年金ニュース

いまさら聞けない〜まるっとわかる2021年度からの年金変更総まとめ〜 後編

2021年4月1日

大須賀信敬

みんなのねんきん上級認定講師

どんなニュース?簡単に言うと

いよいよ4月。 2021(令和3)年度の始まりです。果たして、2021(令和3)年度の社会保険制度には、どのような制度変更が待っているのでしょうか。今回は、社会保険各制度の新年度の変更点について、整理をしてみましょう。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

2021(令和3)年度の社会保険制度は、年金について複数の制度変更が行われます。

主要な改正事項は、次のとおりで、前編では「4 脱退一時金の「上限年数」の見直し」まで見ていきました。

【みんなのねんきん】社会保険に関する2021年度の主な改正事項

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今回は「5 「年金額」の変更」から最後まで整理します。

前編はこちらをご覧ください。

いまさら聞けない〜まるっとわかる2021年度からの年金変更総まとめ〜 前編

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5. 「年金額」の変更

年金額は昨年度から 0.1%引き下げられる。 

年金額は、長く受け取っていても原則として“同じ価値の金額”を受け取り続けるようにするため、「モノの値段」「現役世代の平均的な給与額」に応じて金額が変更されます。

年金額を「モノの値段」を基準にして変更することを「物価スライド」とよび、「現役世代の平均的な給与額」を基準にして変更することを「賃金スライド」とよびます。

「物価スライド」には、総務省が発表する全国消費者物価指数という統計数値が使用されます。

また、「賃金スライド」には、厚生年金の標準報酬の平均額が使用されることになっています。

ただし、年金額が「物価スライド」と「賃金スライド」のどちらで変更されるかには、非常に複雑なルールが設けられています。

2021(令和3)年度の年金額については「賃金スライド」で変更されることが決まっており、2020(令和2)年度に比べて 0.1%のマイナスとなります。

そのため、2021(令和3)年度の国民年金の老齢基礎年金は、満額が前年度の年額781,700 円から 800 円下がり、年額 780,900 円となります。

月額では前年度の 65,141 円から 66 円下がり、65,075 円です。

また、2021(令和3)年度の老齢厚生年金については、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む「標準的な年金額」が前年度の 220,724 円よりも 228 円少なくなり、2021(令和3)年度は月額 220,496 円となります。

なお、新年度の年金額は 2021(令和3)年4月分の年金から適用されますが、4月分の年金が実際に支払われるのは6月になります。

従って、新年度の年金額に基づいた支払いが最初に行われるのは、2021(令和3)年6月となります。

このような年金額改定の仕組みについては、本サイトの 2021(令和3)年1月 25 日付コラム『知らないと恥をかく 2021 年度年金減額のワケ 前編』で詳しく解説をしています。

興味がある方はこちらをご覧ください。

知らないと恥をかく2021年度年金減額のワケ 前編

大須賀信敬みんなのねんきん上級認定講師 目次 どんなニュース?簡単に言うとどんなニュース?もう少し詳しく!なぜ、年金額はずっと同じ金額ではないのか年金額改定で用いられる「物価スライド」「賃金スライド」 ...

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ところで、老齢厚生年金の受給者が厚生年金に加入しながら働いている場合には、給与・ボーナス・年金の3つの金額を使って所定の計算をし、その結果が定められた基準額を超えてしまうと、年金額がカットされるという仕組みがあります。

このような仕組みを在職老齢年金といいます。

また、年金のカットを決めるための基準額を、60 歳以上 65 歳未満の受給者の場合には「支給停止調整開始額」、65 歳以上の受給者の場合には「支給停止調整額」とよびます。

これらの金額については、2021(令和3)年度は前年度から変更がなく、それぞれ 28 万円、47 万円のままとなります。

なお、次の給付金は「物価スライド」で改定することになっているのですが、2020(令和2)年の全国消費者物価指数は 0.0%で、前年と比べて変わりがなかったため、それぞれの金額も前年度と同じ次の金額となります。

  • 特別障害給付金 …1級:月額 52,450 円、2級:月額 41,960 円
  • 老齢年金生活者支援給付金の基準額 … 月額 5,030 円
  • 障害年金生活者支援給付金 … 1級:月額 6,288 円、2級:月額 5,030 円
  • 遺族年金生活者支援給付金 … 月額 5,030 円

6. 国民年金の「保険料額」の変更

1カ月当たり 70 円増え、1万 6,610 円になる。 

年金額と同様に国民年金の保険料も、「モノの値段」や「現役世代の平均的な給与額」に応じて金額が変更されます。

具体的には、全国消費者物価指数と厚生年金の標準報酬の平均額を基に新年度の保険料額が決定され、2021(令和3)年度の国民年金保険料は、前年度より 70 円増えて 1 カ月当たり1万 6,610 円となります。

なぜこの保険料額になるのかについては、本サイトの 2021 年 2 月 2 日付コラム『知らないと恥をかく 2021 年度年金減額のワケ 後編』の「年金額は 0.1%下がるのに保険料額は0.4%上がる」という項目で解説をしています。

興味がある方はこちらをご覧ください。

知らないと恥をかく2021年度年金減額のワケ 後編

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また、1カ月当たりの保険料額が変更になったことにより、前納割引制度を利用する場合の保険料額と割引額も変更になります。

2021(令和3)年度の前納割引制度の保険料額と割引額は、次のとおりです。

【みんなのねんきん】2021年度の国民年金保険料の前納額と割引額

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なお、厚生年金の保険料率は 18.3%のままであり、年度が替わっても変更にはなりません。

7. 「現物給与」の価額の改正

多くの都道府県で、食事・住宅の現物給与価額が値上げされる。

厚生年金の保険料計算の基となる標準報酬月額は、会社から支払われる給与額に応じて決まります。

例えば、給与の合計額が 21 万円以上 23 万円未満の場合には、標準報酬月額は 22 万円と決められます。

この 22 万円に厚生年金の保険料の割合(18.3%)を掛けて2で割った金額が、社員が負担を求められる 1 カ月当たりの保険料額となります。

ところで、標準報酬月額は“現金”で支払われている給与の額だけで決まるわけではありません。

会社が社員に対し、“現金”以外の方法で毎月経済的な便益を与えている場合には、それも金額に換算して給与額に含め、標準報酬月額を決めることがあります。

このように、“現金”以外の方法で会社が社員に毎月与えているものを現物給与と呼びます。

典型的な現物給与は、「食事の提供」と「住宅の貸与」です。

「会社が社員に食事を提供している場合」「会社が社員に住宅を貸与している場合」のいずれも、実際に社員に現金が渡されているわけではありません。

しかしながら、会社が社員に対して毎月経済的な便益を与えていることには変わりがありません。

そのため、「食事」や「住宅」を金額に換算のうえで現金で支払っている給与額と合算し、その合算額に基づいて標準報酬月額を決めることになるものです。

このとき、「食事」や「住宅」をいくらとして計算するかについては、厚生労働大臣によって都道府県ごとに金額が定められています。

例えば、東京都の場合には 2020(令和2)年度は、食事は1カ月当たり最大で 21,300 円として、住宅は1カ月当たり畳1畳につき 2,590 円として計算することが決められています。

仮に、東京都内の企業に勤務しており、給与が現金で 20 万円、その他に「最大額に相当する食事の提供」と「10 畳の住宅の貸与」を受けている社員がいるとします。

この場合には、現金 20 万円+食事 21,300 円+住宅 2,590 円×10 畳=247,200 円となり、247,200 円を基に標準報酬月額を決めることになるものです。

ところで、この現物給与の価額は年度替わりに見直されることがあり、2021(令和3)年度については一部改正されることが決まっています。

具体的には、食事の現物給与の価額は 43 都道府県で改正となり、平均で 1 カ月当たりの最大額が約 363 円上昇することになります。

また、住宅の現物給与の価額は全都道府県で改正となり、平均で 1 カ月当たり畳 1 畳につき約 90 円の上昇となります。

2021(令和3)年度の都道府県別の現物給与価額は、次のとおりです。

【みんなのねんきん】2021年度の現物給与の価額

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新しい現物給与の価額は、2021(令和3)年4月分の給与から使用することになります。

ところで、現物給与の価額が変わると、現金で受け取る給与額が変わらないにもかかわらず、現物給与価額の上昇が原因で標準報酬月額が上昇し、厚生年金保険料の負担額が増えることも考えられます。

ただし、実際に標準報酬月額が変更になるのは4月からではなく、もう少し後からになります。

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8. 「定時決定」「賞与支払い」に関する提出書類の変更

『総括表』が廃止され、『賞与不支給報告書』が新設される。

厚生年金の標準報酬月額は、年に1回、決まった時期に見直し作業を行うことになっており、この作業のことを定時決定と呼びます。

具体的には、毎年4・5・6月の給与支払い実績を基にして、その年の9月から1年間の標準報酬月額を決定することになっています。

例年、定時決定の際には、『算定基礎届』(正式名称は、健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届)と『総括表』(正式名称は、健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届総括表)という2種類の書類を提出することが求められます。

『算定基礎届』とは社員一人ひとりの給与額等を記入する書類で、『総括表』とは『算定基礎届』に記入した合計社員数や各種会社情報などを記入する書類になります。

ところが、2021(令和3)年4月1日以降の提出分からは『総括表』は廃止され、『算定基礎届』のみを提出すればよいこととなります。

理由は、会社側の事務手続きの利便性を向上させるためのようです。

廃止される定時決定の『総括表』とは、次のような書類です。

【みんなのねんきん】定時決定の総括表

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実は、定時決定の手続きについては 2017(平成 29)年度までは、『算定基礎届』『総括表』に加えてさらに『附表』(正式名称は、健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届総括表附表)という手続き用紙の提出が求められていました。

ところが、2018(平成 30)年3月に行われた厚生年金関係の手続き用紙の大幅リニューアルに伴い、提出書類が『算定基礎届』『総括表』の2種類に変更されたという経緯があります。

この点がさらに 2021(令和3)年4月からは、提出書類が『算定基礎届』のみになるものです。

また、これまではボーナスを支払った場合にも、『賞与支払届』(正式名称は、健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届)と『総括表』(正式名称は、健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表)という2種類の手続き用紙の提出が必要でした。

『賞与支払届』には社員一人ひとりのボーナスの額等を記入し、『総括表』には『賞与支払届』に記入した合計社員数などを記入して提出することが求められていました。

しかしながら、2021(令和3)年度からは定時決定と同様に『総括表』が廃止され、『賞与支払届』のみを提出することとなります。

廃止されるボーナス支払い時の『総括表』とは、次のような書類です。

【みんなのねんきん】ボーナス支払い時の総括表

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ところで、ボーナスの場合には、支払いを予定していたが実際には支払わなかった、あるいは支払えなかったというケースがあります。

この場合、従来は『総括表』に「賞与を支払わなかった事実」を記載するようになっていたものです。

しかしながら、『総括表』が廃止されるため、「賞与を支払わなかった事実」を届け出るための新しい書類が用意されることになりました。

名称は『賞与不支給報告書』といいます。

従って、2021(令和3)年度からは、ボーナスを支払った場合には『賞与支払届』のみを提出し、ボーナスを支払わなかった場合には『賞与不支給報告書』のみを提出する、という仕組みに変更されます。

9. 年金以外の社会保険の変更点

協会けんぽは健康保険と介護保険の保険料率が変更になる。

健康保険には全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」、健康保険組合が運営する「組合健保」の2種類があります。

「協会けんぽ」の健康保険料の割合は、地域の医療費水準に基づいて決定されることになっており、都道府県ごとに異なります。

そのため、2021(令和3)年度の「協会けんぽ」の健康保険料率も、地域によって取り扱いが異なり、次のとおりです。

前年度と比べて健康保険料率が、

  • 上がる地 域 … 20 道府県
  • 下がる地 域 … 26 都県
  • 変更のない地域 … 1県

ちなみに、東京都の場合には 2020(令和2)年度は 9.87%でしたが、2021(令和3)年度は 0.03 ポイント下がって 9.84%となります。

ただし、2021(令和3)年度の全国平均は 10.0%で、前年度から変わりがありません。

また、「協会けんぽ」の介護保険料率は健康保険と異なり、全国一律の割合が定められています。

2020(令和2)年度は 1.79%でしたが、2021(令和3)年度は 0.01 ポイント上がり、1.80%となります。

健康保険・介護保険の新年度の保険料率は、実は 2021(令和3)年3月分の保険料から適用されることになっています。

実務上、この点は非常に誤りやすいポイントですので、会社で社会保険事務を担当している方は注意をしてください。

なお、「組合健保」の場合には、健康保険料率・介護保険料率のいずれも組合ごとに異なり、2021(令和3)年度の取り扱いがどうなるかについても一様ではありません。

また、労災保険と雇用保険については、いずれも 2021(令和3)年度の保険料率は 2020(令和2)年度と同じで変更はありません。

2021(令和3)年度について、各種社会保険料の変更の有無を整理すると、次のとおりです。

【みんなのねんきん】社会保険料の変更の有無(2021年度)

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今回のニュースまとめ

今回は、2021(令和3)年度の社会保険制度の変更点について、年金を中心とする制度変更を見てきました。

変更点の概要は次のとおりです。

  • 年金額は昨年度から 0.1%引き下げられる。
  • 国民年金の保険料額は、1カ月当たり 70 円増えて1万 6,610 円になる。
  • 厚生年金では、多くの都道府県で食事・住宅の現物給与価額が値上げされる。
  • 厚生年金では『総括表』が廃止され、『賞与不支給報告書』が新設される。
  • 協会けんぽはほとんどの地域で健康保険料率が変更になる。また、介護保険料率も変更される。

2021(令和3)年度の年金制度は、それほど大きな変更事項はありませんが、細かな変更が複数行われます。

制度の変更内容をよく確認し、ご自身の生活やお仕事に活用してください。

出典・参考にした情報源

厚生労働省ウェブサイト:

令和3年度の年金額改定について

日本年金機構ウェブサイト:

令和3年4月1日より現物給与価額(食事・住宅)が改正されます|日本年金機構
令和3年4月1日より現物給与価額(食事・住宅)が改正されます

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【事業主の皆さまへ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について|日本年金機構
【事業主の皆さまへ】令和3年4月からの賞与支払届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について

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全国健康保険協会ウェブサイト:

令和3年度保険料率 | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
令和3年度保険料率

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みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。

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