どんな事例?簡単に言うと・・
2020年3月17日に「みんなのねんきん社会保険労務士法人」を設立しました。「社労士法人ってどうやって作るんだ?」という状態から自力で設立に至る経緯を残しておこうと思った次第。このコラムが「私も設立できました!」とお役に立てれば幸いです(あまり需要が無いと思うけど)。今回はまず自分が社労士登録するところからの経緯を。実は出だしからトラブルに遭遇しました。
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こんな事例を考えてみましょう
というわけで、そもそも社会保険労務士ではないシモムー。
ひょんなことから社労士法人を立ち上げることにしたのですが・・・。
メモ
社労士法人設立後、シモムーは代表の座を岡田社労士に譲り、社労士登録は抹消しています。現在、社労士ではありません。
今回の事例の何が問題なんでしょうか
社会保険労務士法人を設立するには、1人以上の社会保険労務士が法人の社員(設立時の役員みたいなもの)になって手続きしなければいけません。
私自身は1999年に社労士試験に合格し、社労士を名乗る資格自体はありました。
何年か前に一度開業登録して社労士を名乗っていたこともあったのですが、直近まで登録抹消していました。
今回、社労士法人を設立するにあたり、まずはシモムー私自身が社労士登録をしないといけません。
一体どんな手続きが必要で費用はいくらかかるのか。そして何よりも一体何のために法人でスタートするのか。
そこが問題となります。
解説してみましょう
なぜ社会保険労務士法人なのか?
ビジネスをする場合、「個人」で行う事業と「法人」で行う事業の2つがあります。
どちらであってもビジネスを始めるにあたっての制約はありませんが、取引をするうえでは目に見えない有利不利があります。
一般的には「法人」の方が信用度が高いと言われますし、「法人でないと取引しない」ということもあります。
私シモムーは既に教育事業の会社を立ち上げているので、その辺りの事情は経験しています。
「このサービスを契約するにあたり、法人でないと駄目です」なんてことがありました。
つまり、
「法人ならビジネスとしてちゃんとやるだろうから、そういうところでないと取引お断り」
ということ。
これはビジネスの世界では当たり前の光景です。
さて、
社会保険労務士法人のメリットは大きく2つあります。
- 事業の縦のつながり
- 事業の横の広がり
1については、たとえば顧問契約を結んだ場合、個人契約では何か不測の事態があった場合に契約が終わってしまいます。
つまり、
契約当事者のシモムーが死んだら契約終了ってことです。
法人との契約では別の担当者が業務を続けることができますから事業が縦でつながりますね。
これは社労士法人に限らず、法人で事業を行うこと全般に言えることです。
2については、お客様との相談窓口(支店)を増やすことができます。
「年金をもっと身近に、もっとわかりやすく」という理念を掲げる「みんなのねんきん」ですので、支店を増やせば我々をもっと身近に感じてもらえるのではないか。
支店を増やすことで事業を横に広げることができます。
(ちなみに、社労士の個人事務所で支店を作ることはできないルールになっています)
以上から、「みんなのねんきん」は法人でいこう、と決めたわけです。
とはいえ、
法人にすると、登記や税務会計の手続きなど個人事業に比べてとんでもなく面倒になります。
ただ、そんなものは百も承知。
スタート時点でビジネスとしてやっていこうという決意表明をする上でも私は「法人」にこだわりました。
法人を作る前に個人として社労士になるべし
さて、
法人を作ることを決めましたが、まず、私シモムーが社労士登録をしないといけません。
そこで、
東京都社会保険労務士会(以下、「社労士会」)に問い合わせたところ、2020年3月登録ということを前提に2月に登録研修を受けること、その際に書類を提出することを要求されました。
研修場所は東京のお茶の水。
社労士会が入る「御茶ノ水ソラシティ」です。
拘束時間は4.5時間。
事前に「到着順に前に座る」ということを聞いていたので、とにかくギリギリで到着。
後ろの席に陣取りました。
研修が始まる前にこれからご紹介する書類を最初に提出してしまいます。
社会保険労務士登録申請書
これは社労士会を経由して、全国社会保険労務士会連合会(以下、「連合会」)に提出するもの。3万円の収入印紙を貼って提出します。
社労士法によれば、連合会の名簿に登載されて正式に社労士になれます。
会員情報届出書
これは社労士会に提出するもの。
社労士登録すると事務所所在地の社労士会に強制的に入会することになるのでそのためのもの。
会によってフォーマットが異なるんだろうと思います。
写真をつけた書類 2枚
連合会と社労士会に提出する2枚の書類が必要。
会員証の発行に使われます。
誓約書
社労士会に対して会の規則を遵守する旨の誓約書です。
試験に合格していることの証明
私が合格した1999年(平成11年)は厚生省・社会保険庁が試験をやっていた最後の年。
翌年から社労士連合会が試験をするようになり、試験問題も記述式から選択式に変わりました。
当時の合格証のコピーが必要です。当時はハガキサイズのちょっと拍子抜けするものでした。
最初の費用は先払い、次からは口座振替
上の3万円の収入印紙代の他に社労士会に会費やら手数料を払わないといけません。
これは事前に振り込んでおきます。
会費が8,000円と安いですがこれは3月の1ヶ月分のみ。
法人の社員・開業者は年間96,000円。なので、1ヶ月分は8,000円となります。
以後の会費の支払いは口座振替で納めます。
法人作るなら大事な「社員資格証明願」
これは社労士法人を作るうえで、連合会に対して「確かに社員としての資格があるッ!」旨の証明書を発行してもらうもの。
証明書がないと、法人の基本ルールを定める「定款」も作れないですし、法人の登記申請もできません。
この証明書をいかに早くに手に入れるかが法人を迅速に設立するのに左右します。
もういやだ!こんなトラブルありました
トラブル1 自分自身では実務経験を証明できない
私はかつて開業登録していました。
したがって、2年以上の実務経験は当然あるわけです。
これが無い場合は事務指定講習というのを受けて、2年の実務経験と同等以上の知識をつけることになります。
しかし、疑問が。
ということ。
完全に一人でやっていたので、それを証明してくれる従業員はいません。
問い合わせたところ、この形では証明にならないとのこと。
どうすりゃいいの・・・。
というわけで、自分の会社における社会保険手続き実務経験を他の役員と従業員に証明してもらうことに。
必ず2名以上の証明者が必要なんだそうです。
トラブル2 引っ越しするなら社労士になってから
私はこんな事情がありました。
- 登録研修直前で自宅を引っ越し
- 転出・転入届はまだ
- 書類の住所欄は全て新住所で記載
つまり、
住民票上は旧住所なのに、提出書類には新住所を記載。
というわけで、これでは受付不可!ということに。
何が大ピンチかというと、
- 社労士会が連合会に書類を回送するスケジュールが3日後に迫っていて、この日を過ぎると4月登録ということになってしまい、法人設立が1カ月ずれてしまう
- 古い住所では「社員資格証明」が連合会から発行されない
つまり、4月に予定していた社労士法人設立が遅れてしまうということ。
2年前から2020年4月を目標に準備してきたので遅れることは絶対に避けたい。
解決策はこれしかありませんでした。
- 書類上は旧住所に全て修正して研修時に提出
- 3日以内に新住所の住民票を再度社労士会に持参、3月1日開業登録したと同時に住所変更処理
登録したその日付けで住所変更っていうのはかなりの離れ業。
解決策は必ずあるものです。
諦めたらそこで試合終了です(安西先生風)。
というわけで、なんとか3月1日無事に社労士登録が完了しました。
ちなみに住所変更で2,000円かかりました。余計な出費でした。
さぁ、ここからが社労士法人設立のスタート。
しかし・・・。
更なる苦難の道のりが待ち受けていたのです・・。
今回の事例まとめ
今回は社労士法人を設立するにあたり、先行して必要な個人の登録について解説してみました。
ポイントは以下のとおり。
- 社労士法人を設立するためには個人の社労士が、設立する法人の社員として手続きを進める必要がある
- 個人の社労士登録をするためには事前の登録研修に出席することが義務。そこで同時に書類を提出する
- 連合会が発行する「社員資格証明書」をいかに早く手に入れるかにより法人設立のスケジュールが変わってくる
2つのトラブルがありましたが、ま、多くの人には関係の無いレアケースだと思います。
今回はトラブルを乗り越えることができましたが、
社労士登録→抹消→社会保険とは無関係の仕事→再度社労士登録希望
という人の場合、実務経験の証明をどうするのか疑問に思いました(そのためだけに事務指定講習を受けるのだろうか?)
また、上に列挙しませんでしたが「住民票」も必要です。
住民票は今コンビニで手に入りますよ。
神奈川の住所なのに、御茶ノ水のコンビニで住民票を取れたのはちょっとした感動でした。
ただし、マイナンバーカードが必要。こんなふうに機械の上に置くだけ。
確定申告でも使えますし、なぜみんなマイナンバーカードを持たないのか不思議で仕方ありません。
そして、
最後に初回登録で掛かった費用についてまとめておきましょう。
- 連合会の名簿記載のための登録免許税(収入印紙):30,000円
- 社労士会の入会登録手数料:30,000円
- 社労士会の入会金(開業):50,000円
- 年会費の月割り分:8,000円から96,000円(入会した月次第)
社労士会への登録の費用は各都道府県の社労士会によって異なるそうです。これはあくまで東京の例ですので。
ちなみに、
政治連盟に入ると他に費用がかかりますがこれは任意だそうです。団体の趣旨に賛同するなら入ればいいでしょう。
さて、
次回は社労士法人をどう作っていくのかをまとめていきます。
これまた大変な作業でした。
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シモムーの社労士法人自力で作った物語 ー社労士法人設立編ー|みんなのねんきん
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事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。
シモムー
みんなのねんきん主任講師