出典が発表された日:2016年10月26日
どんなニュース?簡単に言うと
国会の厚労大臣の答弁に関する朝日新聞の記事に厚労省が講義したというニュースが入ってきました。年金額の水準を測る所得代替率に関してのもの。最終的に記事は訂正されたのですが、そのいきさつと所得代替率について考えてみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
厚労省が新聞社に抗議?
一体何が起きたんだ?
厚労省曰く、朝日新聞の記事に事実誤認があったとのこと。
国会で民進党の質問に対して塩崎厚労大臣の答弁があり、その報道の内容に厚労省が抗議したんです。
問題になったのは「所得代替率」。
その経緯を解説してみます。
所得代替率とはなんぞや?
そもそも所得代替率とは、年金が一定以上の水準に達しているかのモノサシになるもの。
年金はそれなりの水準に達していなければ老後の所得保障にならない。
年金額が最低限の保障を維持できているか、この所得代替率を指標としています。
具体的には、
現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合
を示したもの。
これが将来に渡って50%を上回る水準になっていないとダメと法律に書いてあります。
そこで、
これからも老後の所得保障として現役世代の収入の半分を超えているのか?
政府は5年に一度、検証を行っています。
直近では平成26年に検証が行われました。
様々な状況をシミュレーションして、50%を上回る水準は確保できているとの結果が出ています。
こんな経緯があった
経緯としては所得代替率の計算式に関して民進党の議員が質問したことが発端です。
所得代替率は
現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合
ですが、もう少し具体的な計算式は以下のとおり。
元サラリーマンと専業主婦の2人分の年金額
現役世代の税金や社会保険料を引いた可処分所得
欧米では税金と社会保険料を分母分子ともに両方含めるか両方除くかのどちらかで計算するのが一般的なんだそうです。
日本では分母だけが可処分所得になっています。
仮に税や社会保険料を含めると所得代替率が低下する、今の計算方法はおかしいと質問したようです。
そして、厚労大臣は
- 計算方式を変えるとモノサシとしての役割を果たせない可能性がある
- 今後の所得代替率の指標の在り方は次回の検証に向けて議論する課題である
と答弁したとのこと。
こんな経緯がありました。
朝日新聞の記事と厚労省の抗議
2016年10月22日付朝日新聞にはこうありました。
厚生労働省が年金の試算で不適切な計算方式を使い、現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合(所得代替率)が高く算出されるようになっていた。
対して、厚労省は
所得代替率は法律に規定があって、それに基づいて検証をしているから不適切ではない。事実誤認だ。
政府は厚生年金の所得代替率について「50%以上を維持」と公約しているが、将来的に割り込む可能性が高くなった。
対して、厚労省は
直近の財政検証でも経済再生と労働参加が進めば50%を上回ることは確認できているから事実誤認だ。
塩崎氏は年金の試算について『役割を果たしていないこともありうる』と述べ、不十分だと認めた
対して、厚労省は
所得代替率の計算方法を民進党の議員が指摘された方法にすると、所得代替率がものさしとしての役割を果たせない旨答弁した。明らかに誤解した記事だ。
とそれぞれ抗議したわけです。
抗議を受けて記事は訂正された
2016年10月26日。
朝日新聞はそれぞれ以下の訂正しました。
- 「不適切な計算方式」を欧米の計算方法に比べて日本の所得代替率は高くなる計算式になっていたと変更
- 「将来的に割り込む可能性が高くなった」は削除
- 答弁内容を取り違えたので変更
これで事態は一応収束しました。
今回のニュースまとめ
今回のニュースをまとめると以下のとおり。
- 所得代替率とは現役世代の平均的な収入に対する年金額の割合
- 所得代替率の計算方式についての朝日新聞の報道に厚労省が抗議
- 抗議を受けて朝日新聞は記事を訂正した
厚労省の報道発表は常にチェックしているのですが、「新聞記事に抗議しました」は初めて見たのでちょっと驚きました。
他人同士の喧嘩には興味が湧くもの。
で、
確かに、内容をしっかり読み込んでみると、朝日新聞には悪意を感じます。
現行の所得代替率は不適切な計算方法で、計算方法を変えれば将来的に50%割れの可能性が大きい。所得代替率がその役割を果たしていないと大臣が認めた。
って、これ、全くの誤報じゃないですか。
欧米の計算式が一般的だからといって、直ちに日本の計算式が不適切とは言えないと思います。
単なる憶測で「50%割れの可能性が高くなった」というのはただ不安を煽るだけです。
挙句の果てには答弁の内容が書き換わっている。
ってアンタ・・・。
別に私は政府の回し者ではないですが、厚労省が抗議するのは当然だと思います。
新聞に限らず、報道には誤りの可能性があり、誤っていなくても送り手による表現の偏りがあるということを実感します。
ただ、
今回の報道で、所得代替率についていろいろ考える契機になりました。
- 所得代替率の分母だけはなぜ、可処分所得なんだろうか・・。
- わざと分母が小さくなるようにしているのか・・。
- これは、国民年金の納付率と同じ考え方か・・。
調べてもよくわかりません。
厚労省は抗議の中でこういった部分を説明して欲しかったのですが・・。
シモムー
みんなのねんきん主任講師