どんなニュース?簡単に言うと
2020 年(令和2年)2月、多くの人に国民年金保険料の支払いを求める『催告状』というハガキが発送されました。中には、保険料を支払い済みにもかかわらず、このハガキが届くケースもあるようです。今回はこの『催告状』の仕組みを見てみましょう。
スポンサーリンク
どんなニュース?もう少し詳しく!
国民年金保険料の未納者に届く『催告状』
『催告状』は国民年金保険料を払っていない人に支払いを催促するためのハガキで、2020年(令和2年)2月 18 日と 20 日の2日間に分け、日本年金機構から発送されています。
現物は次のようなハガキです。
正式名称は『国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)』といい、圧着式のハガキで送られています。
ただし、ハガキの宛名面には『大切なお知らせ 国民年金保険料のお知らせ』としか書かれていないため、ハガキの中を見なければ保険料の支払いを催促する趣旨であることは分かりません。
この『催告状』には、次のような文章が書かれています。
「お客様の国民年金保険料には、裏面の納付状況のとおり未納があります。未納があると、年金を受け取るときに影響があります。金融機関またはコンビニエンスストア等で納めてください」
現物は次のとおりです。
『催告状』の裏面には「納付状況」というタイトルの表があり、最近の保険料の支払い具合や未納の月数、未納の金額が年度ごとに表示されています。
また、次のような記述もあります。
「なお、保険料を滞納していると、納付義務のある方※2の財産が差し押さえられる場合があります。※2 納付義務のある方…被保険者本人、その配偶者、世帯主」
こちらの現物は次のとおりです。
「財産が差し押さえられる場合がある」とは、ただ事ではありません。
しかも、保険料を未納にした本人だけでなく、配偶者や世帯主も財産差し押さえの対象者になるとのこと。
国民年金の保険料を払っていないと、本人はもとより家族の財産も差し押さえ対象になることがあることは、本サイトの 2020 年(令和2年)2月3日付コラム『“親の財産”が差し押さえ!? 年金保険料を払わない若者のてん末とは』でも紹介をしましたが、実際にそのような記載のあるハガキを受け取った人の驚きは、想像に難くありません。
-
“親の財産”が差し押さえ!? 年金保険料を払わない若者のてん末とは|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 昨年(2019 年)も多くの若者が国民年金に加入し、毎月、保険料を払う立場となりました。ところで、もしこのような若者が保険料を払わないと、何か不利益を被るのでしょうか。今 ...
続きを見る
ココがポイント!国民年金保険料の『催告状』とは
国民年金の保険料を払っていない場合に、自宅に届くハガキである。「保険料を滞納していると、納付義務がある方の財産が差し押さえられる場合があります」などと書かれている。
保険料を払っているのに催促された!
実は、この『催告状』にはいくつかの注意点があります。
1番目の注意点は、保険料の未納はないにもかかわらず届くことがある点です。
保険料は全額支払い済みなのに、「未納があります。保険料を滞納していると、財産が差し押さえられる場合があります」と書かれたハガキが届くわけです。
このような現象が起こる理由は、この『催告状』が 2020 年(令和2年)1月 20 日時点の情報に基づいて作成されていることにあります。
日本年金機構で保険料の未納者をコンピューター上で抽出し、『催告状』を作成して送付するまでには1カ月程度かかります。
そのため、『催告状』の発送対象者として選ばれてから、実際に『催告状』が自宅に届くまでの間に保険料の支払いを終えるというケースも出てきます。
このような場合には、保険料を支払い済みにもかかわらず、『催告状』が届くことになるわけです。
この点につき、日本年金機構のホームページでは次のような説明をしています。
「令和2年1月 20 日時点の情報に基づき発行しておりますので、すでに納めた期間や免除等が承認された期間が未納と表示されている場合があります。あらかじめご了承ください」
しかしながら、2020 年(令和2年)1月 20 日時点の情報に基づいて作成されていることは、『催告状』自体には全く記載がありません。
そのため、「保険料は全額支払い済みなのに、なぜ催促されるんだ!?」と思う人も少なくないようです。
また、国民年金保険料は、直接、日本年金機構に払うわけではなく、金融機関などを介して払います。
そのため、日本年金機構では保険料が払われた事実を、リアルタイムに把握することができません。
日本年金機構が保険料の支払いを確認できるのは、保険料が払われてから何日か経過した後になります。
その結果、1月 20 日以前に払った保険料についても、1月 20 日時点の日本年金機構のコンピューターでは“未納”と記録されているケースがあります。
このような事情から、1月 20 日時点の情報に基づいて発行しているとはいっても、1月20 日以前に払った保険料の情報が『催告状』に反映していないこともあるわけです。
従って、「保険料を1月 20 日までに払っているのに、催促された!」という問題も発生してしまいます。
ココがポイント!未納がないはずなのに『催告状』が届く仕組み
『催告状』は“約1ヶ月前”の情報に基づいて作成されている。また、日本年金機構では「保険料を払った事実」をリアルタイムに把握することができない。そのため、未納はないのに『催告状』が届くケースがある。
問い合わせ先が「民間企業」になっている
2番目の注意点は、この『催告状』には問い合わせ先として、聞きなれない民間企業の社名が記載されていることです。
そのため、このハガキを受け取った人の中には、「詐欺ではないか?」と思う人も少なくないようです。
聞いたことのない民間企業の名前で「未納があります。保険料を滞納していると、財産が差し押さえられる場合があります」と書かれたハガキが届くのですから、無理もありません。
実は、現在、国民年金保険料の未納者に支払いを催促する業務の一部が、日本年金機構から民間企業に委託されています。
そのため、民間企業が問い合わせ先となっている『催告状』が届くわけです。
本稿執筆時点で、日本年金機構からの委託を受けてこの業務を行っている企業は、次のとおりです。
- アイヴィジット・東洋紙業共同企業体(代表企業:株式会社アイヴィジット)
- 株式会社バックスグループ
- 日立トリプルウィン・NTT印刷共同企業体(代表企業:日立トリプルウィン株式会
社)
1道府県について上記のうちのいずれか1カ所が、保険料支払いを催促する業務を受託しています。
ただし、東京都だけは上記のうちの2カ所が分担し、業務を受託しています。
このことは、届いた『催告状』でも次のように説明されています。
「国民年金保険料の納付のご案内は、民間委託により実施しており、業務を委託する事業者から、電話・戸別訪問等を行っています」
『催告状』の宛名面には年金事務所の連絡先も記載されているのですが、民間企業が問い合わせ先になっているというのは、一般の人には馴染みづらい仕組みといえるかもしれません。
ココがポイント!『催告状』の問い合わせ先が「民間企業」になっている理由
国民年金保険料を未納にしている人に対して支払いを催促する業務の一部は、日本年金機構から「民間企業」に委託をされているため。
今回のニュースまとめ
今回は、国民年金保険料の未納者に届く『催告状』の仕組みを見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 2020 年(令和2年)2月、国民年金保険料を払っていない人に対して支払いを求める『催告状』というハガキが発送された。
- 『催告状』は2020 年(令和2年)1月 20 日時点のデータで作成されているため、現在は未納がなくても送られてくることがある。
- 『催告状』は日本年金機構から正式に委託された「民間企業」が問い合わせ先になっている。
大変残念なことですが、時折、前述の民間企業以外の企業・団体が、国民年金保険料の支払いの督促を行っているという話を耳にすることがあります。
しかしながら、2020 年(令和2年)2月現在、前述の企業以外で日本年金機構から正式に委託を受け、国民年金保険料の支払いを催促する業務を実施している企業・団体は、一切ありません。
くれぐれも注意をしてください。
出典・参考にした情報源
日本年金機構ウェブサイト:
国民年金保険料を納付いただいていない期間がある方にお知らせをお送りいたします
-
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202002/2020021801.html
続きを見る
国民年金保険料のご案内は、民間事業者に委託しています
-
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/shunoitaku/minkan-itaku/20150501.html
続きを見る
大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師