どんなニュース?簡単に言うと
2020年6月。国会で可決された年金の改正法が公布されました。今回の改正は「より多くの人がより長く働く」ことに対応した内容。年金試験受験生向けに「施行順」に改正内容をご紹介します。今回は2022年10月と2024年10月に施行されるものを見ていき、完結します。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
前編では施行直後から2021年8月施行分までを見ていきました。
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年金試験受験生のための施行順!これからの年金改正はこれだ!前編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2020年6月。国会で可決された年金の改正法が公布されました。今回の改正は「より多くの人がより長く働く」ことに対応した内容。年金試験受験生向けに「施行順」に改正内容をご紹 ...
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続いて中編は施行が集中する2022年4月に絞ってまとめました。
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年金試験受験生のための施行順!これからの年金改正はこれだ!中編|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2020年6月。国会で可決された年金の改正法が公布されました。今回の改正は「より多くの人がより長く働く」ことに対応した内容。年金試験受験生向けに「施行順」に改正内容をご紹 ...
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今回は仕上げとして、2022年10月とその2年後、2024年10月の施行を見ていきます。
今回取り上げる内容
改正の主要なキーワードのうち、最後は厚生年金関係のものだけ。
- 短時間労働者(←今回取り上げる)
- 在職老齢年金
- 受給開始時期
簡単にいえば、短時間労働者の社会保険加入範囲が広がる ということ。
そのほか、
これまで加入を除外されていた人たちにも加入の網を広げるという改正がされます。
つまり、
最後の施行内容は一言でいうと みんなにもっと社会保険に入ってもらう というものなんです。
施行順これからの年金制度はこうなる!
メモ
厚生年金に関する改正ですが、健康保険も同じ仕組みで改正されるので2つ併せて「社会保険」として説明していきます。
2022(令和4)年10月1日
厚生年金:短時間労働者の社会保険加入範囲が広がる
常時100人を超える事業所の短時間労働者が加入対象となる
現在の短時間労働者の社会保険加入のルールは以下のとおり。
- 労働者が常時500人を超える会社に勤めている
- 短時間労働者が以下の条件をすべて満たしている
- 週の労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 勤務期間が1年以上の見込み
- 学生は除外
1と2の両方を満たせば、短時間労働者であっても社会保険に入ります。
メモ
短時間労働者が社会保険に入る仕組みは2016年(平成28年)10月から動いています。
1の「500人超」の要件が「100人超」となります。
つまり、より多くの事業所が対象になり、より多くの短時間労働者が社会保険に入ります。
2の「勤務期間が1年以上の見込み」は「2ヶ月を超える見込み」となります。
実務的には契約更新の可能性があれば、”1年以上見込みあり”という取り扱いをしているそうで、この要件で社会保険に入らないケースは限定的だそう。つまり1年という数字はあまり意味がない。
また、
フルタイムで働く場合は「2ヶ月を超える見込み」があれば社会保険に入ることになります(次で説明します)。
そこで、短時間労働者も勤務期間の基準を揃えることになりました。
厚生年金:短期間だけ働く場合の社会保険加入時期の変更
2ヶ月以内の契約 最初から超える見込みなら最初から加入する
短時間労働者の話とは別に、短期間だけフルタイムで働く場合は社会保険はどうなるのでしょうか。
例えばこんな場合。
2ヶ月契約で働く。契約更新して今も働いている
その約束した2ヶ月が過ぎたタイミングで社会保険に入るのが現行ルール。
メモ
2ヶ月「以内」の期間を定める場合のルールなので、例えば1ヶ月契約だったら1ヶ月を過ぎたタイミングで社会保険に入ることになります。
この場合、
始めから契約更新することがわかっていたとしても、当初の契約期間である最初の2ヶ月は社会保険に入れません。
それを、当初の期間を超えて働くことが見込まれる場合は、最初から社会保険に入れてあげようという改正です。
社労士受験生諸君は、季節的業務4ヶ月、臨時的事業6ヶ月というルールがあるのはご存知だと思いますから、同じような仕組みになることをセットで覚えておきましょう。
厚生年金:士業の個人事務所が適用事業所になる
常時5人以上の従業員を雇う場合は強制的に社会保険に入る事業所になる
現行制度では、法律系の個人事務所は社会保険に入る事業所にはなりません。
ということは、
従業員の人数に関係なく、どんな大規模であっても、どんなにフルタイムで働いても社会保険には入らないということ。
メモ
私が大学卒業後勤めた弁護士事務所は個人事務所だったので厚生年金には入らず、国民年金の第1号被保険者でした。医療保険については弁護士国保組合に入っていました。いずれにせよ社会保険には入らなかったわけです。
メモ
私が作った「みんなのねんきん社会保険労務士法人」は”法人”なので、社会保険に強制的に入る事業所になります。ここで言っているのはあくまで、”個人”でやっている事業の話です。
実は法律系に限らず、以下の業種も対象外なんです。
- 第一次産業(農林水産業等)
- 接客娯楽業(旅館、飲食店等)
- 宗教業(寺院、神社等)
- サービス業(飲食店・理美容店)
今回の改正によって、常時5人以上の従業員がいる法律系の個人事務所が社会保険に強制加入することとなりました。
理由としては、
- 他の業種と比べても法人割合が著しく低い
- 社会保険の事務能力等の面からの支障はない
ということだそうです。
まぁ、法律を扱っている業種である以上改正は当然でしょうね。
2024(令和6)年10月1日
厚生年金:短時間労働者の社会保険加入範囲が更に広がる
常時50人を超える事業所の短時間労働者が加入対象となる
上で説明した短時間労働者が社会保険に入るための会社の規模の拡大
500人超 → 100人超
から更に
100人超 → 50人超
となります。
もともとは 500人超 → 50人超 とする改正なのですが、一気に対象を広げると影響が大きい。
そこで、
まずは、100人超に引き下げることをしてからその2年後に最終目標50人とするスケジュールです。
社会保険に入る・入らないは賛否両論ありますが、やはり入った方がメリットは大きいです。
会社が半額負担してくれますし(自分で払っててそう実感します)。
ちなみに、厚労省の資料によると、
100人超に拡大することで新たに45万人の短時間労働者が社会保険に入ることになり、50人超に拡大すると、新たに65万人の短時間労働者が社会保険に入ることになるんだそうです。
今回のニュースまとめ
今回は、2020年の年金改正について2022(令和4)年10月以降の施行の中身を見ていきました。
ポイントは次のとおりです。
- 2022(令和4)年10月
- 常時100人を超える事業所の短時間労働者が加入対象となる
- 2ヶ月以内の契約 最初から超える見込みなら最初から加入する
- 常時5人以上の従業員を雇う法律系の個人事務所は強制的に社会保険に入る事業所になる
- 2024(令和6)年10月
- 常時50人を超える事業所の短時間労働者が加入対象となる
今回までの3回にわけて、2020年6月の年金改正をまとめてきました。
この改正が完成するまで4年も掛けるのか・・。
と、ちょっと感慨深いものが。
大きな改正になるとそれだけ時間を掛ける必要があるということです。
時間が経つにつれて、年金制度はどんどん改正されていきますから、年金資格受験生はとっとと合格しないといけない。
また、合格しても常に改正情報に目を配らないといけない。
年金の勉強は遥か銀河鉄道な旅なわけです。
「今 万感の思いを込めて汽笛が鳴る。今 万感の思いを込めて汽車が行く。一つの改正は終わり、また新しい改正が始まる。さらば国民年金の改正。さらば厚生年金の改正。さらば2020年改正。」
あぁ、思わず涙が・・。(このあとゴダイゴが流れる)
さて、
今回の一連のシリーズは公的年金に関してのものですが、私的年金(企業年金とか個人型確定拠出年金とか)は対象外としました。
こちらも大きく改正がされていますので、スピンオフコラムということで別に執筆予定です。
お楽しみに。
出典・参考にした情報源
- 厚生労働省ウェブサイト:第201回国会(令和2年常会)提出法律案
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第201回国会(令和2年常会)提出法律案|厚生労働省
第201回国会(令和2年常会)提出法律案について紹介しています。
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- 厚生労働省ウェブサイト:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
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年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省
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シモムー
みんなのねんきん主任講師