振替加算で600億円の支給漏れが発覚!続けて調べてみた|みんなのねんきん

出典資料が発表された日:2017年09月15日

どんなニュース?簡単に言うと

2017年9月13日。振替加算が約600億円、10万人に対して支給漏れが生じている報道がされました。更にその2日後、日本年金機構から相談体制の拡充発表がされました。振替加算の支給漏れに関する続報を分析してみます。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

2017年9月13日。

振替加算の約600億円にのぼる支給漏れのニュースが流れました。

あれから1週間。

電話応対の席数を増やしたり、国会で年金機構の理事長が説明に追われたりと報道が続いています。

この1週間で何が起きたのか、年金機構の追加の発表も踏まえて、この問題を続けて調べてみます。

2日後、年金機構から相談体制拡充の発表あり

最初の発表から2日後の9月15日。

年金機構からの追加の発表がありました(「振替加算の総点検についての相談体制の拡充」記事末尾にPDFファイルがあります)

専用ダイヤルの相談時間を長くするとのこと。

平日については、午前 8 時 30 分より午後 8 時まで、土曜日及び日曜日については、午前 8 時 30 分より午後 5 時 15 分まで

併せて、電話の数を増やして対応を行う旨記載がありますが、具体的な数字はわかりません。

別の報道を見てみると、10台から40台に増やして対応しているとのこと。

その結果は以下のとおり。

初日の14日は用意した10回線に4万9790件の電話があり、591件しか応答できなかった。機構は15日に回線数を40に増やし、受付時間も延長。17日には電話の件数が少なくなり、応答できた割合も80%強に改善したが、4日間では9万6875件のコールに対し、応答は5.7%の5519件にとどまった。

(出典:共同通信社 2017年9月20日)

90%以上の相談に対応できていないというのが現状のようです。

専用ダイヤル以外でも常設されている「ねんきんダイヤル」や年金事務所でも相談受付をしているとのこと。

しばらくは全ての窓口で対応しないと無理そうです。

よくある質問1 元公務員の夫が昭和61年3月以前に退職、私に加算は?

年金機構が発表した資料によると、2つのよくある質問が載っています。

第一報発表の2日後の資料で、かつ、専用ダイヤルをオープンした翌日ですから、よっぽど同じような質問があったんじゃないかと思います。

1つ目はかなりの年配の方の相談内容。

夫は昭和61年3月以前に、公務員として20年以上勤務した後に退職しました。私には振替加算が加算されていないようですが、加算されるのでしょうか。

答えは以下のとおり。

昭和61年3月以前に、公務員期間が20年以上ある方が退職した場合は、旧法の退職年金が支給されます。旧法の退職年金を受け取っている方の配偶者(妻)には、振替加算は加算されません。

資料にはこれしか記載がないので、なぜ?というのがわかりません。

この振替加算の支給漏れ問題でやっかいなのは、全ての人が加算の対象ではないということ。

例え加算がなくても問題が無い人もいるというのが頭を悩ますところです。

前回の記事でも、なぜ加算するのかという基本的なことを説明しました。

振替加算で600億円の支給漏れが発覚!急いで調べてみた|みんなのねんきん

どんなニュース?簡単に言うと 振替加算が約600億円、10万人に対する支給漏れが生じているとのこと。日本年金機構の自主的な調査で発覚しました。新聞・テレビの報道や日本年金機構発表の資料から、振替加算の ...

これはもう少し、しっかり説明しないと、「加算されません」では納得いかないと思います。

振替加算は夫婦そろって現行制度対象者でないともらえない

まず、振替加算は現行制度の年金にしかない仕組みなんです。

ですので、現行制度の年金をもらう人でないと加算はありません

ここで、

現行の年金制度は昭和61年4月から始まりました。

当時の年金は基本的に60歳からもらえるので、昭和61年4月以降に60歳になっていく人たちが現行制度対象者となります。

別の言い方をすると、本日生まれた赤ちゃんも含めて、当時60歳未満だった人が現行制度でもらう人。

その境目が大正15年4月2日以降生まれの方となります。

前回の記事では、

夫の年金に妻を対象とした加給年金(家族手当)が加算されている

加給年金が終了したら、妻に振り替えて、妻の方に加算してあげよう

と説明しました。

振替加算は現行制度の仕組みなので、まず、妻は大正15年4月2日以降生まれでないとダメ

では振替加算をもらわない夫の方は生年月日の制約はない?

あります。

結論。

夫婦そろって現行制度対象者でないと振替加算はありません

なぜかというと、旧制度の加給年金は妻が65歳になっても加算が終了しないからです。

つまり、旧制度では加給年金は夫の年金に生涯にわたって加算され、妻に振り替わらない。

というわけで、

「旧法の退職年金を受け取っている方の配偶者(妻)には、振替加算は加算されません。」

となります。

 

よくある質問2 振替加算を確認する方法は?

ご自身の年金の通知を見るのが一番早い。

年金機構の資料には、

「国民年金・厚生年金保険 年金決定通知書・支給額変更通知書」

「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」

で確認できると出ています。

後者は今年の6月に送っています。

あとは電話で確認するということでしょうか。(今はつながりにくいとは思いますけど)

振替加算は受給者の年金のデータベースを見れば一発でわかります。

専用ダイヤル以外にも「ねんきんダイヤル」でも大丈夫。

基礎年金番号を伝えるのと一緒に本人確認の手順がありますからご注意を。

国会で閉会中の審査 理事長が陳謝

2017年9月20日には閉会中の国会で審査なるものがありました。

つまり、今回の年金行政の不祥事を国会に説明せよということでしょう。

野党からは今回の問題以外にも支給漏れがある可能性について質問が相次いだ。厚労省はすでに年金機構に対策チームを立ち上げ、今回のような構造的な問題がないか過去の事務処理の誤りを含めて点検させると説明。年内にも調査を終える予定だ。

(出典:日本経済新聞 2017年9月20日)

別の支給漏れもないかどうか点検させるとのことですから、年内はこの問題がまだまだ報道されそうです。

今回のニュースまとめ

今回のニュースをまとめると以下のとおり。

  • 専用ダイヤルの電話数増加と相談時間延長の発表
  • 旧法時代の退職年金絡みの相談が多数だった模様
  • 閉会中の国会で追及 他の支給漏れがないかどうか対策チームを立ちあげて再点検の方向

最初の発表からまだ1週間しか経過していないので混乱が続いています。

特に電話が殺到しているというのは当然のことだと思います。

”もらえるものがもらえていない”

となれば、全員が「俺は大丈夫か?」と思うから。

そもそも、振替加算が加算される条件がきちんと知られているのだろうか・・。

今回の”よくある相談1”だけ見ても、年金は難しすぎるんだよってグチりたくなります。

さて、

まだまだ続きそうなこの問題。

続報があればまた取り上げていこうと思っています。

出典・参考にした情報源

日本年金機構 振替加算の総点検についての相談体制の拡充 2017年9月15日

日本経済新聞 厚労省、年金支給漏れを追加調査 機構に対策チーム  2017年9月20日



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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。