メモ
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「スカッち先生」とは、みんなのねんきん事務局内でお呼びしている大須賀先生の愛称です。勝手にすみません・・・。
どんなニュース?簡単に言うと
パート勤めをしている女性から、「厚生年金に加入せずに勤めたかったのに、加入させられた」という話を聞いたことはありませんか。今回は厚生年金加入トラブルの2回目として、パート勤務者の加入トラブルについて見ていきましょう。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
“扶養の範囲の勤務”を希望するパート女性
厚生年金の加入トラブルについては、本サイト 2020 年(令和2年)4月 29 日付コラム『スカッち先生の年金加入トラブルあるある5選 第1回/全2回』で、「会社に入れば当然、厚生年金に入れると思っていたのに、入れなかった!」というケースを紹介しました。
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スカッち先生の年金加入トラブルあるある5選 第1回/全2回|みんなのねんきん
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第2回の今回は、前回とは逆のケースを見ていきましょう。
つまり、「厚生年金に入りたくなかったのに、入らされた!」というトラブルになります。
このようなトラブルは、特にパート勤務の女性に起こることが多いようです。
パート勤務の女性は「夫の“扶養の範囲”で働きたい」という希望を持ち、厚生年金に加入せずに勤務することを望む方が多いからです。
ココがポイント!厚生年金に加入せずにパート勤務を行う理由
配偶者の“扶養の範囲の勤務”を希望する場合には、「厚生年金に入らずにパート勤務を
行う」という選択を行うことが多い。
厚生年金に入りたくないのに入れられた!トラブル事例3選
それでは、具体的なトラブル事例を見ていきましょう。
《事例1》“週 30 時間未満”の勤務なのに、厚生年金に加入させられた
「“週 30 時間未満”の勤務であれば、厚生年金に加入しなくてよい」。
パート勤務をする皆さんからよく聞く話です。
このような話が出てくる理由は、パートの厚生年金加入基準の原則ルールにあります。
パート勤務をする人に対しては、原則として「1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上の場合には厚生年金に加入する」というルールが適用されます。
つまり、パート勤務の場合には、会社と契約した「働く時間数と日数」の両方が一般社員の“4分の3以上”であれば、厚生年金の加入対象になるということです。
このルールを「4分の3基準」といいます。
この「4分の3基準」は換言すれば、会社と契約した「働く時間数と日数」のいずれか一方が一般社員の“4分の3未満”であれば、厚生年金の加入対象にはならないということを意味しています。
労働基準法という法律には、「会社が社員を働かせることができる時間数は、1週間に“40 時間”までを原則とする」という趣旨の定めがあります。
そのため、一般社員の1週の所定労働時間を、勤務可能な最長時間である“40 時間”に設定している会社が少なくありません。
“40 時間”の4分の3は“30 時間”です。
このような事情から、多くの会社の人事担当者がパート勤務を希望する人に対して、「“週 30 時間未満”の勤務のパートさんは厚生年金に加入しません」と説明をする傾向にあります。
しかしながら、全ての会社が一般社員の1週の所定労働時間を“40 時間”と決めているわけではありません。
例えば、週休2日制の会社が、一般社員の1日の勤務時間を7時間と決めているとします。
この場合、一般社員の1週の所定労働時間は“35 時間”(=7時間×5日)になります。
このケースでパート勤務者の厚生年金加入を考える際には、1週の所定労働時間については、“35 時間”の4分の3である“26.25 時間”を基準に判断することになります。
つまり、1週の所定労働時間が 30 時間未満でも、一般社員の4分の3以上になるケースがあるということです。
しかしながら、一度でも「“週 30 時間未満”の勤務のパートさんは厚生年金に加入しません」という説明を会社側から受けた経験があると、「厚生年金の加入の要否は、勤務時間が“週 30 時間未満”かどうかで決まるものだ」との“誤解”をしがちです。
“週 30 時間未満”の勤務であれば、必ず厚生年金に未加入となるわけではありません。
ココがポイント! 「4分の3基準」における1週の所定労働時間
「1週の所定労働時間が常用労働者の4分の3未満か」という基準は、必ずしも「“週 30時間未満”の勤務か」という観点で判断するわけではない。
《事例2》「4分の3基準」に該当していないのに、厚生年金に加入させられた
例えば、一般社員の1週の所定労働時間が“40 時間”の会社で、“週 25 時間勤務”でパートに就いた方がいるとします。
このケースでは、パート勤務者の働く時間数は一般社員の 4 分の 3 未満であり、厚生年金加入の原則である「4分の3基準」を満たしていないため、加入はしないように思えます。
しかしながら、「4分の3基準」に該当していないケースでも、厚生年金への加入が必要になることがあります。
このような現象は、「短時間労働者」に該当した場合に起こります。
「短時間労働者」とは、2016 年(平成 28 年)10 月1日から始まった、パートタイマーの厚生年金加入のもう一つのルールです。
具体的には、「厚生年金の被保険者数が常時 501 人以上の民間企業」に勤めるパートタイマーの場合には、「4分の3基準」に該当しなくても、次の4つの要件を全て満たすのであれば、「短時間労働者」という名称で厚生年金への加入が義務付けられることになります。
- 週の所定労働時間が 20 時間以上ある
- 雇用期間が 1 年以上見込まれる
- 賃金の月額が 8.8 万円以上である
- 学生でない
平たい言い方をすると、従業員数が多い会社でパート勤務をする場合には、「4分の3基準」に当てはまらなくても、「短時間労働者」として厚生年金への加入が義務付けられる可能性があるということです。
「4分の3基準」に該当しない場合に厚生年金に加入しなくて済むのは、現在の加入ルールでは、「厚生年金の被保険者数が常時 500 人以下の民間企業」で働く場合が原則となります。
ココがポイント!パート勤務者が「短時間労働者」になるケース
「厚生年金の被保険者数が常時 501 人以上の民間企業」でパート勤務をする場合には、
「4分の3基準」に当てはまらなくても、「短時間労働者」として厚生年金への加入が義務付けられることがある。
《事例3》厚生年金のない個人営業の職場だったのに、勤務の途中から厚生年金への加入を強制された
個人で営業している職場の場合には、従業員数が5人以上で特定の業種を営んでいる場合に限り、その職場は厚生年金の強制適用事業所とされます。
強制適用事業所とは、必ず厚生年金の対象になる職場を指す用語です。
従業員数が5人未満の場合には、個人で営業されている職場は強制適用事業所にならないため、そのような職場を選んでパートに出る方もいるようです。
ところが、働き始めてしばらくしてから、厚生年金への加入を命じられることがあります。
このような現象は、次の2つのケースで起こります。
1番目は、「従業員数が5人以上になったため、職場として厚生年金への加入が強制されるようになったケース」です。
例えば、街中でよく見かける〇〇耳鼻科、〇〇内科などの個人病院は、従業員数5人未満で営まれているのであれ、厚生年金の対象の職場とはなりません。
しかしながら、従業員を増やしたために5人以上になったような場合には、その病院は厚生年金の強制適用事業所となり、原則としてそこで働く人も厚生年金に加入しなければならなくなります。
2番目は、従業員数5人未満の個人営業の職場であるにもかかわらず、「希望して厚生年金の対象の職場になったケース」です。
例えば、従業員数5人未満の個人病院は厚生年金の対象の職場ではありませんが、院長先生が「ウチの病院のスタッフが老後に年金で困らないよう、皆を厚生年金に入れてあげたい」などと考えたとします。
このような場合には、一定の要件を満たすと、厚生年金の対象の職場になることが可能です。
上記のように、強制適用事業所ではないものの、希望して厚生年金の対象になった職場のことを「任意適用事業所」といいます。
個人事業所が「任意適用事業所」になった場合には、「任意適用事業所」になって以降は、原則としてそこで働く人は厚生年金に加入しなければならなくなります。
ココがポイント!個人事業所で勤務の途中から厚生年金への加入を求められるケース
個人事業所でも、「従業員数が5人以上になり、強制適用事業所に変わった」「希望して厚生年金の対象となる任意適用事業所になった」というケースでは、厚生年金への加入を求められることになる。
今回のニュースまとめ
今回は、厚生年金の加入トラブルの中から、「厚生年金に加入せずに勤めたかったのに、加入させられた」というケースを見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- “扶養の範囲の勤務”を希望する女性の場合には、「厚生年金に入らずにパート勤務を行う」という選択を行うことが多い。
- 「1週の所定労働時間が常用労働者の4分の3未満か」という基準は、必ずしも「“週 30 時間未満”の勤務か」という観点で判断するわけではない。
- 「厚生年金の被保険者数が常時 501 人以上の民間企業」でパート勤務をする場合、「4分の3基準」に当てはまらなくても、「短時間労働者」として厚生年金への加入が義務付けられることがある。
- 厚生年金の対象にならない個人事業所に勤めていても、「従業員数が5人以上になった」「任意適用事業所になった」というケースでは、勤務の途中から厚生年金への加入を求められることがある。
厚生年金加入トラブルの第1回で紹介した「厚生年金に入れると思っていたのに、入れなかった」という事例は、“会社側の知識不足”や“会社側の故意の法律違反”により、社員側が不利益を被っているケースです。
これに対して、今回、紹介した「厚生年金に入りたくなかったのに、入らされた」という事例は、“社員側の知識不足”によって会社側の正しい取り扱いを「おかしいのではないか?」と誤解しているケースといえます。
気持ちよく働くためには、雇う側にも雇われる側にも正しい法律知識が必要といえるでしょう。
出典・参考にした情報源
日本年金機構ウェブサイト:
適用事業所と被保険者
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適用事業所と被保険者|日本年金機構
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大須賀信敬(スカッち先生)
みんなのねんきん上級認定講師