何が出題されている?
出題形式:誤っているものを選択
2018春に初めて基本知識問題で在職老齢年金(高在老)が出題されました。
2020秋にはさらに史上初の低在老(60歳台前半の在老)の出題がされました。
技能応用が低在老の出題なので、基本知識は高在老なのかと理解していたのですが、どうやら在老のくくりで出題したい様子。
そして2023秋には出題が止まりました。
次回はどうなるのか、傾向の変化が謎めいているテーマです。
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過去13回の正解となった知識
- 2024秋 出題なし
- 2024春 出題なし
- 2023秋 出題なし
- 2023春 高在老:基本月額は経過的加算を含まない
- 2022秋 高在老:老齢厚生年金が停止されても老齢基礎年金は何ら影響を受けない
- 2022春 低在老:在老受給中でも高年齢雇用継続給付金は受給できる
- 2021秋 低在老:老齢基礎年金を繰上げていた場合でも老齢基礎年金は停止とならない
- 2021春 高在老:基本年金額の一部を受給していれば加給年金額は全額支給される
- 2020秋 低在老:28万円を超えた場合に超えた額の2分の1が停止となる(当時)
- 2020春(模擬)高在老:基本月額は経過的加算を含まない
- 2019秋 高在老:70歳まで全額停止されていた場合でも70歳から増額されない
- 2019春 高在老:報酬比例部分が全額停止となっても老齢基礎年金は停止とならない
- 2018秋 高在老:基本月額は経過的加算を含まない
- 2018春 高在老:支給停止調整額を超えた場合に超えた額の2分の1が停止となる
10回連続出題が続き、ついに2023秋に途絶えました。
かつてはいわゆる高在老の仕組みしか出題されなかったのですが、2020秋、2021秋、2022春は低在老での出題。
ただ、仕組み自体はほぼ同じなので、どちらであっても対応できるでしょう。
問題は、今後このテーマは消えてしまうのか?ということ。
制度としては重要なので、再度出題があるだろうと私は考えています。
出題傾向から年金制度を考える
基本月額に含まれないものに注意する
「加」がつくと対象外
在職老齢年金を計算するうえで、年金減額の対象となる年金額を把握する必要があります。
まず、
同じ老齢年金とはいっても、老齢基礎年金は対象外です。
2019春、2021秋、2022秋は老齢基礎年金に影響が及ぶという肢が正解となりました。
老齢基礎は一切関係ありませんので。
在職老齢年金は老齢厚生年金に対する調整の仕組みであることは基本中の基本です。
そして、
老齢厚生年金の年金額は3つの構造で成り立っていますが、在老の対象になるのは基本年金額(報酬比例額)だけです。
- 加給年金額
- 経過的加算
- 基本年金額(報酬比例額) ← ここだけ
ちなみに、66歳以降で繰下げ受給すると、繰下げによる増額分が加算されますが、この繰下げ加算額も対象外(つまり、在老による停止は無い)です。
例えば、67歳で繰下げの申出をして増額した老齢厚生年金を受給している。
で、申出後に適用事業所に勤めたので在老の影響を受ける。
結論、繰下げ加算額は調整の対象にならずに、そのままもらえる ということです。
つまり、基本月額には「加」という字が入るものは高在老では調整の対象にならないことを押さえておきます。
2018秋、2020春(模擬)、2023春はこの点が正解となりました。
低在老における加給年金は無いと断言できる
低在老の出題では、以下の肢が並んでいます。
在職老齢年金に、配偶者加給年金が加算されることはない
こう、言い切られると、「え?そうなの?」と疑問に思ってしまいます。
結論、加算は確かに無い と言い切れます。
60歳台前半で加給年金をもらうためには、定額部分の支給が必須。
定額部分が加算されるためには、特例に該当する必要があります。
ところが、
在職老齢年金ということは厚生年金の被保険者になっているわけで、長期加入・障害の特例に該当しなくなります。
ゆえに、定額部分が支給されないので、加給年金も支給されない。
という理屈です。
定額部分が支給される特例の知識と一緒に押さえておきます。
総報酬月額相当額は低在老も高在老も同じ
在老は直近1年間のボーナスと今の月給から年金の減額を決めます。
この直近1年間のボーナスと月給を”総報酬月額相当額”といいますが、60歳台前半の低在老も高在老も同じ考え方をします。
同様の算式を用いて算出する
と、出題がされましたが全くそのとおりです。
減額のラインを超えたら超えた額の2分の1を止める
年金額と報酬の合算額が世間相場を超えると、超えた額の2分の1を止めるというのが在老の仕組み。
2018春はこの”2分の1”が抜けていました。
2020秋は低在老の「28万円」を「47万円」として正解に。
ただし、2022年4月からはこの支給停止調整額28万円が高在老と同じ基準額になりました。
メモ
2024年度の支給停止調整額(年金カットの基準額)は50万円となっています。
基本年金額が少しでも出ていたら加給年金額は全額もらえる
高在老で仮に在老計算の結果、基本年金額(報酬比例部分)は全額停止とならず1円でも支給されたとします。
すると、加給年金額は全額受け取れます。
加給年金額はゼロか100の世界で、もらえるなら全額もらえる、もらえないなら一切もらえないというものです。
例えば、半額だけもらえるという一部支給のルールはありません。
この点が2021春で正解となりました。
加給年金額は支給停止額に応じて減額される
減額されないですね。支給か全額停止のどちらか一つです。
また、
あくまで、基本年金額(報酬比例額)が1円でも支給停止される状態でなければいけません。
報酬比例額は全額停止でも経過的加算がもらえるんだから1円でも支給されるじゃないか! → だから加給年金もOK
とはなりません。
基本部分(報酬比例部分)に支給がなければ、加算部分に加算するというわけにはいきません。
70歳以上で厚生年金から抜けても在老は対象になる
在老は年金を受け取りながら厚生年金の被保険者になる場合に減額となる仕組み。
だったのですが、平成19年からは70歳以上の人も対象になっています。
本来であれば、
70歳に達した日に厚生年金の被保険者資格を喪失するので、お役目御免となりそう。
ですが、70歳以降も適用事業所で引き続き社会保険に入るであろう働き方をすると、現役世代と同じく年金減額の対象となります。
70歳以上でも対象になることさえ押さえておけばいいでしょう。
在老による停止と繰下げの関係
繰下げ待機中に在老による老齢厚生年金を受給していると繰下げ後の年金はどう増えるのか?
仕組みとしては、在老で”停止になっていたであろう部分を除いて”増額計算する”というもの。
実際、こんな計算をするので参考までに。
-
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今回はこれが答えになる!
2023秋に出題が途切れ、今後はどういう扱いになるかよくわからない状況となりました。
ただ、再び出題されるんじゃないかなと予想します。
出題される場合は、
- 基本月額の定義(老齢基礎年金との関係)
- 総報酬月額相当額の定義
- 停止額の算出式
- 70歳以上でも適用あり
- 加給年金の扱い
この中から5肢が出題されるわけです。
私はこれ以外の新しい論点は今後は出ないと踏んでいます。
したがって、上の5つを押さえましょう。それだけでほぼ間違いなく攻略できるテーマです。
シモムー
みんなのねんきん主任講師