ついに天下統一なるか?国民年金基金合併の行方|みんなのねんきん

出典資料が発表された日:2017年10月5日

どんなニュース?簡単に言うと

ー国民年金基金が合併ー2016年の報道から1年が過ぎ、2017年のこの秋に各基金が合併の決議を行いました。47の地域型と22の職能型が合併して1つの巨大な基金が登場します。今回は合併契約のお知らせを引用しながら、1年前の報道から現在、将来の予定を追跡してみます。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

ブログ読者の方からご連絡いただきました。

シモムーさん、こんにちは。

国民年金基金が地域型・職能型あわせて合併することが決まりましたね。そうなると、合併後の全国国民年金基金と国年基金連合会ってどういう関係になるんでしょう。そんなことを素朴におもいました。

(東京都 近森さま)

地域型が合併することは知っていましたが、職能型もだって?

2017年10月2日。

読者の方からのご連絡で職能型も含めて国民年金基金が合併することを知りました。

そして、その3日後。

国民年金基金の親玉?である国民年金基金連合会から合併に関する「お知らせ」が発表されました。

どんないきさつがあったんだ?

今回は国民年金の上乗せ年金である国民年金基金について、「お知らせ」の中身を引用しながら調べてみます。

国民年金基金は自営業者専用の上乗せ年金

まずは国民年金基金って?というところから。

一言で言うと、

自営業者専用の上乗せ年金

です。

強制加入の国民年金は、サラリーマンの第2号被保険者、そのサラリーマンに扶養された第3号被保険者、2号・3号以外の第1号被保険者(自営業者)がいます。

サラリーマンは厚生年金という上乗せ年金がありますが、自営業者には上乗せが無い。

そこで、自営業者の老後の年金を充実させる趣旨で平成3年に国民年金基金が登場しました。

この国民年金基金は地域型職能型の2種類があります。

地域型は各都道府県単位で、職能型は同じ自営業の25の職種について全国単位で存在しています。

そこらじゅうに多くの基金があるんですが、加入できるのは1つだけです。

第一報は2016年7月

2016年7月。

47国民年金基金一本化へ 19年4月メド、管理コスト削減

(日本経済新聞 2016年7月5日)

こんな見出しで報道がされました。確か日経新聞の1面トップだった気がします。

記事によれば、「加入者の減少による財政難が背景」とのこと。

そこで、各都道府県47ある基金を一本化させて、合理化を図るというのが趣旨です。

また、

この報道の当時から、職能型の一部の基金がこの一本化に合流する予定だったようです。

これ私、見落としていました。

そして、当時の記事によるその後のスケジュールは、

来年秋(編者注:2017年秋)に各基金の意思決定機関である代議員会で合併承認の議決を得た上で、19年4月に新しい基金が設立される。

(同報道)

ということで、なるほど。

2017年秋に合併承認の議決を得たというのが1年後の今回の報道に結びついています。

合併契約のお知らせの中身

では、今回の合併契約のお知らせの中身を見てみましょう。

引用元は国民年金基金連合会から出された「国民年金基金の合併契約締結に関するお知らせ」です。

合併の目的については、具体的に3つの記載があります。

1 加入者の利便性の向上

現在、都道府県を越えた住所移転や職業変更を行うたびに必要であった脱退・加入手続等が住所変更届だけで済むなど、手続きが大幅に簡素化され、加入員や受給者の利便性を高めます。

現行の仕組みでは、

都道府県をまたいだ引っ越しをすると、地域型の場合は加入資格を喪失。

そして、引越し先で加入の手続きを再度行うという面倒なことになります。

また、

ある自営業をたたんで別の自営業を始めた場合でも同じ(といってもあまり事例が無いでしょうが・・)。

加入者の利便性の向上が1つ目の理由です。

2 運営基盤の強化

各国民年金基金が合併し、規模を大きくすることにより運営の基盤が安定し、地域の人口変動、少子高齢化や産業構造の変化など、国民年金基金を取り巻く経済社会環境の変化にも余裕をもって対応することができるようになります。

年金や医療保険の歴史を見ると、全てこれですね。

小さい単位で運営していればどうしても少子高齢化には対応できない

結局は大きい単位の運営に変えていかないと生き残れないということです。

3 事業運営の効率化

合併することにより、各国民年金基金が別々に行っている事務を集約したり、加入勧奨を統一
的な戦略で全国展開するなど、業務を効率的に行います。

3つ目も2つ目と根底は同じ。

小さい単位では非効率です。

業務の効率化は民間企業であれば、すぐに手をつけるところですが、国民年金基金はそういうわけにはいかない。

なぜなら、もともと合併の規定がなかったからです。

 

 なに?もともと合併できない仕組みだった?

基金と基金をくっつけるという仕組みはもともとなかったようです。

以前の国民年金法を見てみると、

  • 135条(解散)
  • 137条の2の5(連合会)

解散規定の次は連合会の規定になっています。

今は137条の2の5をなくして連合会は137条の4に移動させ、137条の3で新たに「合併」に関する条文ができました。

解散は規定していても、合体は当初は予定していなかったようですね。

平成28年から合併が可能となりました。

今後はどうなる?

2019年4月 合併後の新しい基金が登場

今回の合併決議に基づいて、厚生労働大臣が認可をする(137条の3に規定あり)。

そして、今から2年後の2019年4月より、「全国国民年金基金」が登場するという流れです。

なんだかネーミングからは、天下統一された印象がありますが、実際はそうではありません。

地域型は確かに1つになるのですが、25ある職能型のうち、22が合併後の基金に合流するということですから、3基金が残っています

残ったのはどこなんだ?

と思って調べてみると・・・。

  • 歯科医師国民年金基金
  • 司法書士国民年金基金
  • 日本弁護士国民年金基金

これらの基金は独自でやっていけるということなんでしょうね。

国民年金基金連合会との関係は?

これは従来どおり。

完全に基金が1つになってしまえば、「連合会って要るのか?」となりますが、合併後も4つの基金が残っています。

ちなみに、連合会の仕事は

  • 60歳未満で基金の加入期間が15年未満で脱退した場合、掛けた原資を引き継いで将来年金を支給、亡くなった場合の一時金の支給
  • 個人型確定拠出年金の実施主体
  • 各基金の積立金を運用

といろいろありますから、連合会はやっぱりそのままですね。

今回のニュースまとめ

今回のニュースをまとめると以下のとおり。

  • きっかけは2016年7月の地域型と一部の職能型基金の合併報道
  • 加入者の利便性の向上、事業運営基盤の強化、事業運営の効率化が合併の趣旨
  • 2019年4月に全国国民年金基金が登場予定

昨年の報道ではてっきり地域型が1つになるだけだと思っていました。

そもそも、なんで都道府県ごとに作る必要なんてあるんだよと社労士受験生の時から思ったものです。

今回、職能型もそのほとんどが吸収合併されるわけですが、どうせなら完全に一体化して欲しかった。

そうでないと、国民にとってわかりづらいから。

最近は年金にしても医療保険にしても、小さな単位での運営できなくなり、その体制を大きく変える動きが目につきます。

ただ、中途半端に一部の組織が従来のままというのは困ります。

従来の仕組みも併せて知っておく必要があるからです。

厚生年金基金は廃止ではなく、中途半端にいくつかの基金が残れるようになっています。

公務員とサラリーマンの年金は一元化されたものの、事務処理は従来の組織がそのまま担っています。

これではかえって複雑になるばかりだと思うんですが・・・。

出典・参考にした情報源

2017年10月2日 国民年金基金連合会 国民年金基金の合併契約締結に関するお知らせ



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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。