何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
老齢厚生年金に加算される加給年金額について幅広く出題がされています。
「配偶者加給年金額」で出題されるので子に係る加給年金額の出題はありません。
正解の知識を分類してみると以下の3つに分けることができます。
- 加算の条件
- 加算の停止
- 特別加算
この3つの中から繰り返し同じテーマで正解を作る傾向にあります。
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過去10回の正解となった知識
- 2024秋 配偶者の年収要件は年収850万円未満
- 2024春 2以上の種別がある場合でも一の種別の老齢厚生年金に全額が加算される
- 2023秋 配偶者が障害等級3級の障害厚生年金を受給している場合は加算停止
- 2023春 配偶者の年収要件は年収850万円未満
- 2022秋 受給権者の生年月日に応じた特別加算がある
- 2022春 2以上の種別がある場合でも一の種別の老齢厚生年金に全額が加算される
- 2021秋 配偶者が障害等級3級の障害厚生年金を受給している場合は加算停止
- 2021春 配偶者が20年以上加入した老齢厚生年金を受給している場合は加算停止
- 2020秋 配偶者の年収要件は年収850万円未満
- 2020春(模擬)受給権者の厚生年金加入が原則20年以上必要である
傾向から正解は3テーマを繰り返していることがわかります。
論点は少ないので、正解が3テーマしか無いというのもうなずけます。
2022春は初めて被用者年金一元化に関する出題があり、以後継続的に出題中です。
被用者年金一元化といっても、ルールを知っていれば簡単なので恐れることはありません。
出題傾向から年金制度を考える
頻出の3つのテーマ(条件、停止、特別加算)を解説してみましょう。
加算の条件:本人と配偶者、両者の条件を満たすこと
加給年金額は老齢厚生年金を受給する本人とその配偶者、両者の条件を満たすことが必要です。
非常に基本的なことですが、案外パッと出てこないかもしれません。
ここで整理しておきましょう。
本人の条件1 20年以上の加入実績
原則として20年以上の厚生年金の被保険者期間が必要です。
誤りの作り方としては、
被保険者期間にかかわらず
という具合です。
この”20年”は、種別が違っても合算して考えます。
例えば、国家公務員の期間(第2号厚生年金被保険者期間)が15年、民間企業勤務の期間(第1号厚生年金被保険者期間)が15年の場合、それぞれの種別では20年未満ですが、両者の被保険者期間を合算して30年あるので、本人の条件1を満たします。
また、
この場合の加算は1つの実施機関の老齢厚生年金に加算し、他方の実施機関の老齢厚生年金には加算しません。
その加算のルールは、以下のとおりで1から優先的に検討します。
- 加算開始時期が早い方
- 被保険者期間が長い方
- 1号から4号の順
定額部分が加算される特例に該当しないなら、基本的に「2」で決するでしょう。
2でも駄目なら、1号から4号の順で加算先を決定します。
上の例では、2号と1号が15年同士なので「2」では決まらず、第1号厚生年金被保険者期間を有する老齢厚生年金に加算することになります。
本人の条件2 定額部分もらえる or 65歳以上
原則は65歳からの老齢厚生年金受給時に加算される。
定額部分が支給される特例に該当すれば65歳前でも受け取れます。
ただし、
あまりに基本的にすぎるのか、正解になる知識ではありません。
配偶者の条件 受給権者により生計維持している65歳未満の配偶者
配偶者は受給権者によって生計を維持している65歳未満でなければいけません。
生計維持 = 生計同一 + 年収850万以上が今後も続かない
これが生計維持の考え方です。
年収条件で誤りの肢を作る傾向があります。
加算時に850万円以上でもおおむね5年以内に基準内に収まるならOKという例外もあるのでそこまで気を配ります。
2019春秋、2020春(模擬)、2021秋、2022秋、2023秋、2024春、2024秋は
4年後に定年退職することが明らか
という出題がされました。
おおむね5年以内なので条件を満たします。
2020秋、2023春は
年収が130万円未満
という出題がされました。
数字を変えることはあまりないのでちょっと珍しいタイプです。
850万円未満ですから誤っていますね。
加算の停止1:配偶者がそれなりの保障を受けるなら加算は停止
夫が加給年金額の加算がされるようになった時に妻が障害厚生年金を受け取っているとどうなるでしょう。
夫の加算の条件は満たしますが、受け取りはできません。
加算の権利自体はあるものの、”支給額0円”という全額停止状態になります。
この”障害厚生年金”は3級も含みます。
等級に関係なく、配偶者が障害厚生年金受給者で老齢厚生年金受給者の加給年金は停止となります。
そもそも加給年金額を加算する趣旨はこう。
夫婦の一方が老後の年金をもらいだしてから、2人が揃って65歳になるまでの間、世帯単位での所得保障が不完全なので保障してあげよう
3級は配偶者加給年金額の加算はありませんが、300カ月みなしや最低保障額の規定もあります。
とすれば、
3級でもそれなりの所得保障を受けているわけですから加算停止の対象とするわけです。
加算の停止2:夫婦互いに20年の条件を満たせば互いに停止
”夫婦互いに20年以上の被保険者期間のある老厚を受給していると加給年金どうなる?”
という出題もあります。
夫婦互いに加給年金の条件を満たせば互いに加算は支給停止となります。
理由は上の障害年金と同じ。
2019春、2021春、2021秋、2023春、2024春も出題されています。
2024秋は配偶者の厚生年金の被保険者期間が20年以上あっても、実際に特老厚の権利発生前なら加算されるという出題がありました。
これはそのとおり。
20年以上の特老厚の権利が生じている場合に、互いに加算停止となります。
「20年」だけに目が行きがちなので注意です。
特別加算:”受給権者”の生年月日を意識せよ
加給年金額には特別加算がされます。
なぜか。
加給年金額による加算は夫婦が揃って65歳になるまでの世帯単位での不完全な所得保障を補うもの。
ここで、年金制度の歴史は給付水準切り下げの歴史。
報酬比例部分の乗率の変化を見るとわかります。
基本の年金額である本体部分を切り下げられる(乗率が低くなる)世代に配慮する必要がある。
このまま本来の加給年金額だけではこれまでの世代と保障額の差が出てしまう。
そこで、
昭和9年4月2日以後に生まれた世代には特別加算をすることになっています。
そのため、
年金を受け取る受給権者の生年月日で判断し、一定の人には加算を手厚くするんです。
配偶者の生年月日に応じた特別加算がある
↑わかりやすい誤りの作り方をしてきますから、徹底的に意識して受給権者の生年月日であることを忘れてはいけません。
2017秋、2019秋、2022秋は見事にこの論点が正解となりました。
ちなみに、
年金額の制度設計上、特別加算で補填をしないといけないのが昭和9年4月2日以後生まれの方になるんだそうです。
今回はこれが答えになる!
正解となる3つのテーマ。
- 加算の条件
- 加算の停止
- 特別加算
それぞれのテーマでよく正解になるものをしっかり押さえます。
加算の条件に関して覚えるべきことは、
- 本人の条件:厚年被保険者期間20年以上、2以上の種別があれば合算(一の老厚に全額加算)
- 配偶者の条件 受給権者により生計維持(年収850万円未満、5年以内に年収減るならOK)している65歳未満
加算の停止に関して覚えるべきことは、
- 配偶者障害厚生受給(3級であっても)で加算停止
- 夫婦互いに厚年20年の老厚の権利が生じていれば互いに停止
特別加算に関して覚えるべきことは、
- 受給権者(≠配偶者)の生年月日に応じた特別加算
整理してみるとそんなに問われることは多くないとわかるはず。
以上の論点を覚えてこのテーマを突破しましょう。
シモムー
みんなのねんきん主任講師