どんなニュース?簡単に言うと
日本経済新聞の2017年6月26日の記事に独身女性の老後の実態を市民団体が調査したという記事が出ていました。老後ですからもちろん年金の話が出てくるはず。一体どんな調査結果だったのか。市民団体発表の調査結果を引用しながら独身女性と年金を考えてみます。
スポンサーリンク
どんなニュース?もう少し詳しく!
「独身高齢女性、5割超が就労 市民団体調査 」(日本経済新聞)
なに?
独身高齢女性の半数以上が働いている・・・。
このブログでも政府発表の年金に関する調査をたびたび紹介しています。
政府も年金に関する調査を公表していますが、「独身女性」に特化したものは見たことがありません。
一体どんな調査結果だったのか?
ソースとなる調査結果を拝見しながら女性と年金について考えてみます。
出典は、
市民団体 「わくわくシニアシングルズ」 の「中高年齢シングル女性の生活状況アンケート調査報告書」から。
調査は2016年9月から11月にかけてインターネットと郵送で50歳以上の独身女性530人を対象に実施しています。
内訳は50 代が 57.2%(303 人)、60 代が 33.6%(178 人)、70 歳以上が 9.1%(48 人)とのことです。
調査結果は就労に関するものも含めて結構な量がありますが、年金の部分だけに特化してご紹介します。
是非、元の調査結果を見てみてください。
調査対象者の半数は年金月額10万円未満
そもそも新聞の見出しは”独身高齢女性は半数以上が働いている”というもの。
働かざるを得ないというのが実情のようです。
その根本的な理由はやはり年金。
公的年金の月額が
- 20万円以上 6.2%
- 15万円以上〜20万円未満 16.6%
- 10万円以上〜15万円未満 29.0%
- 5万円以上〜10万円未満 40.0%
- 5万円未満 8.3%
シングル女性の約半数は年金月額10万円未満とのこと。
国民年金から受け取れる老齢基礎年金が満額で年間約78万円ですから、月額では6.5万円。
10万円を超えるためにはどこかで厚生年金に入っていないことには無理です。
回答者の自由記述を拝見すると、これでは生活できないという不満が見て取れます。
特に離婚した場合は、遺族年金が無いので一層大変。
自分の老後の年金だけが頼りになるからです。
離婚分割制度があると思うかもしれません。
婚姻期間が長く、かつ夫の厚生年金加入期間が長く、高給取りでなければあまり期待はできません。
また、
独身女性と言っても旦那さんが亡くなり遺族年金をもらっているケースもあります。
遺族年金の金額は女性ご本人の努力ではどうすることもできません。
金額は旦那さんの厚生年金の4分の3ですから、全ては旦那さんの現役時代のがんばり次第ということになります。
逆に月額が15万円以上という方は22.8%。
20万円以上という方も6.2%いらっしゃいます。
私がこれまで色々な人の年金額を見てきた実感からすると、月に20万円というのは結構すごい。
この月額は自身の老後の年金だけなのか、遺族年金だけなのか内訳がわからないのでなんとも言えません。
ですが、ここまでの金額にたどり着くためには高給取りの旦那さんの遺族年金と自分の老後の国民年金とを合わせた金額なのかなと思います。
ただし、
遺族年金は必ず自分の老後の年金と一緒にもらえるとは限らず、遺族年金よりも自身の厚生年金の方が高いと遺族年金は停止という憂き目にあいます。
夫と死別した人の自由記述を拝見すると、そういう人の不満も見てとれます。
これは年金の選択制度の関係で仕方のないことなんですが・・。
約4割が個人単位の年金制度を望む
「シングル女性が安心して暮らせるために必要なこと」という調査項目(5つ選択)では以下の点が目に引きました。
- 夫婦単位で設計されている公的年金を個人単位にする 38.9%
- 国民年金保険料の負担軽減 30.2%
- 公的年金の第三号被保険者制度の縮小・廃止 20.4%
- 社会保険の加入要件の緩和 11.7%
特に「夫婦単位で設計されている公的年金を個人単位にする」は全体(17項目)から5番目に多い意見です。
個人単位で受け取る形になっている公的年金ですが、制度設計は”老後の夫婦の世帯”を想定しています。
例えば制度が想定している老後の世帯は
夫が40年間、平均的な収入でサラリーマンをして、妻も40年間専業主婦をする
というもの。
もはや共働き世帯数が逆転していますし、何事もなく定年までサラリーマンを続けられるという時代でもありません。
専業主婦に対する「公的年金の第三号被保険者制度の縮小・廃止」を2割の人が支持するのもわかります。
しかし、
制度のあり方を完全個人単位に改めるというのは、新しい年金制度を作らないことには無理だと思います。
これまでの制度改正の歴史を見ると、”サラリーマンと専業主婦”の基本路線は変わっていません。
新しい制度を作るとなると、今の制度は現役世代からの保険料で成り立っているわけで、やめようにもやめられない。
こりゃ個人単位は無理なんじゃないかと思わざるを得ません。
最後の「社会保険の加入要件の緩和」は年金制度にとっても良い影響があります。
加入者が増えればそれだけ制度が安定するわけですから。
平成28年10月から社会保険加入の条件が緩和されたのも大きな理由はそこにあります。
そして、
社会保険に入るわけですから将来の老後の厚生年金も確実に増えるわけで、ここはもっと支持者がいるかと思いきや、約1割の支持。
老後の年金を増やすためには、結局のところ、保険料を納めるしか方法はありません。
年金額に不満があるというなら、もっと支持されてもいいと思ったんですが・・。
今回のニュースまとめ
今回のニュースは、
市民団体が実施した独身女性に対する調査に関して
- 独身高齢女性の年金額の実態
- 年金制度の何を改善すべきか
という部分だけに着目してまとめてみました。
私も以前から思っています。
制度を個人単位にすべきというのは同感です。
年金の勉強をすればするほど、「夫婦世帯の単位で考えるからややこしくなるんだよ」と叫びたくなります。
第3号被保険者制度や加給年金額の加算という仕組みはそういった発想から来ているわけです。
個人で受け取る仕組みなのに、制度設計は夫婦単位
制度を知れば知るほど、年金の複雑さだけがわかります。
あと、気になったのは年金の仕組みをどれだけ理解できているのかなという点。
当たり前なんですが、年金を増やしたいなら保険料を納めるしかない。
そのためには働く環境が改善されないといけない。
しかしその前に・・。
そもそも、今まで生きてきてこういう仕組みをきちんと教わる機会ってないですよね。
なんででしょう。
社会保障の仕組みは全社会人必須の知識だと思うんですが・・。
私も社会人になる前に、仕組みを叩き込まれていれば、学生時代に滞納なんかしなかったんですけどね。
資格の勉強の中で気がついて、気づいたときには時効で納められず・・・。
というわけで、みなさんに興味を持ってもらえばいいなと思いつつ、今日もこうして記事を書いております。
出典・参考にした情報源
わくわくシニアシングルズ
中高年齢シングル女性の生活状況 アンケート調査報告書
シモムー
みんなのねんきん主任講師