どんなニュース?簡単に言うと
2016年8月。国立社会保障・人口問題研究所が年金や医療、介護等の制度に関する1年間の支出を発表しました。社会保障給付費の総額は112兆円。年々増えているのは想像ができます。今回、その内訳をじっくり調べてみました。年金は前年度より減っているんですが、なぜゆえに?
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どんなニュース?もう少し詳しく!
平成26年度の社会保障給付費が発表されました。
これは年金や医療、介護等の制度に関する1年間の支出を集計したもの。
給付費の総額は112兆1020億円。
前年度に比べて1兆3970億円増え、伸び率は1.3%。
今年度も過去最高を更新しています。
今までじっくりと中身を見たことはなかったのですが、今回はこの統計にクローズアップしてみました。
内訳の一番はやっぱり年金
給付の中身を大きな3分類にまとめたものから見てみます。
「年金」「医療」「福祉その他」
という分類です。
これらの全体に占める割合を表でまとめました。
(%) | 年金 | 医療 | 福祉その他 |
平成26年度 | 48.5 | 32.4 | 19.1(介護8.2) |
平成25年度 | 49.3 | 32.2 | 18.5(介護7.9) |
平成24年度 | 49.5 | 32.0 | 18.5(介護7.7) |
トップは「年金」。
社会保障の半分は年金なんですね。
次いで「医療」。
最後に「福祉その他」なんですが、介護対策の費用が年々膨らんでいるのがわかります。
な、なぜだ?年金が減っている!
この3分類を金額で比較してみましょう。
(兆円) | 年金 | 医療 | 福祉その他 |
平成26年度 | 54.3 | 36.3 | 21.4(介護9.1) |
平成25年度 | 54.6 | 35.6 | 20.4(介護8.7) |
平成24年度 | 53.9 | 34.8 | 20.1(介護8.3) |
年金以外は毎年度増額していることがわかります。
が、
年金だけは前年度から減りました。
え?なんで?
これは平成25年の10月に強制的に年金の水準を1%引き下げたことが影響しています。
本来の年金水準より特別に高い金額で受け取れる措置が10年以上も続き、これでは世代間の公平に反する。
平成25年10月に1%、平成26年4月に1%、平成27年4月に0.5%
それぞれ引き下げて現在に至ります。
35年前は今の5分の1だった
この社会保障給付費は戦後すぐから統計をとっているとのこと。
昔はどうだったのか。
こちらのグラフをご覧ください。
昭和50年代半ばで年金が医療を逆転。
年々差が開いています。
平成12年に「福祉その他」が急に増えています。
この年に介護保険制度が始まったのでその影響でしょう。以後順調に増加しています。
昭和55年度で全て合計しても24.7兆円。
現在は112兆円。
たったの30年ちょっとで5倍になっているというのは恐ろしいです。
資産収入が激増している
反対に収入額はどうなっているのでしょうか。
収入総額は136兆5729億円
給付の112兆よりは多いのでは赤字にはなっていないみたいですね。
金額の内訳を見てみると面白いことがわかります。
(兆円) | 社会保険料 | 公費負担 | 資産収入 |
平成26年度 | 65.1 | 44.8 | 21.7 |
平成25年度 | 62.9 | 43.2 | 15.8 |
平成24年度 | 61.4 | 42.5 | 15.9 |
平成23年度 | 60.1 | 43.5 | 3.6 |
つい4年度前までは3兆円しかなかった資産収入が7倍にまで膨らんでいます。
これはあれでしょうね。
年金の積立金の運用結果が影響しています。
今回のニュースまとめ
今回のニュースをまとめると以下のとおり。
- 平成26年度の社会保障給付費は112兆円で過去最高を更新
- 過去30年で5倍に膨張
- ここ数年は資産収入の増加が目立っている
私が資格予備校で講師をしていた数年前に「100兆円は目前です」なんて解説をしていたのですが、あっという間に110兆円超え。
ちなみに100兆円を超えたのは平成21年度です。
我々もそれに合わせて年々高くなる保険料を負担してきました。
しかし、
これ以上、負担が増えるのは勘弁してほしいです。
我々が負担できないとなれば、給付費を切り詰めるしかありません。
今回のデータで年金を1%減額するだけで前年度より下がったのは意外でした。
内訳の公表を始めた昭和39年以来初めてなんだそうです。
社会保障を維持できるかどうかは給付費の伸びをいかに抑えるか、それがカギになります。
政府はそれもわかっているから、法律の改正案を提出しているのですが、ちっとも成立しません。
年明けからの国会に提出された年金の改正案は結局先送りになりました。
一番の問題は先に進まない政治にあると私は思っています。
シモムー
みんなのねんきん主任講師