出典記事が発表された日:2016年03月31日
どんなニュース?簡単に言うと
平成28年度が幕を明けました。今年度の年金額が一体いくらになるのか、毎年度の改定の結果を解説します。今回は厚生年金について。納める保険料ともらえる年金額をみていきます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
平成28年度の納める年金(保険料)と受け取る年金を解説しているシリーズ。
前回は国民年金をまとめました。
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祝平成28年度!年金額はこんなんです 国民年金編|みんなのねんきん
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今回はサラリーマンが入る年金=厚生年金に関する金額を「納める」「もらう」に分けてみていきます。
厚生年金の金額 「納める」
厚生年金の保険料は秋に一斉に変わる
一定の金額で第1号被保険者であればみな同額の国民年金の保険料。
一方、
厚生年金は人それぞれ。
給料が多い人ほど保険料を多く納めます。
具体的にはこんな計算式。
保険料 = 給料 × 保険料率
これを会社と本人とで半分ずつ負担します。
国民年金と同じく、保険料率が4月になると変わるのか?
そうではありません。
毎年9月から翌年8月を単位として新しい保険料が使われています。
2015年9月から2016年8月 | 17.828% |
2016年9月から2017年8月 | 18.182% |
2017年9月以降 | 18.3% |
この表を見ると驚きですね。
2017年9月以降は18.3%で固定されることになっています。
高齢者が増えているのに上げなくて大丈夫なのか?
安心してください。上がりませんよ。
高齢者は増えるけど、これ以上現役世代の負担を押し付けできない。
というわけで、保険料率はこの18.3%で打ち止め。
代わりに登場したマクロ経済スライドで年金額を抑える仕組みになっています。
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2016年度の年金は増えるか減るか|みんなのねんきん
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2015年10月から共済年金が厚生年金と一体化
2015年10月から厚生年金のメンバーに公務員や私立学校共済の加入者が加わりました。
制度が違う年金制度が一緒になったので、保険料率も一緒にするのがスジ。
ところが、もともと厚生年金とは別制度である公務員共済と私立学校共済は現時点で保険料率が違うんです。
公務員の年金の保険料率は現在、17.278%。
民間サラリーマンの厚生年金より若干低い。
私立学校共済は更に低く、14.354%。
一気に足なみを揃えることは影響が大きいので公務員共済は2018年から18.3%に。
私立学校共済は2027年から18.3%になります。
その間、毎年0.354%ずつ上昇していきます。
保険料1つとっても、年金制度って一気には変えられないっていうのがわかりますね。
厚生年金の金額 「もらう」
厚生年金制度からもらえる3つの年金
国民年金制度からもらえる年金は基本的に3つ。
- 老後の年金=老齢厚生年金
- 障害時の年金=障害厚生年金
- 死亡時の年金=遺族厚生年金
これらの年金は「基本の年金額」と「加算額」の2つで構成されています。
国民年金も厚生年金もこの構造は同じなんです。
基本の年金額は給料に連動した仕組み
基本となる本体の年金額は国民年金と異なり満額という概念がありません。
厚生年金は現役時代の各人の給料が異なるからです。
つまり、
納めている保険料が各人で異なる。
ですから、受け取る年金も各人で異なるわけです。
計算式を具体的に見てみましょう。
給料の平均額 × 一定の乗率 × 厚生年金に入った月数
たった3つの要素で年金額が出ます。
意外に単純だと思いませんか。
例えば給料の平均が20万円で10年間厚生年金に加入していたら
200,000円 × 5.481/1000 × 120カ月 = 131,544円(年額)
となります。
一定の乗率は原則1000分の5.481という数字を使います。
給料の金額は社会保険に登録したキリの良い数字を使います。これを標準報酬って言います。
物価や賃金の変動は給料の平均値に反映させる
国民年金の場合、「改定率」というものを掛けて毎年度の年金額を変動させることは前回説明しました。
厚生年金はどうするのか。
実は給料の平均値を出す際に物価や賃金の動きを反映させることになっています。
ここからは、ちょっと難しい話です。
上の計算式で「給料の平均額」と書きましたが、過去の給料の額面をそのままにして平均値を出すわけにはいきません。
貨幣価値が異なるからです。
そこで、過去の給料を最近の水準に評価し直すことが必要です。
その評価し直しの作業は、過去の給料の額面に「再評価率」というものを掛けることになっています。
例えば、
昭和5年4月2日生まれの人の昭和33年3月の給料が2万円だったとします。
この2万円に再評価率「14.099」を掛けて評価し直すわけです。
20,000円 × 14.099 = 281,980円
すると、約28万円になりました。
当時の2万円は今の28万円ってことなんですね。
具体的には生年月日と厚生年金にいつ加入していたかにより再評価率が細かく異なります。
すんごい細かい表が日本年金機構のウェブサイトで公開されていますので気になる方は見てみましょう。
この再評価率を毎年度、物価や賃金の動きを反映させて全体を書き換えるわけです。
2016年度は例外的に2015年度から据え置き。
上の「14.099」はそのまま「14.099」なわけです。
家族がいると加算される
厚生年金でも家族がいる場合は国民年金と同じ構造の加算があります。
決まった金額(224,700円)に改定率を掛け算します。
224,700円 × 改定率
224,700円×0.999≒224,500円(100円未満の端数は四捨五入)となります。
2015年度と同額で据え置きになっているのは厚生年金も同様。
ただし、
老齢厚生年金の配偶者の家族手当は特別に割増の加算をすることになっています。
224,500円に特別加算165,600円を足して、390,100円が加算額となります。
今回のニュースまとめ
今回のニュースは
- 厚生年金制度で納める金額はいくら
- 厚生年金制度でもらう金額はいくら
という内容でまとめてみました。
納める保険料は各自の給料に保険料率を掛けます。
この保険料率は2017年9月以降は18.3%で上昇が止まりますからもう少しの辛抱です。
もらう年金の基本の金額は給料連動制。
給料の平均額 × 一定の乗率 × 厚生年金に入った月数
3要素だけで構成された意外にシンプルな計算式です。
ただし、
再評価という面倒な作業をしなければいけません。
ここが厚生年金の計算式の難解なところだと思います。
ただ、
逆にこの再評価という仕組み+3つの要素で計算式が成り立っていると理解できれば、厚生年金の計算は分かったも同然。
資格試験で勉強中の人は年金額改定の仕組みを最終的に理解できれば年金はマスターしたとも言えます。
また、
前回の国民年金のところでも解説しましたが、この厚生年金も端数処理の仕組みが変わっています。
昨年度と計算式は同じなんですが、最後の端数処理によって年金額が若干変わりますからご注意ください。
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出典・参考にした情報源
厚生労働省発表資料より
シモムー
みんなのねんきん主任講師