相談事例

65歳直前!1カ月分はどこいったニャーという退職後の年金再計算の話

投稿日:2017年1月23日 更新日:

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写真の出典:left-hand

どんな事例?簡単に言うと・・

ブログ読者の方より情報が寄せられました。退職によって年金額が再計算される年金額改定ルール。その解釈の争いが裁判にまでなっているとのこと。65歳になる直前で退職すると起きる事態なんだそうで・・。何が問題なのかを空想の事例を考えて図解しながら解説してみます。

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こんな事例を考えてみましょう

Mさんは60歳で定年退職後、関連会社の(株)O産業に嘱託として勤めてきました。

12月15日で65歳の誕生日を迎えるにあたり、この11月末日で退職を考えています。

年金相談の窓口で退職後の年金見込額を試算してもらうと、現在月額10万円の厚生年金は12月より12万円になるとのこと。

この4年11カ月分の掛けた厚生年金分が退職による改定で増えることになります。

そして、

1月分からは65歳以降の年金になり、国民年金分も受け取れます。

再度、年金が増えることになります。

その後、Mさんは予定通り11月末日で退職。

1月分以降は確かに65歳以降の年金として予定通りの増額でした。

ところが、

12月分は以前と変わっていません。

以前相談した窓口に問い合わせてみると、「12月分は”増えない”というのが正しい見込みだった」との回答。

「退職したんだから12月分から増えないとおかしいニャだろー、シャー!」

Mさんは牙をむきました。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

年金を受け取りながら、働いて厚生年金に入っていた。

退職すればそれまでの加入期間を含めて年金額が再計算されます。

ただし、

退職後1カ月間は再就職しない(厚生年金に入らない)ことが条件です。

では、

この退職後の年金再計算、

退職が65歳の直前の場合はどうなるのか。

具体的には、

退職後1カ月を経過する前に、65歳になってしまった場合年金額改定が行われるかどうか

が問題となります。

なぜなら、改定すべき60歳台前半の年金が65歳になることで既に終了している。

60歳台前半の年金と65歳からの年金は制度として別の年金だからです。

解説してみましょう

今回の解説者:シモムー

シモムー

今回は私、シモムーが解説します。

文章だけですと、何のことかよくわからないので図解を使って何が起きているかを考えてみましょう。

退職後の再計算は1カ月が経過したのを確認してから

年金を受け取りながら厚生年金に入っても、毎月年金が改定されて増えるわけではありません。

退職してから在職中の期間をまとめて年金額を再計算することになります。

ただし、

この再計算は退職後1カ月が経過したのを確認してから。

1カ月の空白が無ければ加入期間は継続していると考えるからです。

ちょっと、下の図をみてください。

11月末日に退職したら厚生年金から抜けるのは翌日12月1日です。

12月1日から1月1日までの間で再就職していないことを確認し、

OKなら、退職月の翌月12月分からが再計算後の年金となります。

1カ月経過前に65歳になるとどうなる?

問題は1カ月を経過する前に65歳になるとどう扱うべきか?ということ。

これがMさんの事例です。

改定しようにも60歳台前半の年金は65歳になったと同時にその権利が消滅しているから問題となります。

ちなみに、

1月分からは退職後の年金になっています。

60歳台前半の年金とは別制度である65歳からの年金。

新規に受け取る際には、当然直前までの期間を計算してくれるからです。

問題は12月分の1カ月分は増えるか増えないか

実はこれが裁判で争われているんです。

(下に続きます)

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両者の言い分を勝手にシミュレーション

裁判の内容は見ていないので、以下は私が勝手に考えた両者の言い分のシミュレーションです。

改定できないの立場

まずは改定できない立場の言いそうなこと。

1カ月経つ前に60歳台前半の年金は権利がなくなっているから、年金額改定をしようにもできない

と言うはず。

確かに

権利が存在していることを前提にしてその金額を改定をするわけですから、これはこれでスジが通っているかと。

いや、そんなこと法律に書いてないじゃないか

と反論されるかもしれませんが、

当たり前のことだから書いてなくても問題ない。他の改定のルールだってわざわざ権利の存在を書いていない

となるでしょうか。

改定できるの立場

改定できる立場からはこう言うんじゃないかと。

1カ月の経過を見るのは単純に再就職しないかどうかを判定するだけのものであり、資格を喪失した時点では年金権があるんだから改定できるはずだ

うーむ。

これもこれで間違っていないと思えます。

さて、結果はどうなるか。

現在、最高裁までいっているとのことです。

見込額では12月分は増えるとなっていたが・・

事例のMさんの12月分は退職後の年金である旨、見込みが出されていました。

実は、

現在はこのような状態で見込額を計算しても、「改定されない」形で計算されます。

裁判が起きた当時は「改定される」形で見込額が出るような計算プログラムになっていたそうです。

最初から、どちらかに統一されていればここまでの事態にはならなかったはずです。

今回の事例まとめ

今回の事例をまとめると以下のとおり。

  • 年金を受け取りながら厚生年金に入っても毎月年金が改定されて増えるわけではない
  • 退職してから在職中の期間をまとめて年金額を再計算する
  • 退職しなくても65歳からは別の年金なので直前までの期間を含めて年金額が決まる
  • 退職による再計算は退職後1カ月が経過したのを確認してから
  • 1カ月経過前に65歳になるとその65歳の月は改定するかしないかが争われている

Mさんの12月分は増えるか増えないか。

裁判になっていることなので、これ以上は私も何も言えません。

(「M」も「O」も実際とは無関係です!)

ただ、

こんな風に制度の境目で一体どうなるんだ?

というのは結構よくある話。

年金相談の現場で頭を悩ませるのは大抵こういう制度の境目の話です。

ほぼ日本国民全員を対象にした制度ですからいろんな事態が起きるのは仕方ないです。

あとは司法がどのような判断をするか。

もはや、見守るしかありません。

出典・参考にした情報源

2016年12月16日 しんぶん赤旗 朝刊


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。

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シモムー

シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供を続ける。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。

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