相談事例

共働き世帯で妻が亡くなった時の年金を考える(後編)

投稿日:2016年1月22日 更新日:

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どんな事例?簡単に言うと・・

亡くなった時に遺族が受け取れる遺族年金。共働き世帯で妻が亡くなったとしたら・・。夫が遺族年金をもらうケースを子供がいる場合といない場合にわけて考えてみます。今回は子供がいる場合(後編)です。

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こんな事例を考えてみましょう

Tさん(夫55歳 年収600万円)、Oさん(妻54歳)は共働き世帯。

高校生のRさん(子16歳)と3人暮らしです。

TさんOさんは大学卒業から同じ会社に勤めており、厚生年金に加入しています。

ある日、妻のOさんは休暇を取って一人で旅行に出かけたところ事故に遭遇。

帰らぬ人となりました。

残された夫のTさんと息子のRさんは遺族年金をもらえるでしょうか。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

父子家庭となったTさん世帯。

遺族年金は「子」がいると遺族年金をどう受け取るか難解になります。

なぜなら、親も子も遺族年金の権利が生じるからです。

では親子それぞれが年金を受け取ることができるのか。

「それぞれに権利があるんだからもらえるに決まっているじゃないか!」

いえ、そういうわけではないんです。

だから、わけがわからない。

親子で遺族年金が生じた場合の取り扱いはどうなるか、そこが問題です。

解説してみましょう

今回の解説者:シモムー

シモムー

国民年金と厚生年金の遺族年金はほぼ同じ条件

2種類ある遺族年金。

国民年金制度の遺族基礎年金と厚生年金制度の遺族厚生年金。

2つの年金は共通した条件があります。

それは亡くなった方と遺族が、 亡くなった当時にそれぞれの条件を満たすことです。

亡くなった方の条件は2つ。

1 年金制度に加入中か老後の年金を受取り中に亡くなった
2 年金制度加入中の場合はきちんと保険料を納めてきた

遺族の条件は3つ。

1 一定の遺族の中で一番上の順位である
2 故人によって生活を支えてもらっていた
3 年齢条件を満たしている

これらをベースにして、 国民年金と厚生年金では細かいところに違いがあります。

事例に当てはめながらその違いを解説してみましょう。

亡くなった方自身の条件はどうか

まず、亡くなった妻のOさんは厚生年金加入中でした。

厚生年金に入っていると原則として国民年金にも入っています。

保険料も給料からの天引きで長年納めてきました。

したがって、国民年金制度の遺族年金も厚生年金制度の遺族年金もOさんの条件は問題ありません。

遺族の条件はどうか

次に夫のTさんと子のRさん。

Oさんが亡くなった当時に・・

1 TさんはOさんの配偶者であり、RさんはOさんの子だった
2 2人とも年収が850万円未満でOさんにより「生活を支えてもらっていた」
3 55歳と16歳

「1」は遺族の範囲です。

国民年金の場合は「配偶者と子」に。厚生年金は「父母、孫、祖父母」まで範囲が広がります。

ただ、一番上の順位の人以外は権利は生じません。

配偶者と子は二人ともに1番の順位なんです。

しかも、

親が受け取る場合は必ず子がいないと権利が生じないのが国民年金です。

「2」は故人により「生活を支えてもらっていた」かどうか。

難しい言い方で故人によって「生計を維持していた」ことが要求されます。

この字面からは亡くなった人に生活を頼っていたというニュアンスになりそうですが、そうではありません。

実際は以下の2つの条件で判定するだけです。

1 故人と生活を一緒にしていた実態がある

2 遺族の年収が850万円以上がこれからも続く状態ではない

この2つを満たしていれば「生計を維持していた」と認められます。

「3」の年齢条件。

国民年金・厚生年金ともに子は高校卒業(18歳になった年度末)まで。

夫は国民年金では年齢条件はありませんが、厚生年金では55歳以上でないと権利が生じません。

これは前編でも解説したところです。

共働き世帯で妻が亡くなった時の年金を考える(前編)

目次1 どんな事例?簡単に言うと・・2 こんな事例を考えてみましょう3 今回の事例の何が問題なんでしょうか4 解説してみましょう4.1 保険料を納めていないと家族にも迷惑がかかる4.2 遺族としての3 ...

結論。

夫のTさん、子のRさんにそれぞれ遺族基礎年金、遺族厚生年金の権利が生じます。

(下に続きます)

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年金の権利が生じても支払いがあるかどうかは別

「権利」が生じたら次は年金を実際に受け取れるか、「支払い」の話。

年金は「権利が生じる」話と「支払いがあるか=受け取れるか」 の話を別次元で考えないといけません

まず、こんなルールがあります。

「配偶者に遺族年金の権利があると、子は支払いは止まる。ただし、配偶者の支払いが止まっているなら、子に支払いがある。」

次に、厚生年金だけ、こんなルールがあります。

「夫に権利があっても60歳未満の場合は支払いは止まる」

だいぶ複雑になってきました。落ちついて考えてみましょう。

親子で別々の年金をもらう不都合が生じる

まとめるとこうなります。

夫T:国民年金は受け取りOK、厚生年金は受け取りNG
子R:国民年金は受け取りNG、厚生年金は受け取りOK

そうなんです!

親と子で別々の年金を受け取るという変なことになってしまう。

妻が亡くなり、夫が55歳以上60歳未満であり、高校卒業までの子がいる

という状況でこのようなことが起きてしまいます。

かなり限られた状況ですが・・。

遺族年金を同じ人に受け取ってもらう

そこで、こんな場合は、「夫が60歳未満でも厚生年金を受け取れるようにする」としています。

結論。

夫T:国民年金は受け取りOK、厚生年金は受け取りOK
子R:国民年金は受け取りNG、厚生年金は受け取りNG

複雑すぎですね。

今回の事例まとめ

今回は父子家庭のケースで遺族基礎年金、遺族厚生年金を受け取る場合を考えてみました。

ポイントになるのは遺族のうち、配偶者と子は同一の順位であること。

つまり、配偶者と子それぞれに年金の「権利」が生じるということになります。

「権利」が生じたら今度は「支払い=受け取り」の話。

年金はこれらを別次元で考えないといけません。

権利があるから必ず受け取れるとはならないんです。

そして、

「妻が亡くなり、夫が55歳以上60歳未満であり、高校卒業までの子がいる」

というケースでは、夫と子が別々の遺族年金をもらう事態になるので、それを修正する仕組みになっています。

こんなケースもありますから遺族年金は安易に「もらえますよ」と言ってはいけない。

特に遺族にお子さんがいる時は慎重に考えないといけない。

それが遺族年金の難しさです。


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。

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シモムー

シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供を続ける。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。

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