何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
確定給付企業年金に関するあらゆる知識が網羅的に出題されています。
確定拠出年金のテーマと同様、公的年金ではないので苦手になりそうなテーマ。
過去の傾向を踏まえた出題されるものだけを頭に入れます。
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過去10回の正解となった知識
- 2024秋 加入者が拠出した場合でもその拠出相当額の運用指図はできない
- 2024春 確定給付企業年金と企業型確定拠出年金は同時に実施できる
- 2023秋 略称は「DB」である
- 2023春 加入者が拠出した場合でもその拠出相当額の運用指図はできない
- 2022秋 母体企業とは別の法人が運営主体となるのが基金型
- 2022春 確定給付企業年金と企業型確定拠出年金は同時に実施できる
- 2021秋 母体企業とは別の法人が運営主体となるのが基金型
- 2021春 必須給付と任意給付の区別
- 2020秋 加入者が掛金を拠出するためにはその加入者の同意が必要である
- 2020春(模擬)必須給付と任意給付の区別
2012年に初登場したこのテーマ。
途中で出題されない時も2回ありましたが、ここ直近10回は出題が続いています。
出題傾向から年金制度を考える
”入る””納める””もらう”という3分野に分けて正解に直結する解説をしていきます。
確定給付企業年金は確定拠出年金と根本的にどう違うのか
将来の給付内容を約束している。
確定拠出年金との最大の違いはここ。
したがって、
運用がうまくいかなかった場合、母体の事業主が穴埋めをしないといけません。
2020秋、2022春、2022秋はこの点がそのまま正しい肢として出題。
誤りを作るケースは「加入者が追加で掛金を拠出」と出題されたことがあります。んなわけありません。
ちなみに、
確定拠出年金と異なり、個人で加入する”個人型”がありません。
企業が設立する純粋な企業年金ということで”企業”という名前が入っています。
確定給付企業年金の”入る”
規約型と基金型の2種類あり
確定給付企業年金は規約型と基金型の2つがあります。
両タイプの大きな違いは年金資産の管理実務を別法人に移すか否かということ。
別法人に移して運営する場合は企業年金基金を設立します。
これが基金型。
どちらのタイプも規約を作るのは同じですし、どちらも”資産管理運用機関”との間で信託契約等を結んで運用します。
事業主と資産管理運用機関との間に別法人を噛ませるか否かがタイプの違いと言えます。
2020秋、2023春も基金型について出題があり、2021秋・2022秋には正解となりました。
2019春秋は、紛らわしい肢が出題されたので注意喚起。
規約型について、
母体企業の外で年金資産を管理
します。
「企業の外」で管理するから、基金型の話だ!
というわけではありません。
規約型であっても、年金資産は母体企業の外で、つまりは”企業の財布と別にして”管理しないといけません。
年金管理の運営を別法人にするなら基金型、そうでないなら規約型。
年金資産はどちらの型であっても母体企業とは切り離して管理しないといけないということです。
同時に企業型確定拠出年金の導入が可
確定給付企業年金と企業型の確定拠出年金が相容れない関係ではありません。
両方導入することが可能です。
しかし、両方導入するメリットはあるんだろうか?
こんなケースで両方導入します。
ある時点でこれまでの企業年金(例えば厚生年金基金)をやめた。
これまで積み立ててきた原資は新しく設立した確定給付企業年金に移す。
しかし、
企業が運用の責任を負う確定給付型は今後は取りたくはない。
そこで、
新しく確定拠出年金を作り、これから将来の年金は確定拠出で対応する。
過去の分は確定給付で、将来の分は確定拠出でという2本立てを可能とする。
こういう形を取るために両方を導入することがあるわけです。
2022春はこの点、両方実施不可(誤り)として正解。
2023秋も選択肢の1つに並んでいました。
2024春は正解となっています。
事業主が共同で実施することが可能
2021春、2021秋には事業主が共同で実施できるのか?という出題がありました。
できます。
条文には
この法律において「確定給付企業年金」とは、厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して、次章から第十三章までの規定に基づいて実施する年金制度をいう。
(確定給付企業年金法 第2条第1項 太字は筆者が編集)
このように直接そのことが書かれています。
2022春はこの点、「規模の制限はなく」と出題されましたが、たしかに◯◯◯人以上などの制限はありません。この点も頭に入れておきます。
確定給付企業年金の”納める”
掛金は事業主が拠出が原則
掛金は原則事業主が拠出します。
将来の給付が退職金との位置づけとすれば、事業主が拠出するのが普通でしょう。
それを、規約の定めで加入者自身も拠出することも可能です。
ただ、加入者の同意が必要な点は注意。
ですので規約で定めたとしても加入者が拠出するかどうかは任意なわけです。
2019春、2020秋はこの点が正解となりましたがちょっと難しかったです。
2020春(模擬)2021春、2021秋、2023秋、2024秋もこの点の肢が並んでいました。
最近は重要な肢と化しています。
このように加入者自身も拠出することで、労使で協力して退職金を充実させることができるわけです。
そして、加入者が掛金を拠出すると”生命保険料控除”の対象になります。
これは、税制のテーマでも出てきましたね。
さらに、2021春、2024春には加入者が同意して掛金を拠出した場合でも、「運用指図はできない」との出題がありました。
2023春、2024秋は「運用指図ができる」(誤り)として正解。
加入者自身が運用の指図ができるのは確定拠出の方です。
確定給付企業年金の”もらう”
必須給付は老齢と脱退
必ず給付しなければいけないのは老齢給付金と脱退一時金だけです。
障害給付金・遺族給付金は規約で定めた場合になります。
かつては、この違いが正解になることが多数。
毎度肢の一つには並んでいたのですが、最近は選択肢に並んでいることもなくなりました。
他にも気をつけたい”もらう”の知識
正解の肢以外にも以下の知識が並んでいることがあります。
正誤を判定できるようにしておきましょう。
- 老齢給付金の支給要件として20年超の加入者期間の定めはできない
- 年金給付の支払期月は、毎年1回以上定期的であること
- 原則として60歳以上70歳以下の規約で定める年齢に達したら支給する
- 加入者期間の要件を満たせば60歳未満で、実施事業所に使用されなくなれば老齢給付金を支給することあり
- 老齢給付金の繰下げ申出可、繰上げの仕組みはない
2017秋には1について「10年」として正解になりました。こういう誤りの作り方は初めてなんじゃないかと思います。
2019秋には2について「2カ月に1回、偶数月」に支払いなさいという出題。法律の条文上は「毎年1回以上」で「一定の時期」であることしか規定がありません。
2021秋は3について「60歳以上70歳以下」という出題がありました。かつては65歳以下というルールでしたが、2020年に70歳に引き上げられています。
2016年秋は4が「在職中」だけど給付できるか?というものがありました。
確定給付企業年金が退職金の運用なわけですから、在職中なら無理です。
2024春は5について、繰上げできない点が出題されました。繰下げはできることとセットで押さえておきます。
今回はこれが答えになる!
このテーマは公的年金とは違うので苦手意識が生じやすいところ。
そこで、
過去に登場した”入る・納める・もらう”の分類で正解になった知識だけは最低限整理しておくべき。
- 入る:事業主が主体となる規約型と別法人が主体となる基金型の違い
- 納める:原則事業主が掛金納付 規約で加入者も同意のうえ拠出可能
- もらう:老齢給付と脱退一時金が必須給付、障害・遺族は任意給付
ここ最近は出題の内容が同じようなもの、かつ、容易なものが続いています。
もしかしたら、近々出題が消えるかもしれないと思いつつ、その出題について注視しています。
シモムー
みんなのねんきん主任講師