まもなく終わる「付加保険料の特例納付制度」を知っていますか?|みんなのねんきん

大須賀信敬

みんなのねんきん上級認定講師

どんなニュース?簡単に言うと

国民年金の第1号被保険者が任意で納付可能な“付加保険料”。ちまたでは「2年で元が取れるお得な保険料」などと呼ばれています。実はあまり知られていないのですが、この付加保険料には「特例納付制度」という耳慣れない仕組みがあります。しかも、この制度は2019年(平成31年)の3月で終了するためその期限が迫っています。そこで今回は、この「付加保険料の特例納付制度」について紹介をします。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

2年で元が取れる付加保険料

自営業者などが対象となる国民年金の第1号被保険者は、原則として毎月、同じ金額の保険料を納めます。

これを定額保険料といい、今年度であれば1ヵ月当たり16,340円を納めることになります。

さらに、希望をすれば付加保険料という保険料を追加で納めることも認められています。

付加保険料は1ヵ月当たり400円になります。

この付加保険料を納めておくと、納めた付加保険料の半額が毎年の老齢基礎年金に上乗せされて受け取れることになっています。

たとえば、付加保険料を1年間納めたとすると、付加保険料の総納付額は4,800円(400円×12ヵ月)になります。

この場合、4,800円の半額に当たる2,400円が毎年の老齢基礎年金に上乗せされて受け取れるものです。

収支を単純計算すると、年金を受け取り始めて2年で“納めた付加保険料と同額の年金”を受け取れることになります。

これが「2年で元が取れる」と説明される所以(ゆえん)です。

付加保険料を納めたことによって受け取れる年金を付加年金といいますが、この付加年金の支払いは一生涯、続くことになっています。

そのため、付加保険料は「2年で元が取れ、その後は得する一方の保険料!」などと説明されることもあるようです。

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期限までに納めないと「みなし辞退」に

実はこの付加保険料納付期限までに納めなかった場合のルールが、2014年(平成26月から変更になりました。

号被保険者の保険料の納付期限は、定額保険料、付加保険料ともに翌月末日と決められていますが、定額保険料の場合には納付期限である翌月末日までに納めなかったとしても、期限から年間は納めることが可能です。

たとえば、2014年(平成261月分の定額保険料の納付期限は翌月末日に当たる2014年(平成26年)2月末日です。

ただし、この日までに納めなかったとしても、その年後である2016年(平成28年)2月末日まで納付が可能となります

これに対して、2014年(平成26年)月分の付加保険料の場合には、納付期限である翌月末日2014年(平成26年)2月末日までに納めないと、本人が付加保険料の納付を辞退したという取り扱いが行われていました。

このような仕組みをみなし辞退と呼んでいました。

「みなし辞退」の対象になった後は、付加保険料を納めたとしても無効とされてしまいます。

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たまたま1回、期限に間に合わなかっただけでもその後の納付ができなくなるというのが、長きにわたって採用されてきた“付加保険料の納付ルール”になります。

定額保険料が“必ず納めなければいけない保険料”であるのに対して、付加保険料は“希望者のみが納める保険料”のため、このような取り扱いの違いが存在したのだと思います。

しかしながら、付加保険料の「みなし辞退」の仕組みは2014年(平成26年)3月末日で廃止となりました。

そのため、翌4月からは付加保険料も定額保険料と同様に、納付期限である翌月末日までに納めなくても、期限から2年間は納められることに変更されています。

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「みなし辞退」の対象者を救済する「特例納付制度」

以上のように、2014年(平成26年)4月以降は、付加保険料の「みなし辞退」の仕組みは存在しません。

しかしながら、過去に「みなし辞退」が適用され、付加保険料を納めたくても納められなくなった人たちは、たくさん存在しています。

そこで、本人の意思に反して「みなし辞退」の対象となり、付加保険料を納められなくなった人たちを救済するために、期間限定で設けられた制度があります。

これが「付加保険料の特例納付制度」です。

具体的には、過去10年以内に「みなし辞退」の対象となり、納められなくなった付加保険料があるのであれば特別に納められる、という制度になります。

たとえば、本稿執筆時点の2019年(平成31年)1月中であれば、最も古いもので10年前に当たる2009年(平成21年)1月分の付加保険料が「みなし辞退」の対象になっていれば、納めることが可能になります。

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付加保険料は2年で元が取れる制度ですから、老後の年金を少しでも増やしたいと考えて付加保険料を申し込んだ第1号被保険者にとっては、とても嬉しい制度といえます。

ただし、この制度は2016年(平成28年)4月1日から3年間の期間限定措置とされています。

そのため、2019年(平成31年)3月31日で終了であり、利用できる期間は残り2ヵ月程度となっています。

対象者には「特例納付申込書」が送られている

日本年金機構では「付加保険料の特例納付制度」を利用できる可能性がある人に対して、昨年の2018年(平成30年)11月下旬に2回に分けて、案内文を郵送しています。

郵送された案内文の名称は、「国民年金特定付加保険料のお知らせ兼特例納付申込書」といいます。

制度の名前は「“特例”納付制度」ですが、この制度を用いて納める保険料を「“特定”付加保険料」といいます。

“特例”と“特定”という似た用語が混在しているため、紛らわしく感じられるかもしれません。

届いた「特例納付申込書」はハガキ形式になっており、このハガキに必要事項を記入して返送すれば「付加保険料の特例納付制度」の利用が可能になるものです。

また、届いたお知らせには「対象期間のお知らせ」という表が印刷されています。

この表の中には、「付加保険料の特例納付制度」が利用できる年月のところに「○」または「△」のどちらかの記号が表示されています。

それぞれの記号の意味は、次のように説明されています。

○…納付可能期間

(さかのぼって付加保険料を納付することが可能な期間)

△…納付済のままとすることが可能な期間

(お返しする予定であった付加保険料を、申込により納付済のままとすることができる期間)

「○」の意味から説明します。

「みなし辞退」の対象になって納められなくなった付加保険料が過去10年以内にある場合、「対象期間のお知らせ」の該当年月のところに「○」が表示されています。

これが「○」の「納付可能期間」の意味です。

「○」が表示されている期間について「特例納付申込書」で申し込みをすると、後日、専用の納付書が届き、その納付書で付加保険料を納付できる仕組みになっています。

次に、「△」の意味について説明します。

「みなし辞退」の対象になった人の中には、「みなし辞退」になったにもかかわらず、その後に付加保険料を納めたというケースもあるようです。

しかしながら、前述のとおり「みなし辞退」が適用された後に納付した付加保険料は、全て“無効”扱いです。

過去10年以内にそのような期間がある場合には、「対象期間のお知らせ」の該当する年月のところに「△」が表示されています。

「△」が表示されている期間について「特例納付申込書」で申し込みをすると、本来であれば本人に返金されるはずの付加保険料を「納めたままの状態」にすることが認められます

その結果、返金予定であった付加保険料が、将来の付加年金の金額に反映することになります。

ココがポイント!「対象期間のお知らせ」の「○」と「△」の意味

○・・・「みなし辞退」で付加保険料を納められなかった月 △・・・「みなし辞退」になった後に付加保険料を納めた月

これから特例納付制度を利用する場合の留意点

もうすぐ終了する付加保険料の特例納付制度ですが、制度終了間際のこれから利用する場合には、いくつかの注意点があります。

初めに「特例納付申込書」の提出締切日は、制度終了日よりも早いので注意が必要です。

今回郵送された「特例納付申込書」は、提出が2019年(平成31年)3月29日(必着とされています。

これは2019年(平成31年)30日が土曜日、同3月31日が日曜日で日本年金機構の営業日ではないためです。

また、「対象期間のお知らせ」の「○」が表示されている期間について付加保険料の納付を希望する場合には、提出期限にかかわらず、なるべく早めに申込書を提出したほうがよさそうです。

申込書提出すると、その日本年金機構側で申込内容の審査納付書の作成・送付という事務手続きが行われることになっているため、期限ギリギリに出したのでは、間に合わなくなる可能性があるからです

さらに「対象期間のお知らせ」の「○」が表示されているところについて付加保険料の納付ができるのは、制度の最終日に当たる2019年(平成31年)31日(日)までとなります。

仮に納付書の発行を受けたとしも、2019年(平成31年)4月1日(月)以降は特例納付制度による付加保険料の納付はできません

「△」の表示があるは年金減額に要注意

なお「対象期間のお知らせ」の表に「△」の表示がある場合には、万一、「特例納付申込書」で申し込みを忘れると、予定していた年金額が受け取れなくなるため注意が必要です

「△」が表示されている期間は、「みなし辞退」が適用された後に付加保険料を納めた期間に当たります。

この期間の付加保険料の納付は“無効”のため、本人に返金されるべき保険料に該当します。

従って、もしも「特例納付申込書」で申し込みをしない場合には、「みなし辞退」の後に納付した全ての付加保険料が本人に返金されることになります。

付加保険料が返金されるということは、その分、将来受け取れる付加年金の金額も少なくなることを意味します。

また、すでに老齢基礎年金に上乗せして付加年金を受給している場合には、「特例納付申込書」で申し込みをしないと、「みなし辞退」の後に納付した全ての付加保険料の返金が行われた結果として、現在、受け取っている年金が減額されることになってしまいます。

今回のニュースまとめ

今回は2019年(平成31年)3月いっぱいで終了となる「付加保険料の特例納付制度」について見てきました

ポイントは次のとおりです。

  • 元来、付加保険料は納付期限である翌月末日までに納めないと、「本人が付加保険料の納付を辞退した」という「みなし辞退」という取り扱いが行われてきた。
  • 「みなし辞退」の制度は、2014年(平成26年)3月31日で廃止された。
  • 「付加保険料の特例納付制度」とは、過去10年以内に「みなし辞退」の対象となったために納められなくなった付加保険料が納められる制度で、2019年(平成31年)3月31日で終了する。
  • 特例納付制度が利用できる対象者に対して、「○」や「△」の表示が付いた「お知らせ兼申込書」が2018年(平成30年)11月に送られている。
  • 「△」の表示が付いた「お知らせ兼申込書」を受け取った場合には、「特例納付申込書」で申し込みをしないと年金が減額になる。

2018年(平成30年)11月に郵送された「国民年金特定付加保険料のお知らせ兼特例納付申込書」では、特に「△」の表示が付いている場合について、特例納付の申し込みをしないと年金が減額されることを注意喚起しています。

「△」の表示が付いたお知らせを受け取った場合に特例納付の申し込みをしたとしても、新たな支出が発生するわけではありませんので、忘れずに申し込みをしたほうがよいのではと思います。

出典・参考にした情報源

日本年金機構オフィシャルサイト:

「国民年金特定付加保険料のお知らせ兼特例納付申込書」の送付について(リンク終了)

付加保険料の特例納付制度



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みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。

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