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年金が少ない?人のための年金からの税金計算講座!

投稿日:2018年3月24日 更新日:

 

どんな事例?簡単に言うと・・

2018年3月。日本年金機構から委託を受けた業者が扶養親族等申告書の入力業務を怠っていたことが事件となりました。この申告書が提出されないと確実に年金が少なくなります。申告書を提出した場合と未提出の場合にどのくらいの違いがあるのかを事例形式で考えてみます。

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こんな事例を考えてみましょう

トラ
先生、今年に入って私の年金が減っているようなんですが・・
シモムー
年明けからの年金が減っているということは、おそらくアレです。昨年、扶養親族等申告書は出しましたか?家族の状況を記入して、マイナンバーも書いたと思いますけど
トラ
あのでかい用紙?確か出したはずだけど。なぁ母さん
チャーミー
確か、モモが郵便局に行くっていうから頼んだわよね
トラ
じゃ、出したはずだな
シモムー
となると、もしかしたらトラさん。事件に巻き込まれたのかもしれません。年金機構から受託した業者が扶養親族等申告書の入力業務を怠っていたという・・。
トラ
え?あの中国の?
シモムー
そうです。今日はトラさんの年金がなぜ減っているか。その謎に迫ってみましょう。

メモ

事件というのは2018年3月に発覚した日本年金機構の不祥事のこと。扶養親族等申告書の入力業務を受託した業者が中国の企業に再委託していたというもの。契約違反の再委託も問題ですが、入力されずに放置されたデータが6万人分以上とのこと。結果、年金の支給が過小になり問題となりました。

今回の事例の何が問題なんでしょうか

老後の年金からは所得税が源泉徴収されます。

所得税が適正に徴収されるためには、家族の状況を申告しないといけません。

その申告書が「扶養親族等申告書

2018年3月に発覚した日本年金機構の不祥事は扶養親族等申告書に絡んだものです。

申告書を提出したにも拘らず、未提出と同じことになっている人がいます。

では、

実際に申告書を提出しなかった場合、税金がどの程度となり、年金はいくら減ってしまうのでしょう。

今回はそれが問題になります。

解説してみましょう

こんにちは。シモムーです。

年金からの所得税計算が今回のテーマ。

猫野一家の大黒柱、猫野トラが年金受給者だとして考えてみます。

トラ
68歳 老後の年金の合計額:270万円(年額) 介護保険料:7,800円(2カ月分)
チャーミー
59歳 配偶者 収入なし
モモ
20歳(平成10年3月3日生まれ)子 収入なし

一家の年齢は2018年3月現在とします。

年金からの税額はどう計算する?

難しいことはありません。

それはこうです。

年金支給額 ー いろんな控除額の合計 = 所得

そして、所得に税率を掛ける。

所得 × 税率 = 天引きされる税額

年金機構は年金を支給するたびに、税額計算して天引きし、国に納めています。

ここで、

「いろんな控除額」とありますが、年金の場合は以下の3つです。

  • 年金をもらっているそれだけで認められる本人の控除額
  • 親族を扶養していると認められる控除額
  • 社会保険料を納めた場合の控除額

年金受給者の生活状況に考慮して、税金がかかる範囲を限定させようというのが「いろんな控除額」。

扶養親族がたくさんいるならそれだけ生活費がかかります。

だから、税金が優遇されるわけです。

つまり、

これらの控除額をみとめてもらうために、家族状況を年金機構に知らせるのが「扶養親族等申告書」なんです。

扶養親族等申告書を提出した場合の税額はいくら?

猫野トラが上記の家族状況を扶養親族等申告書で申告しました。

さぁ、年金支給1回分(2カ月分)の税額を計算してみましょう。

ポイントは「いろいろな控除額」を正確に把握するところです。

年金をもらっているそれだけで認められる本人の控除額

この控除額は一律一人◯◯円ではなく、本人の年金額により異なります。

65歳以上の場合は以下の計算式です。

1か月分の年金支払額 × 25% + 65,000円 (最低額135,000円)

トラの場合、

270万円 ÷ 12 = 225,000円/月額

となりますから、計算式に当てはめると

225,000円 × 25% + 65,000円 = 121,250円 < 最低額135,000円

つまり、

年金をもらっているそれだけで月額135,000円分の控除額が認められることになります。

親族を扶養していると認められる控除額

次に親族分を考えましょう。

扶養親族については、1人につきいくらと決まっています。

  • チャーミー(配偶者):32,500円
  • モモ(特定扶養親族):52,500円

モモは通常の扶養親族よりも高めの控除を受けられます。

平成30年の場合、平成8年1月2日から平成12年1月1日生まれの扶養親族がこの「特定」に該当します。

この年齢層は多くは高校を卒業して大学生であり、より生活費がかかるからという配慮です。

つまり、

32,500円 + 52,500円 = 85,000円

扶養親族分として月額85,000円分の控除額が認められます。

社会保険料を納めた場合の控除額

65歳以上の場合、年金から社会保険料が天引きとなります。

  1. 介護保険料
  2. 国民健康保険の保険料
  3. 後期高齢者医療制度の保険料

3は75歳以上の人の話で、2は条件があり、トラは対象外だったとします。

つまり、

介護保険料のみ、7,800円分(2か月分)

の控除額が認められます。

天引きされる税額はこれだ!

さぁ、材料が揃いました。

あとは、年金の支給額からこれらを引いて税率を掛けるだけです。

2カ月分の年金支給額:

270万円 ÷ 6 = 450,000円

2か月分の控除額合計:

(135,000円 + 85,000円)×2 + 7,800円 = 447,800円

所得額:

450,000円 ー 447,800円 = 2,200円

所得税額:

2,200円 × 5.105% ≒ 112円(1円未満切り捨て)

扶養親族等申告書を提出すると、1回の年金支給で112円が天引きされるという結果となりました。

(下に続きます)

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扶養親族等申告書を提出しない場合の税額はいくら?

トラが扶養親族等申告書を提出しないとどうなるでしょうか。

年金機構はトラの家族状況がわかりません。

この場合は、こうです。

(年金支給額 ー 社会保険料)× 25%

家族状況を無視して、一律に社会保険料を除いた25%分しか控除が認められません。

しかも、税率は倍の10%です。

2か月分の控除額合計:

(450,000円 ー 7,800円)× 25% + 7,800円 = 110,550円

所得額:

450,000円 ー 110,550円 = 331,650円

所得税額:

331,650円 × 10.21% ≒ 33,861円(1円未満切り捨て)

扶養親族等申告書を提出しないと、1回の年金支給で33,861円が天引きされるという結果となりました。

今回の事例まとめ

今回は年金から天引きされる所得税の計算を具体的にしてみました。

ポイントは以下のとおり。

  • 年明けから年金額が少なくなる原因は所得税が高額になる場合が考えられる
  • 申告書を提出する家族状況を反映した適正な税額になる
  • 申告書を提出しない家族状況を無視した高額な税額となる

以上みたとおり、扶養親族等申告書を提出しないと、とんでもないことになってしまいます。

トラ
税金100円が3万円って、高ッ!年金が減った原因はこれか

今回、申告書を提出したにも拘らず、年金額が少なったということは、やはり事件に巻き込まれたとしか考えられませんね。

トラ
年金機構にはふざけるなと言いたいですな!
モモ
お父さん、ちょっと・・。大事な話があるんだけど・・
トラ
今、お父さんは機嫌が悪い!大事な話って、結婚したいと言っても、絶対に認めんぞ!
モモ
あの、これが引き出しから出てきたんだけど・・・。出し忘れてたみたい・・・

扶養親族等申告書在中(イメージ図)

トラ
ちょ、おま・・・これ、頼んだやつだろー!おま、今、年金機構を悪者にしてたのに。今すぐ出してこーい!
モモ
ご、ごめんなさーい

(まずは、自身の手続きに不備がないか、疑ってみることも大事です)

メモ

扶養親族等申告書は年の途中で提出しても大丈夫です。年の途中まで高額な税額であっても、提出後は適正な税額で計算してもらえます

2018年3月25日追記

申告書を提出したはずなのに、未提出の扱いになっている場合は事件に巻き込まれた可能性があります。年金機構は3月15日に不足分を支給することを決定し対象者には既に通知しています。4月の年金支給で不足分を上乗せして払うとのことです

出典・参考にした情報源

日本年金機構「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」について


事例は実際の相談をヒントにしたフィクションです。記事中のアルファベットは実在の人物・企業名と関係ありません。記事は細心の注意を払って執筆していますが、執筆後の制度変更等により実際と異なる場合もあります。記載を信頼したことによって生じた損害等については一切責任は負えません。

  • この記事を書いた人
シモムー

シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供を続ける。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。

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