何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
遺族基礎年金自体がシンプルでわかりやすいことが影響しているのか、この問題はややマニアックなところを突いてくる内容になっています。
例えば亡くなった後に胎児が出生した場合。
また、健常者の子が後から障害を負った場合。
もちろん現実に起きる可能性はあるものの頻繁に耳にする内容ではありません。
私の年金相談の経験でも遭遇したことが無いので、銀行の窓口担当の人がここまで詳しく知っておく必要はないんじゃないかと思うんですけどね。
まさに試験のための知識が出るといったところでしょうか。
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過去10回の正解となった知識
- 2024秋 50歳未満の納付猶予制度適用中の死亡でも支給対象となる
- 2024春 胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
- 2023秋 25年以上の納付免除期間がある老齢基礎年金受給者の死亡時に支給される
- 2023春 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 2022秋 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2022春 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2021秋 胎児が出生した場合は遺族基礎年金の対象となる子となる
- 2021春 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 2020秋 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
- 2020春(模擬)胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
よく正解になっている知識は以下の3つ。
- 胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
- 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
ほとんどが上3つの知識で正解となっていますからここから押さえるのが王道です。
出題傾向から年金制度を考える
胎児が出生した時点で年金権が生じる
胎児が出生したというのはそもそも何が問題なのか。
それは死亡時には子がいないということ。
子がいなければ誰も遺族基礎年金をもらえません。
と思うかもしれません。
が、お腹の子は民法上は”人”ではありません。出生して初めて”人”ということになります。
ですので、”死亡時に子(人)はいない”となってしまうわけです。
ですのでこの原則を貫くとたまたま胎児だったというだけで遺族基礎年金がもらえず、残された遺族が保護されない。
そこで、
そのような子は死亡当時に生計維持していたとみなすことにして、”人”となった出生時に年金の権利が生じることにしています。(したがって、出生したらその翌月分から支給開始)
年金が遡れるのは権利が生じたところまで。
ですので、子が存在しない親の死亡時まで遡ることはありません。
老齢と遺族年金は権利が生じた当時の家族の状況を保障します。
権利が生じたタイミングで存在しない家族に関してはその後に家族になっても対象にしないわけですが、胎児だけは例外にしています。
では、障害年金は?
障害年金だけは権利が生じたあとでも、家族が増えさえすれば加算の対象になりますから、権利が生じた際の胎児のことは考える必要がないんです。
2024春で久しぶりに正解となりました。
納付の実績に関係なく、一定の年金額が保障される
遺族基礎年金は母子家庭や父子家庭、孤児を保護するという趣旨。
そのため、亡くなった人に滞納が多かったとしても、年金額は一定(老齢基礎年金の満額)にして生活保障になるようにしている。
ただし、きちんと納めていなければ、年金をもらうための条件を満たせない可能性があります。
死亡日の前日における納付要件を判定されます(短期要件の場合)。
条件を満たしさえすれば、”金額”はまともな保障になるようにしているわけです。
配偶者が受給する場合は年齢問わず
2018秋、2020秋、2022春、2022秋にはこの点が正解になったので整理しておきます。
遺族基礎年金は子のある配偶者または子が受給できます。
ここにおける”配偶者”は夫でも妻でも良いのですが、年齢要件はありません。
配偶者でも”夫”の場合は55歳以上であることの年齢要件がありますが、それは遺族厚生年金の話です。
遺族基礎年金は旧法時代の母子年金が起源であり、福祉的な要素が強いので、夫であっても(配偶者でありさえすれば)年齢を問わないのです。
2020秋、2022秋は、55歳まで支給停止という出題でした。繰り返しますが遺族基礎年金にはそんな条件ありません。
障害がある子は20歳まで受給できるが・・・
2021春にはこれまで正解になったことのない知識が正解に。
子の年齢要件についてです。
遺族基礎年金を子が受給する場合は、”原則として18歳の年度末まで、例外として障害者であれば20歳まで”というルールがあります。
出題は、
年度末に達した以後
に障害者になったとしており、ここが誤り。
この例外が適用されるためには、18歳の年度末までに障害者となっていなければいけません。
というのも、年度末に達したら遺族基礎年金の権利がその時点で失権してしまうから。
失権後に障害状態が1・2級となっても年金権が復活することはありません。だから誤りなわけです。
この論点は、遺族年金に限らず、子にかかる家族手当に関しても同じことが言えるので共通して押さえておきます。
2021春、2023春で正解となっています。
長期要件では25年が必要
老齢基礎年金の受給者の死亡、老齢基礎年金の受給資格を満たした者の死亡の場合は長期要件として分類されます。
平成29年8月からは受給資格期間が10年以上あれば老齢基礎年金を受け取れるよう、これまでの25年から短縮されました。
ただし、遺族年金の長期要件を考える上では保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上なければならず、この点は従来と同じです。
2023秋ではこの点初めての出題。
老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、
死亡した者の保険料納付状況に関わらず支給される
として誤り。
例え、受給資格を満たしていても、10年以上25年未満の保険料納付状況であれば対象にならないからです。
2024春、2024秋は「25年以上ある者」の死亡という表現だったので正しいとなりました。
ちなみに、
遺族厚生年金の長期要件も同じ考え方なのでまとめて押さえておきます。
今回はこれが答えになる!
どの回でも胎児に関する論点は正解になりやすいのでしっかり理解。
正解とはならなくても必ず肢の一つとして並んでいます。
出生してから権利が生じるので、親の死亡時まで遡って年金権が生じるわけではない。これを押さえます。
- 胎児が出生した場合は出生月の翌月分から支給され、死亡時まで遡らない
残りの2つもいつ正解になってもいいように頭にいれておきます。
- 18歳年度末を過ぎてから障害を負っても20歳まで支給されることはない
- 配偶者が受給する場合の年齢要件はない
シモムー
みんなのねんきん主任講師