何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
遺族基礎年金自体がシンプルでわかりやすいことが影響しているのか、この問題はややマニアックなところを突いてくる内容になっています。
例えば亡くなった後に胎児が出生した場合。
また、健常者の子が後から障害を負った場合。
もちろん現実に起きる可能性はあるものの頻繁に耳にする内容ではありません。
私の年金相談の経験でも遭遇したことが無いので、銀行の窓口担当の人がここまで詳しく知っておく必要はないんじゃないかと思うんですけどね。
まさに試験のための知識が出るといったところでしょうか。
スポンサーリンク
過去10回の正解となった知識
- 2023春 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 2022秋 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2022春 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2021秋 胎児が出生した場合は遺族基礎年金の対象となる子となる
- 2021春 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 2020秋 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2020春(模擬)胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
- 2019秋 子のない配偶者には支給されない
- 2019春 胎児が出生した場合は遺族基礎年金の対象となる子となる
- 2018秋 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
よく正解になっている知識は以下の3つ。
- 胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
- 納付猶予制度の適用を受けている期間中の死亡でも対象となる
- 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
ほとんどが上3つの知識で正解となっていますからここから押さえるのが王道です。
出題傾向から年金制度を考える
胎児が出生した時点で年金権が生じる
胎児が出生したというのはそもそも何が問題なのか。
それは死亡時には子がいないということ。
子がいなければ誰も遺族基礎年金をもらえません。
この点、
2019年秋では
一定の要件を満たせば、
子がいなくてももらえる なんて出題がありました。
”一定の要件”って思わせぶりですよね。そんな要件ありませんので。
で、胎児の話に戻ります。

と思うかもしれません。
が、お腹の子は民法上は”人”ではありません。出生して初めて”人”ということになります。
ですので、”死亡時に子(人)はいない”となってしまうわけです。
ですのでこの原則を貫くとたまたま胎児だったというだけで遺族基礎年金がもらえず、残された遺族が保護されない。
そこで、
そのような子は死亡当時に生計維持していたとみなすことにして、”人”となった出生時に年金の権利が生じることにしています。(したがって、出生したらその翌月分から支給開始)
年金が遡れるのは権利が生じたところまで。
ですので、子が存在しない親の死亡時まで遡ることはありません。
老齢と遺族年金は権利が生じた当時の家族の状況を保障します。
権利が生じたタイミングで存在しない家族に関してはその後に家族になっても対象にしないわけですが、胎児だけは例外にしています。
では、障害年金は?
障害年金だけは権利が生じたあとでも、家族が増えさえすれば加算の対象になりますから、権利が生じた際の胎児のことは考える必要がないんです。
納付の実績に関係なく、一定の年金額が保障される
遺族基礎年金は母子家庭や父子家庭、孤児を保護するという趣旨。
そのため、亡くなった人に滞納が多かったとしても、年金額は一定(老齢基礎年金の満額)にして生活保障になるようにしている。
ただし、きちんと納めていなければ、年金をもらうための条件を満たせない可能性があります。
死亡日の前日における納付要件を判定されます(短期要件の場合)。
条件を満たしさえすれば、”金額”はまともな保障になるようにしているわけです。
保険料が猶予されていても被保険者であることに変わりはない
遺族基礎年金が支給されるのは大きくわけて2つ
- 被保険者が死亡した
- 老齢基礎年金の受給権者が死亡した
被保険者は年金制度加入中なわけですから、当然保障の対象。
ただ、
国民年金の第1号被保険者の場合は、被保険者であっても、
- 保険料を納めている
- 保険料を免除・猶予されている
- 保険料を滞納している
という3つのパターンがありえます。
これら3つのパターンどれに当てはまっても、被保険者であることに変わりはないので”被保険者死亡”という条件は満たせます。
(もちろん、これまでの加入期間のなかで滞納期間が多ければ保険料納付要件でハネられてしまいますけど)
出題では、50歳未満の納付猶予制度中に死亡したらNGという出題がされます。
そんなことはありません。
配偶者が受給する場合は年齢問わず
2018秋、2020秋、2022春、2022秋にはこの点が正解になったので整理しておきます。
遺族基礎年金は子のある配偶者または子が受給できます。
ここにおける”配偶者”は夫でも妻でも良いのですが、年齢要件はありません。
配偶者でも”夫”の場合は55歳以上であることの年齢要件がありますが、それは遺族厚生年金の話です。
遺族基礎年金は旧法時代の母子年金が起源であり、福祉的な要素が強いので、夫であっても(配偶者でありさえすれば)年齢を問わないのです。
2020秋、2022秋は、55歳まで支給停止という出題でした。繰り返しますが遺族基礎年金にはそんな条件ありません。
障害がある子は20歳まで受給できるが・・・
2021春にはこれまで正解になったことのない知識が正解に。
子の年齢要件についてです。
遺族基礎年金を子が受給する場合は、”原則として18歳の年度末まで、例外として障害者であれば20歳まで”というルールがあります。
出題は、
年度末に達した以後
に障害者になったとしており、ここが誤り。
この例外が適用されるためには、18歳の年度末までに障害者となっていなければいけません。
というのも、年度末に達したら遺族基礎年金の権利がその時点で失権してしまうから。
失権後に障害状態が1・2級となっても年金権が復活することはありません。だから誤りなわけです。
この論点は、遺族年金に限らず、子にかかる家族手当に関しても同じことが言えるので共通して押さえておきます。
2023春で再度正解となりました。
今回はこれが答えになる!
どの回でも胎児に関する論点は正解になりやすいのでしっかり理解。
正解とはならなくても必ず肢の一つとして並んでいます。
出生してから権利が生じるので、親の死亡時まで遡って年金権が生じるわけではない。これを押さえます。
- 胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
残りの2つもいつ正解になってもいいように頭にいれておきます。
- 納付猶予制度の適用を受けている期間中の死亡でも対象となる
- 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
特に年齢要件は最近のトレンドですので注意。「55歳」という年齢が出てきたら間違っている可能性が高いです。
シモムー
みんなのねんきん主任講師