どんなニュース?簡単に言うと
2023(令和5)年4月17日から、国民年金の保険料を「楽天ペイ」で納められるようになったことをご存じですか。
現在は他にもさまざまな方法で保険料納付が可能であり、とても便利になりました。
そこで今回は、国民年金保険料の納付方法の全体像を整理しましょう。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
3種類に分かれる国民年金の保険料の納め方
国民年金の保険料は、以前は市役所や区役所に対して納めることになっていました。
ところが、今から約20年前の2002(平成14)年度からは厚生労働省に対して納めるように制度が変更され、現在に至ります。
それでは、具体的な納付方法を見ていきましょう。
国民年金の保険料を納める手段は、大きく3種類に分かれます。
支払い用紙に相当する「納付書」を使う方法、金融機関の口座から引き落とす「口座振替」、「クレジットカード」を使う方法の3種類です。
それぞれ、「納付書納付」「口座振替納付」「クレジットカード納付」といいます。
また、「納付書納付」では現金で保険料を納める「現金納付」の他に、「ペイジー」と呼ばれる方法や「スマートフォンのアプリ」で納める方法も用意されています。
以上を整理すると、次のとおりです。
上図の中で最も古くからある納付方法は、金融機関の口座から保険料を引き落とす「口座振替納付」で、国民年金の保険料を市役所や区役所に納めていた2001(平成13)年度以前からある方法になります。
当時は、他にも保険料を印紙で納める「印紙納付」という方法があったのですが、この納付方法は原則として2001(平成13)年度いっぱいで終了となり、そのかわりに翌2002(平成14)年度から開始されたのが現在の「納付書納付」になります。
ただし、当時は「現金納付」のみが可能とされていました。
その後、保険料の納付方法は順次拡大され、2004(平成16)年度からは「納付書納付」で「ペイジー」が利用可能になり、2008(平成20)年2月からは「クレジットカード納付」が開始されました。
最も新しい納付方法が、2023(令和5)年2月から開始された「納付書納付」の「スマートフォンアプリ」による納付です。
2023(令和5)年4月17日から可能になった楽天ペイでの保険料納付も、「スマートフォンアプリ」による納付の一種になります。
ここがポイント! 国民年金保険料の納付方法の分類
国民年金の保険料の納め方には、「納付書納付」「口座振替納付」「クレジットカード納付」がある。「納付書納付」には「現金納付」の他に、「ペイジー」や「スマートフォンアプリ」での納付がある。
申し込み不要の納付書納付
ここからは、各納付方法の仕組みや特徴を見ていきましょう。
初めに納付書納付の現金納付です。
実は、納付書納付には「申し込みがいらない」という特徴があります。
保険料納付の3つの大分類である納付書納付・口座振替納付・クレジットカード納付のうち、口座振替納付とクレジットカード納付は専用の手続き用紙を使って申し込まなければ利用ができません。
これに対し、納付書納付には「納付書で保険料を納めたい!」と意思表示をする仕組みがありません。
そのため、国民年金の第1号被保険者の人が口座振替納付やクレジットカード納付の申し込みをしなければ、自動的に納付書納付の対象者と取り扱われます。
納付書納付の対象者になると、毎年4月初めに日本年金機構から1年分の納付書が自宅に郵送されてきます。
届いた納付書を現金と一緒に金融機関の窓口やコンビニエンスストアに出して保険料を納めるのが、現金納付の仕組みです。
金融機関の窓口で納める場合、利用できるのは全国の銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合になります。
また、利用できるコンビニは次のとおりです。
- くらしハウス
- スリーエイト
- 生活彩家
- セイコーマート
- セブン-イレブン
- デイリーヤマザキ
- ニューヤマザキデイリーストア
- ファミリーマート
- ポプラ
- ミニストップ
- ヤマザキデイリーストアー
- ローソン
加えて、MMK設置店という表示があるドラッグストア、スーパーマーケット、病院内の売店などでも納付が可能です。
MMK設置店とは㈱しんきん情報サービスが提供する公共料金収納端末であるMMK端末が設置されている店舗のことで、納付書を持参すればコンビニと同じように保険料を現金で納付することが可能です。
MMK端末を設置している企業・店舗は多数ありますが、㈱しんきん情報サービスのホームページには一例として次のように紹介されています。
コンビニやMMK設置店であれば金融機関の営業時間外でも保険料を納められ、便利といえます。
コンビニで行う現金納付は2004(平成16)年2月から、MMK端末が設置されているドラッグストアなどでの現金納付は2013(平成25)年11月から開始されています。
ここがポイント! 「現金納付」ができる場所
納付書を使った現金納付は金融機関の窓口やコンビニ、MMK設置店の表示があるドラッグストア・スーパーマーケット・病院内の売店などで行える。
納付書納付の「ペイジー」とは
ペイジーとはマルチペイメントネットワークと呼ばれる「公共料金などの納付に使用できるコンピューターネットワーク」を利用する仕組みで、電子納付と呼ばれる保険料納付方法です。
実際の納付手続きにはインターネットバンキングやモバイルバンキング、テレフォンバンキング、ペイジー対応の銀行ATMなどを利用します。
ペイジーを利用した保険料納付は、納付書さえあれば現金を手元に用意する必要がない納付方法になります。
いい質問ですね。
もちろん、ペイジーで保険料を納める場合に、納付書をどこかに出すわけではありません。
しかしながら、納付書に記載されている番号が分からないと、ペイジーによる納付手続きができない仕組みになっています。
国民年金保険料の納付書には「収納機関番号」「納付番号」「確認番号」という3つの番号が印刷されています。
それぞれの番号には、次のような意味があります。
- 収納機関番号 … 保険料の支払先が国であることを示す番号
- 納付番号 … 具体的な納付の内容を示す番号
- 確認番号 … 納付誤りを防止するためなどに設定された番号
ペイジーによる納付手続きの際には、この3つの番号をパソコンやスマホに入力する必要があります。
そのため、納付書が必要になるわけです。
ペイジーによる保険料納付はペイジー対応の銀行ATMを利用する場合を除き、自宅で手続きが可能です。
金融機関の窓口やコンビニのレジなどで順番待ちをする必要がなく、原則として24時間365日いつでも手続きができるので便利とされています。
ただし、インターネットバンキングなどは事前に金融機関と契約をしないと利用できないので、注意が必要です。
ここがポイント! 「ペイジー」の仕組み
ペイジーは、インターネットバンキングやモバイルバンキングなどで保険料を納める方法である。納付書に記載されている3つの番号をパソコンやスマホに入力し、納付手続きを行う。
スマホの決済アプリでも納付可能に
ペイジーと同様に自宅で手続きできる方法として、スマートフォンのアプリを使用した納付があります。
これは、スマートフォンに専用の決済アプリをインストールしておき、納付書に印刷されているバーコードを決済アプリで読み取って電子決済を行う方法になります。
本稿執筆時点で対象となっている決済アプリは、日本年金機構のホームページに次のように紹介されています。
納付の手順は次のとおりです。
- スマホの決済アプリを起動する。
- 納付書に印刷されているバーコードをスマホのカメラ機能で読み取る。
- 表示された決済内容を確認する。
- パスワードを入力する。
- 決済完了。
スマホで読み取るバーコードは、納付書の下部に印字されています。
ただし、決済アプリで保険料を納付した後、しばらくたって保険料を納めたことを忘れてしまい、誤って金融機関やコンビニで現金納付をしないように注意が必要です。
ここがポイント! 「スマートフォンのアプリ」での納付方法
スマホアプリでの保険料納付は、専用の決済アプリをスマホにインストールし、納付書に印刷されているバーコードをアプリで読み取って電子決済を行う。
未納が発生しづらい口座振替納付
次は口座振替納付です。
これは金融機関の口座から国民年金の保険料を自動的に引き落とす仕組みで、全国の銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、漁業協同組合の口座を引き落とし口座に指定することが可能です。
ただし、インターネット専業銀行については、本稿執筆時点ではイオン銀行のみが口座振替納付の対象とされており、他のネット銀行は利用ができません。
口座振替納付を希望する場合には、『口座振替納付申出書』という専用の手続き用紙に必要事項を記入し、年金事務所または用紙に記入した金融機関のどちらかに提出をする必要があります。
口座振替納付の最大のメリットは、納付書納付よりも保険料の納め忘れが起こりづらいことです。
納付書納付の場合、現金納付・ペイジー・スマホアプリのいずれであっても、保険料を納めるための行動を毎月、本人が起こさなければなりません。
しかしながら、口座振替の場合には一旦、申し込んでしまえばその後は何もする必要がないので、保険料の未納が発生しづらい仕組みといえます。
ただし、口座の残高不足には注意が必要です。
口座振替納付の場合、通常は保険料の納付期限日である翌月末日に口座からお金が引き落とされます。
その時点で、保険料を引き落とせるだけの残高が口座に残っていなければなりません。
ただし、万一、口座残高が不足していたとしても、保険料を引き落とせなかった月が直ちに「未納月」として確定されるわけではありません。
その場合には、1カ月後にもう一度、保険料の引き落としを行う再振替が行われることになっています。
具体例で考えてみましょう。
2023(令和5)年4月分の保険料を口座振替で納めるケースについて考えます。
国民年金保険料の納付期限は翌月末日が原則なので、2023(令和5)年4月分の保険料は同年5月末日が期限日とされます。
従って、5月末日に4月分の保険料が指定口座から引き落とされることになります。
もしもこのとき、残高不足で保険料が引き落とせなかった場合には、1カ月後である2023(令和5)年6月末日にもう一度、引き落としを行う再振替が行われます。
もともと、6月末日は5月分の保険料が引き落とされる日ですので、4月分と5月分の2カ月分の保険料が同時に引き落とされることになるわけです。
それでは、もしも6月末日も口座の残高が不足していたら、どうなると思いますか。
残念ながらそうではありません。
このような場合、4月分の保険料は口座振替の対象ではなくなってしまいます。
後日、4月分の保険料を納めるための納付書が自宅に届くので、4月分の保険料に限っては納付書で納めることになります。
そんなことはありません。
いつでも自由に辞めることが可能です。
口座振替を辞めたい場合には『辞退申出書』という専用の手続き用紙に必要事項を記入し、年金事務所や金融機関に出せばOKです。
ここがポイント! 「口座振替納付」の注意点
口座振替納付は、納付書納付よりも未納が発生しづらい仕組みである。ただし、口座の残高不足には注意をする必要がある。
クレジットカード納付は毎月、カードを見せに行くわけではない
最後にクレジットカード納付を見ていきましょう。
皆さんは「クレジットカードで保険料を納める」と聞くと、具体的にはどのような手続きを思い浮かべますか。
残念ながらそうではありません。
クレジットカードで保険料を納めるといっても、毎月、カードを提示しに行くわけではなく、『クレジットカード納付申出書』という専用の手続き用紙に必要事項を記入して年金事務所に出しておけば、後は自動的に処理が行われる仕組みになっています。
具体的には、毎月、カード会社が本人にかわって保険料の立て替え払いを行います。
立て替え払いが終わった後、カード会社は自社の規約に沿ってカード会員である本人の銀行口座から必要額の引き落としを行います。
これがクレジットカードで保険料を納める仕組みです。
納付に利用できるのは次の国際ブランドのマークが付いたクレジットカードで、デビットカードの使用も可能です。
- VISA
- MasterCard
- ダイナースクラブ
- JCB
- アメリカンエキスプレス(アメックス)
ただし、可能な支払い方法は1回払いのみです。
国民年金保険料を「分割払い」や「リボ払い」で納めることはできません。
なお、クレジットカード納付も口座振替納付と同様に保険料の未納が発生しづらいのですが、カードの利用限度額を超えてしまうと保険料を納められないので注意が必要です。
口座振替納付では口座の残高が不足した場合には、1カ月後にもう一度口座から保険料を引き落とす再振替が行われましたが、クレジットカード納付の場合にはそのような仕組みがありません。
そのため、カードの利用限度額を超えたために保険料の納付ができなかった場合には、後日、その月の分の納付書が自宅に送られてきます。
そのとおりです。
なお、クレジットカード納付を辞めたいときは『辞退申出書』という専用の手続き用紙に必要事項を記入し、年金事務所に出せばOKです。
ここがポイント! 「クレジットカード納付」の注意点
クレジットカード納付は、口座振替納付と同様に未納が発生しづらい仕組みである。ただし、カードの利用限度額を超えないように注意が必要である。
利用度が高い口座振替やコンビニ
以上のように、国民年金保険料には実にさまざまな納付方法が用意されています。
それでは、実際にはどの納付方法がよく利用されているのでしょうか。
2022(令和4)年6月に厚生労働省が発表した『令和2年国民年金被保険者実態調査結果の概要』という資料によると、2019(令和元)年度に最も利用されたのは口座振替納付で全体の44.8%に当たるとのことです。
2番目は納付書納付のうちのコンビニでの現金納付で29.0%、3番目が納付書納付のうちの金融機関での現金納付で16.8%です。
この3つの納付方法で全体の約9割に上っており、クレジットカード納付やペイジーによる納付は利用があまり進んでいないようです。
なお、この調査結果は2019(令和元)年度の納付に関するデータのため、「スマートフォンアプリ」の利用はまだ含まれていません。
「スマートフォンアプリ」を使用した保険料納付は今年(2023年)の2月から始まったばかりですから、今後、制度が浸透してくれば利用者が増えるかもしれません。
ここがポイント! 利用度の高い納付方法、低い納付方法
国民年金保険料は口座振替で納める人が44.8%で最も多い。クレジットカード納付やペイジーによる納付は、あまり利用が進んでいないようである。
今回のニュースまとめ
今回は、「国民年金保険料の納付方法の種類」について見てきました。
ポイントは次のとおりです。
- 国民年金の保険料の納め方には、「納付書納付」「口座振替納付」「クレジットカード納付」があり、「納付書納付」には「現金納付」の他に「ペイジー」や「スマートフォンアプリ」での納付がある。
- 現金納付は金融機関の窓口やコンビニ、MMK設置店の表示があるドラッグストアなどでできる。
- ペイジーはインターネットバンキングなどで保険料を納める方法で、納付書に印刷されている3つの番号が手続きに必要になる。
- スマホアプリでの納付では、専用の決済アプリで納付書に印刷されているバーコードを読み取る。
- 口座振替納付は口座の残高不足に、クレジットカード納付は利用限度額の超過に注意が必要である。
- 国民年金保険料は口座振替で納める人が最も多く、クレジットカードやペイジーはあまり利用されていない。
国民年金の保険料には納付期限に合わせて1カ月ずつ納める方法の他に、前払いをすることによって納付額が安くなる前納割引制度という仕組みが用意されています。
この制度は納付書納付、口座振替納付、クレジットカード納付のいずれでも利用可能な仕組みなのですが、どの納付方法で利用するかによって適用されるルールが異なるという特徴があります。
詳細は本サイトの2019(平成31)年2月18日付コラム『あなたの知らない国民年金保険料の「前納割引制度」』で詳しく解説をしていますので、ぜひ、読んでみてください。
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出典・参考にした情報源
-
日本年金機構ホームページ:国民年金保険料
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大須賀信敬
みんなのねんきん上級認定講師