あなたはいくらもらえる? 10 月から始まる「年金生活者支援給付金制度」のポイント|みんなのねんきん

大須賀信敬

みんなのねんきん上級認定講師

どんなニュース?簡単に言うと

いよいよ、来月(2019 年(令和元年)10 月)1日から「年金生活者支援給付金制度」が始まります。それに先立ち、9月上旬から順次、手続き用のハガキが対象者に送られるようです。そこで、今回は「年金生活者支援給付金制度」の基本的な仕組みを見てみましょう。

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どんなニュース?もう少し詳しく!

年金生活者支援給付金制度とは

「年金生活者支援給付金制度」は年金収入や所得が低い人の生活を支援するため、給付金を支払う制度です。

平成 24 年度のいわゆる「社会保障と税の一体改革」に関連して成立した「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」に基づき、いよいよ来月(2019 年(令和元年)10 月)1日か実施されるものです。

財源には、この 10 月から開始される消費税率の 10%への引き上げ分が充てられることになっています。

年金生活者支援給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3つの給付金種別があり、実際に支払い対象になるのは、次のいずれかの給付金になります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 補足的老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

どのような条件が揃えば、給付金が受け取れるのか

実は、年金受給者であれば、必ず給付金を受け取れるわけではありません。

給付金をもらえる受給者、もらえない受給者が存在します。

具体的には、給付金の種別ごとに次の1から3または1から2の“すべての条件”を満たすことが、受け取れる条件とされています。

  • 老齢年金生活者支援給付金の受給要件
    1.65 歳以上で老齢基礎年金を受給している。
    2.同一世帯の全員の市町村民税が非課税である。
    3.前年の年金収入とその他の所得との合計が 779,300 円以下である。
  • 補足的老齢年金生活者支援給付金の受給要件
    1.65 歳以上で老齢基礎年金を受給している。
    2.同一世帯の全員の市町村民税が非課税である。
    3.前年の年金収入とその他の所得との合計が 779,300 円超 879,300 円以下である。
  • 障害年金生活者支援給付金の受給要件
    1.障害基礎年金を受給している。
    2.前年の所得額が「4,621,000 円+扶養親族の数×38 万円※」以下である。

    ※ 70 歳以上の同一生計配偶者、老人扶養親族は 48 万円。特定扶養親族、16 歳以上19 歳未満の扶養親族は 63 万円

  • 遺族年金生活者支援給付金の受給要件
    1.遺族基礎年金を受給している。
    2.前年の所得額が「4,621,000 円+扶養親族の数×38 万円※」以下である。

    ※ 70 歳以上の同一生計配偶者、老人扶養親族は 48 万円。特定扶養親族、16 歳以上19 歳未満の扶養親族は 63 万円

例えば、一人暮らしで老齢基礎年金のみを受給する 65 歳の人が、年金以外に所得がないというケースであれば、一般的には老齢年金生活者支援給付金の支払い対象になることになります。

しかしながら、同じ一人暮らしで老齢基礎年金のみを受給する 65 歳の人でも、年金を受け取りながら会社勤めをしている、自営業を営んでいるなどの場合には、給付金の支給対象にならないケースも出てきます。

また、「日本国内に住所がない」「年金が全額支給停止になっている」「刑事施設等に拘禁されている」などのケースでは、いずれの給付金も支払われることがありません。

給付金の基準額は1カ月 5,000 円

支給される年金生活者支援給付金の金額は、給付金の種別にかかわらず 1 カ月当たり 5,000円を基準額としています。

その上で、給付金の種別により、次のとおり金額が定められています。

老齢年金生活者支援給付金の額

老齢年金生活者支援給付金の場合には、現役時代の保険料納付済期間と保険料免除期間がそれぞれ何カ月あるかにより、受取額が異なる仕組みになっています。

具体的には、次の計算式で月額が決定されます。

(5,000 円×保険料納付済期間の月数÷480 月)+(10,834 円※×保険料免除期間の月数÷480 月)

※ 4分の1免除期間は 5,417 円。

補足的老齢年金生活者支援給付金の額

前年の年金収入とその他の所得との合計が 779,300 円を超え 879,300 円以下の場合には、老齢年金生活者支援給付金を受け取れる人との所得総額の逆転を防ぐため、老齢年金生活者支援給付金に準じた給付金が支払われます。

これを補足的老齢年金生活者支援給付金といいます。

金額は前述の老齢年金生活者支援給付金の計算式に準じた計算で決まるのですが、ちょっと難しいので説明は割愛します。

障害年金生活者支援給付金の額

障害年金生活者支援給付金は受給している障害基礎年金の等級により金額が変わり、次のとおりです。

  • 2級の障害基礎年金を受給している場合5,000 円/月
  • 1級の障害基礎年金を受給している場合6,250 円/月

障害基礎年金は子の数により年金の受給額が変わりますが、給付金は子の数に関係なく、上記の額が支給されます。

遺族年金生活者支援給付金の額

遺族年金生活者支援給付金は定額で、次のとおりです。

遺族基礎年金を受給している場合5,000 円/月

遺族基礎年金も子の数により年金の受給額が変わりますが、給付金は子の数に関係なく、上記の額が支給されるものです。

いずれの給付金も税金は課税されず、また、給付額は毎年度、物価変動に応じて改定される予定です。

老齢年金生活者支援給付金の金額計算のケーススタディ

それでは、老齢年金生活者支援給付金をいくら受け取れるかについて、具体的に検証してみましょう。

《ケース1》老齢基礎年金を満額受給している場合

20 歳から 60 歳になる前までの 40 年間(480 月)についてもれなく保険料を納付し、満額の老齢基礎年金を受給している場合の老齢年金生活者支援給付金は、次のように計算されます。

(5,000 円×480 月÷480 月)+(10,834 円×0月÷480 月)=5,000 円

従って、1 カ月当たり 5,000 円の給付金を受け取れることになります。

図で見ると、次のとおりです。

老齢基礎年金を満額受給する場合の年金生活者支援給付金

(タップで拡大)

現在、満額の老齢基礎年金の月額は 65,008 円ですので、これに給付金 5,000 円を加えた70,008 円が 1 カ月分の収入となるわけです。

また、年間にすると 60,000 円(=5,000 円×12 カ月)の給付金が、老齢基礎年金の他に受け取れることになります。

《ケース2》保険料の“免除期間”がある場合

20 歳から 60 歳になる前までの 40 年間(480 月)について、保険料を納付したのが 20 年(240 月)、残りの 20 年(240 月)は保険料の全額免除を認められている場合の老齢年金生活者支援給付金は、次のように計算されます。

(5,000 円×240 月÷480 月)+(10,834 円×240 月÷480 月)=2,500+5,417 円=7,917円

従って、1 カ月当たり7,917 円、年間で95,004 円(=7,917 円×12 カ月)の給付金を受け取れることになります。

図で見ると、次のとおりです。

免除期間がある老齢基礎年金を受給する場合の年金生活者支援給付金

(タップで拡大)

保険料の免除を認められた期間がある場合には、老齢基礎年金を満額受給できる人よりも年金額が少ない分、給付金の額は多くなります。

昨今、「給付金の最大額は月 5,000 円」というマスコミ報道を目にすることがありますが、保険料の納付が免除された期間を持っている場合には、上記のように給付金の月額が 5,000円を超えるケースも発生します。

《ケース3》保険料の“未納期間”がある場合

20 歳から 60 歳になる前までの 40 年間(480 月)について、保険料を納付したのが 20 年(240 月)、残りの 20 年(240 月)は保険料が未納の場合の老齢年金生活者支援給付金は、次のように計算されます。

(5,000 円×240 月÷480 月)+(10,834 円×0月÷480 月)=2,500 円+0円=2,500 円

この場合の給付金は 1 カ月当たり2,500 円、年間で30,000 円(=2,500 円×12 カ月)となります。

図で見ると、次のとおりです。

未納期間がある老齢基礎年金を受給する場合の年金生活者支援給付金

(タップで拡大)

前述のケース2とこのケース3を比べると、どちらも自分で保険料を支払った期間は 20 年間で同じです。

しかしながら、保険料を支払わなかった期間について、免除の手続きを取らずに未納にしてしまうと、給付金の額も少なくなってしまうことが分かります。

つまり、本当に保険料を払えない事情があるのであれば、キチンと免除の手続きを取っておいたほうが、老齢基礎年金も給付金も額が増えるということです。

給付金の受け取り上のポイント

それでは、給付金を受け取る上での留意点やポイントを見てみましょう。

1.給付金は年末まで支払われない

給付金は年金と同じように“後払い”です。

そのため、2019 年(令和元年)10 月から「年金生活者支援給付金制度」が始まったとしても、給付金が 10 月に入ってすぐに支払われるわけではありません。

2019 年(令和元年)10 月分の給付金からもらえる人に対する最初の支払いは、2019 年(令和元年)12 月になります。

このとき、2019 年(令和元年)10 月分と 11 月分の2カ月分の給付金が支払われることになります。

2.給付金は年金の支給日に支払われる

給付金は年金の支給日に支払われることになっています。

従って、偶数月の 15 日が原則の支給日となります。

ただし、その日が土曜日、日曜日、祝日の場合には、年金と同様に前倒しして支払いが行われます。

今年(2019 年(令和元年))の 12 月は 15 日が日曜日のため、12 月 13 日(金)が年金と給付金の支給日になります。

3.給付金は“年金の受け取り口座”に年金とは“別建て”で入金される

給付金が支払われるのは、年金の受け取り口座と決まっています。

そのため、原則として年金と給付金を別々の口座に入金してもらうことはできません。

また、給付金と年金は合算して口座に入金されるわけではなく、別々に支払われることになっています。

従って、通帳を記入すると、12 月 13 日のところに2つの振り込み記録が印字されることになります。

年金生活者支援給付金の説明では、「給付金は年金に上乗せして支給される」という表現を使用することが多いようですが、本当に年金に上乗せして支払いが行われるわけではありません。

実際には、あくまで年金とは“別物”として支払われるものです。

4.4月1日までに年金を受け取り始めている場合には、ハガキを返送する

2019 年(令和元年)4月1日の時点で老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取っている人のうち、給付金の支給対象となる人に対しては、9月上旬から順次、手続き用のハガキなどが日本年金機構から送られてくることになっています。

年起因生活者支援給付金の手続きハガキ

(タップで拡大)

このハガキに「氏名」「電話番号」「提出日」を記入し、「氏名」を自署しない場合には押印をして目隠しシールを貼り、返送すれば給付金の手続きは完了です。

添付書類などは一切、必要がありません。

ただし、郵便料金は自己負担のため、切手を貼るのを忘れないようにすることが大切です。

また、2019 年(令和元年)4月2日以降に老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取り始める場合には、年金と給付金の請求を同時に行うよう、日本年金機構では案内をしています。

5.ハガキの返送が遅れると、12 月に給付金がもらえない

日本年金機構から届くリーフレットには、手続き用のハガキを「なるべく1週間以内に提出してほしい」旨の記載があります。

年起因生活者支援給付金の手続きの注意点

(タップで拡大)

また、郵便物の宛名の右上には「10 月 18 日(金)までに届くように投函してほしい」旨の記載もあるようです。

年金生活者支援給付金の通知封筒

(タップで拡大)

これらの記載がある理由は、給付金の初回支払いを 12 月に行うためには、一定の事務処理時間が必要になるためです。

しかしながら、仮に記述されている期限を過ぎてハガキを提出したとしても、年内に提出すれば、期限までに出した人と同じように給付金をもらうことが可能です。

ただし、その場合には初回支払いが来年(2019 年(令和2年))2月以降になる可能性が出てきます。

例えば、9月に届いたハガキを 11 月に提出したなどの場合には、初回支払いが令和2年2月になり、その際に令和元年 10 月分から令和2年1月分までの4カ月分が入金になる、などの可能性も出てくるものです。

給付金の受取総額が減ることはありませんが、受取時期がだいぶ遅くなってしまいます。

6.ハガキの提出が来年になると、給付金の受取総額が減る

ハガキを年内に提出せず、2020 年(令和2年)1月以降に提出した場合には、給付金はハガキを提出した“翌月分”からしか受け取れなくなります。

例えば、今年の9月に届いたハガキを来年の1月に提出すると、給付金は来年2月分からしか受け取ることができなくなってしまいます。

つまり、本年 10 月分から来年1月分の4カ月分の給付金を受け取ることができなくなるわけです。

給付金の申込ハガキは氏名等を書くだけの簡単なものであり、添付書類が必要なわけでもありませんので、早めに提出しておくに越したことはないようです。

7.原則として1回の手続きで、生涯、受け取り可能である

年金生活者支援給付金は支払い条件に当てはまっている限り、生涯にわたり支払われ続けることになっています。

また、給付金を受け取るための手続きは、原則として最初の1回だけになります。

毎年の更新手続きのような仕組みがあるわけではありません。

今回のニュースまとめ

今回は、2019 年(令和元年)10 月1日から始まる「年金生活者支援給付金制度」の基本的な仕組みを見てきました。

ポイントは次のとおりです。

  • 2019 年(令和元年)10 月1日から、年金収入や所得が低い人の生活を支援するために「年金生活者支援給付金制度」が始まる。
  • 支給される年金生活者支援給付金の金額は、1 カ月当たり 5,000 円を基準額としている。
  • 給付金の最初の支給日は、2019 年(令和元年)12 月 13 日(金)になる。
  • ハガキを期限までに提出しなかった場合、給付金の最初の支給日が 2020 年(令和2年)2月以降にずれ込む可能性がある。
  • ハガキの提出が 2020 年(令和2年)1月以降になると、ハガキを提出した“翌月分”の給付金からしか受け取れなくなるので、受取総額が少なくなる。

日本年金機構から9月に届く郵便物には、給付金の1カ月当たりの見込額が記載されています。

そのため、事前にどの程度の給付金を受け取れるのかが分かることになります。

ただし、手続き用のハガキを年内に提出した場合と、年を明けてから提出した場合とでは、「何月分の給付金からもらえるか」が大きく変わるという特徴があります。

手続き用のハガキを受け取った皆さんは、早めに提出することをお勧めします。

出典・参考にした情報源

厚生労働省ウェブサイト:

「年金生活者支援給付金制度」がはじまります



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みんなのねんきん上級認定講師 大須賀信敬

特定社会保険労務士(千葉県社会保険労務士会所属)。長年にわたり、公的年金・企業年金のコールセンターなどで、年金実務担当者の教育指導に当たっている。日本年金機構の2大コールセンター(ねんきんダイヤル、ねんきん加入者ダイヤル)の両方で教育指導実績を持つ唯一の社会保険労務士でもある。また、年金実務担当者に対する年金アドバイザー検定の受験指導では、満点合格者を含む多数の合格者を輩出している。