どんなニュース?簡単に言うと
2020年1月24日。厚労省は来年度2020年(令和2年)度の年金額や保険料額を発表しました。国民年金の保険料額は2019年度と比較して130円増額です。来年度はなぜ増額するのか?今回は年金加入者が納めなければならない保険料について取り上げます。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
厚生年金・国民年金の保険料はこれ以上高くならない
年金に加入すると保険料を納める必要があります。
サラリーマンは社会保険、すなわち厚生年金の保険料が天引きされます。
サラリーマンとその方に扶養されている配偶者を除く自営業者や学生(第1号被保険者)は自身で保険料を納めないといけません。
これがいわゆる国民年金の保険料。
厚生年金も国民年金も実は納めるべき保険料の水準は上限に達しています。
厚生年金であれば、毎月の給料に18.3%を掛けたものです(本人の負担分はその半額)。
国民年金は月額17,000円。
保険料は少子高齢化を受けて毎年どんどん上昇していくイメージがあります。
が、実は2004年時に導入された現行制度によって、もはやこれ以上高くはなりません
以上を前提にして2020年度の保険料を考えてみましょう。
メモ
このコラムは1年前に執筆した「決定版!2019年度の年金額はこれだ!納める保険料編」をベースにして執筆しています。似たようなことが書いてありますがお許しください。手を抜いているわけではありません(汗)。
2020年度の厚生年金の保険料
上で説明したとおり厚生年金の保険料率の上昇は既にストップしています。
したがって、2019年度の厚生年金の保険料は2019年度と同じです。
仮に20万円の給料の人がいれば、
200,000円 × 18.3% = 36,600円 ÷ 2 = 18,300円
この金額が天引きされます。
2で割っているのは本人と会社で半分ずつの負担だからです。
ただし、実際は健康保険料や介護保険料も併せて納める必要があるので、社会保険料全体で見ると前年度と全く同じということにはなりません。
2020年度の国民年金の保険料
月額17,000円をベースに考える
厚労省のプレスリリースによれば、2020年度(令和2年度)と2021年度(令和3年度)の保険料額は以下のとおり。
令和2年度 | 令和3年度 | |
法律に規定された保険料額(平成16年度価格水準) | 17,000円 | 17,000円 |
実際の保険料額 | 16,540円 | 16,610円 |
国民年金の保険料も上限に達していると上で説明しました。
この上限とは、表にある「法律に規定された保険料額」のことで、実際の保険料額を計算する際のベースとなる金額です。
2004年の年金改正によって当時月額13,000円程度だった「法律に規定された保険料額」は平成29年度まで上昇し、16,900円で上限に。
ところが、2019年度からは産前産後期間の保険料免除の仕組みが始まったため、その財源として+100円となり、17,000円となったいきさつがあります。
この、ベースとなる金額に、賃金や物価の変動を反映させて、実際の保険料額を計算します。
法定額に保険料改定率を掛ける
表にある「実際の保険料額」はどのように計算するのでしょうか。
実は単純な話で、「法律に規定された保険料額」に保険料改定率を掛けるだけです。
なぜこんな率を掛けるかというと、改正があった2004年度の価格水準と同じにするためです。
この率は、過去の賃金の変動や物価の変動を反映させた結果です。
2020年度の場合は、
17,000円 × 保険料改定率
今後、制度改正で法定額が変更にならない限り、毎年度この計算式で保険料が計算されることになります。
では、具体的に2020年度の保険料改定率は?
1年前の2019年3月に発表された政令によれば、「0.973」
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電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。
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(「平成32年度」の保険料改定率を見ます)
したがって、
17,000円 × 0.973 = 16,541円 ≒ 16,540円(10円未満は四捨五入)
表の数字と合いました。
ちなみに、平成31年度の16,410円より130円のアップです。
2021年度(令和3年度)の16,610円の理由は?
2年分を前納する仕組みがある関係上、2021年度の保険料も公表されています。
それによれば、16,610円。
もちろん、この金額も
17,000円 × 保険料改定率
で計算するわけですが、この保険料改定率の計算式が非常に難解なんです。
詳しい説明は省きますが、前年度の保険料改定率に名目賃金変動率(物価変動率 × 実質賃金変動率)なるものを掛けて計算します。
例えば、2019年度(平成31年度)の保険料改定率は0.965ですが、この内訳は、
前年度(平成30年度)保険料改定率0.967 × 物価変動率1.005 × 実質賃金変動率0.993 ≒ 0.965
という具合。
(以下の日本年金機構のウェブサイトに具体的な物価変動率等の数値が掲載されています)
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https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150331-02.html
続きを見る
物価変動といっても、”昨年一年間の変動”という単純なものではなく、数年のスパンで出した数値なのでわけがわからないというのが正直なところ。
執筆時点では、まだ2021年度(令和3年度)の物価や賃金の変動の数値が年金機構のウェブサイトに出ていないので来年度の保険料改定率はわかりません。
2020年3月には令和3年度の保険料改定率が政令で出ますので、その政令が出たら2021年度の保険料改定率を載せておこうと思います。
今回のニュースまとめ
今回は2020年度の納める保険料について、厚生年金・国民年金の数値を見ました。
ポイントは次のとおり。
- 厚生年金の保険料は18.3%で上限にあるので2020年度も同じ率で計算
- 国民年金の保険料額はベースとなる金額は17,000円で固定された
- ベースとなる金額に保険料改定率を乗じて実際の保険料額が計算される
- 保険料改定率は名目賃金変動率によって毎年度変わる
このテーマで最も難解なのは国民年金保険料の保険料改定率。
名目賃金変動率がわけわからない。
社労士試験では出題があるところなので受験生は意識したいところです。
にしても、月に16,000円は負担感がありますが、未納だけは避けなければいけません。
結局年金を多くもらうには保険料を払うのが基本中の基本だからです。
出典・参考にした情報源
厚労省プレスリリース:
シモムー
みんなのねんきん主任講師