どんなニュース?簡単に言うと
2016年度の年金額は2015年度と同じで確定しました。どんな仕組みで年金額を決めているか。物価と賃金の関係によるその仕組みを解説してみます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
2016年度の年金額はどうなる?
という内容で2015年12月25日に記事を公開しました。
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2016年度の年金は増えるか減るか|みんなのねんきん
どんなニュース?簡単に言うと 2016年度の年金額はどうやら今年度と同じ現状維持になりそう。どんな仕組みで年金額を決めているか。鍵を握るのは2015年度から動き出した「マクロ経済スライド」。解説してみ ...
マクロ経済スライドによる減額で現状維持になるはずだという内容です。
そして、
2016年1月29日、厚労省は2016年度の年金額は昨年度と同じ金額になることを公表。
ただし、先月公開した記事とは現状維持の理由が違っていました。
今回は2016年度がなぜ現状維持の年金額となったのか解説してみたいと思います。
給料が上がるから物価が上がる
毎年度の年金額は物価の動きと賃金の動きによって決まります。
そもそも物価と賃金の関係は密接です。
賃金が上がる
↓
家計に余裕ができるので消費が増える
↓
消費が増えているので企業が販売価格を上げる
↓
企業が儲かる
↓
賃金が上がる
このように賃金アップによる需要の増加が物価を上げていく関係です。
賃金が上がれば物価も上がり、良い循環が生じるわけです。
何年か前に政府は経済界に賃上げ要請をするという異例の事態がありました。
”まずは給料を上げてくれー、景気回復はそこからだー”ということだったんでしょう。
どうやら年金額の改定はこの物価上昇のサイクルを意識しているみたいです。
つまり、賃金の伸びが物価の伸びよりも上回っているという状態を年金額改定の標準としているんです。
しかし、
いつもいつも物価上昇よりも賃金上昇の方が大きいとは限りません。
そこで、賃金物価の動きが標準でない場合に3つの例外が規定されています。
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賃金の伸びよりも物価の伸びが上回ると例外ルールが動く
例外1 物価>1 賃金>1 物価>賃金
物価も賃金もプラスの伸びだけど、物価の方が上回って伸びている。
こんな場合は全員が伸びの小さい賃金の指標で改定する。
例外2 物価<1 賃金<1 物価>賃金
物価も賃金もマイナスだけど、物価の方が下げ幅が小さい。
こんな場合は全員が下げ幅の小さい物価の指標で改定する。
例外3 物価>1 賃金<1 物価>賃金
物価はプラスの伸びだけど、賃金はマイナスになっている。
こんな場合は全員が前年度と同じにする。
どの例外も「物価>賃金」だということがわかります。
2016年度の年金額は例外3で前年度と同じに
今回発表された指標によると、
- 消費者物価指数は0.8%のプラス
- 賃金変動率は0.2%のマイナス
まさに例外3の基準が該当。
したがって、前年度と同じ年金額になったわけです。
プラスの改定にならないとマクロ経済スライドは動けない
ここで、年金額の伸びを抑えつけるマクロ経済スライドはどうなるんでしょう。
物価を使うにしろ、賃金を使うにしろ、年金額をプラスに改定する場合でないとマクロスライドは使えないのがルール。
したがって2016年度はマクロ経済スライドは発動なしということになりました。
今回のニュースまとめ
今回のニュースは
- 年金額改定の標準ルールは賃金の伸びが物価の伸びを上回っていることが前提
- 前提に該当しないと3つの例外が登場
- 2016年度の年金額は例外に該当して前年度と同じ。マクロスライドは無し。
記事によれば物価上昇の原因として
「生鮮野菜の高騰や、外食の値上げが効いた。原油安を背景にガソリン代や電気代などは物価を下押しした。」
とのことです。
確かに外で食事をする際、値段が高くなった感じ。
賃金の変動は3年度前のものを使うことになっているのですが、企業業績が改善しているのに、労働者への還元はあまりなされていない様子。
給料がアップしたという実感はあまり無いのが数字に現れているのか・・。
となると、今後も例外ルールを使い続けることになりそうな予感。
今後、賃金がどれだけ伸びるかにかかっています。
出典・参考にした情報源
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年金額16年度据え置き 厚生年金、夫婦2人で月22万1504円 - 日本経済新聞
厚生労働省は29日、2016年度の公的年金の受取額を発表した。厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯では月22万1504円で事実上の据え置きになる。年金額を決める際の基準になる名目の手取り賃金が減り、 ...
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シモムー
みんなのねんきん主任講師