どんなニュース?簡単に言うと
2018年11月2日に開催された社会保障審議会年金部会。そこで配布された資料からこれからの年金制度をどう変えようとするのかが見えてきました。今回より3回にわたり、これからの年金制度改正の行方を占ってみます。第1回は世界の年金制度の現状と日本の年金改正の方向性についてです。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
私が管理者をやっているフェイスブックグループで、メンバーから情報提供を受けました。
それは「社会保障審議会年金部会の資料が手に入りました」というもの。
早速、中身を見てみると、「実に面白い」(福山雅治風)。
今の年金制度の課題と将来の方向性が載っています。
働き方改革により年金制度がどのような影響を受けそうか。
2018年11月2日に社会保障審議会で配布された資料を引用しながら連続3回の記事でまとめてみます。
第2回以降は繰上げ・繰下げ制度、在職老齢年金制度の現状やその将来も占ってみます。
第1回は世界の年金制度の現状と日本の年金改正の方向性について。
いってみましょう。
世界の高齢者の働き方はどうなってる?
老後の年金は引退した人の生活保障として支給するもの。
ですので、高齢者がどう働くのかと関係しています。
そこで、まずは諸外国と日本の高齢者雇用の現状を紹介しましょう。
資料で紹介されている5カ国と日本を比べてみます。
アメリカ | 定年制原則不可 |
イギリス | 定年制原則不可 |
ドイツ | 定年年齢を一律に規定する法律なし |
フランス | 定年制は原則70歳以上 |
スウェーデン | 67歳になった月の月末まで職にとどまる権利あり |
日本 | 65歳までの希望者全員の継続雇用の義務 |
(出典:厚労省資料4・5ページより編集)
アメリカやイギリスは定年制を定めてはいけないということなんですね。
だから、能力があるなら年齢だけで就労が制限されることはない。
ある意味わかりやすい仕組みですよね。
日本は55歳定年から60歳定年に移行し、今は事業主に対して希望者を65歳まで雇用するよう義務付けました。
発想としては、高齢者の能力うんぬんではなく、年齢で区切って引退してもらうというもの。
引退したら年金をもらえるが、それまでは働ける環境を整える。
これが政府の考え方です。
ですので日本は高齢者の引退と年金開始が密接につながっていると言えます。
他の国はいつから年金がもらえる?
5カ国の年金の本来の開始年齢と、希望すればもらえる年齢の範囲を図解してみました。
”パネルクイズ”みたいでちょっとわかりづらくてすみません。
赤が本来の支給開始年齢、青が引き上げ予定の将来の支給開始年齢、黒を含めた表示されている年齢の範囲で支給開始するという図です。
本来の支給開始年齢(赤) | 将来の支給開始年齢(青) | 説明 | |
アメリカ | 66歳 | 67歳 | 62歳から70歳の間で受取を開始する |
イギリス | 65歳 | 68歳 | 男女で開始年齢に若干の違いがあるが将来は男女ともに68歳から |
ドイツ | 65歳6カ月 | 67歳 | 35年以上の被保険者期間があると63歳から可能 |
フランス | 62歳、65歳9カ月 | 67歳 | 満額拠出期間を満たすと62歳から、満たさないと65歳9カ月から(この年齢は67歳に引き上げられる) |
スウェーデン | 61歳から選択、65歳 | 所得に基づく年金は61歳以降本人が選択し、所得に基づかない保証年金は65歳から(保障年金には繰下げ・繰下げ無し) |
多くの国が将来の年金開始年齢を67歳や68歳にして、現在移行期にあるというのが現状です。
ですので、諸外国と比較したうえで日本も引き上げるべきという意見が出ています。
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日本の年金もらい開始の年齢はどうなの?
日本も年金開始年齢の引き上げ真っ最中です。
国民年金制度(1階部分)からもらえる老齢基礎年金は65歳からですが、厚生年金制度(2階部分)からもらえる老齢厚生年金は人により60歳から64歳。
ただ、老齢厚生年金も最終的には65歳からです。
どちらの年金も受取開始年齢の前なら早めにもらえます(最も早くても60歳から)。
我慢すれば年金を増やしたうえで、もらえます(増える上限は70歳まで)。
これからの年金をどう変える?
世界と日本の年金の現状を踏まえて、国は年金制度をどう変えていくのか。
上で見たとおり、いくつかの国で65歳を超えた年金開始年齢にシフトしています。
日本においては未だに65歳への引き上げが完了していません。
そのためでしょうか、厚労省の資料では年金開始年齢の引き上げには触れられていません。
現時点では年金開始年齢65歳は維持したままで、繰下げ等の仕組みに手をつけるようです。
上で見たとおり、日本の年金制度は高齢者の引退と密接につながっています。
ですので、まずは高齢者雇用をどうするのかが問題となります。
資料によれば、働き方改革第2弾として65歳を超える高齢者雇用の確保をうたっています。
そのうえで、年金については、以下のように言及しています。
高齢者が自身の人生設計に応じて年金の受給開始年齢を柔軟に選択できる仕組みや、多様な働
き方を踏まえた被用者保険の適用拡大を検討。さらに、より豊かな老後生活を送ることができるよう、私的年金の拡充について検討する。(出典:厚労省資料7ページ)
具体的には、こういう結びつきを考えているようです。
- 年金の受給開始年齢を柔軟に選択できる仕組み → 繰下げ上限(70歳)の見直し
- 被用者保険の適用拡大 → 短時間労働者に対する適用要件の見直し
- 私的年金の拡充 → 私的年金の加入年齢等の見直し
全ては高齢者が長く働くことを前提にしていることがわかりますね。
今回のニュースまとめ
今回は社会保障審議会年金部会の資料から世界と日本の年金の現状と方向性を分析してみました。
ポイントは次のとおり。
- 世界の年金はもらい始めの年齢を引き上げる方向で動いている
- 日本は高齢者の引退と年金のもらい始めが密接につながっている
- 65歳以降の高齢者雇用に対応した年金制度改正の方向性が見える
方向性は見えてきました。
鍵となるのは、65歳以降の高齢者雇用の確保でしょう。
みんなが一律いつまでも働けるなら年金制度自体要りません。
働けるか働けないかは人によって違うからこそ、それに対応した改正が必要ですね。
大事なのは一律にするのではなく、多様性を認めること、そして多様な選択肢を用意することだと思います。
次回は繰上げ・繰下げ制度の現状について資料を引用して分析してみます。
シモムー
みんなのねんきん主任講師