気になる他人の年金額をそっと覗いてみたらわかったこと|みんなのねんきん

大須賀信敬

みんなのねんきん上級認定講師

  どんなニュース?簡単に言うと

皆さんは他の人がいくら年金をもらっているのか、気になることがありませんか。

「男性と女性」や「会社員と自営業者」とでは、どのくらいの金額差があるのかなども気になるところでしょう。

そこで今回は、現在の年金受給者が受け取っている老齢年金の額を見ていきましょう。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

民間企業出身者の年金額は平均で月に14万4千円

「今の高齢者は年金をいくらもらっているのだろう?」。

こんな疑問を持つ人は少なくないでしょう。

実は、年金の受給額に関する情報は厚生労働省から発表されており、最新のデータでは2021(令和3)年度末時点の年金額を確認することができます。

今回はこのデータを使い、現在の年金受給者が受け取っている老齢年金の額を整理してみましょう。

それでは、「民間企業で勤務経験がある人」の老齢年金から見ていきます。

民間企業で働いたことがある人の年金なので、国民年金と厚生年金の両方の年金をもらえる人が対象です。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらえる人は、平均で1カ月にいくらくらいの金額を受け取っているのでしょうか。

公表されたデータによると、平均額は1カ月当たり143,965円とのことです。

1年間に換算すると1,727,580円になります。

この金額には、在職中などで年金が全額停止されている人の年金額も含まれています。

ところで、同じ年金受給者であっても、65歳前の場合には「まだ老齢基礎年金は受け取っていない」「特別支給の老齢厚生年金が報酬比例部分だけである」などの理由で、65歳以降の受給者よりも年金額が少なくなりがちです。

そこで、そのような人たちを除いて平均額を出し直すと、1カ月当たり149,656円になります。

1年間では1,795,872です。

これが「民間企業で勤務経験がある人」の老齢年金の平均的な姿のようです。

ここがポイント! 民間企業出身者の年金受け取り額

現在、民間企業出身者が受給している年金の平均額は、月額143,965円である。老齢基礎年金を受給していない人などを除くと、月額149,656円になる。

民間企業出身の男性は月に16万3千円、女性は10万5千円

次に「民間企業で勤務経験がある人」の年金受け取り額を、男性と女性とで比較してみましょう。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらえる男性の平均受け取り額は、1カ月当たり163,380です。

1年間に換算すると、1,960,560を受け取る計算になります。

一方、同様の条件の女性は、1カ月当たり104,686の年金を受け取っています。

1年間では1,256,232です。

従って、女性が受け取っている老齢年金は、男性の3分の2に満たない額ということになります。

チャーミー
チャーミー
女性が男性よりもこんなに年金が少ないなんて、不公平じゃないっ!

老齢厚生年金は「厚生年金に加入した期間の長さ」と「給料額の多さ」の両方に比例し、金額が決まる仕組みを採用しています。

女性の場合には男性よりも給料の水準が低かったり、出産や育児などで会社を辞めたために厚生年金の加入期間が短くなったりしがちです。

そのため、どうしても女性が受け取る年金額は、男性よりも見劣りをしてしまいます。

ここがポイント! 民間企業出身者の年金額の男女差

民間企業出身の男性受給者は平均で月額163,380円の年金を、女性受給者は平均で月額104,686円の年金を受け取っている。女性が受け取る年金は、男性の3分の2に満たない額である。

人数では男性17万円台、女性9万円台が最も多い

多くの受給者の “現実の姿” を知るには、「年金をいくらもらっている人が一番多いのか」も確認をする必要があります。

それでは、次にこの点を見ていきましょう。

民間企業出身の男性受給者について「受け取り額別の人数」を見ると、最も多いのは1カ月当たり17万円以上18万円未満の年金をもらっている人になります。

国民年金と厚生年金の両方をもらえる男性の8.9%が、17万円台の金額を受給中です。

前述のとおり、男性の平均額は1カ月当たり163,380円ですから、男性受給者が実際に受け取っている金額は平均額よりも少し高い人が一番多いようです。

【みんなのねんきん】気になる他人の年金額をそっと覗いてみたらわかったこと

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一方、女性の場合には、1カ月当たり9万円以上10万円未満の年金をもらっている受給者が最も多くなっています。

国民年金と厚生年金の両方をもらえる女性の15.9%が、9万円台の金額を受給しています。

女性の平均額は1カ月当たり104,686円ですが、女性受給者が実際に受け取っている金額は、男性とは反対に平均額よりも少し低い人が一番多いことになります。

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モモ
モモ
一番たくさん年金をもらっている人は、いくらくらいもらってるの?

正確な金額は分かりませんが、月に30万円以上の年金を受け取っている人が存在することは公表されています。

2021(令和3)年度末時点で月額30万円以上の年金を受け取っている人は、全国に14,816いるそうです。

この人数は、国民年金と厚生年金の両方をもらえる人全体の約0.1%に当たります。

つまり、民間企業出身の年金受給者の上位0.1%が、現状で最高年金額を受給している人たちということになります。

トラ
トラ
よしっ。ワシも「上位0.1%」を目指すぞ!
あらあら、お花畑が満開のようね・・・
チャーミー
チャーミー

月に30万円以上ということは、1年間に360万円以上の年金を受け取っている計算になります。

女性受給者も361いるそうです。  

ここがポイント! 受給者の人数が最も多い年金額

民間企業出身の男性受給者は、月に17万円台の年金をもらっている人が最も多い。女性の場合には、月に9万円台の年金受給者が最も多い。

国民年金の平均受け取り額は月に5万1千円

次は、老後に「国民年金だけをもらっている人」について見ていきましょう。

老齢厚生年金はもらえずに老齢基礎年金だけをもらっている人なので、自営業者やフリーランサーだった人などが該当します。

老後の年金が国民年金だけの人の場合、年金の平均受け取り額は月に51,338です。

1年間に換算すると、616,056となります。

これは2021(令和3)年度末の数値ですが、当時の老齢基礎年金の満額は年額で780,900円でしたので、満額の8割弱の金額ということになります。

ホームズ
ホームズ
自営業者だった人は、満額の8割弱しか年金をもらってないのか。

必ずしもそうとは言えません。

このデータの中には、「専業主婦の期間が長かった人」「障害を持っていて働けなかった人」「保険料の免除・猶予をたくさん受けた人」「海外に住んでいたため、国民年金に加入しなかった期間が長い人」など、自営業者やフリーランサーだった人以外にもさまざまな人たちの年金額が含まれています。

そのため、必ずしも「自営業を営んでいた人は、満額の8割弱しか年金をもらっていない」ということにはならないでしょう。

また、受給者の人数で見ると、月に6万円以上7万円未満の年金をもらっている人が最も多く、国民年金だけをもらう人の4分の1が該当するそうです。

2021(令和3)年度の老齢基礎年金の満額は月額で65,075円でしたので、月に6万円以上7万円未満の年金をもらっている人の中には満額受給の人も含まれることになります。

従って、自営業を営んでいた人が満額の老齢基礎年金をもらっているケースも、決して少なくないはずです。

しかしながら、民間企業出身者が平均で月に143,965円の年金をもらっていることを考えると、老齢基礎年金の満額はその半分にも及ばないのですから、自営業者やフリーランサーとして働いてきた人の年金額が心もとないことには変わりがないようです。

なお、2017(平成29)年8月から、年金を受け取るために必要な加入期間が25年から10年に短縮されましたが、上記の数値には25年未満の加入で年金を受け取っている人は原則として含まれていないようです。

ここがポイント! 老齢基礎年金だけを受け取る人の年金額

老齢基礎年金だけを受給している人の平均受け取り額は月額51,338円で、満額の8割弱の額になる。ただし、受給者の人数で見ると、月に6万円台の年金を受け取る人が最も多い。

1都3県は厚生年金の高額受給者が集まっている?

最後に、老後の年金の受け取り額が受給者の住んでいる地域により、どの程度の違いがあるかを見てみましょう。

対象は民間企業に勤務経験があり、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらえる人です。

都道府県別に見ると年金額が最も多いのは神奈川県の受給者で、1カ月当たり165,321とのことです。

次に多いのが千葉県の年金受給者で月額160,017円、3番目が東京都の受給者で月額158,661円です。

さらに4位は奈良県、5位は埼玉県と続き、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県がベスト5に名を連ねています。

一方、最も年金額が少ないのは青森県の年金受給者で、1カ月当たり122,111

1位の神奈川県の受給者より、月に43,210円少ない額になっています。

年間に換算すると、青森県の年金受給者は神奈川県の受給者よりも52万円近く年金が少ない計算になります。

次に少ないのが秋田県の受給者で月額122,914円、その次が宮崎県の受給者で月額123,220円です。

皆さんのお住まいの地域は、何位でしょうか?

次の表で確認をしてみてください。

【みんなのねんきん】気になる他人の年金額をそっと覗いてみたらわかったこと

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モモ
モモ
神奈川県が1位ってことは、神奈川県 “出身の人” は高給取りが多いってこと?

そうとも言えません。

上記のデータは、2021(令和3)年度末時点の年金受給者の登録住所をもとに作成されたものだと思われます。

従って、あくまで「2021(令和3)年度末時点で神奈川県に住んでいる人の年金額が最も多い」ということであり、「神奈川県 “出身の人” の年金額が最も多い」ということを意味しているわけではありません。

そのため、神奈川県 “出身の人” が他の地域の出身者よりも高給取りかどうかは、定かではありません。

ここがポイント! 都道府県別に見た民間企業出身者の年金額

神奈川県の受給者の年金額が月に165,321円で最も多い。一方、青森県の受給者の年金額が月に122,111円で最も少ない。

今回のニュースまとめ

【みんなのねんきん】上級認定講師大須賀先生

今回は「現在の年金受給者が受け取っている老齢年金の額」について見てきました。

ポイントは次のとおりです。

  • 民間企業出身者が受給する老齢年金の平均額は月額143,965、老齢基礎年金を受給していない人などを除くと月額149,656である。
  • 民間企業出身者の平均受給額を男女別に見ると男性が月額163,380円、女性が月額104,686円で、女性の受給額は男性の3分の2に満たない
  • 民間企業出身者の男性は、月額17万円台の受給者が最も多い。女性は月額9万円台の受給者が最も多い。
  • 老齢基礎年金だけを受給している人の平均受給額は月額51,338で、満額の8割弱である。人数で見ると、月額6万円以上7万円未満の受給者が最も多い。
  • 民間企業出身者の平均受給額を都道府県別に見ると、神奈川県の受給者が月額165,321円で最も多い。

現在の高齢者の年金受給額を見て、皆さんはどんな印象を持ちましたか。

「意外にもらっているな」「これだけしかもらっていないのか」など、感想はさまざまだと思います。

ぜひ、参考にしてください。

出典・参考にした情報源

厚生労働省:令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(PDF)



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みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。