何が出題されている?
出題形式:正しいものを選択
中高齢寡婦加算の支給要件と金額に関する知識が問われます。
難しい問題です。
数少ない「正しい」ものを選べ問題だからです。
4つの誤りを指摘できないと得点できない。
新しい論点で正解を作る傾向もあるのでやっかいです。
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過去10回の正解となった知識
- 2024秋 加算額は遺族基礎年金の年金額の4分の3相当額
- 2024春 遺族基礎年金受給中は停止となる
- 2023秋 夫死亡時に子のない40歳以上65歳未満の妻に加算される
- 2023春 初診日から5年以内の死亡の場合、加算のための被保険者期間の長短は不問
- 2022秋 夫死亡時に子のない40歳以上65歳未満の妻に加算される
- 2022春 初診日から5年以内の死亡の場合、加算のための被保険者期間の長短は不問
- 2021秋 遺族基礎年金受給中は停止となる
- 2021春 加算額は遺族基礎年金の年金額の4分の3相当額
- 2020秋 夫死亡時に子のない40歳以上65歳未満の妻に加算される
- 2020春(模擬)被保険者死亡の場合、加算のための被保険者期間の長短は不問
正解の知識は主に3つ。
- 夫の要件:短期要件か長期要件かそれぞれで要求される被保険者期間の違い
- 妻の要件:夫死亡時に40歳以上65歳未満の子のない妻に加算
- 金額:遺族基礎年金の4分の3相当額、遺族基礎年金との併給関係、停止になる場合
まずは要件面と金額面にわけて知識を押さえます。
出題傾向から年金制度を考える
中高齢寡婦加算の夫の条件
加算の条件として短期要件は不問、長期要件は要20年
中高齢寡婦加算の要件が厚生年金被保険者の死亡と受給権者の死亡でなぜ違いがあるんでしょう。
私なりの理解を披露します。
年金制度は寡婦に対しては手厚い保障を考えています。
専業主婦がたくさんいる時代に作られた制度だからです。
ですので、
寡婦自身が老後の年金を受け取る65歳までは遺族年金に一定額を加算することによって保障を手厚くします。
とすれば、亡くなった人の被保険者期間の長短に関係なく加算するのがスジでしょう。
寡婦を保護するのが目的なら夫の期間は関係無いからです。
ですので法律の条文を読むと、”原則加算する”とあります。
ところが、”長期要件の場合に限っては被保険者期間20年以上必要だ”と言っています。
”原則は加算する。例外として長期要件では20年以上を要する”
この違いはなんでしょう。
長期要件は主に既に老後の年金を受け取り中の人が亡くなった場合。
妻は遺族年金という形で夫の老後の年金を代わりに受け取って保障を受けることになります。
ここで、
仮に夫が被保険者期間が20年以上あればその老齢厚生年金に加給年金が加算されていたはず。
20年なければ加算はされていなかった。
つまり遺族年金を長期要件で受け取る場合は、
”夫の老後の年金を代わりに受け取るなら、そこに加算されたであろう加給年金の考え方を遺族年金でもするよ。だって既に夫が受け取っていたものを代わりに受け取るんでしょ。”
ということ。
純粋に寡婦を保護するための性格(短期要件)か、夫の老後の年金を代わりに受け取る(長期要件)性格か。
この違いが加算要件に現れていると考えます。
結論、
- 受給権者の死亡(長期要件)では加給年金の要件(原則20年以上)が必要
- 厚年被保険者の死亡(短期要件)では原則どおり期間の長短は要求しない
ということになります。
ここの知識は必ず選択式に並んでいるので確実に理解します。
ここで、
2019秋、2022春、2023春は、初診日から5年以内の死亡の場合という短期要件が出題されて正解となりました。
要は短期か長期かの判断ができるかどうかだけです。
中高齢寡婦加算の妻の条件
受け取る妻は夫死亡時に40歳以上65歳未満であること
中年の境目はどこにあるか。
加算の境界線は夫死亡時に妻40歳以上です。
死亡時に40歳未満で加算がなかった。その後40歳になったので加算開始!なーんてことはありません。
ただ、
子がいて40歳時に遺族基礎年金を受け取っているなら夫死亡時に40歳未満でも対象になります。
遺族基礎年金と中高寡婦加算の関係
ここで遺族基礎年金と中高齢寡婦加算の関係をまとめてみます。
加算の条件面と金額面で遺族基礎年金の受給権があると、中高齢寡婦加算は影響を受けます。
- 加算の条件面:夫死亡時妻が40歳未満でも加算条件OK
- 金額面:遺族基礎年金がもらえるなら加算停止
1と2の流れを図解してみました。
本来であれば、夫が死亡した際に妻が40歳未満なので中高齢寡婦加算は無いはずです。
そこで、40歳到達時に同時に遺族基礎年金を受給しているなら、加算の条件は満たすことにします(加算の条件面)
条件が満たせたら次は金額はどうかという話になるのですが、遺族基礎年金はかなりの高額ですから、中高齢寡婦加算との併給は許さないとなります(金額面)。
遺族基礎年金受給によって、中高齢寡婦加算の条件面で有利になりますが、金額面ではそうはならないということです。
そして、遺族基礎年金が失権すれば中高齢寡婦加算の停止は解除されて、晴れて加算開始となるわけです。
2019春、2020春(模擬)、2021春、2022春は”併給される”として誤りでした。
2020秋は「遺族基礎年金を受給したことのある妻」はもらえない、という出題でした。
そんなことありません。ただし併給はできませんから。
2023秋は遺族基礎年金によって中高齢寡婦加算が加算されない場合は、”生涯加算されない”として誤り。
上の図のとおり、遺族基礎年金が終われば停止は解除されるので加算がされるからです。
これからも遺族基礎年金と加算の条件面・金額面の関係は整理しておくべきです。
妻が65歳に達するまで加算
これは理由を説明するまでもないですね。
自分自身の老後の年金がもらえるようになるからです。
2018春、2019秋、2020春(模擬)、2021秋は「65歳以上」ならもらえるという出題が!(んなわけない)
その後65歳になると、生年月日次第で経過的寡婦加算を受け取りますが、なぜか、この経過的寡婦加算は出題がありません。
婚姻関係の期間
10年必要?
それは寡婦年金の話であって、中高齢寡婦加算には無関係です。
2024秋に初めてこの点で出題がありました。
中高齢寡婦加算の金額
加算額は遺族基礎年金の4分の3相当額
あまり正解になることはありませんが、この「4分の3」も押さえておきます。
3分の2に相当する額
として誤りを作ります。2020春(模擬)、2020秋、2021秋、2022春、2022秋、2023秋もこの形。2021春は久しぶりに正解になりました。
しばらく時間があいて、2024秋にも正解となりました。
遺族厚生年金も報酬比例額の4分の3、寡婦年金も老齢基礎年金として計算した額の4分の3。
死亡関係の年金額は4分の3であることをセットにして押さえます。
また、
2024春は金額について「受給権者の生年月日によって異なっている」という出題がありました。
中高齢寡婦加算は人により金額が変わることはありません。みんな同じ金額です。
中高齢寡婦加算が停止になる場合
中高齢寡婦加算が停止になる場合は上で説明した遺族基礎年金を同時に受給する場合しかありません。
にもかかわらず、
(妻)が厚生年金の被保険者であっても
という形で、妻が厚生年金の被保険者であると加算が無いとか停止になるとかを匂わせる肢が並んでいます。
そのような在職老齢年金のような仕組みはありません。
遺族基礎年金さえなければ、65歳までは継続して中高齢寡婦加算は受給できます。
2019春は私が知る限り初めてこの点が正解となりました。
今回はこれが答えになる!
他のテーマでもそうなのですが、最近は敢えてこれまでの傾向とは違うものを正解にしようという意図が見えます。
この中高齢寡婦加算も同じです。
ただ、
頻出の3論点は徹底理解。
- 夫の要件:短期要件か長期要件か、それぞれで要求される被保険者期間の違い
- 受給権者の死亡(長期要件)では加給年金の要件(原則20年以上)が必要
- 被保険者の死亡(短期要件)では原則どおり期間の長短は要求しない
- 妻の要件:夫死亡時に40歳以上65歳未満の子のない妻
- 金額:遺族基礎年金の4分の3相当額、遺族基礎年金と併給不可、妻被保険者でも停止なし
正しい肢を選ぶ必要があるので、この3つの知識をしっかり整理して4つの誤りを判定して消去するしかありません。
シモムー
みんなのねんきん主任講師