過去の出題傾向からシモムーの感想
老齢基礎年金と特別支給の老齢厚生年金(特老厚)の支給要件に関する知識が出ます。
個人的には技能応用の最難問と思っています。
ですので、私はこの問題は相当慎重に解くようにしていました・・。
ところが、
2022秋からは30分試験時間が短くなったので、この問題に割ける時間はありません。
チャレンジする場合でも相当な難問です。
生年月日を1日生まれの人で出題したり、妻が年上のケースで出題したり、共済組合に入っていたり、とにかく容易に得点させないような意地悪な設定が随所にされています。
大事なのは引っ掛けのポイントを意識すること。
これらの引掛けをくぐり抜けたとしても得点できるかどうか・・。
難問中の難問を分析していきます。
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ここ注目!ここがポイントだ!
この問題共通の2つのポイント
コスパが悪すぎる
内容が難しく、時間がかかる割には正解できるかどうかわからない・・・。
この問題は2022秋以降、試験時間が短縮されたことで、マトモに解いていたらまずい問題と化しました。
最初から捨てるという作戦でもいいかもしれません。
加入月数を正確に出せないと正解できない
技能応用問題は多くのテーマにおいて、被保険者期間を正確に算出する必要があります。
最初のこのテーマで、私が長年かけて編み出したテクニックを参照してください。
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前半:受給資格期間 4つのポイント
受験生を引っ掛けさせる4つの引っ掛けポイントをご紹介します。
ポイント1 20歳と60歳のタイミングを確認!
厚生年金の加入が20歳前からあり、20歳をまたいで加入している事例が確実に出ます(当時の共済組合加入の場合もありますが同じです)。
併せて、
高齢者が定年後も継続勤務するご時世を反映して、60歳をまたいで加入する事例も出ます。
とすれば、
- 20歳前は合算対象期間になり保険料納付済期間にはならない
- 60歳以降は合算対象期間になり保険料納付済期間にはならない
これが大事。
生年に20(60)を足して、被用者年金の被保険者になっていないかどうかを確認するだけです。
登場人物の
20歳時と60歳時に目を光らせる
これが1つ目の引っ掛けポイント。
特に難しくなるのが1日生まれの方の保険料納付済期間を判定させる問題。
1日生まれは前月末日に20歳到達ですから、誕生月の前月から月数をカウントしないといけません。
逆に60歳到達の場合、4月1日生まれなら3月31日に60歳到達。60歳到達月の前月、つまり2月分までが保険料納付済期間となります。
当然のことながら、1か月ズレれば答えが異なりますからとにかく慎重にいかないとまずい。
やっぱりこの問題は相当な難問です。
ポイント2 未加入期間に注意
夫と結婚したが、旧法時代で妻は未加入だったという事例が定番です。
とすれば、
妻未加入期間は、夫が厚生年金(共済年金)に入っていれば合算対象期間になる
この引っ掛けに注意。
また、
2020春(模擬)、2021秋はさらにひねってきました
この未加入期間になるところを敢えて任意加入して、しかも滞納するという事例で出してきました。
昔はこの期間は単なる滞納期間でしたが、平成26年以降はカラ期間としてカウントしてくれます。
さらに、
2024春は強制加入期間の未納が合算対象期間になるか?
という出題がありました。
なりません。
第1号被保険者になっていて、未納だったからといって、カラ期間にはなりません。
ポイント3 第3号被保険者になった時期をハッキリさせる!
第3号被保険者の期間はいつかという出題が必ずされます。
とすれば、
配偶者(夫)が被用者年金に入って国民年金の第2号被保険者であること
で引っ掛けを作ってきます。
よくあるひっかけは妻が第3号被保険者になったあとに、夫は転職して1号の期間を間に挟ませています。
その期間は当然第3号被保険者にはなれません。
上の画像は2021春の私が試験中に書いた加入歴です。
夫は途中で1号になっているため、妻も同時に1号になります。
こんなのが典型的な出題です。
さらによくある事例が、妻が60歳になる前に夫が第2号被保険者でなくなるケース。
60歳直前で夫が65歳になる(受給資格を満たす)ことで夫は第2号被保険者でなくなる(そして妻も第3号でなくなる)事例です。
これらの引っ掛けを意識しつつ、
夫と妻の加入歴を時系列で作図する
これが大事です。
図を作ると、3号になるかならないかハッキリします。
私もかつては頭の中だけで考えていましたが、これでは正確な答えが出ません。
今はラクをしようとせず、夫婦の加入歴を時系列にすることを心がけています。
参考までに私が試験会場で書いた図をアップしておきます。
私がどれだけ慎重にこの問題に取り組んでいるかおわかりいただけると思います。
2018春
2018秋
2019春
ポイント4 誕生日が1日生まれかどうかをチェック!
1日生まれの事例で難しくする事例が出ています。
実は、過去10回の分析をしてみると、ほとんど1日生まれなんです。
とすれば、仮に第3号被保険者の被保険者期間で考えると
60歳到達月の前月までですから、誕生月の前々月までが被保険者期間となる
1日生まれに目を光らせて被保険者期間のルールをきっちり当てはめるのが大事です。
また、2019春秋、2020春(模擬)では保険料納付済期間で同様のトラップがありました。
20歳誕生月の前月から保険料納付済期間となる
これも頭にいれておきましょう。
以上の4つのほぼ全てで確実に引掛けを作ってきます。
これらの引っ掛けがあるというのが最初にわかっているだけでも有利です。
後半:支給開始年齢、加算開始年齢 4つのポイント
まずは後半問題がどういう論点で正解になっているか過去の正解を分析してみます。
過去10回の正解となった知識と特殊事情
- 2024春 共済加入女性の報酬比例部分開始年齢
- 2023秋 長期加入特例で定額部分が支給される
- 2023春 長期加入特例で定額部分が支給される
- 2022秋 共済加入女性の報酬比例部分開始年齢
- 2022春 共済加入女性の報酬比例部分開始年齢
- 2021秋 共済加入女性の報酬比例部分開始年齢
- 2021春 男性の報酬比例部分開始年齢
- 2020秋 共済加入女性の報酬比例部分開始年齢
- 2020春(模擬)男性の報酬比例部分開始年齢
- 2019秋 女性の報酬比例部分開始年齢
この問題は3つの知識で正解を作る傾向にあります。
- 報酬比例部分の支給開始年齢
- 長期加入特例で定額部分が支給される
- 特老厚の支給要件として要1年以上の厚年被保険者期間
そして、これらの正解は以下の特殊事情で作っているのがわかります。
- 2024春 1日生まれ、妻公務員経験者
- 2023春 1日生まれ
- 2022秋 1日生まれ、妻公務員経験者
- 2022春 1日生まれ、夫婦そろって公務員経験者
- 2021秋 1日生まれ、妻公務員経験者
- 2021春 夫婦そろって公務員経験者
- 2020秋 1日生まれ、妻公務員経験者
- 2020春(模擬)1日生まれ
- 2019秋 1日生まれ
1日生まれや、妻の厚生年金の被保険者期間が1年以上あるのか、といったところに注意して解く必要があります。
2023春は特殊な事情がなかったため、難易度は低くなった印象です。
1 報酬比例部分の支給開始年齢は暗記するしかない
男女別の支給開始年齢を暗記する必要があります。
暗記が嫌いな私は以下のシモムー解法テクニックを駆使します。
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どんなテクニック? 年金アドバイザー試験では特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢を覚えていないと答えられない問題があります。 暗記には否定的な私ですが覚えるより他にありません。 そこで私の覚え方のテク ...
2020秋、2021春、2021秋、2022春、2024春は共済加入経験しかない女性の報酬比例部分開始年齢が問われました。
この場合、女性だからといって支給開始が男性から5年遅れとはなりません。
公務員の年金は男女関係なく同じスケジュールで報酬比例部分が引き上がるので、結局は妻の特老厚支給なし という問題でした。
2 加算開始事由に該当した翌月分から支給開始
加給年金も振替加算も加算開始のタイミングは65歳に達した日です。
この加算開始事由に該当したら、その翌月分から支給が開始されます。
1日生まれになると、誕生月から加算開始です。
生年月日に注意して、加算時期で正解を作るのではないかと目を光らせることが大事です。
3 1年以上の厚生年金の被保険者期間があるか
特老厚の受給要件は以下の3つが必要です。
- 受給資格期間を満たしている
- 厚生年金の被保険者期間が1年以上ある
- 支給開始年齢に達している
そして、
妻:報酬比例部分は、63歳から支給される。
という形で出題されます。
とすれば、当然受給要件は満たした上で、”何歳からもらえる?”と訊いていると思い込んでしまいます。
そうではありません。
そもそも、厚生年金への加入が1年無いという引掛けを作ってきます。
2022秋はとんでもない意地悪な問題が出題。
2022秋の妻は厚生年金の被保険者期間だけを見ると、1年未満なので、特老厚はもらえないと一瞬思います。
しかし、
過去の共済組合の期間は厚生年金の被保険者期間として考えるので、これらを合算して1年要件を考えます。
すると、
1年以上の厚生年金の被保険者期間があるので、特老厚が支給される という問題でした。
と検証しながら思ったものです(私は本番では答えを出せませんでした)。
最近の傾向として、女性・公務員期間ありの方は注意が必要。
逆にいうと、ここで正解を作ってきますので、最初に支給開始年齢を検討するという方法も良いかもしれません。
4 長期加入特例の事例もあり
2023春、2023秋は528ヶ月以上の長期加入特例の事例が出題されました。
この場合は、退職後に定額部分・加給年金が加算されることとなります。
事例を見て、厚生年金の加入期間が長そうだなと思ったら疑ってみてください。
まとめます
難易度の高いこの問題。
引っ掛けのトラップポイントを意識して慎重に解く必要があります。
前半のチェックポイント
- チェック1 20歳になった時期
- チェック2 未加入の時期
- チェック3 第3号に該当するか、夫第2号を意識しつつ時系列の作図
- チェック4 1日生まれか
後半のチェックポイント
- チェック5 共済加入の女性の支給開始年齢は男性と同じ
- チェック6 特老厚の要件 厚年被保険者期間が過去の共済期間と合わせて1年以上あるか
- チェック7 加算は翌月分から 1日生まれに注意
と、ここまで分析しておきながらなんですが。
私のこのテーマの2023春以降の方針は基本的に捨てる(敵前逃亡する)という作戦に変えました。
試験時間2時間では、コスパ・タイパが悪すぎるからです。
基本的には捨てる方向で良いと思います。
(私の場合、実際は基本知識問題を猛スピードで解くようにしたら、このテーマに挑戦する時間が取れるようになりました。ただ万人向けではないので、コスパを考えると捨てた方が良いと思います)
シモムー
みんなのねんきん主任講師