決定版!2019年度の年金額はこれだ!在職老齢年金の28万円はなぜ28万円か|みんなのねんきん

シモムー

みんなのねんきん主任講師

どんなニュース?簡単に言うと

在職老齢年金の計算で使われる基準額。2019年度は28万円はそのままで46万円は47万円に変更です。今回はこれらの数値のうち、28万円はどこから来た数字なのか、なぜ今年度は2018年度と同じなのかその仕組みを解説します。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

2019年度の在老の数字も変わっていました!

これまで一連のコラムで2019年度の年金額の改定の仕組みについて解説してきました。

決定版!2019年度の年金額はこれだ!もらえる基礎年金編|みんなのねんきん

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これで一通り終わりだな、と思っていましたが在職老齢年金の基準額が変わっていました。

うっかりしていました。

在職老齢年金(通称、「在老(ざいろう)」)はいろいろな機会にこのブログでも解説をしています。

一言で言うと、

老齢厚生年金をもらいながら社会保険に入ると自身の年金額と給料の合計額に応じてその年金額がカットされる仕組み

です。

(70歳以上の人は厚生年金には入りませんが働いていると同様にカットされます)

詳しいことは、以前書いたこのあたりのコラムがわかりやすいかと思います。

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この在老を語る上で避けられない数字があります。

それは、年金額カットの基準としての「28万円」と「48万円」

つまり、自身の年金額と給料の合計額が28万円を超えたり、48万円を超えると年金が減るんです。

28万円も48万円も未来永劫固定された数字ではありません。

この基準額も毎年度変更される仕組みになっています。

そして、結果として、

2019年度は28万円はそのまま

48万円は47万円と数字が変わりました。

ま、それだけ伝えるだけのコラムだったら簡単なのですが、今回は「なんで?」という部分を考えてみました。

今回は28万円に焦点を当てて解説してみます。

(ちなみに私もよく分かっていなかった部分があったので、厚労省の年金局年金課まで電話してしまいました。お忙しいなか丁寧に対応してくださいました)

在老の「28万円」ってなぜ「28万円」?

在老の28万円はなぜ28万円なのか?

それは、法律にそう書いてあるからだ!

で終われば禅問答。

確かに法律にはこう書いてあります。

支給停止調整開始額は、二十八万円とする。

年金をカットする基準としての28万円は専門用語で「支給停止調整開始額」とよびます。

ちなみに、この28万円は60歳台前半で支給される老齢厚生年金で登場する数字。

65歳からの年金には48万円を使います(次回解説します)。

では28万円はどこからやってきた?

厚労省の資料によれば、この28万円の根拠はこうです。

夫婦2人の標準的な年金額相当を報酬月額とする現役被保険者の平均月収を基準として設定している。

(厚労省 平成23年10月11日 社会保障審議会年金部会 資料2 6ページ)

つまり、「28万円」は夫婦2人の標準的な年金額が現役世代の平均月収を超えるかどうかという観点から出てきた数字なわけです。

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「28万円」は毎年度の年金に連動して変わる

夫婦2人の標準的な年金額を使うとすれば、その金額が変われば「28万円」も連動して変わるはず。

メモ

2019年度は夫婦2人の標準的な年金額は221,504円で2018年度より0.1%のプラスとなりました。以前のコラムで触れています。

というわけで、「28万円」が変動するルールは法律にこう書いてあります(一部端折っています)。

平成十七年度以後の各年度の再評価率の改定の基準となる率であつて政令で定める率をそれぞれ乗じて得た額が二十八万円を超え、又は下るに至つた場合においては、当該年度の四月以後の支給停止調整開始額を当該乗じて得た額に改定する。

結論として、「28万円」の変更ルールをざっくり言うと、

28万円に平成17年度以降の老齢厚生年金の変動を反映させる

ということです。

ここで「再評価率の改定の基準となる率」と出ています。

再評価率は老齢厚生年金の計算で使われる、厚生年金加入当時の月収相当額を現在の価値に評価し直す率。

以前のコラムで再評価率を物価や賃金の変動で毎年度書き換えることは解説しました。

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また、

平成17年度以後の率を掛ける理由は、平成16年に年金の大改正が行われたためです。

平成16年は「28万円」で決め打ちして、平成17年度以降は年金変動の率をそれぞれ掛けていくこととなります。

「それぞれ」ですので、

28万円 × 1.000(平成17年度) × 0.997(平成18年度) × ・・・

という具合です。

で、結論としてこうなります。

280,000円 × 平成17年度 1.000 280,000円
× 平成18年度 0.997 279,160円
× 平成19年度 1.000 279,160円
× 平成20年度 1.000 279,160円
× 平成21年度 1.000 279,160円
× 平成22年度 1.000 279,160円
× 平成23年度 0.996 278,043円
× 平成24年度 0.997 277,209円
× 平成25年度 1.000 277,209円
× 平成26年度 1.000 277,209円
× 平成27年度 1.014 281,090円
× 平成28年度 1.000 281,090円
× 平成29年度 0.999 280,809円
× 平成30年度 1.000 280,809円
× 平成31年度 1.001 281,090円

じつに、面白い!28万円が続いた理由

上の変遷を見ると、27万7千円(平成24年度)とか、28万1千円(平成31年度)と出ています。

1万円未満はどうなっているんでしょう。

法律には

その額に五千円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五千円以上一万円未満の端数が生じたときは、これを一万円に切り上げるものとする。

となっています。

1万円単位に端数処理するルールってここだけじゃないかと。

じつに、面白い(ガリレオ湯川教授風)。

これでやっとわかりました。

端数処理の関係で、今までずっと28万円が続いてきたというわけです。

今回のニュースまとめ

今回は2019年度の年金額について、在職老齢年金の停止基準額がどのように変化するのかを見ました。

ポイントは次のとおり。

  • 28万円は60歳台前半の老齢厚生年金において登場する基準額
  • 28万円は夫婦2人の標準的な年金額が現役世代の平均月収を超えるかどうかという観点から出てきた数字
  • 28万円は毎年度の年金額が変われば変動するが、1万円単位に丸める端数処理の関係でずっと同じ金額が続いている

これまで28万円が変化しないことは気にも留めてきませんでした。

変わらないなら別に変わらないでいいじゃないと(年金って毎年度変わるからその仕組みを理解するのが面倒なんです)。

今回いろいろ調べてみて、なるほどこんな仕組みだったとは・・。

自分でも勉強になりました。

厚労省の年金局年金課の方!ありがとうございました!

さて、次回は「48万円」について取り上げます。

こっちは2〜3年度ごとくらいに変わるので興味湧きませんか?

次回をお待ち下さい。

出典・参考にした情報源

厚生労働省年金局年金課の担当の方



最後までコラムをお読みいただきありがとうございました

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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。