の制度からのお金です。
しかも一方は掛け捨て救済の趣旨で、一方は生活保障の趣旨。
”制度も違うし、趣旨も異なるので両方もらえてしかるべき”と理解できます。
この知識は非常によく出題され、正解になることも結構ありますから注意です。
今回はこれが答えになる!
正解の傾向にルールが見出だせません。
2020秋はこれまで聞いたこともない死亡一時金の金額に関する知識が正解となりました。
2021春は死亡一時金と全額免除期間の知識が正解に。
2021秋は”第1号被保険者”としての保険料納付済期間ということで、1号が抜けていて正解に。
2022春は老齢基礎年金受給者は死亡一時金を受け取れないことが正解に。
2023秋は3肢も新作の選択肢が登場。
最近は過去に見たことがない新しい肢で正解が続いています。
とはいえ、並んでいる肢は毎回ほぼ同じです。
- 死亡一時金の支給要件
- 寡婦年金の支給要件
- 死亡による給付の相互の併給関係
特に、「3」に関しては必ず並んでいますから絶対に押さえないといけません。
さて、次回はどうでしょう。
予想は難しいですが、併給関係は正解になりやすいので以下の表で整理をしておいてください。(赤字が試験で問われる論点です)
死亡一時金 | 寡婦年金 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
死亡一時金 | どちらか選択したら他は権利が生じない | 死亡一時金は出ない | 併給 | |
寡婦年金 | 選択(時期がズレれば両方受給可) | 選択(時期がズレれば両方受給可) | ||
遺族基礎年金 | 併給 | |||
遺族厚生年金 |
シモムー
みんなのねんきん主任講師