
どんなニュース?簡単に言うと
2026年4月から、『子ども・子育て支援金制度』という新しい制度が始まることをご存じですか。
この支援金制度が始まると、私たちの経済的な負担は少なからず増加するようです。
そこで今回は、「独身税」と揶揄(やゆ)されることもある本制度の内容を見てみましょう。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
支援金制度は「資金を支援する制度」ではない
『子ども・子育て支援金制度』という名称から、皆さんはどんな制度を思い浮かべますか?
モモの言うとおり、子育てなどに必要な「資金を支援する制度」という印象を持つ人が多いかもしれません。
しかしながら、この制度は「資金を支援する制度」そのものではありません。
支援に必要な「資金を集める制度」です。
皆さんはこども未来戦略「加速化プラン」という名称を聞いたことがありますか?
こども未来戦略「加速化プラン」とは、政府が今から3年ほど前の2023(令和5)年12月に策定したもの。
このプランでは「若い世代が希望どおりに結婚し、希望する誰もが子どもを持ち、安心して子育てできる社会、子どもたちが笑顔で暮らせる社会の実現」を目指しています。
この目的を達成するため、わが国では子ども・子育て支援の拡充を実施することが決定しました。
新しい政策の実施には資金が必要です。
そこで、『子ども・子育て支援金制度』という「資金を集める制度」を新設し、制度実施に要する費用の一部に充てることになりました。
つまり、『子ども・子育て支援金制度』とは「子育てを支援する制度」の名称というよりも、「子育てを支援する制度」の “財源確保手段” の名称といえます。

ここがポイント!財源確保のための『子ども・子育て支援金制度』
『子ども・子育て支援金制度』は「子育てを支援する制度」そのものではなく、「子育てを支援する制度」の財源確保措置の名称である。
会社員の支援金は給料から自動的に徴収される
『子ども・子育て支援金制度』を所管するこども家庭庁では、2026(令和8)年度に国民が負担する支援金の額を次のとおり試算しています。
■ 2026年度の平均的な支援金額(推計)
- 健康保険組合の被保険者 … 1人あたり月に約550円
- 国民健康保険に加入する世帯 … 1世帯あたり月に約300円
- 後期高齢者医療制度の被保険者 … 1人あたり月に約200円
たとえば、健保組合に入っている会社員であれば平均的なケースで毎月550円、1年で6,600円の支援金が徴収されることになったわけです。
子ども・子育て支援の拡充に充てられる上記支援金は、公的な医療保険の保険料と合わせて徴収されます。
そのため、会社員の場合には、健康保険料と一緒に給料から直接天引きされます。
1人あたりの支援金の額は、標準報酬月額に「子ども・子育て支援金率」を掛けた額です。
2026(令和8)年度の「子ども・子育て支援金率」は0.23%。
したがって、標準報酬月額×0.23%で計算された額が1人あたりの支援金の月額になります。
ただし、健康保険の保険料と同じように、半分は会社が払わなければなりません。
そのため、実際に従業員の給料から天引きされる支援金は、標準報酬月額の0.115%分(=0.23%÷2)です。
たとえば、標準報酬月額が30万円の従業員の場合には、月々の給料から引かれる支援金は次のとおりです。
標準報酬月額×0.23%÷2
=30万円×0.23%÷2
=345円
1年間では4,140円(=345円×12カ月)の負担です。
2026(令和8)年4月分の支援金からが徴収の対象です。
実際には、翌5月に支給される給料から天引きが始まります。
なお、支援金はボーナスからも引かれます。
具体的には、標準賞与額に「子ども・子育て支援金率」0.23%を掛けた額の半分が、差し引かれることになります。
ボーナス額が100万円であれば、1,150円(=100万円×0.23%÷2)が従業員負担分の支援金額です。
ただし、産休中や育児休業中の場合には、健康保険の保険料と同じように支援金の徴収も免除されます。
国民健康保険に加入する自営業者やフリーランサー、後期高齢者医療制度の加入者の場合は、個人の所得額などに応じて徴収される支援金が決定されます。
具体的な料率は地域ごとに異なりますが、2026(令和8)年4月分から徴収される点は会社員と同じです。
専業主婦の場合には、夫の健康保険などの扶養扱いになっていることが通常です。
扶養扱いで健康保険に入っている場合には、本人に健康保険料の支払い義務がありません。
支援金は健康保険料と合わせて徴収される仕組みなので、健康保険料の支払い義務がない専業主婦の場合は支援金を直接支払うこともありません。
学生も同様です。

ここがポイント!公的医療保険料と合わせて徴収される支援金
支援金は公的医療保険の保険料と合わせて徴収される。会社員の場合には、2026年度は「標準報酬月額×支援金率(0.23%)÷2」が健康保険料と合わせて負担すべき支援金の月額になる。
毎年、値上がりする支援金
そうではありません。
毎年の支援金の割合は、同じではないからです。
実は、制度開始当初の3年間は毎年、支援金を値上げすることが決定しています。
こども家庭庁では、国民と会社から集める支援金の総額は2026(令和8)年度が6,000億円程度であるのに対し、2027(令和9)年度は8,000億円程度、2028(令和10)年度は1兆円程度としています。
支援金制度が始まって2年目は初年度よりも3割以上多い額を、3年目は初年度よりも6割以上多い額を徴収することがすでに決まっているわけです。
これに伴い、個々人から徴収する支援金も、2026(令和8)年度より2027(令和9)年度のほうが多くなります。
さらに、2027(令和9)年度よりも2028(令和10)年度のほうが多くなることが予定されています。
ここがポイント!上昇する支援金
当初3年間は、支援金の負担を年々増額させることが決定している。制度開始2年目は初年度よりも3割以上増加した額が、3年目は同様に6割以上増加した額が徴収を予定されている。
集まった資金は児童手当の拡充などに
徴収した支援金は、おもに次の6つの事業に使用されます。
■ 支援金が充てられる6つの事業
- 児童手当の拡充
- 妊婦のための支援給付の創設
- こども誰でも通園制度の創設
- 出生後休業支援給付の創設
- 育児時短就業給付の創設
- 育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設
具体的には次のとおりです。
1.児童手当の拡充
- 所得制限の撤廃 … 従来の所得制限を撤廃し、所得が高い保護者にも支給する。
- 支給期間の延長 …3年間延長し、高校生年代までの子どもを対象にする。
- 第3子以降の増額 … 第3子以降については、1人あたり月3万円に増額して支給する。
2.妊婦のための支援給付の創設
妊娠届出時に5万円、妊娠後期以降に妊娠している子どもの数×5万円を支給する。
3.こども誰でも通園制度の創設
保育所などに通っていない0歳6カ月から満3歳未満の子どもについて、子ども1人あたり月に10時間まで時間単位などで柔軟に利用できる通園制度を設ける。
4.出生後休業支援給付の創設
子どもの出生直後の一定期間内に両親ともに14日以上の育児休業を取った場合、最大28日間について、出生時育児休業給付金と合わせて手取りベースで10割分の賃金に相当する給付を行う。
5.育児時短就業給付の創設
子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、時短勤務時の賃金の原則10%相当額を支給する。
6.育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設
自営業者やフリーランサーなどの国民年金の第1号被保険者を対象に、子どもが1歳になるまでの間、国民年金保険料の納付を免除する措置を創設する。
実は、上記の子ども・子育て支援の拡充施策の多くは、すでに開始されています。
それぞれの事業の具体的な開始時期は、下図のとおりです。

『子ども・子育て支援金制度』の創設により、子ども1人あたり平均で約146万円の給付が拡充できると説明されています。
ここがポイント!「子ども・子育て支援」の拡充効果
集められた支援金は、おもに児童手当の拡充などの6事業に活用される。その結果、子ども1人あたり平均で約146万円の給付拡充が実現できる。
負担があるのに「実質負担ゼロ」のカラクリ
こども家庭庁では『子ども・子育て支援金制度』を周知するため、下図のようなリーフレットを作成しています。
このリーフレットを見ると、『子ども・子育て支援金制度』の導入に要する費用について次のように説明しています。
~社会保障の歳出改革を行い、社会保険料の負担を軽減させるため、支援金による負担は相殺される仕組みになっています。このため支援金の導入による実質的な負担はありません。
具体的には、2023(令和)5年度から薬価の改定や薬価制度の見直しなどを行い、2026(令和8)年度までに累計で6,000億円程度の削減が行われることになるようです。
2026(令和8)年度の支援金の総額は、前述のとおり6,000億円程度です。
歳出削減の範囲内で実施するのだから、国民に「実質的な負担が生じるわけではない」という理屈のようです。
そうですね。
ところで、ホームズは「実質的な負担はない」や「実質負担はゼロ」と聞くと、どのような状況を思い浮かべますか?
それでは、具体的に考えてみましょう。
たとえば、今、支払っているものが100あるとします。
この100が80に減るかわりに、差額の20は支援金として徴収されるとしましょう。
そのため、支払いの合計は100のままで、今までと変わりません。
ホームズやモモがイメージしたのは、このような状況ですね。
一般的な国民の場合は、このような状態を「実質的な負担はない」と考える人が多いと思います。
トラやチャーミーも同じでしょう。
ところが、政府の説明する「実質的な負担はない」はこれとは異なり、次のような意味になります。
今、支払っているものが100あり、来年は120になることが見込まれている。
しかし、来年はそれを100に抑え、かわりに120との差額の20は支援金として徴収する。
その結果、支援金制度を導入しても導入しなくても、来年の負担の合計は120で同じになる。
だから、支援金制度を導入することによる負担増はないといえる。
これが、政府の説明する「実質的な負担はない」の考え方です。
「実質的な負担はない」と聞くと、多くの国民は “現在の負担” と比較して考えるものです。
“現在の生活” がもっとも大切であり、また、大変でもあるからです。
これに対し、政府は “現在の負担” との比較には明確に触れず、「実質的な負担はない」ばかりを強調しています。
これでは話が通じるはずがありません。
確かに、歳出削減施策として薬価の改定や薬価制度の見直しを実施しなかった場合には、高齢化の進展などによって増えたコストが社会保険料負担の増加に跳ね返ってくる可能性があるでしょう。
そのような状況を回避、抑制できた範囲内で支援金制度を行うのだから、現状よりもトータルでは負担は増えるけれども、見込まれている将来の社会保険料の増額は行わないということのようです。
これが「実質負担ゼロ」のカラクリです。
「負担は現状より増えない」というのであれば、国民はその事実を自身で確認することができます。
しかしながら、「見込まれている将来の負担増額を行わない」という場合、国民にはそれが事実であることを確認する術(すべ)がありません。
「本当に将来の負担増額は見込まれているのか?」「新制度を導入するための “こじつけ” ではないか?」などの疑念が沸くはずです。
新しい政策を広報する際には、国民にこのような疑念や誤解を生じさせることのないよう、十分な配慮が必要です。
そうでなければ、政府が説明する「実質負担ゼロ」は、「信じるか信じないかはあなた次第」になってしまいます。
ここがポイント!現状より負担が増えるのに「実質負担ゼロ」の意味
『子ども・子育て支援金制度』は、社会保障の歳出改革で社会保険料負担が軽減できた範囲内で実施される。そのため、「実質的な負担はない」と説明されているが、現状よりも負担は増える。
今回のニュースまとめ

今回は2026年4月から始まる『子ども・子育て支援金制度』について見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 『子ども・子育て支援金制度』は「子育てを支援する制度」の財源確保措置である。
- 支援金は公的医療保険料と合わせて徴収される。会社員に対する2026年度の支援金率は0.23%である。
- 最初の3年間は、支援金の負担が年々増額される。
- 支援金は児童手当の拡充などの6事業に活用される。
- 『子ども・子育て支援金制度』は歳出改革の範囲内で実施される。ただし、国民の負担は現状よりも増加する。
『子ども・子育て支援金制度』に対しては、さまざまな世代の国民から批判が集まっています。
若者や子どもがいない層からは「制度の恩恵を受けられないのに、支援金の支払いを強制されるのはおかしい」という批判があるようです。
このような思いが「独身税」という言葉を生み出したのでしょう。
また、子育て世代には「自分に支援する資金を自分で払わされるのだから意味がない」という批判もあります。
さらに、高齢者の場合には「支援金は年金から引かれるので、年金の手取りが減って生活に影響を及ぼす」などの声もあるようです。
「実質負担はゼロ」の説明に納得できない国民も少なくありません。
これだけの批判を受ける中、間もなく支援金の徴収が否応なく始まります。
皆さんはどう思いますか。
出典・参考にした情報源
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子ども・子育て支援金制度について|こども家庭庁
こども家庭庁は、こどもがまんなかの社会を実現するためにこどもの視点に立って意見を聴き、こどもにとっていちばんの利益を考え、こどもと家庭の、福祉や健康の向上を支援し、こどもの権利を守るためのこども政策に ...
www.cfa.go.jp



大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師