相談事例

共働き世帯で妻が亡くなった時の年金を考える(前編)

投稿日:2016年1月14日 更新日:

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どんな事例?簡単に言うと・・

厚生年金制度から受け取ることができる遺族厚生年金。共働き世帯で妻が亡くなったとしたら・・。夫が遺族年金をもらうケースを子供がいる場合といない場合にわけて考えてみます。今回は子供がいない場合(前編)です。

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こんな事例を考えてみましょう

Hさん(夫55歳 年収600万円)、Oさん(妻54歳)は共働き世帯。

Mさん(夫54歳 年収500万円)、Eさん(妻54歳)も共働き世帯。

4人とも大学卒業から同じ会社に勤めており、厚生年金に加入しています。

2組の夫婦は同じマンションで歳も近い。

仲が良いので一緒に出かけることも多いんです。

ある日、OさんとEさんがそれぞれの夫を残して「女子のみ旅行」 に出かけました。

ところが、

OさんとEさんは事故に遭遇。

2人は帰らぬ人となりました。

残された夫のHさんとMさんは遺族年金をもらえるでしょうか。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

遺族年金と一口に言っても国民年金制度の遺族基礎年金と厚生年金制度の遺族厚生年金があります。

前者の遺族基礎年金は母子家庭・父子家庭を対象にした制度。

子がいないHさん、Mさんの場合、 今回の事例では遺族基礎年金は受け取れません。

では、後者の遺族厚生年金はどうか。

妻が亡くなり夫が遺族厚生年金が受け取れるかどうか、そこが問題です。

解説してみましょう

今回の解説者:シモムー

シモムー

保険料を納めていないと家族にも迷惑がかかる

遺族年金は亡くなった方と遺族が、亡くなった当時にそれぞれの条件を満たさないといけません。

まずは亡くなった方の条件。

2つの条件があります。

  1. 厚生年金に加入中か老後の厚生年金を受取り中に亡くなった
  2. 厚生年金加入中の場合はきちんと保険料を納めてきた

特に若い方が亡くなった場合には「2」が問題になります。

厚生年金の場合は毎月の保険料は給料から天引きされている。

だから、納めているに決まっているじゃないかと思うかもしれません。

いえいえ。

決まっているとは限りません。

判定されるのは現在加入中の厚生年金の期間だけではないんです。

これまでの年金加入歴を最初から遡って、滞納していた期間が全体の3分の1未満でないとNG。

例えば就職前に学生だった。

20歳からの国民年金は滞納していた。

23歳で就職して半年後に亡くなった。

こんな場合は保険料がきちんと納まっていないんです。

滞納していると家族にも迷惑がかかる。

それが遺族年金です。

遺族としての3つの条件

一方、遺族には3つの条件があります。

  1. 故人の配偶者・子、父母、孫、祖父母で一番上の順位である
  2. 故人によって生活を支えてもらっていた
  3. 年齢条件を満たしている

「2」は同居していたかどうか、年収は850万円未満かどうかが問われます。

「3」は遺族の立場によって年齢条件が違います。

これらは亡くなった当時の状況を判断します。

また、残されたのが配偶者と言っても「妻」の場合と「夫」の場合で違うんです。

今回は「夫」の年齢が問題です。

Hさんしかもらえない遺族厚生年金

さて、これらを事例に当てはめてみます。

亡くなったOさんEさんは

  1. 厚生年金加入中に亡くなった
  2. 大学卒業から約30年厚生年金に加入し保険料を納めてきた

とすれば、亡くなった人の条件は問題無いでしょう。

次にHさんとMさん。

  1. 故人の配偶者である
  2. 年収が850万円未満なので「生活を支えてもらっていた」ことになる
  3. 夫は「55歳以上」という年齢条件を満たしている

今回の一番の問題は「3」。

3つの条件を全て満たすHさんだけに遺族厚生年金の権利が生じま す。

残念ですが、54歳のMさんには権利は生じません。

亡くなった当時の年齢が問題です。

Mさんがその後55歳になっても年金の権利は生じません。

(下に続きます)

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権利はあるけど支払いはない

さて、

「権利」が生じたら、次は年金を実際に受け取れるか「支払い」の話。

年金は「権利が生じる」話と「支払いがあるか=受け取れるか」 の話を別次元で考えないといけません。

ここで、

「夫、父母、 祖父母が受け取る場合は60歳未満の場合は支払いは止まる

というルールがあります。

これらの方々は「他から収入源があるだろうから、 高齢期までおあずけ」という考え方。

結果、Hさんは年金の権利はあるけど60歳までは支払いがない。ということです。

今回の事例まとめ

今回は遺族厚生年金を夫が受け取る場合を考えてみました。

亡くなった方と遺族が、亡くなった当時にそれぞれの条件を満たさないといけない。

亡くなった方の条件は2つ。

  1. 厚生年金に加入中か老後の厚生年金を受取り中に亡くなった
  2. 厚生年金加入中の場合はきちんと保険料を納めてきた

遺族の条件は3つ。

  1. 故人の配偶者・子、父母、孫、祖父母で一番上の順位である
  2. 故人によって生活を支えてもらっていた
  3. 年齢条件を満たしている

「3」の条件でHさんとMさんの運命が分かれてしまいました。

たった1歳の違いですが、やむを得ないのです。

ただし、Mさんは60歳まで支払いがありません。

夫は60歳までは権利はあるけど、支払いは止まるというルールがあるから。

これが夫ではなく、妻が残された場合は違うんです。

妻が遺族の場合は年齢条件は存在せず、60歳になるまでおあずけ、なんてのもありません。

年金制度は特に寡婦(かふ)に対して手厚い。

受け取るのが男性なのか女性なのかで大きな違いがあるのが年金制度の特徴です。

さて、次回は事例をもう少し複雑にして、 子供がいた場合のことを考えてみます。

子供がいるととんでもなく難しくなるのが遺族年金なんです。

共働き世帯で妻が亡くなった時の年金を考える(後編)

目次1 どんな事例?簡単に言うと・・2 こんな事例を考えてみましょう3 今回の事例の何が問題なんでしょうか4 解説してみましょう4.1 国民年金と厚生年金の遺族年金はほぼ同じ条件4.2 亡くなった方自 ...


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。

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シモムー

シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供を続ける。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。

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