目次
過去の出題傾向からシモムーの感想
前半:報酬比例額の計算式
ここは老齢厚生年金の報酬比例額の計算式が毎回出題されています。
免除期間があると複雑になる老齢基礎年金よりもむしろこちらの方が簡単。
いえ、技能応用最弱問題と言えました。
ところが・・。
2020秋から大きく変更。
計算式の選択ではなく、計算結果の選択問題となりました。
ただ、これまでが楽勝すぎ。
多少骨のある問題になっただけです。
後半:経過的加算の計算式
後半の問題も決まっていて、必ず”経過的加算”の計算式が出ることになっています。
老齢厚生年金の計算問題は報酬比例部分と経過的加算くらいしかありません。
定額部分は単独では出せないですし・・。
そうそう、
長期加入の特例で定額部分の計算は出すことはありますがそれは2級の方です。
3級では見たことがありません。
で、その経過的加算なんですが、これも楽勝な問題です。
どういう構造の加算なのかを理屈で理解できていれば、5秒で解けるという問題です。
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ここ注目!ここがポイントだ!
前半:報酬比例額のポイント
2020秋で大きく変わったこのテーマ。
おそらく、今後も計算結果の選択問題が続くと思います。
ただ、難しくはありません。
以下のポイントを意識して計算式を組み立てれば大丈夫です。
計算式のポイント
- 平成15年3月以前、4月以降に分解して加入歴を書く
- 新乗率を利用する
- 加給年金額は無視
1:加入歴の作図
2020秋問題で私が作図したものです。
”S78”となっているのは、昭和78年=平成15年のことです。
ここで前後に分割して加入歴を把握するところからスタートです。
メモ
平成15年4月以降はボーナスを含めた総報酬制に変わったため、ここで分割して計算する必要があります。
2:新乗率
問題文には新乗率と旧乗率の表が載っているのですが、使うのは新乗率。
これまでの歴史の中で旧乗率をメインで使うときもありましたが、現在は新乗率を使う計算式がメインになっています。
メモ
実務では”本来水準”と”従前額保障”という2つの計算式を使って両者を比較して高い金額を支給することになります。後者の”従前額保障”で旧乗率を使いますが、問題文には「(本来水準)」となっているので、前者の計算式(新乗率)で答えを出します。
3 加給年金額は無視
問題文中には加給年金額の対象となる配偶者が登場します。
ただ、特老厚で加給年金をもらうためには定額部分が支給されている必要があり、加給年金の加算は無視して良いです。
というのも、
定額部分が支給されるためには、長期加入(528ヶ月以上)や障害者特例に該当する必要がありますが、そこまでの計算問題となると、2級レベルになってしまいます。
というわけで無視してよいかと。
メモ
上の私の加入歴の図をみると、一応、長期加入を疑って検証し、”487≠長期”とメモを残してありました。ですが、そこまで考えてなくていいかなと思います。
計算式の端数処理はどうするか
端数処理はこのようにします。
- 平成15年3月までのブロックと平成15年4月以降のブロックをそれぞれ計算
- 端数が生じたらぶら下げたままにしておいて両者を合算
- 合算後1円未満の端数を四捨五入
メモ
2の”ぶら下げたまま合算”処理は日本年金機構のコンピューター(WM:ウインドウマシーンという)の処理に準じています。この方法で間違いありません。
後半:経過的加算の計算式のポイント
経過的加算の理屈を理解する
そもそも経過的加算とは何なのか。
そこを理解しておかなければ意味がありません。
経過的加算は下の図にある隙間を埋めるための加算ですね。どこでもよく見る図です。
もう少しわかりやすくするために、こんな図を作ってみました。
同じ厚生年金の期間でも、定額部分に反映されるであろう月数と老齢基礎年金に反映する月数に差が生じます。
なぜ差が生じるのか。
- 定額部分の単価が老齢基礎年金の1カ月分と完全一致しない
- 20歳未満、60歳以降の厚生年金加入期間は老齢基礎年金に反映しない
- 昭和36年3月以前の厚生年金期間は老齢基礎年金に反映しない
という理由からです。
”1”はごく僅かの差が生じます。
”2”は20歳未満、60歳以降で厚生年金の期間があると、経過的加算は多くなります。
”3”は拠出制の国民年金制度が誕生したのが昭和36年4月からなのでそれ以前の厚生年金期間は老齢基礎年金には反映しません。年配の方だとこの部分で経過的加算は多くなります。
この経過的加算をもう少し詳しく図解するとこうです。
経過的加算は厚生年金加入の期間だけで比較をします。
国民年金の第1号や第3号時の保険料納付済期間は比較の対象になりません。だから、下にはみ出ていますね。
したがって、
このような差が定額部分が支給されない人たちにも生じるため、加算をしてあげるわけです。
まずは、この経過的加算の理屈をしっかり理解します。
効率よく解くためにはどうすれば良いか
加算の理屈を理解していただいたことを前提に、効率よく解くためのやり方をご紹介します。
実はこの問題は、速攻で片付く可能性大。
5つの計算式から正しいもの選択させる問題は常に
効率よく解答できないか。
を考える必要があります。
そこで、この問題はどうか。
大丈夫。
早速、2019春問題で検証してみましょう(問題文は載せません)。
手順としては、事例は読まずにいきなり選択肢から見ていきます。
手順1 計算式左側部分(定額部分相当)の480カ月を超えて掛け算しているものを消去
480を超えて掛け算することは絶対にありません。
ここは大丈夫ですよね?
定額部分は老齢基礎年金相当部分ですので、40年=480月を超える月数の反映はありません。
すると(4)(5)が消えます。
手順2 計算式左側部分(定額部分相当)の変な乗率を掛け算しているものを消去
定額部分相当の計算式の最後に0.961を掛けるとかありません。
最近ではこういう変な乗率を掛けている選択肢も見なくなりましたけど、念のため。
定額部分の単価は物価変動を加味した単価になっているので、そのまま加入月数を掛けることになります。
残念ながら2019春ではこの選択肢はありません。
(1)(2)(3)が残ったままです。
手順3 厚年加入時期を確認し、計算式右側部分480/480になっているものを消去
経過的加算は最初に説明した図のように
定額部分相当額と厚生年金加入期間にかかる老齢基礎年金相当部分の差を埋める
もの。
老齢基礎年金相当部分を480/480で計算するということは、20歳から60歳までの期間は隙間なく厚生年金に加入していることを意味します。
ここで初めて事例を見てみる。
案の定、20歳を過ぎてから入社しています。
とすれば、480/480とはならない。
したがって、(3)を消去。
ちなみに過去15回まで遡って480/480で答えになったかどうかを検証してみたところ、1回もありませんでした。
何も考えずに480/480を消去するのでも問題ない!
ちなみに、2018春はこの考え方がわかっていれば1秒で(3)(4)(5)が消えます。
私はパッとみて、「おりゃぁー」と3選択肢全部にバツをつけました。
手順4 それでもだめなら厚生年金加入の20歳以上60歳未満の期間を数える
これでも答えが出なければ・・・・、
最終手段は正攻法でいくしかありません。
残りは(1)(2)。
ここまで来ると、大抵の場合、1か月違うだけの選択肢が残っているだけになります。
やるべきことは、20歳以上60歳未満の厚生年金加入の期間をカウントすること。
注意点は60歳に達した月の前月までの被保険者期間をカウントしないといけません。
ここ最近は5秒では解けない出題になっていたりするので、ウンザリしますが仕方ありません。
しかも、2019春はひねってあって5月1日生まれの方。
5月1日の前日の4月30日に60歳に達するので、3月までをカウントします。
これで答えは(1)となりました。
まとめます
前半は報酬比例額の計算。
加入歴の図解さえできれば問題ありません。
- 平成15年3月以前、4月以降に分解して加入歴を書く
- 新乗率を利用する
- 加給年金額は無視
後半は経過的加算。
- 計算式左側の480月超え消去
- 計算式左側の変な乗率消去
- 計算式右側の480/480消去
- ダメなら20歳以上60歳未満の厚生年金加入の期間を数える(60歳到達月の前月まで)
手順3までで決着するなら5秒。
試験時間が残り5秒しかない場合にお試しを!
シモムー
みんなのねんきん主任講師