国民年金の3号被保険者は日本にいなきゃだめ?2019年の改正案を追え!|みんなのねんきん

国会

シモムー

みんなのねんきん主任講師

どんなニュース?簡単に言うと

2019年2月15日。厚生労働省が健康保険法を中心とする改正案を提出しました。実は年金にも大きく関係する改正が含まれています。それは国民年金の第3号被保険者に国内居住要件が導入されること。なぜこのような改正がされるのか、それはいつからか。提出された改正案を追ってみます。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

2019年2月15日、通常国会の中で厚労省の法律改正案が提出されました。

※参考 厚労省ウェブサイト 改正案概要

この概要によれば、医療保険制度の改正が大部分を占めています。

改正の趣旨を見てみると、「被扶養者の要件の適正化」という言葉があり、この趣旨に沿って関係法律を改正したいということ。

ここで、健康保険制度では扶養家族も対象となりますが(家族分の保険証がもらえますよね)、その扶養の考え方を正しくしたいというものです。

で、この扶養の考え方は年金にもあります。

サラリーマンの配偶者であり、扶養の要件を満たすと、「第3号被保険者」という立場になるというもの。

第3号被保険者は自身では年金保険料を負担する必要がありません。

つまり、扶養と認められると医療保険では保険証がもらえ、年金では自身の保険料負担がなくなり、社会保険の恩恵を受けられるわけです。

それを、適正化したいっていうんですから、現在なんらかの問題を抱えているってことですよね。

今回は何が問題になっていて、どういう改正内容なのか、それはいつから変わるのかというニュースを取り上げてみます。

日本にいる家族のみを扶養家族とする改正

今回提出された改正案。

一言で言うと、扶養家族は日本にいる人だけ!という条件を加えるってこと。

厚労省の資料にも一言でこう書いてあります。

被用者保険の被扶養者等の要件について、一定の例外を設けつつ、原則として、国内に居住していること等を追加する

現行制度では家族が海外に居住していても扶養家族となります。

なにが問題?

別に海外にいたとしても扶養でいいじゃない?

とも思えますが、こんな問題が・・。

海外在住の私が病気になった。

日本の医療は評判がいいので、日本の医療を受ける目的で来日。

私は健康保険の扶養家族だから保険が効くので3割負担で済む。

外務省のウェブサイトを見ると、医療滞在目的によるビザなるものがあります。

医療滞在ビザとは,日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給されるものです。

(出典:外務省ウェブサイト

日本において治療を受けるのは問題ではありません。

日本人でなければ医療を受けられないなんて無いですから。

で、医療費は全額自費で負担してもらえばいいだけです。

そうではなく、扶養家族とはいえ生活拠点が日本に無い人に対してまでも健康保険の恩恵(3割負担のみ)が受けられるのはいかがなものか。

という指摘があり、日本にいる家族だけに限定しようという改正なんです。

扶養の考え方は健康保険も国民年金の第3号被保険者も同じ

例えば、年収が130万円未満であるとかの要件が共通です。

ですので、扶養の考え方を改正すると、必然的に第3号被保険者のルールも変わるということなんです。

 

改正後の国民年金法はこうなる

改正後、第3号被保険者の条文がどう変わるかみてみましょう。

(改正後)第7条1項3号

第二号被保険者の配偶者(日本国内に住所を有する者又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者に限る。)であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの(以下「第三号被保険者」という。)

(改正前)第7条1項3号

第二号被保険者の配偶者であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの(以下「第三号被保険者」という。)

太字・下線の文言が新しく加わります。

最初の太字部分で「日本国内に住所を有する者」ってありますよね。

ただ、一律に国内居住を要求すると問題が起きるので、日本国内に生活の基礎があると認められる人は例外としています(留学している人とか)。

結局、具体的な例外は厚生労働省令で決めるからってことになっています。

いつから変わるのか?

平成32年4月1日が施行日です。

この記事執筆時点から1年後。

これは2020年以降の資格試験で出題されることは間違いないでしょう!

今回のニュースまとめ

今回のニュースをまとめると以下のとおり。

  • 厚労省が被扶養者の要件の適正化を図るために医療保険法の改正案を提出
  • 生活拠点が日本に無い人にまで医療保険の恩恵を及ぼすのは問題ありとの指摘があった
  • そこで、被扶養者の要件として国内居住を原則として求める
  • 平成32年4月からの施行予定である

海外在住の被扶養者の問題は以前から指摘されていましたから、今回の改正は妥当だろうと思います。

ただでさえ、医療保険の給付費は膨張しているわけですから、おかしなところはどんどん変えるべきかと。

ところで、

国民年金のメンバーの分類は3種類あり、国内居住要件を要求するのは第1号被保険者だけでした。

今後は第3号被保険者も要求されるので覚え方を改めないといけません。

受験生は注意ですよ。

出典・参考にした情報源

厚労省ウェブサイト 第198回国会提出法律案



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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。