どんなニュース?簡単に言うと
日本年金機構のウェブサイトに源泉徴収票の発送に関するお知らせが出ていました。2017年は1月13日から発送とのこと。「そういえば、あんな質問がよくあったなぁ」と昔を思い出し、源泉徴収票に関するよくある疑問に税金の計算を交えて解説します。
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どんなニュース?もう少し詳しく!
年が明けました。
年金行政は毎年3月15日の確定申告期限まで繁忙期が続きます。
なぜ忙しいか。
それは税務の仕事が原因です。
ひるがえって、シモムーのお正月。
日本年金機構のウェブサイトを見ていたら、
2017年の源泉徴収票発送は「1月13日から19日にかけて順次」とのこと。
お雑煮を食べながら、
「そういえば、よくある相談はあんな感じだったなぁ・・」
と走馬灯のように記憶が蘇りました。
というわけで、
今回は源泉徴収票に関する3大(シモムーの脳内ランキング)疑問に関して解説していきます。
- 届かないじゃないか!
- 家族の状況が去年提出したのと違うだろ!
- 税金高すぎだろ!
届かないじゃないか!
障害年金や遺族年金は届きません
まず、よくあるのがこれ。
障害年金や遺族年金は「非課税」の年金です。
ですので、
届かなくて当然なんです。
ちょっと、法律の条文を読んでみますと、こんな風に書かれています。
第二十五条 租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない。
(国民年金法)
残念ながら、多くの人が受け取る老齢年金に関しては「この限りでない」んですね。
厚生年金も同じです。
ですので、障害年金・遺族年金を受け取りの方は届かない。
「来ない!」と言われたら、まずこれを疑います。
地域によって異なるのでお待ちを!
現在、公的年金の受給者は約4000万人。
そのうちの8割が老齢年金だとして、3200万通。
それら膨大な通知を一斉に発送することはできません。
発送は地域に分けて郵便局に持ち込むスケジュールになっているのでいつ届くのかというのはわかりません。
日本年金機構のウェブサイトにも、
※源泉徴収票がお手元に届くまで、郵便事情等を考慮し、10日程度お待ちください。
となっています。
待ちましょう。
家族の状況が去年提出したのと違うだろ!
今回届くのは2016年(平成28年)の支払状況
源泉徴収票には税額を計算する上で拠り所にした家族の状況が印字されています。
扶養親族が多ければ税金は安くなる。
ですのでこの記載に敏感になるのはわかります。
今回送られる源泉徴収票のレイアウトを見てみましょう。
2017年1月から送られる源泉徴収票は2016年(平成28年)1年間の年金支払のもの。
そこに記載されている家族の状況は2015年の終わり頃に提出した「扶養親族等申告書」を元にしています。
そして、
昨年、2016年夏には2017年向けの「扶養親族等申告書」を提出しているので、その状況が記載されるのは来年2018年に届く源泉徴収票ということになります。
親族に変更があるなら税務署へ
勘違いではなく、
実際に2016年中に扶養親族に変更があったのであれば、
確定申告して精算することになります。
源泉徴収票の記載で税金が確定するということではありません。
あくまで、
年金受給者の自発的な扶養親族の申告に基づいて、
1年間天引きで仮に税金を納め、
年が明けて事情に変化があれば、
確定申告でつじつまを合わせる
ということになります。
税金高すぎだろ!
扶養親族の申告をしているか?
高いか安いかは個人の価値観による
というわけではなく、
天引きの税金が
毎回数万単位でべらぼうに高い
というケースがあります。
疑ってかかるのは、扶養親族等申告書を提出していないケース。
提出しているか、していないかでどう税額に変化があるか、ちょっと計算してみましょう。
年金からの税金計算の前提
平成28年12月31日現在、68歳の夫と63歳で専業主婦の妻。2人暮らし。
老齢厚生年金:162万円/年
老齢基礎年金:78万円/年
(老齢年金合計の月額:20万円/月)
介護保険料:5,500円/月
という仮定のもと、夫の老齢年金から天引きされる所得税を計算してみます。
考えないといけないのは先ほどの扶養親族等申告書を提出しているかいないか。
この申告書を提出するのは、例え単身者の場合であっても意味があります。
それは、年金を受け取っているだけで受けられる「基礎控除相当」の控除があるからです。
この夫婦に考慮してくれる控除の詳細はこちら。表の控除額は”月額”での控除額です。
控除の種類 | 月割控除額 |
---|---|
基礎控除相当(公的年金等控除) | 1カ月分の年金支払額×25%+65,000円 (最低額135,000円) |
配偶者控除 | 32,500円 |
(出典:日本年金機構ウェブサイトより抜粋して編集)
考え方はこうです。
- 年金の1カ月分から社会保険料と表の控除額を引く
- その金額に税率5.105%を掛ける
すると、1カ月あたりの税金が計算されるという具合。
年金は偶数月に2カ月分を受け取る。
ですので1回の支払いでここで計算した額の2倍の税額が天引きされるわけです。
扶養親族等申告書を提出している場合
基礎控除相当:20万円 × 25% + 65,000円 = 115,000円 < 135,000円 ←こっちを使う
配偶者控除:32,500円
控除合計:167,500円
所得税額:(20万円 − 5,500円(介護保険料) ー 167,500円) × 5.105% ≒ 1,378円/月
扶養親族等申告書を提出していない場合
申告書を提出しない場合、恐ろしいことが待っています。
まず、本人の基礎控除相当を受けられない。
そして、家族の状況は考慮されない。
一律の控除額だけで計算されます。
最後に、2倍の税率が課せられる。
控除額:(20万円 ー 5,500円) × 25% = 48,625円 ←社会保険料を除いた25%分のみ
所得税額:(20万円 − 5,500円 ー 48,625円) × 10.21% ≒ 14,893円/月
こりゃー、税金高い!となるのもわかります。
2020年7月19日追記
税制改正により2020年からは申告書未提出でも5.105%で計算されるようになり、一律25%分の控除も見直され、公的年金等控除と同等の控除も受けられるようになりました。
還付申告で全て解決
ご安心ください。
全て、税務署で解決します。
上で説明した事例の場合、還付申告すれば、
税金の差額:14,893円 ー 1,378円 = 13,515円/月額 × 12 = 162,180円
約16万円の還付が受けられるということになります。
世の中には変わった人もいまして、
還付されるのを楽しみに、敢えて扶養親族等申告書を出さないという人もいらっしゃいます。
今回のニュースまとめ
今回のニュースはそろそろ源泉徴収票が送られることに絡んで、
- 届かないじゃないか!
- 家族の状況が去年提出したのと違うだろ!
- 税金高すぎだろ!
のよくありそうな3つの疑問を解説しました。
結局、この時期に年金機構がやらないといけない仕事は本業とは関係ないことなんですよね。
純粋な年金制度の業務ではなく、税金の作業。
事業主に課せられている給与からの源泉徴収の年金版です。
ただ、年末調整はありませんけど。
いっそのこと、老齢年金も非課税にしてしまえば、日本年金機構も本業に集中できると思うんですが・・・。
シモムー
みんなのねんきん主任講師