加入手続きはスマホでOK!!国民年金で電子申請がスタート|みんなのねんきん

大須賀信敬

みんなのねんきん上級認定講師

 どんなニュース?簡単に言うと

2022(令和4)年5月 11 日から、個人が行う国民年金の手続きの一部で電子申請が利用可能になりました。

スマホやパソコンで手続きができ、時間・コストの削減が期待できるとのことです。

そこで今回は、国民年金の電子申請手続きについて見ていきましょう。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

「紙の申請書の提出」から「インターネット経由の申請」へ

年金に関するさまざまな手続きは、企業が業務で行う場合には、以前から次の3つの手続き方法が用意されていました。

  • 紙の申請書を提出する通常の申請
  • CDやDVDに情報を保存して提出する電子媒体申請
  • インターネット経由で情報を送信する電子申請

そのため、小規模な企業は紙の申請書で手続きを行い、大企業は電子媒体申請や電子申請を行うというように、各企業の事情に応じて申請方法が選択可能になっていたものです。

これに対し、個人が行う国民年金の各種手続きは、従来から紙の申請書を提出することが原則とされてきました。

申請書は市役所や年金事務所でもらうか、日本年金機構のホームページなどから無料でダウンロードできます。

申請書に必要事項を記入した後は、市役所・年金事務所の窓口に持参または郵送すれば、原則として手続きは終了になりました。

しかしながら、2022(令和4)年5月 11 日からは、個人でも「インターネット経由で情報を送信する電子申請」を利用し、国民年金の手続きが可能となっています。

そのため、日本年金機構では国民年金に加入する個人も、「24 時間どこからでも申請でき、時間・コストの削減が期待できる」と説明しています。

ここがポイント! 個人の年金手続きでも電子申請が可能に 

2022 年5月 11 日からは、個人が行う国民年金の手続きの一部でも、「インターネット経由で情報を送信する電子申請」が利用できるようになった。 

電子申請ができる手続きは4種類

国民年金で電子申請が利用できるのは、次の手続きを行うケースになります。

  1. 資格取得
  2. 種別変更
  3. 保険料免除・納付猶予申請
  4. 学生納付特例申請

具体的に見ていきましょう。

1.資格取得

日本国内に住む 20 歳以上 60 歳未満の人は、「厚生年金に加入していない」「会社員・公務員の配偶者に扶養されていない」などの条件を満たすと、国民年金の第 1 号被保険者となります。

第 1 号被保険者になった場合には、市役所の窓口などで国民年金に加入する手続きを行わなければなりません。

その際に行うのが「資格取得」の手続きです。

この手続きは国民年金被保険者関係届書という、複数の手続きを 1 つの申請書で行える兼用フォームを使用して行います。

具体的には、「学生が 20 歳になった」「会社を退職したので厚生年金から抜けた」「海外に住んでいたが帰国したなどのケースで、資格取得の手続きが必要になります。

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2.種別変更

例えば、会社員や公務員の夫に扶養される妻は、夫が国民年金の第2号被保険者に当たることにより、自身は国民年金の第3号被保険者に該当することが多くなります。

しかし、何らかの理由で夫が国民年金の第2号被保険者でなくなった場合には、妻も第3号被保険者の条件から外れ、第1号被保険者に変わるケースが少なくありません。

このように第3号被保険者が第1号被保険者に変わった場合に、市役所の窓口などで行うのが「種別変更」の手続きです。

この手続きも「資格取得」と同様に、『国民年金被保険者関係届書』を使用して行います。

第3号被保険者が第 1 号被保険者に変わる典型的なケースは、会社員・公務員の夫が退職して厚生年金から抜けた場合です。

他にも、会社員・公務員の夫が 65 歳になった場合には、老後の年金をもらえるだけの加入実績がある夫であれば国民年金の第2号被保険者にはならないため、妻が第 1 号被保険者に変わることになります。

3.保険料免除・納付猶予申請

国民年金の第1号被保険者になると、毎月、16,590 円の保険料を納めることが義務付けられます。

保険料を納めないと、「将来受け取る年金が減額される」「年金を受け取る権利を得られない」などの不利益を被ってしまいます。

しかしながら、例えば「失業した直後なので、お金がない」「商売が上手くいかず、保険料を納める余裕がない」など、保険料を納めることが経済的に困難な場合には、保険料の納付を免除してもらう、または納付を少し待ってもらうなども可能です。

このような仕組みを利用したい場合に市役所の窓口などで行うのが、「保険料免除・納付猶予申請」の手続きです。

申請は『国民年金保険料免除・納付猶予申請書』という専用フォームを使用して行います。

4.学生納付特例申請

学生であっても 20 歳以上で日本国内にいるのであれば、原則として国民年金に加入しなければなりません。

学生は第 1 号被保険者に当たるため、毎月、16,590 円の保険料を納めることが法律上の義務とされます。

しかしながら、学生には十分な収入がないのが通常なので、保険料を納めることが必ずしも容易ではありません。

そのため、手続きをすれば保険料の納付を待ってもらうことが可能であり、そのような場合に市役所の窓口などで行うのが「学生納付特例申請」の手続きです。

申請は『国民年金保険料学生納付特例申請書』という専用フォームを用いて行います。

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以上のように、個人が行う国民年金の手続きは、「資格取得」「種別変更」「保険料免除・納付猶予申請」「学生納付特例申請」の各手続きをする場合に、電子申請が可能になっています。

ただし、紙の申請書を提出する従来の手続き方法が、廃止になったわけではありません

従って、2種類の手続き方法から、都合の良い方法を利用できることになります。

ここがポイント! 電子申請が可能な「4種類の手続き」

国民年金の電子申請は、「資格取得」「種別変更」「保険料免除・納付猶予申請」「学生納付特例申請」の各手続きで利用可能である。

電子申請の利用には「マイナンバーカード」が必要

国民年金の電子申請は自身のスマートフォンやパソコンを使用し、インターネット経由で情報を送信することで行います。

ただし、マイナンバーカードを持っていないと申請ができません

国民年金の電子申請は、マイナポータルという政府が運営するオンラインサービスを使用して行うのですが、マイナンバーカードの発行を受けていないとマイナポータルを利用できないからです。

従って、電子申請を行いたい場合には事前に

  • マイナンバーカードの発行を受ける。
  • マイナポータルの利用者登録を行う。

という手順を踏むことが必要になります。

なお、マイナポータルの利用者登録は、スマートフォンの場合には次のような段取りで行います。

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国民年金の電子申請では、スマートフォンやパソコンで申請書を作成する際に、マイナンバーの情報が自動的に使用されます。

そのため、紙の申請書を記載するよりも、申請書作成が簡単になるようです。

また、紙で申請を行った場合には、申請結果も郵便で受け取ることになりますが、マイナポータルから電子申請を行うと、申請の結果をスマートフォンやパソコンで確認できるようになります。

さらに、マイナポータルとねんきんネットを連携させていると、保険料免除・納付猶予申請や学生納付特例申請に関する申請内容が自動入力されるようになるなど、さらに簡易な申請が可能になるとされています。

ここがポイント! 電子申請にはマイナンバーカードが必要

国民年金の電子申請を利用するには、マイナンバーカードの発行を受けた上で、マイナポータルの利用者登録を行うことが必要である。 

「電子申請できない手続き」のほうが圧倒的に多い

個人が行う国民年金の手続きは、電子申請の利用により非常に楽になった印象があるかもしれません。

しかしながら、必ずしもそうとは言えない面もあるようです。

全ての国民年金手続きが、電子申請可能になったわけではないからです。

今回、電子申請が可能になったのは、国民年金の数ある手続きの中のごく一部に過ぎません。

例えば、次のような手続きは、今までどおり紙の申請書の提出が必要です。

  • 保険料の口座振替手続き
    月々の保険料を銀行口座からの引き落としに変える。引き落とす銀行や口座を変更する。銀行口座から前払いで保険料を納める。銀行口座からの保険料の引き落としを辞める。
  • 保険料のクレジットカード納付手続き
    月々の保険料をクレジットカードでの納付に変える。保険料の納付に使用するクレジットカードを変更する。クレジットカードを使い、前払いで保険料を納める。クレジットカードで保険料を納めるのを辞める。
  • 追納の手続き
    免除・猶予された保険料を後から納め、年金額を増やす。
  • 任意加入の手続き
    国民年金への加入義務はないが、年金額を増やしたいので加入する。加入義務がないのに入った国民年金から抜ける。
  • 付加保険料の手続き
    年金額を増やすため、保険料を通常よりも多く納める。多く納めている保険料を、通常の額に戻す。
  • 保険料の法定免除の手続き
    障害や生活保護により、保険料の免除対象になった。障害や生活保護の状態に変化があり、保険料の免除対象から外れた。
  • 出産に伴う保険料免除の手続き
    出産予定日が近づき、産前産後期間の保険料免除の対象になった。
  • 海外転出時の手続き
    海外に住むことにしたので、国民年金から抜ける。
  • 基礎年金番号通知書の再交付手続き
    基礎年金番号通知書を汚損・紛失したので、再発行を受ける。
  • 受給の手続き
    年金、一時金を受け取る。

上記を見た皆さんの中には、次のような印象を持った方も多いのではないでしょうか。

チャーミー
チャーミー
何よ! ほとんどの国民年金の手続きは、電子申請ができないじゃないのっ!
【みんなのねんきん】加入手続きはスマホでOK!!国民年金で電子申請がスタート

いつも怒ってばかりのチャーミー

2022(令和4)年5月 11 日以降、個人が行う国民年金の手続きには、電子申請が可能な手続きと不可能な手続きが混在するので、間違えないように注意が必要です。

ここがポイント! 電子申請ができるのはごく一部の手続きに限定

国民年金で電子申請が可能なのは、4種類の手続きに限定されている。その他の手続きは、紙の申請書の提出が必要である。 

電子申請導入の目的は「保険料納付率の数値向上」?

今回、国民年金の手続きに電子申請が導入された目的は、一体、何だったのでしょうか。

もしも、手続きの簡便化」が導入目的なのであれば、国民年金の多くの手続きが電子申請の対象とされたはずです。

ところが、電子申請が利用できるのは、前述のとおり国民年金の手続きのごく一部に限定されています。

実は、今回、電子申請が可能になった「資格取得」「種別変更」「保険料免除・納付猶予申請」「学生納付特例申請」の4つの手続きには、他のほとんどの手続きにはない共通点が存在します。

手続きが進むと、保険料の未納が減少することです。

例えば、「種別変更」の手続きが適切に行われないと、第3号被保険者から第 1 号被保険者に変わった配偶者が保険料を納付しない未納状態が発生しますが、手続きが進めば保険料の納付が行われます。

その結果、厚生労働省にとっては保険料収入が増加することになり、加入者にとっては年金額の増加が期待できることになります。

このように考えると、電子申請導入の目的は、保険料の未納削減による「保険料収入の増加」と「年金額の増加」のようにも思えます。

しかしながら、もしもそうなのであれば、「保険料収入の増加」や「年金額の増加」に効果のある追納や付加保険料の手続き、任意加入の手続きも電子申請で行えてもよさそうに思います

しかしながら、これらの手続きは電子申請の利用対象とはされていません。

ここで一つの可能性を紹介します。

厚生労働省が発表する統計数値の中に、「国民年金の保険料納付率」があります。

これは国民年金の保険料がどの程度納められているかを示す値で、次のような特徴を持っています。

  • 保険料の未納が減少すると、納付率が向上する。
  • 保険料免除や納付猶予、学生納付特例の利用者が増えても、納付率は低下しない

今回、電子申請が可能になった4つの手続きには、手続きが進むと保険料の未納が減少するという共通点がありました。

また、電子申請によって保険料免除や納付猶予、学生納付特例の利用者が増加した場合、保険料を通常どおりに納めない加入者が増えるのにもかかわらず、保険料納付率の数値は低下しないことになります。

厚生労働省が発表する保険料納付率は、保険料が免除・猶予された期間」を除いて納付状況を集計するからです。

以上を総合的に判断すると、今回の電子申請導入は「保険料納付率の数値向上」のため、当該数値に影響のある手続きだけを対象としたのではないかと考えられなくもありません。

皆さんは、どのように思いますか。

ここがポイント! 電子申請導入で「保険料納付率の数値向上」か? 

  電子申請導入の目的を「手続きの簡便化」「保険料収入の増加」「年金額の増加」とすると、矛盾が生じる。「保険料納付率の数値向上」が目的の可能性を否定できない。

今回のニュースまとめ

【みんなのねんきん】上級認定講師大須賀先生

今回は 個人が行う国民年金手続きの電子申請について見てきました。

ポイントは次のとおりです。

  • 2022 年5月 11 日から、個人が行う国民年金の手続きの一部で電子申請が利用できる。
  • 国民年金の電子申請が可能なのは、「資格取得」「種別変更」「保険料免除・納付猶予申請」「学生納付特例申請」の4つの手続きである。
  • 国民年金の電子申請を利用するには、マイナンバーカードの発行とマイナポータルの利用者登録が必要である。
  • 国民年金の多くの手続きは、いまだに紙の申請書を提出しなければならない。
  • 電子申請導入の目的は「保険料納付率の数値向上」ではないか。

今後、個人が行う国民年金手続きの電子申請化は、拡大するのでしょうか。

皆さんと一緒に動向を見守りたいと思います。

出典・参考にした情報源

日本年金機構ホームページ:国民年金の加入や保険料免除に関する電子申請を開始しました
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2022/202205/20220511.html



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みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。