どんなニュース?簡単に言うと
2019年(平成31年)4月1日、自営業者などが加入する複数の国民年金基金が合併し、全国国民年金基金が設立されました。そこで今回は、国民年金基金は合併により何が変わったのかを整理してみましょう。
スポンサーリンク
どんなニュース?もう少し詳しく!
そもそも国民年金基金とは
自営業者やフリーランサーと呼ばれる人たちは、会社員や公務員に比べると「年金の受け取りで不利だ」といわれます。
理由は加入する年金制度の“数”にあります。
会社員や公務員の場合には、国民年金と厚生年金という“2つ”の年金制度に加入しています。
これに対して、自営業者やフリーランサーは国民年金“1つ”にしか加入していません。
実は、加入する年金制度の“数”が違うということは、将来、受け取れる年金の額が違うということを意味しています。
年金は加入していた制度からしか、お金が支払われないからです。
そのため、“2つ”の年金制度に加入していた会社員や公務員は、“2つ”の制度から年金が受け取れるのに対して、“1つ”の制度にしか加入していなかった自営業者やフリーランサーは、“1つ”の制度からしか年金を受け取ることができません。
これが、自営業者やフリーランサーは「年金の受け取りで不利だ」といわれる所以(ゆえん)
です。
この問題を解消するために、平成3年5月から設立が始まったのが国民年金基金という制度です。
国民年金基金は国民年金の第1号被保険者である自営業者などが、任意で加入できる制度として創設されました。
もしも、自営業を営む人が国民年金基金に加入をすれば、加入する年金制度の数が会社員や公務員と同じように“2つ”になります。
その結果、将来は“2つ”の制度から年金を受け取ることが可能になり、勤め人並みの年金受給も可能になるという仕組みです。
ココがポイント!国民年金基金とは・・・
国民年金の第1号被保険者である自営業者などが、勤め人並みの年金を受け取るために任意で加入できる制度である。
細分化されていた運営単位を統合
もともと、国民年金基金は運営単位が細分化されていたという特徴があります。
具体的には、都道府県ごとに運営をする「地域型国民年金基金」が47基金、同業者の集まりで運営をする「職能型国民年金基金」が25基金、設立されていました。
つまり、国民年金基金という同一の年金制度を、72の細分化された組織がそれぞれ別個に運営していたものです。
しかしながら、2019年(平成31年)4月1日に全ての「地域型」の基金と「職能型」の基金のうち22基金が合併し、全国国民年金基金が設立されました。
そのため、3月までは別の基金に加入していた多くの人たちが、4月からは同じ基金のメンバーになったものです。
その結果、合併に参加せずに残っているのは、次の3基金のみとなりました。
- 歯科医師国民年金基金
- 司法書士国民年金基金
- 日本弁護士国民年金基金
合併して強化された運営基盤
それでは、国民年金基金は合併をして何が変わったのかを考えてみます。
国民年金基金はピーク時の2003年度(平成15年度)末には、全基金を合わせると789,178人が加入していました。
しかしながら、近年は加入員数の減少が著しく、2017年度(平成29年度)末現在、全基金合計で374,664人まで減少しています。
つまり、国民年金基金に加入している人の人数は、約15年で半減したことになります。
国民年金基金の加入員数の推移をグラフで見ると、次のとおりです。
年金制度は加入して保険料・掛金を払う人たちによって支えられている仕組みです。
そのため、保険料・掛金を払う「支え手」の数が多いほど、年金制度の運営は安定することになります。
反対に、「支え手」の数が少なくなれば、制度運営も不安定になるという特徴があります。
実は、国民年金基金はまさに「支え手」の数の減少による、制度運営面の問題に直面していたといえます。
しかしながら、72基金のうちの69基金が1つになったことにより、加入員数約35万人の大きな保険集団を形成することができたものです。
また、地域ごと・業種ごとに運営単位が細分化されていた頃には、基金の「支え手」の数は地域の人口動向や産業構造の変化に大きく影響される傾向にありました。
しかしながら、合併によって「支え手」が特定の地域・業種に偏らなくなったことにより、制度を運営する上で社会環境・経済環境の変化の影響を受けにくい体質に変わりました。
つまり、今までよりも制度運営の基盤が強化されたのが、合併後の大きな変化といえます。
実は、今回の基金合併の最大の目的がこの運営基盤の強化にあります。
ココがポイント!合併して変わったこと1
1基金の加入員数が大幅に増え、また、加入員が特定の地域・業種に偏らなくなったことにより、運営基盤の強化が図れた。
スポンサーリンク
合併で手続きが簡素化
2019年(平成31年)3月までは、国民年金基金に加入している場合に運営単位が細分化されていることによるデメリットを被ることがありました。
たとえば、東京都で自動車整備業を営む自営業者が、「地域型」の東京都国民年金基金に加入していたとします。
もしも、この人が埼玉県に引越しをした場合には、東京都国民年金基金を辞めなければなりませんでした。
東京都国民年金基金は、東京都に住んでいる人を加入対象として運営されているからです。
そのため、埼玉県に転居後は、埼玉県に住んでいる人を加入対象とする埼玉県国民年金基金に加入し直さなければならないという現象が起こりました。
また、同様に自動車整備業を営む自営業者が、「職能型」の自動車整備国民年金基金に加入していたとします。
ところが、自動車整備業が下火になってきたため、個人タクシー業に商売替えをしたとします。
このような場合には、自動車整備国民年金基金を辞めなければなりませんでした。
自動車整備国民年金基金は、自動車整備業を営む人を加入対象として運営されているからです。
そのため、転業後は個人タクシー業を営む人を加入対象とする全国個人タクシー国民年金基金に加入し直さなければならないという現象が起こりました。
このように、運営単位が地域別・業種別に細分化されていた頃は、自営業者であることには変わりがないにもかかわらず、都道府県を越えた転居や職業の変更により、基金の脱退手続き、再加入手続きを行わなければならないという問題が発生していました。
しかしながら、ほとんどの基金が合併したことにより、2019年(平成31年)4月1日からは上記のようなケースでも、脱退・再加入手続きを行う必要がなくなったものです。
つまり、手続きが簡素化され、利便性が高まったのが、合併後のもう一つの大きな変更点といえます。
ココがポイント!合併して変わったこと2
都道府県を越えた転居や職業の変更があっても、基金の脱退手続き、再加入手続きを行う必要がなくなった。
さらには、「各基金が別々に行っていた事務を集約する」「加入勧奨を統一的に行う」など、業務の効率化も可能になったようです。
今回のニュースまとめ
今回は、2019年(平成31年)4月1日に合併した国民年金基金について、合併前の仕組みと比較しながら特徴を見てきました。
ポイントは次のとおりです。
-
国民年金基金は国民年金の第1号被保険者である自営業者などが、勤め人並みの年金を受け取るために任意で加入できる制度である。
-
2019年(平成31年)4月1日に47の地域型国民年金基金と22の職能型国民年金基金が合併し、全国国民年金基金が設立された。
-
合併によって加入員数約35万人の大きな保険集団を形成でき、また、加入員が特定の地域・業種に偏らなくなったことにより、運営基盤の強化が図れた。
-
合併後は都道府県を越えた転居や職業の変更があっても、基金の脱退手続き、再加入手続きを行う必要がなくなった。
国民年金基金には「制度の運営主体は異なっていても、制度内容は同じであった」という事情があります。
そのため、合併により掛金や年金の内容が変更されることはなく、合併に伴う新たな負担が生じることもなかったようです。
その意味では、国民年金基金は合併により「自営業を営む皆さんが今までよりも安心して加入できる制度になった」といえるでしょう。
出典・参考にした情報源
国民年金基金は、自営業・フリーランスなどの国民年金の第一号被保険者の方々が安心して老後を過ごせるように、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度です。 続きを見る
全国国民年金基金
大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師