発表!2017年度年金の改定はこうなる!年金は減額編|みんなのねんきん


シモムー

みんなのねんきん主任講師

どんなニュース?簡単に言うと

厚生労働省より2017年度(平成29年度)の年金額の改定について発表がありました。今年度に比べて0.1%減額とのこと。他には国民年金の保険料額や在職老齢年金の数値も発表されています。今回は年金の減額の内容をもう少し詳しくお伝えします。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

厚労省が発表した3つの年金に絡んだ数字。

年度が変わると色々な数字が変化します。

  1. 年金額:老後の年金は若干減額
  2. 国民年金の保険料額:納める保険料はいよいよ上限達成!
  3. 在職老齢年金:65歳以降の人は46万円で計算

概略にとどめた前回の記事でしたが、

発表!2017年度年金の改定はこうなる!とりあえずこうなった編|みんなのねんきん

どんなニュース?簡単に言うと 厚生労働省より2017年度(平成29年度)の年金額の改定について発表がありました。今年度に比べて0.1%減額とのこと。他には国民年金の保険料額や在職老齢年金の数値も発表さ ...

今回はもう少し詳しくなぜその数字になったのか分析します。

今回は「1.年金額:老後の年金は若干減額」について見ていきます。

2017年度は0.1%の減額

(タップで拡大)

(出典:厚労省発表のPDFより抜粋)

厚労省の発表によると、2017年度は今年度に比べて0.1%減額するとのことです。

国民年金でみると、月額では67円の減額。

単純に今年度の年金額に0.1%分を引けばいいわけではありません。

国民年金の場合、

780,900円 × 改定率

という計算式で毎年度満額が変化する仕組みになっています。

780,900円は平成16年の年金改正時に決められたもので、この数字を基準にして変化させる構造です。

端数処理の関係もあり、単純に0.1%分を引いても数字は一致しません。

ちなみに、

2016年度は

780,900円 × 0.999 ≒ 780,100円 ÷ 12 ≒ 65,008円

となりました。

去年も同じような記事をまとめたことがありました。

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(厚生年金の方は事情が複雑ですので割愛します。0.1%減額は同じです)

どんな理由で0.1%減額となったのか

年金は物価賃金の指標に合わせて変化することになっています。

原則のルールでは年金受給者全員が同じ指標を使うのではなく、

67歳までの人は賃金の指標

68歳からの人は物価の指標

と分かれています。

賃金が増えて、それに釣られて物価が上昇していくというのが経済成長している姿ですが、成長しなければ、賃金と物価が変な動きをします。

変な動きというのは、例えばこんな動きです。

賃金が減っているのに物価が上がる

賃金の増えかたより物価の上がりかたが大きい

物価の下落より賃金の下落が大きい

今回考慮された指標のデータはこうです。

物価 ▲0.1%

賃金 ▲1.1%

つまり、変な動きの3番目「物価の下落より賃金の下落が大きい」になっているわけです。

こんな場合は例外として、

67歳までの人は賃金の指標 → 例外的に物価の指標

68歳からの人は物価の指標

となります。

経済成長していないのに、賃金の指標で減額するのは、68歳以降の人と比べて公平でないという理由からです。

そこで、2017年度は全員が物価の指標で0.1%の減額となります。

(タップで拡大)

 

マクロ経済スライドによって更に減額となるはずが・・

賃金と物価の動きで年金の水準が決まる

これが基本ルールなんですが、更に年金を減額するというルールが動いています。

それが、

マクロ経済スライドと呼ばれる減額改定ルールです。

年金を受け取る高齢者が増えて、保険料を納める現役世代が減っていく。

普通に考えたら年金の維持は難しい。

そこで、保険料を納める人たちの数と寿命の伸びを考慮して、物価や賃金に関係なく年金を減らします。

もう大丈夫でしょ、となるまで期間限定でこの減額改定は続きます。

この期間限定というのは平成17年度から始まっていて、確定的な終わりはまだ見えません。

もちろん2017年度(平成29年度)は期間中ですから減らさないといけません。

発表によれば、今年度は▲0.5%になります。

とすれば、▲0.1% + ▲0.5% = ▲0.6% となりそうですが、そうはなりません。

この減額改定は年金額がプラスにならないかぎりは動かない仕組みになっています。

上で説明したとおり、もともとが▲0.1%。

結局、マクロ経済スライドは出番なしとなりました。

2016年の改正で年金額改定ルールが変更へ

このように年金額改定のルールを見ていくと、

賃金が減っている = 保険料収入が落ち込む

にもかかわらず、影響の小さい物価の指標を使うのでは年金財政が悪化するのは目に見えています。

また、

マクロ経済スライドを使う期間中なのに、ほとんど出番がない(これまで1回のみの出番だった)

という状況です。

経済は一向に成長しないし、このままでは、年金財政の悪化を止められず、将来世代の年金支給に悪影響が出る。

というわけで、

2016年の改正で、

  • 賃金の指標を使うことを徹底化
  • マクロ経済スライドの減額分を繰越せる(キャリーオーバー)

という仕組みに改めました。

2017年度の年金額改定が仮に新しい仕組みによると、こうなりますね。

賃金の指標を使って、全員が年金額を減額させることになります。

(タップで拡大)

マクロ経済スライドはキャリーオーバー形式になります。

20XX年度で、ものすごい経済成長を遂げた場合ですが・・。

(タップで拡大)

まだ施行には至っていませんが、数年内にこれらの改定のルールが登場していきます。

以前、記事にまとめましたので参考にしてください。

2016通常国会 年金改正案提出!年金はこう変わる 年金受取世代編|みんなのねんきん

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今回のニュースまとめ

今回のニュースは厚労省から発表された2017年度の年金額の改定に絡んで

  1. 年金額:老後の年金は若干減額

を詳しくご紹介しました。

年金額は経済成長することを前提に、

67歳までの人は賃金の指標

68歳からの人は物価の指標

で年金額を増やしたり減らしたりする。

でも、経済成長していない場合は、「賃金が上昇して物価もあがる」という形にならず、変な動きになってしまう。

2017年度については「物価の下落より賃金の下落が大きい」となった。

そこで例外として、

67歳までの人は賃金の指標 → 例外的に物価の指標

68歳からの人は物価の指標

となり、全員が物価の指標を使って、▲0.1%。

プラスの改定にならないとマクロ経済スライドの出番は無し。

今後は

  • 賃金の指標を使うことを徹底化
  • マクロ経済スライドの減額分を繰越せる(キャリーオーバー)

以上の仕組みにして、将来世代につけを回さないようにする。

これが今回の内容でした。

年金の仕組みを見るだけで、日本は成長していないんだなってことがよくわかります。

出典・参考にした情報源

厚生労働省 プレスリリース 2017年1月27日

PDF資料はこちら



最後までコラムをお読みいただきありがとうございました

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シモムー

日本年金機構の年金相談コールセンターにて新人研修講師を担当しながら社労士試験予備校にて講師を経験。2014年より公的年金の情報を初心者目線で解説する「みんなのねんきん」サイトで情報提供開始。年金を事例で学ぶ「年金ケーススタディ」で全問題の作問と解説を担当。登録者数2000人超のYouTubeチャンネル「シモムーシェフの年金論点4分クッキング」では年金の論点を4分で解説中。具体例やイメージで理解できる情報提供を心がけている。2020年3月、障害年金手続き代行に特化した「みんなのねんきん社会保険労務士法人」設立。2021年6月から障害年金手続きのノウハウを提供する「障害年金カウンセラー養成講座」で講師としても活躍する。