どんなニュース?簡単に言うと
国民年金の保険料を納めている人に届く「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」(以下、「控除証明書」とします)。
この書類には1年間の保険料の納付状況が載っているのですが、「なぜ、このような記載の証明書が届くのか分からない」との声が少なくありません。
そこで今回は、控除証明書の基本的な記載ルールを解説しましょう。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
2022 年の保険料納付が「済」と「見」で表示される
控除証明書は1年間に納めた国民年金の保険料額を公的に証明する書類で、毎年、11 月初めに日本年金機構から送られてきます。
国民年金の保険料は全額が所得税・住民税の社会保険料控除の対象となるため、届いた控除証明書を確定申告などの際に添付して手続きをすれば、その分、税負担が軽減されることになります。
しかしながら、控除証明書は納付状況の記載の仕組みに分かりづらい点があり、「なぜ、このように書かれているのだろう?」と疑問を持つ人が少なくありません。
そこで、今回は控除証明書の記載内容について、基本的な仕組みを確認してみましょう。
なお、控除証明書が具体的にどのようなケースで利用できるかについては、本サイトの2019(令和元)年 11 月 20 日付コラム「税金を取り戻したければ、国民年金の『控除証明書』はこう使え!」で詳しく解説をしていますので、参考にしてください。
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税金を取り戻したければ、国民年金の『控除証明書』はこう使え!|みんなのねんきん
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それでは、初めに「保険料を口座振替で1カ月ずつ納めているケース」について、今年届いた控除証明書の「納付状況の内訳」欄の記載例を見てみましょう。
控除証明書の「納付状況の内訳」欄を見たときに、まず目に付くのが「空欄の多さ」かもしれません。
ただし、これは保険料をキチンと納めていないから空欄が多いわけではありません。
今年の控除証明書は、「2022(令和4)年1月1日から同年9月 30 日まで」の9カ月間に国民年金の保険料を1カ月でも納めていると送付されています。
そのため、たとえばこの期間中に「過去に免除された保険料を追納した」とか、「2年分の保険料を前納した」などのことがあれば、それらも保険料の納付実績として全部表示されることになっています。
追納制度は過去 10 年間に免除された保険料などを納付可能であり、前納割引制度は最長で将来の2年分の保険料を前払いできます。
そのため、これらを月別に表示できるよう、控除証明書の「納付状況の内訳」欄は 13 年分(156 カ月分)の記載スペースが設けられているわけです。
しかしながら、上記の事例は追納も前納もせずに「保険料を口座振替で1カ月ずつ納めているケース」のため、空欄の多い控除証明書が作成されています。
控除証明書を受け取った人が最も混乱するのが、「済」と「見」の記載でしょう。
この表はタテが「年」を、ヨコが「月」を表しており、「年」と「月」の交わったところが「済」と記載されていれば、その月の保険料は納付済みであるということを示しています。
たとえば、上記の控除証明書を見ると、「令和4」の行と月の「4」の列が交わったところに「済」と記載されています。
これは「令和4年4月分の保険料は納付済みである」ということを表しています。
ここがポイント! 控除証明書の「納付状況の内訳」欄の見方
タテが「年」を、ヨコが「月」を表しており、「年」と「月」の交わったところが「済」と記載されていれば、その月の保険料は納付済みである。
「令和3」の行に「済」が記載されていても間違いではない
確かに、「令和3」の行の 11 月と 12 月に「済」と記載されていますが、間違っているわけではありません。
これは、「令和3年分の保険料が、令和4年に納められた」ことを示す表示になります。
上記の控除証明書は「保険料を口座振替で1カ月ずつ納めているケース」ですが、2021(令和3)年 11 月分と同年 12 月分の保険料が実際に口座から引き落とされたのはどちらも 2022(令和4)年に入ってからになります。
そのため、今回、届いた控除証明書に「令和3年分の保険料」に相当する「令和3」の行が作られ、該当する月に「済」と記載されているものです。
国民年金の保険料を口座振替で1カ月ずつ納める場合には、原則として納付期限の日である翌月末日に口座からお金が引き落とされることになっています。
2021(令和3)年 12 月分の保険料は、翌月末日である 2022(令和4)年1月 31 日が納付期限のため、この日に引き落しが行われています。
口座振替では「口座から保険料が引き落とされた日」が「保険料を納付した日」になるため、今回の控除証明書に「令和3」の行が設けられて「済」と記載されたわけです。
また、2021(令和3)年 11 月分の保険料の場合には、翌月末日は同年 12 月 31 日ですが、年末年始には保険料の引き落しは行われません。
この場合は、年が明けた 2022(令和4)年1月4日が納付期限の日とされ、この日に保険料が引き落とされます。
したがって、2021(令和3)年 12 月分の保険料と同様に、今回の控除証明書に該当の欄が設けられて「済」と記載されています。
今回の控除証明書を見て「今年は令和4年なのに、令和3年のところに「済」と記載されているのはおかしい!」と思う人は、決して少なくありません。
ホームズが間違えるのも無理はありませんね。
ここがポイント! 「令和3」の行に記載がある場合
令和3年分の保険料でも口座振替が令和4年に行われていれば、今回の控除証明書の「令和3」の行に「済」と記載されている。
「見」は「きっと今年中に納付されるだろう」という予測を表す
次に「見」の記載を見てみましょう。
上記の控除証明書を見ると、「令和4」の行の9月と 10 月のところに「見」と記載されています。
これは“見込み”の「見」で、控除証明書を作成する時点では保険料が納付されていなかったものの、「今年中に納付されるだろう」と“見込まれる月”がある場合に記載するルールになっています。
つまり、このケースでは 2022(令和4)年9月分と 10 月分の保険料は、今年中に保険料の納付が“見込まれる月”と位置付けられたわけです。
控除証明書を作成した時点の保険料の納付方法が 2022(令和4)年 12 月 31 日まで継続されると想定して、保険料の納付が“見込まれる月”が決められます。
仮に、2022(令和4)年の年末まで口座振替が継続された場合、2022(令和4)年9月分の保険料は同年 10 月末日に、同年 10 月分の保険料は同年 11 月末日に口座から引き落とされることになります。
そのため、これらの月は年内に保険料の納付が“見込まれる月”とされ、「令和4」の行の9・10 月には「見」と記載されているわけです。
しかしながら、2022(令和4)年 11 月分と 12 月分の保険料については、実際の引き落としは翌年になるので年内に保険料の納付が“見込まれる月”とはいえません。
したがって、「令和4」の行の 11・12 月には、「見」の記載がありません。
ここがポイント! 「見」の記載の意味
保険料が「今年中に納付されるだろう」と“見込まれる月”がある場合には、“見込み”の「見」が記載される。
「見」の記載がないのは「保険料を納める見込みがない」ってこと?
個人でパン屋を営むホームズには、次のような控除証明書が届いたようです。
確かに、ホームズが受け取った控除証明書には「見」の記載がありません。
このような控除証明書は、国民年金の保険料を納付書で納めている場合に届くことがあります。
納付書とは「保険料の支払い用紙」のことで、銀行やコンビニで保険料を現金で納めるときに使用するものです。
納付書を使って保険料を納めている人の場合には、2022(令和4)年4月分から同年8月分の保険料のいずれかが未納だと、控除証明書に「見」は記載されないルールになっています。
ホームズの控除証明書を見ると、「令和4」の行の4月と5月のところが空欄になっていることが分かります。
空欄は保険料を納めていない印です。
つまり、ホームズは 2022(令和4)年4月分と5月分の保険料が未納の状態です。
これが控除証明書に「見」が記載されていない理由になります。
納付書で保険料を納める場合には、毎月、銀行やコンビニに自分で足を運ばなければならないため、他の納付方法よりも未納が起こりやすいという事情があります。
そのため、納付書で保険料を納めている人に未納があるケースでは、今後も未納が発生する可能性を否定できません。
このような点を考慮して今年中に保険料の納付が“見込まれる月”はないとされ、「見」の記載がない控除証明書が届くものです。
ただし、納付書で保険料を納めていても、2022(令和4)年4月分から同年8月分の保険料をキチンと納めている人の場合には、次のような「見」の記載がある控除証明書が届くことになっています。
ここがポイント! 未納がある場合の記載ルール
納付書を使って保険料を納めている人が 2022 年4月分から8月分の保険料のいずれかを未納にしていると、「見」の記載がない控除証明書が届く。
未納がなくても「見」が記載されないケースもある
実は、保険料に未納がなくても前納割引制度を利用して保険料を前払いしている場合には、「見」の記載がない控除証明書が発行されることがあります。
たとえば、1年分の保険料をまとめて前払いする「1年前納」という仕組みを利用している場合には、次のような控除証明書が送られてきます。
この控除証明書を見ると、「令和4」の行の4月から 12 月までと、「令和5」の行の 1月から3月までに「済」と記載されており、「見」の記載が見当たりません。
保険料の「1年前納」をしている場合には 2023(令和5)年3月分の保険料まですべて納付済みのため、「今年中に保険料の納付が“見込まれる月”」というものが存在しません。
そのため、届いた控除証明書には「見」の記載がないわけです。
ここがポイント! 前納をしている場合の記載
前納割引制度を利用していると、「見」の記載がない控除証明書が届くこともある。
今回のニュースまとめ
今回は、11 月初めに日本年金機構から送付された「国民年金保険料の控除証明書」について、保険料の納付状況の記載ルールを見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 「納付状況の内訳」欄は「年」と「月」の交わったところに「済」と記載されていると、その月の保険料が納付済みであることを表している。
- 令和3年分の保険料でも口座振替が令和4年に行われていれば、今回届いた控除証明書の「令和3」の行に「済」と記載される。
- 年内に保険料の納付を“見込まれる月”がある場合には、“見込み”の「見」が記載される。
- 納付書で保険料を納めており、2022 年4月分から8月分の保険料のいずれかを未納にしていると、「見」の記載がない控除証明書が届く。
- 保険料を前納している場合には、「見」の記載がない控除証明書が届くことがある。
今回、ご紹介した控除証明書の事例は、ごく基本的なケースになります。
実務上はもっと複雑な記載の控除証明書が多く、「なぜ、「済」と「見」がこのように記載されているのか」を見抜くことは必ずしも容易ではありません。
記載内容がよく分からない控除証明書を受け取った場合には、日本年金機構に問い合わせるとよいでしょう。
出典・参考にした情報源
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令和4年分社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について|日本年金機構
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大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師