過去の出題傾向からシモムーの感想
このテーマは繰上げに関するものですが、時代によってその仕組みが変わるのでそれに合わせて出題の事例も変わるという特徴があります。
2024春までは特別支給の老齢厚生年金(特老厚)の報酬比例部分を繰上げるという話でした。
直近10年くらいこの事例での出題が続いたのですが、2024秋にはついに!
特老厚を全く受給できない男性の出題となりました。
今後は60歳台前半に年金が出ない人の繰上げ請求にシフトしていくはずです。
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ここ注目!ここがポイントだ!
過渡期のため、
- 特老厚の報酬比例部分が61歳以降に引き上げられる人の場合
- 特老厚の受給ができない人の場合
の2パターンで解説していきます。両方出題の可能性があるためです。
特老厚の報酬比例部分が61歳以降に引き上げられる人の場合
よく出る出題形式は”計算式の選択”問題。
正しくない箇所を消去していけばいいだけ。
また、
2022年4月から繰上げ時の減額率が0.4%と変わりました。
数字が変わる人は昭和37年4月2日以降の生まれの人。
生年月日に注意です。
報酬比例部分の繰上げを理解する
架空の事例を作ってみましたのでこの内容に沿って解説していきましょう。
事例
X子さん(昭和37年4月5日生まれ 女性 63歳から報酬比例額の支給開始)
加給年金加算の対象となる夫(昭和40年8月19日生まれ)と2人暮らし。
60歳に達した日に定年退職して繰上げ請求。当時の年金見込額は次のとおりだった。
- 63歳からの報酬比例部分が1,200,000円
- 65歳からの老齢基礎年金は780,000円
- 経過的加算300円
設問
Xさんは60歳0か月で老齢厚生年金を繰上げ請求しているが、1年間に受給できた老齢厚生年金の年金額はいくらか?
解説
まず、Xさんは報酬比例部分相当の老齢厚生年金(A)を本来であれば63歳から受け取ることになります。
(B)の経過的加算と(C)の老齢基礎年金、加給年金額の加算は65歳からとなります。
そして、
この繰上げは本来の支給開始年齢に達するまでに請求しないといけません。
このケースでは63歳に達するまでに請求すること。
誤りの作り方は、
65歳に達するまでに
という形がお決まりのパターンです。
いつまでに請求できるか判定できるようにします。
報酬比例部分は繰上げた月数で減額
(A)は本来63歳から支給されるところ、60歳0カ月で繰上げたため、36カ月繰上げた減額率で計算します。
報酬比例部分(A)の減額分:1,200,000円 × 36カ月 × 0.4% = 172,800円
昭和37年4月2日以降の生まれなので以下、0.4%を使います。0.5%なのか0.4%なのか、生年月日に注意してください。
経過的加算も繰上げの対象となるが見た目の減額はない
経過的加算(B)も併せて繰上げ時から支給されます。
(B)は本来65歳から支給されるところ、60歳0カ月から繰り上げるため、60カ月繰上げた減額率で計算します。
経過的加算(B)の減額分:300円 × 60カ月 × 0.4% = 72円
ここで、ポイントになるのは、経過的加算です。
経過的加算は見た目そのままの金額が加算されるが、繰上げによる減額の影響は受けている
ことになります。
ここが大きなポイントです。
正解
60歳からの報酬比例部分(A):1,200,000円
60歳からの経過的加算(B):300円
(A)と(B)の減額合計:172,800円 + 72円 = 172,872円
繰上げ後の老齢厚生年金:1,200,000円 + 300円 ー 172,872円 = 1,027,428円
老厚を繰上げると老基も必ず一緒に繰上げる
老齢厚生年金を繰上げた場合、老齢基礎年金の年金額はいくら?という出題もあります。
上と同じ事例で解説してみましょう。
設問
Xさんは60歳0か月で老齢厚生年金を繰上げ請求しているが、1年間に受給できた老齢基礎年金の年金額はいくらか?
解説
報酬比例部分(A)を本来の支給開始年齢より前に繰り上げた場合は老齢基礎年金(C)も必ずセットで繰上げる必要があります。
それを知っていれば簡単。
この場合の(C)は60歳時に繰上げ請求する処理します。
正解
老齢基礎年金(C):780,000円 ー(780,000円 × 0.4% × 60カ月)= 592,800円
中途半端な月の繰上げに注意する
かつては、「60歳に達した月に繰上げた場合」という具合に、パッと見て、”あぁ、60カ月繰上げね”という出題でした。
今は計算しないと繰上げた月数がわからないような問題となっています。
例えば、”令和○○年12月中に請求した”という形です。
面倒ですが、繰上げた月数を確実にカウントできるようにしないといけません。
今後もこの形での出題が標準になるはずですから、正確に思い出せるようにしてください。例の新幹線の図です。
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特老厚の受給ができない人の場合
2024秋は特老厚の受給ができない(報酬比例部分の支給開始年齢引き上げ完了)人が繰上げをしたという事例でした。
計算問題での出題の場合は、上で説明した報酬比例部分の繰上げと考え方は同じ。
老齢厚生年金・老齢基礎年金の繰上げ月数が同じになるという特徴があります。
繰上げ後の注意
どちらの繰上げのパターンも繰上げ請求後の注意として、以下の点に注意。
- 加給年金額の加算は65歳になってから
- 繰上げ請求後に事後重症系の障害基礎年金・障害厚生年金は受給不可能
- 繰上げ請求後に厚生年金の被保険者になると繰上げ老厚も在職老齢年金の調整対象になる
- 繰上げ請求後65歳からの老齢厚生年金は繰下げできない
- 65歳に達するまで改定はない
単に正誤判定するだけですから確実に押さえておきます。
1は2022春で正解。夫は年上なのでそもそも加算は無いというものでした。
2は2024秋で私もミスしてしまいました。
繰上げ請求しても、被保険者期間中に初診日のある通常の障害年金であれば請求はできます。
事後重症や基準傷病による障害年金、その他障害の改定は65歳という縛りがありますが、繰上げによって65歳到達と同じ扱いになるので受給不可能となるわけです。
3は在老の適用がありますが、65歳からの本来支給の老厚を受給するので、高在老の適用を受けます(現在は高在老も低在老も同じですが・・)。
4は2023秋で正解となりました。繰上げたら減額された年金を生涯に渡って受給し続けることになります。
5については2024秋に初出題。改定というと、退職による改定(退職改定)がありますが、65歳に達するまで改定はないというルールです。
まとめます
経過的な繰上げ支給の老齢厚生年金と老齢基礎年金。
前提として2つのテクニックをマスターしておいてください。
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そのうえで、以下の2つのポイントを意識して計算式に対応できるようにしてください。
- 老厚のポイント:繰上げによる減額分には経過的加算の減額を含んでいるが、経過的加算自体の見た目の減額はない
- 老基のポイント:老厚の繰上げ請求と同時に請求しなければならない
繰上げ後の注意点も押さえておいてください。
- 加給年金額の加算は65歳になってから
- 繰上げ請求後に事後重症系の障害基礎年金・障害厚生年金は受給不可能
- 繰上げ請求後に厚生年金の被保険者になると繰上げ老厚も在職老齢年金の調整対象になる
- 繰上げ請求後65歳からの老齢厚生年金は繰下げできない
- 65歳に達するまで改定はない
今後は特老厚無しの人の繰上げが主流になるはずです。
シモムー
みんなのねんきん主任講師