どんなニュース?簡単に言うと
現在、わが国の公的年金業務は、マイナンバーを利用して運営されていることをご存じですか。マイナンバーを使って年金業務を行うと、何かメリットでもあるのでしょうか。今回は、マイナンバーと年金の関係を見ていきましょう。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
そもそもマイナンバーとは
マイナンバーは正式には個人番号と呼ばれ、日本に住民票があるすべての人に割り当てられている 12 桁の番号です。
この番号は社会保障・税・災害対策の3つの分野で、他の組織の保有する個人情報について、個人を特定して確認するためなどに使用されています。
通常、個人情報は氏名や住所だけで管理するのは難しいので、情報に番号を割り当て、その番号を使って管理するという手法が用いられます。
例えば、公的年金業務を行う日本年金機構の場合には、個人情報に割り当てる番号として「基礎年金番号」が使われています。
これに対して、ハローワーク(公共職業安定所)では「雇用保険の被保険者番号」が、市区町村では「住民票コード」が使われており、組織ごとに異なる番号でそれぞれの個人情報が管理されています。
このように、個人情報の管理に使用する番号が異なる場合には、他の組織が保有する個人情報について、番号を頼りに個人を特定して確認することが難しくなります。
“自分の組織の番号”と“他の組織の番号”との間には、直接的な関連性がないからです。
例えば、ハローワークの保有する個人情報について、日本年金機構が「基礎年金番号」で個人を特定して確認しようと思っても、「基礎年金番号」と「雇用保険の被保険者番号」との間には何も関連性がありません。
そのため、対象者の特定ができないことになります。
そこで、この問題を解決するために、「異なる組織間で“同じ番号”を使う」という方法が始まりました。
具体的には、社会保障・税・災害対策の3つの分野で、異なる組織同士が“共通に利用する番号”としてマイナンバーを国民一人ひとりに設定します。
さらに、それぞれの組織で、マイナンバーを“自分の組織の番号”と一緒に個人ごとに登録しておきます。
このような方法をとることにより、“組織ごとの番号”同士には何の関連性がなくても、マイナンバーを使えば別の組織が保有する個人情報について、個人を特定して確認できるようになるわけです。
例えば、日本年金機構ではマイナンバーを「基礎年金番号」と一緒に個人ごとに登録しておき、ハローワークではマイナンバーを「雇用保険の被保険者番号」と一緒に個人ごとに登録しておきます。
その結果、「基礎年金番号」と「雇用保険の被保険者番号」との間には何の関連性もありませんが、それぞれの番号と一緒に登録されているマイナンバーを使うことで、相手の組織が保有する個人情報について、個人を特定した上での確認が可能になるものです。
これがマイナンバーの仕組みです。
マイナンバーは 2015(平成 27)年 10 月から国民への通知が始まり、その後、2016(平成 28)年1月から行政機関による利用が開始されました。
公的年金業務を行う日本年金機構でも、行政機関と同様に 2016(平成 28)年1月から業務にマイナンバーを利用する予定でした。
ところが、その前年である 2015(平成 27)年5月に、日本年金機構が外部からサイバー攻撃を受け、125 万件におよぶ個人情報を流出させるという大規模な不祥事が発生したため、年金分野でのマイナンバーの利用は延期されることになります。
その後、行政機関から遅れること1年、2017(平成 29)年1月から、日本年金機構でも年金業務でマイナンバーを利用することになったものです。
ココがポイント! 「マイナンバー」とは
社会保障・税・災害対策の3つの分野で、他の組織が保有する個人情報について、個人を特定して確認するためなどに使用している番号である。
マイナンバーにより年金手続きの「添付書類」が不要に
年金業務でマイナンバーを利用する最大のメリットは、年金の手続き時に添付書類が不要になることです。
年金の各種手続きの中には、行政機関が保有する個人情報の確認が必要になるものがあります。
そのため、従来は年金の手続きを行う本人が、「行政機関の発行した証明書類」を年金手続き用に準備し、日本年金機構に添付書類として提出しなければなりませんでした。
しかしながら、年金業務でマイナンバーを利用できるようになると、日本年金機構が行政機関の持つ個人情報を直接確認できるため、手続きを行う本人がわざわざ添付書類を用意する必要がなくなるものです。
現在、マイナンバーの利用により年金の手続き時に添付が不要になるのは、次の5種類の書類とされています。
- 税金(地方税)の関係
- 住民票の関係
- 労災保険の関係
- 地方公務員の災害補償の関係
- 共済の年金給付の関係
ただし、上記書類が例外なく提出不要となるわけではありません。
ケースによっては、添付書類として提出を求められることもあります。
なお、先ほどマイナンバーの仕組みを解説する際に、説明の便宜上、日本年金機構とハローワークとの関係を例に取り上げました。
しかしながら、現在、日本年金機構におけるマイナンバー利用は、ハローワーク関係については準備段階にあります。
そのため、現時点では年金の手続きをする際に、雇用保険関係の書類は添付が不要にはなりません。
ココがポイント! 年金業務でマイナンバーを利用できるメリット
日本年金機構が、マイナンバーを使って行政機関の持つ個人情報を直接確認できるため、年金の手続きを行う本人が添付書類を用意しなくてよくなる。
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「年金の受給手続き」で添付が不要になる書類
それでは、代表的な手続きである「年金の受け取り手続き」について、どのような添付書類が不要になるかを見てみましょう。
《添付不要の書類1》本人の「生年月日」を明らかにできる書類
元来、年金の受け取り手続きの際には、手続き用紙に記載された本人の生年月日に誤りがないかを確認するため、市区町村が発行した「生年月日を確認できる書類」を添付することが必要とされていました。
具体的には、『戸籍謄本』『戸籍抄本』『戸籍の記載事項証明書』『住民票』『住民票の記載事項証明書』のいずれかを手続き用紙に添付することが求められていたものです。
しかしながら、年金業務におけるマイナンバーの利用により、「住民票関係の書類」は原則として添付が不要となりました。
そのため、現在は手続き用紙にマイナンバーを記載すれば、本人の生年月日を明らかにできる書類として『戸籍謄本』『住民票』などを提出する必要はありません。
この取り扱いは、老齢年金、障害年金の受け取り手続き時に可能となります。
《添付不要の書類2》本人と加給対象の家族との「生計が同一か」を確認できる書類
扶養家族がいることによる年金の上乗せを、「加給」などといいます。
家族が加給の対象と認められるには、原則として年金を受け取る本人と家族との「生計が同一であること(簡単にいうと「一緒に暮らしていること」)」が必要となります。
そこで、この点を確認できる書類として、従来は『世帯全員の住民票の写し』を手続き用紙に添付することが求められていたものです。
しかしながら、年金業務におけるマイナンバーの利用により、前述のとおり「住民票関係の書類」は原則として添付が不要となっています。
そのため、現在は手続き用紙にマイナンバーを記載すれば、生計が同一かを確認できる書類として『世帯全員の住民票の写し』を提出する必要はありません。
この取り扱いは、老齢・障害・遺族の3つの年金すべてで行われています。
《添付不要の書類3》加給対象の家族の「収入」を確認できる書類
家族が年金の加給対象と認められるには、前述の「生計が同一であること(一緒に暮らしていること)」に加えて、加給対象の家族の「収入が一定額未満であること」も必要になります。
そのため、従来は加給対象の家族の収入を確認できる書類として、配偶者については『所得証明書』『課税(非課税)証明書』『源泉徴収票』などを、高等学校に在学中の子については『在学証明書』『学生証』などを手続き用紙に添付することが求められていたものです。
しかしながら、年金業務におけるマイナンバーの利用により、「税金(地方税)関係の書類」についても添付が不要となりました。
そのため、現在は手続き用紙にマイナンバーを記載すれば、加給対象の家族の収入を確認できる書類として『所得証明書』などを提出する必要はありません。
この取り扱いは、老齢・障害・遺族の3つの年金すべてで行われています。
《添付不要の書類4》本人の「収入」を確認できる書類
年金の中には、本人の収入が一定額未満または一定額以下であることを条件に支払われるものがあります。
そのため、従来、そのような年金の受け取り手続きでは、年金を受け取る本人の収入を確認できる書類として、『所得証明書』『課税(非課税)証明書』『源泉徴収票』などを手続き用紙に添付することが求められていたものです。
しかしながら、年金業務におけるマイナンバーの利用により、前述のとおり「税金(地方税)関係の書類」は添付が不要となっています。
そのため、現在は手続き用紙にマイナンバーを記載すれば、本人の収入を確認できる書類として『所得証明書』などを提出する必要はありません。
この取り扱いは、「振替加算の付く老齢基礎年金」「遺族年金」「20 歳前の傷病による障害基礎年金」で行われています。
20 歳前の傷病による障害基礎年金とは、成人する前のケガ・病気により支払い対象となる障害年金になります。
《添付不要の書類5》死亡者の「住民登録が抹消されたこと」を確認できる書類
遺族年金の受け取り手続きの際は、死亡した家族の住民登録が抹消されたことを確認する必要があります。
そのため、従来、遺族年金の手続き時には、死亡した家族の『住民票の除票』の添付を求められるケースもありました。
しかしながら、年金業務におけるマイナンバーの利用により、「住民票関係の書類」は原則として添付が不要となっています。
そのため、現在は手続き用紙にマイナンバーを記載すれば、死亡した家族の住民登録が抹消されたことを確認できる書類として『住民票の除票』を提出する必要はありません。
ココがポイント! 「年金の受給手続き」で添付不要とされる書類
手続き用紙にマイナンバーを記載した場合には、『戸籍謄本』『住民票』『所得証明書』などは原則として添付が不要になる。
『戸籍謄本』が添付不要にならないケースもある
手続き用紙にマイナンバーを記載しても、『戸籍謄本』などが添付不要にならないケースも存在します。
例えば、加給が付く年金の受け取り手続きをする場合です。
扶養する家族が年金の加給対象となるためには、その家族が「配偶者」または「一定の年齢の子」であることが必要です。
そのため、加給の付いた年金の受け取り手続きでは、「本人と対象家族との続柄」と「対象家族の氏名・生年月日」の両方を確認するため、『戸籍謄本』や『戸籍の記載事項証明書』の添付が必要とされています。
実は、この場合の『戸籍謄本』『戸籍の記載事項証明書』については、仮に手続き用紙にマイナンバーを記載しても添付しなければならないことになっています。
また、遺族年金の受け取り手続きをする場合も同様です。
遺族年金の受け取り手続きでは、「本人と死亡した家族との続柄」と「本人の氏名・生年月日」の両方を確認する目的で『戸籍謄本』や『戸籍の記載事項証明書』などの添付が必要とされています。
このケースでも、仮に手続き用紙にマイナンバーを記載しても、『戸籍謄本』などは添付しなければなりません。
すべての書類が必ず添付不要になるわけではないので、注意が必要です。
ココがポイント! 『戸籍謄本』が添付不要にならないケース
加給が付く年金や遺族年金の受け取り手続きでは、手続き用紙にマイナンバーを記載しても『戸籍謄本』などは添付しなければならない。
年金機構の「マイナンバーの登録状況」は自分で確認できる
ここまで本コラムを読んだ皆さんの中には、「私のマイナンバーは、基礎年金番号と一緒にキチンと登録されているのだろうか?」と不安に思った方がいるかもしれませんね。
実は、自分のマイナンバーが日本年金機構に登録されているかは、ねんきんネットを使えば簡単に確認が可能です。
ねんきんネットとは自分の年金に関する情報がパソコンやスマートフォンで見られる仕組みで、日本年金機構が無料で提供しているサービスになります。
ねんきんネットにログインすると、トップページの一番上に「利用者情報」という項目が表示されるのですが、その中に「マイナンバー(個人番号)収録状況」という行があります。
マイナンバーが基礎年金番号と一緒に登録されている場合には、そこに“収録済”と表示されることになっています。
皆さんも、ご自身のマイナンバーの登録状況を確認してみてはいかがですか。
ココがポイント! ねんきんネットでの「マイナンバー登録状況」の確認方法
日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合には、ねんきんネットの「マイナンバー(個人番号)収録状況」のところに“収録済”と表示されている。
今回のニュースまとめ
今回は、マイナンバーの利用により、年金の手続きがどのように変化したかを見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- マイナンバーは社会保障・税・災害対策の3つの分野で、他の組織が保有する個人情報について、個人を特定して確認するためなどに使用されている。
- 年金業務でマイナンバーが利用できる最大のメリットは、年金の手続きを行う本人が添付書類を用意しなくてよくなることである。
- 年金の手続き用紙にマイナンバーを記載すると、『戸籍謄本』『住民票』『所得証明書』などは原則として添付不要になる。
- 加給が付く年金や遺族年金の受け取り手続きでは、手続き用紙にマイナンバーを記載しても『戸籍謄本』などは添付しなければならない。
- 自分のマイナンバーが日本年金機構に登録されているかは、ねんきんネットで確認ができる。
マイナンバーの利用で添付書類が不要になるといっても、年金の受給手続きの際、すべての添付書類が省略できるわけではありません。
また、年金を受け取るための手続き用紙は、決して簡単に記載できるものでもありません。
そのため、一般の方にとり年金の受給手続きは、まだまだハードルの高い作業といえます。
せめて、誰もが必ず受け取る老齢年金については、より簡単に受給手続きを行えるよう、さらなる改善を実施してほしいものです。
出典・参考にした情報源
-
日本年金機構におけるマイナンバーへの対応
続きを見る
大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師