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スカッち先生の年金加入トラブルあるある5選 第1回/全2回

大須賀信敬(スカッち先生)

みんなのねんきん上級認定講師

メモ

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「スカッち先生」とは、みんなのねんきん事務局内でお呼びしている大須賀先生の愛称です。勝手にすみません・・・。

どんなニュース?簡単に言うと

入社シーズンの4月。この時期には、厚生年金にまつわるさまざまな加入トラブルが発生しがちです。そこで今回は、「会社に入れば当然、厚生年金に入れると思っていたのに、入れなかった!」というトラブルについて、実例を挙げて考えてみましょう。

どんなニュース?もう少し詳しく!

そもそも厚生年金の加入ルールとは

厚生年金の加入ルールは非常に複雑です。

しかしながら、一般的には次の2つの条件の両方を満たした場合に、加入が義務付けられることになります。

  • 厚生年金の対象になる“職場”で働くこと
  • 厚生年金の対象になる“時間数・日数”で働くこと

いずれか一方を満たさない場合、または両方とも満たさない場合には、原則として厚生年金の加入対象にはなりません。

しかしながら、世の中には「法律どおりに経営されて“いない”職場」も存在します。

そのため、厚生年金に入れると思って入社したにもかかわらず、加入させてもらえなかったなどの社会保険トラブルが発生することが少なくありません。

ココがポイント!厚生年金の加入ルール

一般的に、厚生年金は「厚生年金の対象になる“職場”」で「厚生年金の対象になる“時
間数・日数”」で働くと、加入が義務付けられる。

厚生年金に入れると思ったのに入れない!トラブル事例5選

それでは、具体的なトラブル事例を見てみましょう。

《事例1》「ウチの会社には厚生年金はありません」と言われた

「ウチの会社には厚生年金はありません」。

このような説明をして、採用した従業員を厚生年金に加入させない企業があります。

しかしながら、“法人”である限り「厚生年金がない」ということは、原則としてあり得ません。

“法人”は必ず「厚生年金の対象になる職場」とされるからです。

必ず厚生年金の対象になる職場を「強制適用事業所」といいます。

例えば、選んだ職場が「株式会社〇〇〇〇」という社名であれば、その職場は“法人”であり、好むと好まざるとにかかわらず厚生年金の「強制適用事業所」とされます。

そのため、企業側が「厚生年金はやりたくないっ!」と考えたとしても、“法人”である限りは法律上、そのようなことは許されません。

ココがポイント!職場が“法人”の場合の取り扱い

“法人”は必ず厚生年金の対象となる「強制適用事業所」とされる。

《事例2》「試用期間中は厚生年金には入れません」と言われた

企業の中には、採用した従業員に対して「試用期間中は厚生年金に入ることはできません。試用期間が終了し、本採用になったら加入できます」と説明をしているケースがあります。

例えば、入社から3カ月間は試用期間と定めている企業が、4月1日入社の新入社員を4・5・6月は試用期間を理由に厚生年金に加入させず、本採用となる7月から加入させるような取り扱いです。

しかしながら、このような取り扱いは明らかに間違いです。

「試用期間中の従業員は厚生年金に加入させなくてよい」という法律は、存在しないからです。

厚生年金の場合には、原則として「“会社に入った日”が“厚生年金に入った日”である」と考えます。

従って、4月1日に入社してその後、3カ月間が試用期間という従業員は、4月から厚生年金に加入するのが原則です。

ココがポイント!「試用期間」の取り扱い

試用期間中でも厚生年金に加入する。

《事例3》「正社員以外は厚生年金には入れません」と言われた

「契約社員、パート、アルバイトなどは、厚生年金には加入させない」という企業もあるようです。

しかしながら、厚生年金の加入基準に「正社員以外は加入させなくてよい」というルールはありません。

従って、契約社員、パートなどの非正規の従業員であったとしても、要件を満たすのであれば、企業は厚生年金に加入させなければなりません。

正社員以外の従業員は、企業によりさまざまな呼び名で呼ばれています。

「契約社員」「パート」などと呼んでいる企業もあれば、「パートナー社員」「フレンド社員」「準社員」など、耳慣れない呼び名を使用する企業もあるようです。

しかしながら、社内でどのような名称で呼ばれていたとしても、それ自体が厚生年金の加入の要否に影響を与えることはありません。

ココがポイント!「非正規の従業員」の取り扱い

契約社員、パート、アルバイトなどの「非正規の従業員」も、厚生年金に加入する。

(下に続きます)

《事例4》「2カ月契約だから厚生年金には入れません」と言われた

厚生年金には「“臨時雇い”のような立場の人は、加入対象としない」という考え方があります。

そのため、「厚生年金の対象になる職場」を選び、「厚生年金の対象になる時間数・日数」で働くことになったとしても、働く“期間”が短い場合には、厚生年金の加入対象にならないことがあります。

その一例が、「2カ月以内の契約期間の場合、厚生年金には入れない」という取り扱いです。

「2カ月以内の契約で働く人は“臨時雇い”のような立場なのだから、厚生年金には入れませんよ」と考えるわけです。

ただし、2カ月以内の契約が繰り返された場合には、事情が異なります。

“臨時雇い”のような契約でも、繰り返されれば“臨時雇い”とは言えなくなるからです。

確かに、初めて2カ月以内の契約で働く場合には、厚生年金の加入対象にはなりません。

しかしながら、契約の終了時に「もう少しウチの会社で働いてみないか」などと声を掛けられ、結果として最初の契約期間よりも長く働くことになった場合には、長く働くことになった時点から厚生年金に加入しなければならなくなります。

ココがポイント!「2カ月以内の契約」の取り扱い

初めて「2カ月以内の契約」で働く場合には、厚生年金の加入対象にはならない。ただ
し、契約が繰り返されると厚生年金に加入することになる。

《事例5》「ウチは個人営業だから、厚生年金の対象外です」と言われた

個人営業を営むオーナーが「ウチは会社じゃないんだから、厚生年金なんてないよ」などと言い、従業員を厚生年金に加入させないことがあります。

しかしながら、個人で営業されている職場であっても、必ず厚生年金の対象となる「強制適用事業所」とされるケースがあります。

具体的には、従業員が5人以上で特定の業種(「法定 16 業種」といいます)を営んでいる場合には、個人営業の職場が厚生年金の「強制適用事業所」とされます。

例えば、街中でよく見かける〇〇耳鼻科、〇〇内科などの個人病院は、個人営業の職場に該当します。

医療関係の業務はここでいう特定の業種(法定 16 業種)に当たるため、従業員が5人以上いる個人病院は厚生年金の「強制適用事業所」となります。

従って、そのような職場で働く人は、原則として厚生年金に加入しなければなりません。

ココがポイント!職場が「個人営業」の場合の取り扱い

個人営業でも、従業員が5人以上で特定の業種(法定 16 業種)を営んでいると、厚生年
金の「強制適用事業所」とされる。

今回のニュースまとめ

今回は、厚生年金の加入トラブルの中から、「会社に入れば当然、厚生年金に入れると思っていたのに、入れなかった!」というケースを見てきました。

ポイントは次のとおりです。

  • 一般的に、厚生年金は「厚生年金の対象になる“職場”」「厚生年金の対象になる“時間数・日数”」で働くと、加入が義務付けられる。
  • “法人”は厚生年金の「強制適用事業所」になる。
  • 試用期間中の従業員、非正規の従業員も厚生年金に加入する。
  • 2カ月以内の契約も、繰り返されると厚生年金の加入対象になる。
  • 個人営業でも従業員が5人以上で特定の業種を営んでいると、厚生年金の「強制適用
    事業所」になる。

従業員は将来、厚生年金の加入実績に応じた年金を受け取ることになります。

このことは、従業員の厚生年金保険料を企業が払う行為には、「従業員の老後の所得保障を行う」という側面があることを意味しています。

従業員を雇うという行為には、それほど大きな“社会的責任”が伴うわけです。

それにもかかわらず、従業員を不正に厚生年金に加入させなければ、将来、従業員がもらえるはずの年金を、企業側が違法に減額させる結果となります。

つまり、従業員が受け取る年金を減額して、企業側がコスト削減を図っているわけです。

働く人がこのような不利益を被ることのないよう、全ての職場が適法に運営されることを願ってやみません。

出典・参考にした情報源

日本年金機構ウェブサイト:

適用事業所と被保険者

適用事業所と被保険者|日本年金機構
適用事業所と被保険者|日本年金機構

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  • この記事を書いた人
大須賀先生

みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。

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