どんなニュース?簡単に言うと
2020年に改正された年金制度改正法では、公的年金(基礎年金、厚生年金)の他に確定拠出年金制度についても、加入可能年齢の引き上げや拠出額の変更が行われ、近年では大きな改正となっています。そこで、特に年金資格受験生を念頭に、最近の確定拠出年金に関する一連の改正を時系列に10項目紹介し、どんな箇所を押さえておくべきかをまとめていきます。赤字の部分だけでも読んでおけば10分で確認できます。今回は前半の5項目です。
スポンサーリンク
どんなニュース?もう少し詳しく!
はじめに
社会保険労務士の近森です。
私は公的年金制度はもちろん、企業年金についても興味を持って勉強を続けており、最近は東京都社会保険労務士会の自主研究会で確定拠出年金の法改正について報告しました。
そんな折、シモムー先生から
との無茶振りの要望がありました。
そこで本稿では、2020年(令和2年)5月に成立した年金制度改正法(以下、「2020改正法」とします)の改正確定拠出年金制度を中心に社労士試験や年金アドバイザー試験などを念頭に改正のポイントをお伝えしようと思います(以下、コラムでは企業型確定拠出年金制度を「企業型DC」、個人型確定拠出年金制度を「iDeCo」と略称して記載します)。
赤字の部分だけをサッと目を通すだけでも、短時間で2020年改正の項目をおさらいできますよ。
2022年4月前の施行済み改正項目
1.iDeCoの継続投資教育の企業年金連合会への委託(2020年6月5日施行)
企業型DCでは、事業主は継続投資教育が努力義務となっており、運営管理機関や企業年金連合会に委託することができます。
iDeCoについても同様に、国民年金基金連合会も努力義務が課されており、運営管理機関に委託することができますが、企業年金連合会に委託することができませんでした。
今回の改正で、iDeCoについても企業年金連合会にも継続投資教育を委託することを可能としました。
2.簡易型DCとiDeCoプラスの対象範囲の拡大(2020年10月1日施行)
中小企業においては、企業年金の実施率が低いことが政府(厚生労働省)の有識者会議でも議題となりました。
そこで、現在、企業型DCの制度をパッケージ化した、簡易型DCと中小企業の従業員が加入するiDeCoに事業主が追加で掛金を上乗せで納付できる中小事業主掛金納付制度(通称「iDeCoプラス」)の両制度の従業員の規模要件が100人以下から300人以下と拡大されました。
試験的な観点では後者の「iDeCoプラス」に注目しておきたいところです。
ちなみにiDeCoプラスでは、あくまで従業員の掛金に上乗せする制度なので、全額を事業主が拠出できるわけではないことに注意が必要です。
従って、事業主が納付できる金額は、22,000円までとなります(加入者は少なくとも1000円は拠出しなければならない)。
3.受給開始時期の選択(2022年(令和4年)4月1日施行)
2022年3月までは受給開始時期は、60歳から70歳まででとなっています。
70歳になっても裁定請求しないと、運営管理機関が強制的に一時金として裁定していました。
今回の改正で公的年金(国民年金・厚生年金)の受給開始時期が70歳から75歳まで引き上げられた(繰下げ)のとあわせて企業型DC・iDeCoについても受給開始時期が75歳まで引き上げられました。
ただし、2022年4月1日にすでに70歳に達している方は対象外となるため、昭和27年4月2日生まれ以降の方となります(対象者の生年月日は年金アドバイザー試験で出題されていますので要注意です)。
2022年中に施行される改正項目
4.企業型DCの加入可能年齢の引き上げ(2022年5月1日施行)
企業型DCへの加入年齢について、現行は60歳に達するまで、例外的に65歳までしか加入できませんでした。
今回の改正で厚生年金被保険者であれば70歳に達するまで加入が可能となりました。
この改正は、社会保険の適用拡大(2022年10月、2024年10月)によって、加入対象者が拡大されることとなるため、あわせて見ておく必要があります。
ただし、厚生年金被保険者であれば、誰でも入れるわけではなく、企業型DCの老齢給付金を裁定請求している場合は再度、企業型DCに加入することはできません。
また、老齢給付金を受給するには、企業型DCの資格喪失(=企業を退職)していることが必須になります。
この点は改正前と大きく異なる点です。
また、今回の改正によってDCの加入期間についてあらたな定義が規定されました。
DCは掛金を拠出して運用することが大前提です。
したがって加入してすぐに受給するというのは制度の趣旨から外れます。
改正前のDCの加入期間は60歳未満までのところで判断していました。
ところが、今回の改正によって、60歳を超えてから企業型DCに加入するケースが生じます。
そこで、今回の改正で企業型DCに加入してから5年を経過したところで老齢給付金の請求が可能となりました。
例えば、下図のように、63歳で加入した場合は、68歳にならなければ受給できないのです。
5.iDeCoの加入可能年齢の引き上げ(2022年5月1日施行)
iDeCoの加入要件は60歳未満の国民年金被保険者(第1号~第3号)に限られていました。
今回の改正によって、受給可能年齢が引き上げされたことにより、60歳以上の国民年金被保険者であれば65歳に達するまで加入可能となりました。
60歳以上の国民年金被保険者とはすなわち、第2号被保険者、任意加入被保険者となります。
また、日本国籍を有する海外居住者もiDeCoに加入できませんでしたが、国民年金の任意加入被保険者になれば加入可能となりました(60歳未満も可)。
ただし、企業型DCで老齢給付金を受給した場合や、公的年金を繰上げ受給すると加入はできませんので、注意が必要です。
今回のニュースまとめ
今回は、確定拠出年金の改正前半5項目を見ていきました。
ポイントは次のとおりです。
- iDeCoの継続投資教育の企業年金連合会への委託が可能に
- 簡易型DCとiDeCoプラスの対象範囲が300人以下の企業に拡大
- 受給開始時期が75歳まで拡大
- 企業型DCの加入可能年齢が70歳まで引き上げ
- iDeCoの加入可能年齢が国民年金の被保険者であれば65歳まで引き上げ
実は2022年5月施行の改正は結構あって、次回は5月施行の続きからいきます。
最後は2024年(令和6年)までありますので、残りの5項目もお見逃し無く!
出典・参考にした情報源
- 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
- (確定拠出年金制度)2020年の制度改正(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html#20221001
- 社会保障制度審議会企業年金・個人年金部会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_163664_00006.html
近森拡充
みんなのねんきんパートナー社労士